［１１月１８日付 山陽新聞 から］
フィギュア岡山 躍進の基盤
好環境 ホープ育む
シャー、シャーッ。スケート靴の刃が、鋭く氷を削る。銀盤を滑走するのは、理大付高２年の田中刑事（けいじ）（１６）。３月に韓国で開かれたフィギュアスケートの世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得した日本のホープだ
ヘルスピア倉敷（倉敷市連島町西之浦）で行う日ごろの練習では、リンク全面を貸し切りで利用する。公式大会も開ける長さ６０メートル、幅３０メートルの豪華な“専用リンク”。誰にも邪魔されない恵まれた練習環境で、将来の五輪出場を夢見ながら、ひたすら滑りを磨く
［１１月１８日付 山陽新聞 から］
フィギュア岡山 躍進の基盤（上）
貸切リンク
日本フィギュアスケート界のホープ田中刑事（１６）の練習拠点・ヘルスピア倉敷（倉敷市連島町西之浦）。バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔（関大大学院、翠松高出）がかつて腕を磨いたリンクだ。現在は学校法人加計学園（岡山市）が所有
１０月から５月までの営業期間中、フィギュアやアイスホッケーなどのクラブ、一般愛好者も受け入れるが、同学園が運営する理大付高２年の田中は、部活動として優先的に貸し切り利用できる
納得いくまで滑り込む
将来、五輪を目指すような選手にとって『貸し切り』は喉から手が出るほど欲しい環境だ。周りを気にせず思い切ってジャンプうやスピンができ、曲をかけて行う通し練習も、順番待ちすることなく納得いくまで繰り返せる
競技人口の多い都市部では“芋の子を洗うような”リンクで滑り、大会が近づくと、練習しやすい場所を求めて遠方まで出向くパターンが多い。それでも貸し切りとなれば、早朝や深夜しか空きがないことがほとんど。全国高体連スケート専門部は『高校生の競技環境はまだまだ整っていない』と指摘する
田中はそれとは対照的に、毎日でも存分に練習でき、１時間当たり２万円かかるかし切り利用料も免除される。『今の自分があるのは、このリンクで集中的に滑り込めたおかげ』と感謝する
救いの手
田中の成長に大きく貢献している子の練習環境は、どのようにして成り立ったのか
同リンクは、元は厚生年金福祉施設『サンピア倉敷』。年金改革の一環で売りに出され、２００９年２月に同学園が３億３千万円で購入した。なかなか買い手がつかず、閉鎖も取りざたされていた中、救いの手を差し伸べた格好だ。『学園の教育施設としての活用はもちろん、岡山スケート界の発展に協力できると習得を決めた』と同学園評議員でもある理大付高の橋爪道彦校長
岡山県スケート連盟をはじめとする熱心なリンク存続運動も、同学園の動きを後押しした。署名活動などに奔走した同連盟の大西洋副会長は『大輔が巣立ったリンク。後に続く選手も育っており、絶対つぶしてはならないという気持ちだった』と振り返る
１０年春、理大付高アイススケート部が、第１号部員に田中を迎えてスタートした
高橋に続け
高校で専用リンクを持つのは、世界女王の安藤美姫や浅田真央が通った中京大中京高（愛知）、高橋大輔が進学した関大の系列校・関大高（おおさか）しかない。この２校と並ぶ屈指の環境にあこがれ今春、昨季の全日本ジュニア２位の友滝佳子ら２人が入部。田中に続こうと練習に励む。日本スケート連盟の強化選手となり国際大会にも派遣された友滝は『リンクに恩返しができるよう結果を残したい』と力を込める
岡山県にはほかに、通年営業の岡山国際スケートリンク（岡山市北区岡南町）にあり、練習場の充実度は地方では最高レベル。日本連盟の吉岡信彦フィギュア強化部長は『岡山にはリンク、指導者、才能あるスケーターという土壌がある。高橋に続き世界で活躍する選手が出てきてほしい』と期待する
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日本男子フィギュア初の五輪メダリスト高橋大輔を生んだ岡山。不況の影響などで各地のリンク事情が厳しさを増す中、ヘルスピア倉敷、岡山国際スケートリンクの２施設を中心に、国内優秀の選手育成拠点になりつつある。新たな強化が進む岡山フィギュア界の現状を追った
