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私の記事の紹介です。内容の振れ幅が大きいのでご興味を持たれた方はこちらをどうぞ。


あらすじ

ハーメルンは集団ストーカーをしていた精神科はるひの丘病院を制圧した。“竜神”はハーメルンに協力してライブを続けた。ハーメルン隊員の凪と被害者の直美が演奏に参加。

組織

ハーメルン……主に福祉を扱い、武力を持ち、憲法に擁護されている。警察より上に位置する。

登場人物

醍醐直美……24歳。ADHDで統合失調の診断を受け、精神科はるひの丘病院にかかっている。病院側の攻撃に苦しんでいた。

帝凪(ミカド・ナギ)
若鷺仁(ワカサギ・ジン)
……共にハーメルン第三部隊員。今回は奥内班。

雨風塔吉郎(アマカゼ・トウキチロウ)
……ハーメルン第三部隊長。

サトシ……人気バンド、“竜神”のボーカル。メンバーと一緒にハーメルンに協力。

【ロビー2−4】

 仁は隊長の塔吉郎と並んで“竜神”のライブ続投を見守った。病院の爆音TVは医療部隊突入の頃にはいつの間にか消えていたと思う。
 ツインギターの片割れ、凪は曲目の切れ間でボーカルに言った。
 「サトシ、次入れてくれ」
 「よしきた」
 サトシはMCに入った。
 「みんな、次は映画音楽のカバーだ。友達に歌ってもらおうと思う。僕はベース。面白いから応援して! キーボードボーカル、ナギ、ギターボーカル、ナオミ」
 サトシが言うなら不満のある者はいない。ツインボーカルは拍手で迎えられた。
 サトシがソロでベースを弾き始めるとステージは黄色い喝采で盛り上がる。各楽器も演奏に入り、凪もキーボードの上で指を踊らせる。直美はギター片手に歌い始めた。

 ーー明日の君に心酔し
  全て捧げ戦った
  君とともに戦場(イクサバ)駆け抜けた

 次は凪の弾き語り。

 ーー国を建てて花が咲く
  共に歌い笑った
  君は逝ってしまった

 仁の横で隊長が呟いた。
 「映画と詞が違う」
 「はめこんでますね」
 はめこみとはメロディに合った字数で詞を作ること。仁は説明が不親切だったかと思い直したが、隊長にはニュアンスで伝わったらしい。
 「どっちの作詞だ」
 「両方の即興だと思います。打ち合わせ時間なかったはずですから」
 隊長は片手で顎をなでて感心している様子。
 「凪は何でも屋だから驚かないが、直美さんも作詞するのか」
 「カッコいいですね」

 ーー僕は旅に出たんだ 空の真下ひとり
  熱い記憶秘めて 今を生きてる
  花畑の中で 大の字に寝転がり
  すがすがしいほど一人 春が寄り添う
  風と流れ流れ バザールに腰かけた
  今の共は弦楽器 遠くのドラム
  僕は歌い語る 花売りが足を止め
  鮮やかな紅の空 宵の鳥たち

 ツインボーカルは大成功に終わった。サトシは大よろこび。彼がボーカル、凪と直美はバックアップに戻り、ラストの曲目に入った。
 隊長は首を傾げた。
 「凪と直美さん、やけに笑いあってないか?」
 「楽しいからでしょう」
 「そうだと思うけど……、そうかなあ?」
 ステージの奏者二人は楽器ではなく相手を見つめていた。
(続く。vol.182「ロビー⑧(第三幕)」はエピローグです)

【関連記事】

ハーメルンが登場する前作はこちら。ファンタジーです。

だいごなおみ先生については「山の王様②」の後書きで説明しています。

失礼いたします。ご覧くださった方に感謝。