北条は、身も心も疲れ切った様子で、満員電車に揺られていた。

毎日、毎日、家と会社の往復だけで、飲みに行くこともない。

年々給与が下げる一方なので、飲みに行きたくても、金銭的な余裕がないのだ。

北条は、一体なんのために生きているのか、この頃そればかりを考えていた。

今日も、疲れた身体を通勤電車の座席に預けて、家路へと着いていた。

途中で小学生中学年の塾帰りの団体が乗り込んできて、北条の前に固まった。

彼らの話し声が、北条の眠りを遮る。

北条は舌打ちしたい気分で、彼らを見た。

顔はあどけないが、言っていることは大人びている。

テストの成績、中学受験、果ては大学受験や就職のことまで話している。

野球やサッカーやテレビのことなど、子供らしい話はまったく出てこない。

よく見ると、誰もが疲れている顔をし、殆どの子供が分厚い眼鏡をかけている。

フン、子供のくせに、大人のように疲れた顔をして、なにを言ってやがる。

北条は、さきほどよりも、もっとイラつきが募った。

どんなに頑張ったって、所詮、この世の中いいことなんてひとつもないんだ。

こいつらが、俺みたいな想いを味わう前に、いっそこんな世の中なんて消えちまえばいいんだ。

北条が、心の中で毒づく。

北条がそう思った今まさに、月の半分はあろうかという巨大な隕石が、地球めがけてまっしぐらに接近していた。

 

 

 

 

 

 

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