男は、タフでなければ生きていけない。

この言葉を幼い頃から座右の銘に、達也は生きてきた。

小学生の頃から喧嘩に明け暮れ、中学・高校では番を張っていた。

達也は、タフさにおいては自身があった。

そんな達也が恋をした。

女性は強い男に憧れるものとの信念を持っていた達也は、猛烈に強い男をアピールした。

だが、あっけなく振られてしまった。

それからも、自分より軟弱な男がもてるのを、幾度ともなく見てきた。

なぜだ?

俺はこんなにタフなのに、なぜ、女にもてない?

そう考えるのは立派だが、達也の思考はいつもそこで終わってしまっていた。

達也の思うタフとは、単に喧嘩が強いということだけだった。

そこには、気遣いや思い遣りなど、一切考慮されていない。

自信が揺らげば揺らぐほど、焦れば焦るほど、達也は自分を見失っていった。

そうこうしているうちに、一度も結婚することなく、達也は還暦を迎えた。

今でも、なぜ結婚できなかったのか、達也にはわからない。

達也に欠けていたもの。

男は、優しくなければ生きている値打ちがない。

達也は、画竜点睛を欠いていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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