「課長、どうしたんですか? 浮かない顔をしてますよ」

「今年入った上野がさ、用事を頼んだら、教えてもらってないからできませんって言うんだよ」

「仕方ないですよ。ゆとり世代なんですから」

「そうだな」

頷きながらも、田町はやりきれない気分だった。

田町が隣に目を遣ると、大学生と思しき三人連れが、楽しそうに飲んでいる。

それを見て、田町は、自分の大学時代のことを思い出した。と同時に、急に視界が開けた。

時代なんかじゃない。大学時代の俺も、あいつらと一緒だった。

俺たちは、自分の無責任さを、時代という便利な言葉にすり替えているだけだ。

自分だって、厳しいばかりの上司は好きじゃなかった。

俺の親は、いくら忙しくっても、子供と向き合ってくれた。勉強以外の、人としての大切なことを教えてくれた。

俺は、自分の子供達に、そんなことをしたことがあるか?

いつも、忙しいのを言い訳に、子供達のことは女房に押し付けてきた。

そのくせ、今の若い者はと嘆いている。上野だって、ひとつしか年が違わないのに、ゆとり世代を馬鹿にしている。

それは、馬鹿にしているのではなく、たんに責任を回避しているだけだ。

田町の頭の中の霧が晴れ、心に虹が差した。

これ一杯で帰って、子供達と向き合おう。明日から、上野とも真摯に向き合う。

再出発の門出となる杯を、田町はゆっくりと傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋と夜景とお芝居と(現在連載中)

ふとしたことから知り合った、中堅の会社に勤める健一と、売れない劇団員の麗の、恋の行方は?

ハードボイルドラブストーリー

 

絆・猫が変えてくれた人生

会社が倒産し、自棄になっていた男の前に現れた一匹の黒い仔猫。

無二の友との出会い、予期せぬ人との再会。

その仔猫を拾ったことから、男の人生は変わっていった。

小さな命が織りなす、男の成長と再生の物語。

 

プリティドール 

奥さんが、元CIAのトップシークレットに属する、ブロンド美人の殺し屋。

旦那は、冴えない正真正銘、日本の民間人。

そんな凸凹コンビが、CIAが開発中に盗まれた、人類をも滅ぼしかねない物の奪還に動く。

ロシア最凶の女戦士と、凶悪な犯罪組織の守り神。

世界の三凶と呼ばれて、裏の世界で恐れられている三人が激突する。

果たして、勝者は誰か?

奪われた物は誰の手に?

   

短編小説(夢

 

短編小説(ある夏の日)

 

短編小説(因果)

 

中編小説(人生は一度きり)

 

20行ショート小説集

 

僕の好きな一冊シリーズ

 

魔法の言葉集