先日よりトマ・ピケティ氏の『21世紀の資本論(の要約版)』のまとめ&感想を書いておりますが、前回までの話をご覧になっていない方は合わせてそちらもお読みいただけますと、より理解が深まるのではないかと思います。
その0http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11891951450.html
その1http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11892151580.html
その2http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11894579109.html
前回は資本/所得比の増大傾向と格差の拡大(およびその理由)についての話でした。今回からPart2:資本と不平等の歴史(1700年~現在)というわけで、これを3回に分けてお送りいたします。今回は農耕社会~産業革命~第一次世界大戦までの期間を取り上げたいと思います。
7.18世紀~19世紀初頭のヨーロッパにおける農耕社会
この時代の資産と言えば、ほとんど土地と国債だったらしく、平均の利率は4~5%だったようです。ここらへんの利益率は本当に今も昔も変わりませんね(;^_^A
一方、その1でも述べましたが、この時代の経済成長率は0.1%前後だったというわけで、当然の結果として資本/所得比は拡大していったというわけですね。
ヨーロッパにおける資本/所得比の推移 1870-2010年
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F0.I.2.pdf
特にフランスでは7を超えているということで、今以上に資本の重要度が高かったというわけです。そして、富の偏在ぶりもすさまじく、当時のヨーロッパでは上位10%が富の90%を、上位1%に至っては富の50%を占めていたという状況だったようです。おそらく階級によって天地の差があったというわけでしょうね。
当時の資本家は高所得労働者をはるかに上回る富を得ていましたし、それらは相続で次の世代へと受け継がれるということを通して、格差は恒久化されていたというわけです。
まぁ、なんといっても当時は階級社会ですからね(;^_^A
ここで、格差うんぬんを論じても仕方ないですが、ポイントは資本/所得比が高く、格差も自然に拡大する傾向であったということでしょうかね。
8.19世紀のヨーロッパ:産業革命と植民地レース
19世紀に入ると、産業革命の影響もあり、農地から産業へと資本が移動していきます。また、植民地レースも始まり、資本家は海外の土地などへの投資も始めていきます。
イギリスの資本/所得比の内訳 1700-2010
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F3.1.pdf
フランスの資本/所得比の内訳 1700-2010
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F3.2.pdf
ドイツの資本/所得比の内訳 1870-2010
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F4.1.pdf
上記グラフを見て分かる通り、この頃から海外資本の比率が増していくのですが、トータルの資本/所得比は7前後をキープしており、むしろ微増傾向でもありました。つまり、産業構造が激変したのにもかかわらず資本/所得比はあまり変わらなかったというわけですね。
そして、富の格差はさらに拡大し、19世紀初頭では上位10%が80~85%、上位1%が40~45%を占めていたのが、20世紀初頭には上位10%が90%、上位1%が60%を占める状況に。さらにパリでは上位1%が70%の富を占めるというとんでもない状況に!!!!
フランス革命以後ですし、もはや階級社会がどうのとかではないですね。金持ちが資本主義のルールの流れに乗って、富を過激に増やしていったということでしょうね。
イギリスにおける富の偏在 1810-2010年
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F10.3.pdf
フランスvsパリにおける富の偏在 1810-2010年
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F10.2.pdf
ピケティ氏曰く、戦争がなかったらどこまでいっていたのだろうか・・・と。
いや、まったく同感です(;^_^A
9.18世紀および19世紀のアメリカ
一方、その間、アメリカはどうだったのでしょうか?
実は18世紀においては、アメリカへの移民による資本の持ち込みも少なく、農地も豊富で安かったので、資本の重要度はそこまで高くありませんでした。資本/所得比でいえば3くらいで落ち着いていたようです。
しかし、19世紀になって産業革命がおこると、資本を使って稼ぐチャンスが出現し、資本の重要度が増してきます。資本/所得比は5くらいまで上昇します。まぁ、ヨーロッパに比べればだいぶ低いですが、かなり差を縮めてきました。
アメリカの資本/所得比の内訳 1770-2010年
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F4.6.pdf
アメリカの場合はヨーロッパと違って海外資本はほとんど増えなかったようですね。また、この頃のアメリカは経済成長率も高かったため、資本/所得比の伸びがヨーロッパよりも低く抑えられていました。それでも(ヨーロッパ程ではありませんでしたが)、アメリカにおいても富の格差は拡大していったようでございます。
アメリカvsヨーロッパにおける富の偏在 1810-2010年
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F10.6.pdf
こうやって見てみると、アメリカはヨーロッパよりワンテンポ遅れてはいましたが、資本/所得比の増大、格差の拡大という共通の現象を捉えることができたわけですね。
というわけで、第一次世界大戦までの欧米の資本/所得比および富の格差の拡大についての歴史を振り返ってみました。次回は第一次世界大戦~第二次世界大戦までの話です。そうです、上記のグラフでガクーンって下がっている期間です。それでは、お楽しみにo((=゜ェ゜=))o
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