寺坂信幸は、若い頃から会社を転々として、今の会社は幾つ目のことか。
彼は非情におとなしく、誰になにを言われても怒ることがなかった。
そのせいか、上司や先輩によく雑用を押し付けられた。
彼は、どんな雑用であっても、嫌な顔ひとつせず引き受けた。
大抵の人間は、そんな彼を庇うより、苛めるか傍観者の立場に回る。
これまでいくつも会社を変わってきたが、彼を庇ったり守ったりしてくれる人間は、一人もいなかった。
ある時、ささいな事で、信幸がキレた。
そのキレ方は尋常ではなく、日頃彼を小馬鹿にしていた者全員が凍りついた。
信幸は言いたい放題言って、挙句に辞表を叩きつけ、その場で会社を去った。
「また、やったのか?」
小学生以来の友人が、信幸と酒を酌み交わしながら、呆れたように言った。
「ああ、面白かったぞ」
会社でのおどおどした雰囲気とはがらっと変わって、信幸は破顔しながら酒を呷った。おとなしい振りを演じておいて、ある時に豹変し、心底人を驚嘆せしめるのが、信幸の趣味であった。
「おまえの趣味にも困ったもんだな。そんなことじゃいつまで経っても、嫁さんもらえないぞ」
「別に、いいよ。俺は、これが楽しみで生きてるんだから」
友人は処置なしというように、静かに首を横に振った。
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