逆境ナイン
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【このコンテンツは批評目的による岡村孝子氏の音楽の引用が含まれています。音楽の著作権は著作権者に帰するものです。また、個人的耳コピのため音楽的には間違った解釈である可能性もありますが、故意に著作権者の音楽の価値を低めようとするものではありません。著作権者の権利、音楽の美学を侵害した場合いかなる修正・削除要請にも応じます】
島本和彦原作「逆境ナイン」の映画を家族で見てきた。「(最近はやり?の)CGを巧みに活用した劇画チック・ギャグ映画に仕上がってるのかなぁ」などと女房と予想していた。それに島本作品特有の、強引なオシと高速なリズム感、廻るましく交錯する、精神的ハイとロウ。激情の噴出と、極度の内省。その変幻自在のバイオリズムを考えると、下手すると「勝手に製作側だけ盛り上がっているが、お客さんには笑えない」ものになりがちだと思っていた。 だが、そうではなかった。なかなかどうして、素晴らしい映画だった。この出来のよさは、主演の玉山鉄二(不屈闘志役)によるところが大きいと思った。デビュー当時の「百獣戦隊ガオレンジャー」
から彼のことを応援しているが、いやぁ、いい役者に成長したなぁ。とてもうれしい気持ち。大根役者なら、単純におどけた演技になりがちなところに、かれは特殊なペーソスや、偏屈な激情を描くことができている。役者の才能は想像力だという話を聞いたことがある。「玉山君は、脚本を読みながら、様様なアスペクト(様相)から、色々な心理を想像しているのだろうな」と感心する。「仮面ライダー響鬼」
に出演中の相原楽人君も可愛らしい演技で活躍してたし(ライダーファンの方々、絶対見ましょう)、校長役の藤岡弘、も、ココリコ田中も、堀北真希も良かった。 で、今回はこの映画テーマ曲、岡村孝子「夢をあきらめないで」。日本ポップス界の金字塔の一つ。この曲も、パッヘルベルのカノン(参照 )系だ。キーはCメジャー、4/4拍子。 【A】
1~4小節は、Ⅰ-Ⅲm7-Ⅳ-Ⅴ7-Ⅰ。Ⅲm7はトニックだから、基本Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ7-Ⅰ(参照 )。 5~8小節はⅣ-Ⅲm7-Ⅵm7-Ⅱm7-Ⅴ7。Ⅳ-Ⅲの短2度下降進行(→参照 )の後は、完全4度上昇進行を繰り返す(参照 )、極めて無理が一つもない、美しい進行。あとはその繰り返し。 【B】
【C】
Ⅰ-Ⅴ7-Ⅵm7-Ⅴ7-Ⅳ-Ⅲm7-Ⅱm7-Ⅴ7。これは、パッヘルベルのカノン 、そのものの進行。勿論ベースラインも下降する(下降しないで、CとAm7をそれぞれ2小節引き続けているヴァージョンも聴いたことがあすような気がするが)。岡本真夜の「トゥモロー」といい、この曲といい、「人生の応援歌」的歌詞の曲は、何故か、ベースラインの下降&パッヘルベルのカノン進行に、よく溶けあう。そして名曲である。
すがすがしい映画で、上映前に飲みかけたビールが、上映終了後半分以上残っていた。集中して見れた、ということだ。こういうことは極めて稀。良かったっす。言うの最後になったけど、物凄く笑えた。 ■関連記事: 仮面ライダーアギト G線上のアリア パッヘルベルのカノン 音楽がわかる本 上野樹里「クリアクリーン」 金田伊功「ブライガー」 ごっつええ感じ「ミラクル・エース」 スウィング・ガールズ ■関連リンク:逆境ナイン公式サイト ☆音楽解析の続編は『コチラ』
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