『21世紀の資本論』・その6(最終回) | くらえもんの気ままに独り言

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 先日よりトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本論(の要約版)』のまとめ&感想を書いておりますが、いよいよ今回が最終回となります。ちなみに前回までの話をご覧になっていない方は合わせてそちらもお読みいただけますと、より理解が深まるのではないかと思います。


その0http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11891951450.html

その1http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11892151580.html

その2http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11894579109.html

その3http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11894753877.html

その4http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11894820263.html

その5http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11894821553.html



 今までの話で、資本/所得比の増大や、格差の拡大の問題と歴史を振り返ってきたのですが、今回取り上げますPart3.は資本(および格差)の未来についてまとめられておりました。それでは、さっそくいってみましょう。


16.資本(と格差)の未来


 以前も取り上げましたが、長期で見ると資本の利益率>経済成長率であるため、資本/所得比は自然に任せると際限なく上昇していきます。データから推測すると21世紀末にはくらいになるのではと予想されます。


世界全体の資本/所得比の推移 1870-2100年

http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F12.4.pdf


 しかも、資本はトップに集中して蓄積される傾向があり、格差がどんどん増大していくし、中間層の成長が見込めないだろうということです。


 あくまでも、政府が何も対策を取らなかった場合の話ですが(;^_^A


17.公正さの問題


 こちらも以前ちらっと触れましたが、たとえ格差があろうとも公正なものであるならば問題はないのです。つまり、格差が問題となるのは、それが公正でないかと言えます。


 まずは富を持つ者と持たざる者の差が激しすぎるということです。相続で大量の富を持っているところからスタートすれば確実にもっと豊かになりますし、富を持たない状態でスタートすればどんなに頑張っても富を増やすことができないのです。


フランスの総富における相続分の割合 1850-2100年

http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F11.7.pdf


 その2でも触れましたが、富のうち相続によるものの割合が7割近い現在、さらに資本の利益率が高いストーリーでは今後、相続分の割合が9割を超えてくるという。


 こういうわけで、いくら努力したとしても相続資産の多寡で支配権を得ることができるか決まってしまということは、現代の感覚で言えば、この格差はかなり不公正であると言ってもよいでしょう。


 言い換えると資本/所得比が高い状態というのは、資本家は働かなくても富をどんどん増やすことができるし、労働者はどんなに働こうとも富を増やすことがかなわない状態であとも言えるのではないか、と個人的に解釈いたしました。

 

18.解決策:資本に対する累進課税


 そこでピケティ氏は解決策を提案しております。


 それは累進課税の強化(資産課税含む)でございます。


 ただし、問題は税率の低い国へ資本が飛び出していかないかということですね。いわゆるタックス・ヘイヴンというやつですね。そして政府は資本が逃げて行かないようにとか言って、法人税減税をしようとしたり、株だったり配当だったりにかかる税金を免除しようとするんだと。


 本当にグローバリズムって癌だよなぁ(;^_^A


 その問題をクリアするためには国際的な協力が必要(世界中で足並みをそろえて累進課税を強化するetc.)なのですが、これもなかなか現実的には難しいです。ピケティ氏が言うには、まず地域レベル(ヨーロッパ内etc.)で税制を統合して、段階的に広げていくのがよいのではないかと。世界的にはタックス・ヘイヴンを規制しようという流れは起きつつありますが、足並みそろえて累進的資産課税までするってのはハードル高いかもですね。特に資本が少ない国は海外資本を呼び込みたいと考えるでしょうし。

 え?国内資本が過剰なのに外資を呼び込もうとしている国があるって?世界的な格差の助長を促しているそんな国はとんでもない国だな(`ε´)(どの国のことかは想像にお任せします。)


 資産課税の税率についてはよく議論したうえで決められるべきとしながら、ピケティ氏は一つの例を提示しています。


(資産総額:税率)

~100万ユーロ:0%

100万~500万ユーロ:1%

500万ユーロ~:2%

(オプションとして、~20万ユーロ:0.1%、20万~100万ユーロ:0.5%というように軽微な税率をつけてみたり、1億(あるいは10億)ユーロ:5~10%を課税してもよいだろうということでした。)


 まぁ、要は格差を縮小させて「中間層」を出現させることが重要であって、それに見合った税率を決めればよいというわけです。


 さて、このような手段が世界的にとられなかった場合どうなるか?

 格差はますます拡大し、人々は不満を募らせるでしょう。そして保護貿易主義や国家主義の様相が強くなっていくと思われますが、それでも累進課税強化がなされない限りは格差はなかなか縮まらないであろうと。そして、国際的な緊張が高まっていき、最終的にはかなり危険な結果が待っているのではないかとピケティ氏は考えているようです。


 柴山桂太氏なんかもよく言っていますが、過剰なグローバリズムや自由主義を推し進めた結果、その反動として保護主義・ブロック経済などを引き起こし、それが、二度の大戦につながったと。柴山氏はこの流れを反転させる際に、いかにして戦争などのハードランディングを回避してソフトランディングさせるべきかということについて思索されていましたが、ピケティ氏の案はソフトランディングさせる一つの案として、その可能性があるのではないでしょうか。


 ちなみに累進課税を強化して得られた税金を政府は何に使うべきかということで、ピケティ氏は政府債務の返済をすべきだと主張しておりました。私個人的には、そこは使えよ!!って思っちゃったりもしますが、ユーロ圏なんかは各国政府に通貨発行権がないため、国債は自国通貨建てではないという事情もあったりしますのでね(;^_^A  外貨(共通通貨)建て国債なんかは返せるときに返しといた方がいいんでしょうね。


 もちろん、我が国の場合は財政赤字の拡大は問題ありませんので、財政出動を増やして需要を刺激すべきと考えます。ただ、ピケティ氏の案のポイントは資本/所得比を下げことによって資本からの収入より労働からの収入を、資本への投資より消費へシフトする方向に圧力をかけることであり、その結果「中間層」が増えて、経済が活性化する(かつ公正になる)というところなのだろうと思います。

 ちなみに財政出動は所得の方を引き上げることによって資本/所得比を下げるというやり方なので、両方ともできる環境であれば、両方ともやった方が良いと思います。


19.結語


 両大戦間に起こったショックは、資本の蓄積と偏在を解決したわけではなく、最初からやり直しただけでした。そして、また資本の蓄積と偏在が進んできて、今後も続いていくでしょう。そして、累進課税の強化などの対策がなされない限りは、格差の拡大が爆発して保護主義・国家主義が強くなり、ハードランディングを迎えてしまうでしょう。



 ここまで、告知を含めて7回にわたって『21世紀の資本論(の要約)』を取り上げてきましたが、みなさんいかがだったでしょうか?


 当ブログでは紹介しきれていない図表もHP上(その0にリンクあります)にたくさんありますし、要約版で触れられていない内容もたくさんあるでしょう。なんせ700ページの大作を40ページにまとめてあるわけですし、さらにそれを6ページ分くらいにしましたので(;^_^A


 ちなみに、以前書きましたが、日本語訳が今年の末に出版されるようですので、要約の要約だけでなく、全ての内容について知りたいと思われた方は是非読まれてください。(私も購入する予定です。)


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