NOTE<気になった本>…宗田好史著「中心市街地の創造力」(8・商店街再生は不可能か?)更新版
都心部における都市計画の意義とは?( ■福島県会津若松市の事例 )
【19】商店街とは何か?
(pp..117-121)
↓
商店街振興に関する政策は、大資本による市場の寡占に対抗して、
零細な商業者を支援することを中心に発展。
その後、
1990年代の大店法改正など「まちづくり三法」制定前後の議論の中で、
「商店街とまちづくり」の問題が論じられるようになった・・・・・・。
<商店街再生の意義と、その背景>
↓
都市計画とは、
合理的に土地・建物の利用を制御することで、
国民の生命財産を守り、社会経済発展に寄与するもの・・・・・
*
特に、都心部では、、、
(国民・・・市民の生命財産を守り、
社会・・・地域経済発展に寄与する為)
商業・サービス業の競争力を高め、
都市経済の発展を通じた健全な都市経営の維持に努める必要
がある
↓
(だから・・・「商業集積」をもう一度捉えなおして、、、)
従来の「商店街振興」ではない地方都市商業の再生を考えるべき?
:
:
商店街が衰退しても小売商業・サービス業全体としては成長。
(大型店が圧倒的有利であるが、伸びている小さい店も多い)
*
小規模小売業は衰退しているとは言うものの、
他の先進国と比べ日本の小売店舗数は非常に多い。
多少減ったとしても、
都市部では市民生活に大きな影響を及ぼすほどではなかった。
↓
(そのために・・・)
小売店の減少や商店街の空洞化が
一般市民の関心を集めることはほとんど無かった。
:
大型店が次々と郊外に進出・・・・・
郊外に商業集積が生まれる代わりに商店街が衰退。
*
しかし、
元気な店舗が集まる一画に大型店ではない新たな商業集積を生む。
↓
(結果として・・・・)
それぞれの都市によって若干の違いは見られながらも、
「都市の商業集積」=「その都市の中心」ではなくなる。
(交通・景観・住環境が大きく変化)
<商店街の定義>
商店街とは、おもに、
1つの通りに一定数の商店が集まっている「地理的」な名称。
また、
「商店街振興組合」等の組織としての商店街は、
そこに集まった商店主の集まりを示した言葉であり、
商店街振興組合法などによると、
「店舗が20店舗以上連続して集積している」ものを指す。
*
ちなみに・・・・・
駅裏の繁華街のような『飲み屋街』は、通常「商店街」とは呼ばない
(p.125)
<商店街問題の略歴>
商店街がはじめて「社会問題」としてクローズアップされたのは、
大正期から昭和初期にかけて・・・?
(中小小売商の困窮問題とその対応)
↓
(その後・・・)
百貨店の経営活動規制を求める「反百貨店運動」として展開
(第1次百貨店法の制定)
(1973年 「大規模小売店舗法」)
*
2000年における大規模小売店舗立地法施行
(大規模小売店舗法の改正)まで、
大型店から小規模小売店を守る施策として、
商店街振興の中心的役割を果たす。。。。
<商店街振興組合の限界>
商店街振興組合という組織は、同業組合ではない。
:
異業種が地理的に集まっただけのものであり、その意味合では町内会と似ている。
↓
したがって、
同業組合を対象に業界の近代化、合理化などを支援した産業振興策とは異なる、
より地域的な政策が求められているのではないか??
(宇野史郎『現在都市流通とまちづくり』中央経済社p.22など)
↓
しかし・・・
単に地理的に近いだけの個人商店主が自然発生的に集まった組織に、
計画的に商業集積を管理するのは難しいのではないか??
<ほとんど効果が見られない国の商店街振興策>
商業政策としては、衰退する商店街を振興しようとする膨大な事業が
中小企業庁などによって進められてきたが・・・・・・・
:
・経済産業省
・中小企業庁
・実施自治体における補助金
↓
商店街振興組合会員店舗の「共同化事業」を展開
(例)
アーケード、街灯、カラー舗装、共同大売出し、ポイントカード・・・・・・
など立地環境整備事業を継続的に推進
↓
(しかしながら・・・)
今から見れば、あまり成功したものは無い?
【20】崩れた商業集積
(pp..121-125)
↓
「広域型」と「近隣型」の2つ以外に商業集積または、
単独の大型店が都市の郊外に増えたことが、
都心衰退の1つの重要な原因であると考えられている。
*
「広域型」と「近隣型」という一般的な区分が近年では大きく崩壊。
:
個店が衰退した現在では、逆に現代の万屋であるコンビニが増加。
酒屋も米屋も長年「免許制」に依存していた為に、
自由化されたときには競争力が失われており、
閉店するかコンビニに変わって生き残るしかない???
*
個店の衰退は、まず呉服が売れなくなり、続いて洋服も衰退。
(洋服は一部ブランド店を除き衰退)
↓
モノがあれば売れる時代が去り、衣服や電化製品に限らず、
より多くの商品を見比べた上で、自分の好みに合致した物だけを買う
(=本当に欲しいものしか買わない)という高度なニーズが生まれると、
品揃えの豊富な
(つまり資本力のある大規模な店舗「だけ」が)
買回品を求める消費者を集客可能
になってしまう。。。
:
一方、食料品や日用品などの最寄品でも・・・・・・
生活が洋風化し、働く女性が増えた為に、
家庭で食事をする回数が減り、
加工食品・調理済み食品(中食)が普及、、、
↓
さらには冷蔵庫と冷凍食品の普及で、買物回数も減る。。。
↓
(結果として・・・)
八百屋など伝統的な品揃えの商店よりも
スーパーが好まれるようになった。。。。
:
小売店以外のサービス業でも、、、
住宅地に近いところに多かった理髪店・美容院は中高年の顧客が増え、
若い顧客は都心へ行く。。。
(理容は激減、美容は急増)
↓
髪を染める、或いはカット技術も加わったことで
近隣型よりも
広域型商店街に美容系が多く新規立地
:
★ファーストフードなどチェーン店の登場・・・・・
街中の大衆食堂、そば、中華の店が減少
:
★スターバックスやドトールコーヒーの進出・・・・・
街角の喫茶店も減少
<「広域型」商店街>
都心に立地
買回品、飲食店などが多い
高級衣料品としての呉服店が商店街の「核」であった時代が長い。
(かつては・・・)
「核」となる呉服店の周辺に、
服飾雑貨・装飾品が衣料部門を形成することで集客していた。
(大都市・地方中核都市では呉服店が百貨店に発展した例も多い)
*
呉服などの高級衣料品が中心で、その一部が時代とともに百貨店に変わり、
様々な買回品店がその街を代表する専門店として賑う。
*
個店の一部が大型化し、それ以外の店も取扱商品を純化することで専門店となる。
*
また、街中に名の知られた老舗の飲食店が揃っていた。
↓
やがて、金融機関をはじめ各種企業の業務部門が立地し、ビジネス街が形成された。
*
「ビジネス街化」が過度に進んだ形態が、
デパート、オフィスビル、地下の商店街といった現在の都心の姿である。。。。。
↓
近年、飲食店は増えているが、
いわゆる専門店と呼ばれる買回品店は大規模なものだけが生き残り、
代わりに
携帯電話、サラ金、語学学校が目立ち、
美容院やエスティックサロン(エステ)が増えてきた。
<「近隣型」商店街>
都市の各所に分散立地
日用品や身回品を中心に食料品・衣料品・雑貨店に
食堂・喫茶店などの飲食店が混じる形態。
(かつては・・・地域の「核」となる呉服店に加えて、、、)
家具・畳・建具商・陶磁器・電器店など住宅関連部門が加わり、
酒・米屋・茶店・八百屋・魚屋・肉屋・・・・・
(現在のショッピングセンター、
あるいはデパートのように何でも揃う買物空間が形成されていた)
*
村や街角にあった萬屋(万屋=「よろずや」)、雑貨店が、個々に大小の業種に分化。
*
戦後になると食品スーパーが登場。
*
スーパーは、
もともと小売業から大型化したものが多いため、最初は生鮮食料品が中心であったが、
その後、
総合スーパーが衣料品も取り扱うようになった。
↓
(そして、スーパーは・・・・・)
ますます大型化を続け、
今では50,000㎡以上の売場面積を持つものまで現れた。。。
↓
近年、「近隣型」商店街において、、、
日用品・身回品・食料品等を個別に扱うことは難しくなり、
コンビニがこれらを一括して扱う店になった。
(例外的に、個店を構えていながらも大口のお得意先を持つ事業者は、
相変わらず元気であり、このような「例外的」な事業者だけが生き残っている)
:
近隣型の商店街には、零細な専門店が個々に営業できなくなった為に、
それを補うようにコンビニ業態が成立。。。
【21】商店街救済は不可能か?
(pp..125-130)
↓
郊外への大型店出店規制を都市計画手法「だけ」で制御しても、
本質的な都心再生、
とくに近隣商店街の再生はできないだろう。。。
新たな業種と業態、そして新たな事業者の力で、
都心と近隣商店街を再生する手法が必要でないか?
:
『2005わが国の商業―新たな発展を目指し、変わり行く商業』
(経済産業省「商業統計」速報版によると、、、)
全国の小売事業所数130万
年間平均商品販売額は約1億円(2002年調査)
↓
しかし、小売業全体の販売額分布を見ると・・・・
半数の事業所は販売額2500万円未満
(販売額が平均の1億円を超えるのは僅か2割に過ぎない)
百貨店・総合スーパー・大規模専門店などの
大規模小売店が平均値を大きく押し上げているに過ぎない。。。
:
確かに都心商業(かつての広域型商店街)が衰退したのは、
個店にも原因がある。。。
国民の消費が物販からサービスへ大きく移行し、
物販もその内容が衣食住関連物資から離れていることに未対応である。
その対応は、当然ながら郊外に立地する大手小売業者による
ショッピングセンターのほうが早い。
↓
(なぜなら・・・・・)
1つの企業が流通を支配する為の
優れた戦略に沿ってキーテナントを運営し、
集客性を上げ、
テナントミックスを常に
最適な状態にする仕組みを持っているから、、、
(それに比べて、、、)
商店街は自然発生的なものであり、
すでに戦前からその合理的なテナントミックスを図り、
集客しようとする議論は有ったが、いまだ実行されていない。
大資本に対抗すべき零細業者は、ついに連携も協働も出来なかった・・・・・・。
*
単なる流行の問題ではない・・・・
(流通の仕組みが変化)(国民の生活様式が変化)
消費はモノからサービスへ、、、
街が女性化・・・・
都心は飲食・各種サービス業等が立地の中心的存在
(金融機関などのオフィスを駆逐する勢い)
↓
伸びる業種を集めることで都心に人は集まるが、
衰退する業種を並べたら客は遠のく。。。
ニーズの変化に対応して
店舗の新陳代謝を進めることで賑わいを取り戻すしかない・・・
*
個店はそれぞれ努力を重ねることが出来る。
しかし・・・
新しい店が入り努力する店が多くても、
そうでない店が足を引っ張る・・・
より大きな問題は個店の集合体である商店街(商業集積)にあるのではないか?
<現在の流通システム・・・・・>
サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)
製造元から販売店までをコンピューターを使って総合的に管理することで、
余分な在庫などを削減し、コストを引き下げるシステム。
(資材の調達から在庫管理・製品発送まで、
すべての流れを川上から川下まで管理するシステム)
↓
この仕組みが発達したことで、製造業と大規模小売業者の力関係が変わり、
イオンなどの大企業が市場の変化を見込んで、
製造業を支配するという「商業的需給調整」のメカニズムが形成。
*
つまり、日本では・・・・
モノの需要と供給は大規模小売業者に直接支配される。。。
*
SCMはメーカーよりも大手小売業者の力を大きくした。
プロダクト・オリエンテッドから、マーケット・オリエンテッド型への転換
それぞれの小売業者が独自のチェーンを築いて競い合っている形
(大手小売業の力は、その販売力)
大手小売業者の販売力は、全国的な店舗展開を通じたマーケット支配
(イオン1人勝ち状態。。。)
:
また、
POSにより徹底した合理化を進めるコンビニ業界・・・・・
経済産業省「商業統計」における定義では、
コンビニエンスストアとは、飲食料品を扱い、
売場面積30㎡以上250㎡未満の店舗で、
営業時間は1日14時間以上のセルフサービス形態における販売店を指す。
↓
大規模小売店とコンビニの狭間に埋没する一般小売店舗は、
展望を見出せる場所はあるのか???
:
SMCとPOSの導入は、
製造業におけるフォードシステム(大量生産方式)の確立ほどに
大きな影響を流通業界に与える。。。
(実際、アメリカではPOSが導入できなかった店舗は消滅)
↓
(結果として、、、日本でも・・・)
商品コードの割り当てを受けないと全国的な流通網に載せてもらえないために、
零細な食品製造業者が市場に参入することも大変難しい。
*
規模が小さいから負けるのではなく、多くの製品分野において、
すでに流通システムの「欄外」
に追いやられたから零細小売業者は必然的に負けるのであろう。。。。
■■宗田好史著
「中心市街地の創造力 暮らしの変化をとらえた再生への道」
(学芸出版社)
【体裁】A5判・296頁
【価格】定価3360円(本体3200円)
【発行】2007.12.30発行
【内容】-------------------------
中心市街地はなぜ衰退したのか。都心が硬直し、消費者の変化に敏感な新しい
起業者の参入を許さなかったからではないか。本書はまず市民の変化を消費、
家族、労働の面から捉え、次に都心再生への端緒を掴んだ京都を事例に、街が
どう呼応したかを見た。商店街救済や再開発ではなく、市民の創造性を活かす
都心への大転換を提言。
【情報提供者】学芸出版社
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■NOTE<気になった本>・・・宗田好史著「中心市街地の創造力」(19)
■NOTE<気になった本>・・・宗田好史著「中心市街地の創造力」(20)
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