さて、GWに迎賓館に行ってきたのでその記事である。迎賓館赤坂離宮は一般公開されており、本館と庭園が1500円で観覧できる。なお、内部は撮影禁止であるので要注意である。

 

現在の迎賓館の建物は、東宮御所(皇太子の御所)として1909年に建設されたものである。ジョサイア・コンドルの弟子にあたる宮廷建築家片山東熊の設計により、元紀州藩の屋敷跡に建てられた。しかしそのネオ・バロック様式の外観があまりにも豪華で華美に過ぎたことや、住居としては使い勝手が必ずしも良くなかったことから、皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)がこの御所を使用することはほとんどなく、離宮として扱われ、その後、国立国会図書館、法務庁法制意見長官、裁判官弾劾裁判所、内閣憲法調査会、東京オリンピック組織委員会のオフィスなどとして使用された後、迎賓館となっている。

 

正面玄関の屋根飾りや内装の模様などに”鎧武者”の意匠があるなど、建物全体に西洋の宮殿建築に日本的な意匠を取り込んで、西洋建築に和の要素を溶け込ませている。イギリス・バッキンガム宮殿、フランス・ヴェルサイユ宮殿も参照されたが、ウィーンのホーフブルク宮殿との類似性も指摘される。

 

内部は撮影禁止であるが、youtubeに許諾得てアップされている動画を見てほしい。日本的ではない西洋的な豪華な内部に息をのむ。明治期の西洋化を希求した偉人の功績を感じられる建築である。すでに欧州では華美な宮廷建築は忌避されており、宮廷建築の有終を極東の島国において感じさせてくれる。

 

 

 

 

オーケストラの女性指揮者がオケをまとめて最後は華々しくオケの演奏が流れるのかと思ったら、全然全く予想外の話の内容だった( ̄▽ ̄;) でも結果的にすごい興味深い作品でした。とにかく、ケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技が見事。結構難解な作品なので、覚悟して観に行くことをおすすめする。

最初っから音楽の衒学的な会話で大半の観客は置いてけぼり。主人公のリディア・ターが一般人ではない、音楽的エリートで観客とは格が違うと見せつけてくる。家も豪邸でセレブな生活。さらには同性婚をしており、養女がいるという多様性の最先端を行っている。それらは彼女の社会的成功や知性、現代社会の尊重する価値観を示す「記号」なのである。そんな成功者のリディア・ターが、自己のスキャンダルによって崩落し、精神を病んでいく様を描いている。いくら高尚な音楽の話をして、ハイクラスな生活をしていても、聖人君子などではない。権力者も、その権力に酔いしれて腐敗していく。

本作は難しくて分からないという人が多いが、主人公を男性指揮者に置き換えればたぶん話がストンと入ってくる。ザックリ言えば、権力者が楽団員をその立場を使って関係性を迫っていたが、SNSで暴露されてその座を追われるというストーリーである。ただ、これではただの「Me too運動」の映画になってしまう。そこであえて主人公をレズビアンの女性とし、不安定な精神状態も描き込み、SNSでの炎上など現代的な要素も盛り込んで、ストーリーに複雑性を持たせているのだ。

それにしても本作は細部の芸が細かい。序盤でアナグラムのシーンを描いているが、主人公の「Tár」を並び替えると「ART(芸術)」になる。おまけにこれは彼女の本名ではなく、また、彼女は郊外のごく普通の家庭で育ったが、成り上がったことが後半で明かされている。偽名を使って過去の自分と決別し、崇高な芸術を追求して社会的成功をつかんだ女性は、まさにアメリカンドリームの体現者でもあり、そんな成功者をもてはやして、成功者の横暴を抑止しない現代社会への警鐘にも思える。

また、ジュリアード音楽院で男子学生への指導のシーンだが、これも皮肉が効いている。男子学生は「自信をパンセクシャル(全性愛者)」だから、女性に子供を20人も産ませたJ.S.バッハは女性差別的で受け入れられないという。この男子学生を主人公のターは論破して(これが後々SNSで炎上するが)、男子学生は悪態をついて教室を出ていく。この論破のシーンは主人公が嫌な奴に見えるが、しかし、この男子学生の方も、全性を愛すると言っておきながら、子沢山というだけでバッハに女性差別主義者のレッテルを張るという自己矛盾を抱えている。ここらへんに「寛容のパラドックス」を感じさせる。

そして、すべてを失ったターがいきついたのは東南アジア。そこでは、なぜか紹介されたいかがわしそうなマッサージ店で彼女は思わず嘔吐するが、こうした露骨な搾取の構造は嫌悪するようで、少しは懲りたのかな?(そもそも彼女のスキャンダルが事実かは明かされていないが)。あれだけクラシックにこだわっていた主人公ターだが、ここではコスプレした若者がいる会場で「モンスターハンター」の曲の指揮をしている。これは彼女の落ちぶれぶりを示している?それでも指揮棒を振れるので彼女は満足?復活のための布石?様々な解釈ができるラストになっていた。

それにしても「Bunkamura」(渋谷のコンサートホール)とか、「抹茶」とか「大阪」とか日本語がちょいちょい出てきて嬉しかった。

 

★ 3.9 / 5.0

初日にも「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2023」行ってきたが、本日も「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2023」に行ってきた。本日が最終日である。来年はブースも増えて、もっと規模を拡大して開催してくれると嬉しいなと思う。

 

腹が減っては戦が出来ぬということでまずは腹ごしらえ。代々木上原の名店「Japanese soba noodles 蔦」。もともと巣鴨にあったが移転してきた。2016年ミシュランガイドにてラーメン店として世界初の一つ星を獲得している。それにしてもこちらの特製醤油Sobaは、セットで3000円。高いなと思ったが、食べてみて納得。これは絶品だ。フレンチなテイストが入っており、独創的だが非常に美味。

 

さて、まずは無料講演の「ロマン主義時代のフランスから見たベートーヴェン作品~古典・サロン・ヴィルトゥオジティ」を拝聴。上田泰史京都大学大学院准教授が講演者で、最後に對馬佳祐さんがヴァイオリンを実演していた。

 

 

有料公演は2つ聴いた。

 

〈歌にピアノに、音楽が孕むドラマと覇気の巨大〉

・ベートーヴェン:シェーナとアリア「ああ、不実なる人よ」 op.65 

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」

天羽明惠がソプラノ、アブデル・ラーマン・エル=バシャがピアノ、オーケストラは神奈川フィルハーモニー管弦楽団、リオ・クオクマン指揮である。ほんとエル=バシャの演奏はまるで小川のせせらぎ。

 

〈「人類はみな兄妹に…」。ベートーヴェンは熱く平和を歌う〉

・ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」

種谷典子(S)、鳥谷尚子(A)、宮里直樹(T)、 河野鉄平(Br)、東響コーラス(合唱)、 神奈川フィルハーモニー管弦楽団、 リオ・クオクマン(指揮)

やはり交響曲第9番っていいですね。パワフルさと躍動感とキレのある第九でした。

 

GWも終盤だ。明日はカフェで読書して、その後、スパでサウナでも入ってゆっくりしようと思う。

「江戸東京たてもの園」を訪問①の続き。

 

デ・ラランデ邸。 新宿区信濃町にあった西洋館。気象学者・物理学者の北尾次郎が自邸として設計したと伝わる平屋建てだったが、1910年頃にドイツ人建築家ゲオルグ・デ・ラランデにより、木造3階建へ大規模に増築され、その当時の姿を想定して復元されたそうだ。というわけで、完全なオリジナルではなく想像復元建築。ただ1910年頃にこんな西洋建築があったとは。

 

こちら1階がカフェになっているが、この天井やシャンデリアもおそらく想像での復元かな?なかなか素敵なカフェだったが、いかんせんGWで注文に長蛇の列だったので断念した。テラス席もあるが、春や秋は気持ちがいいと思う。メニューもなかなか凝っていた。

 

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入口の伝統の装飾が華麗。高度成長期とかはモダニズム建築が流行するけど、急拡大する都市にあってはこんな装飾をいちいちつけられなかったんだろうなと思う。こうした細部にこだわった建築ってほんと19世紀の残り香。

 

村上精華堂(化粧品店)。 台東区の池之端にあった小間物屋で、当時の商店に多い看板建築と呼ばれる様式。興味深いのはイオニア式オーダー風の列柱を配し、瓦葺きの和風屋根を組み合わせた外観。昭和3年の建築である。
 

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丸二商店(荒物屋)。 神田神保町にあったそうだが、ファサードを江戸小紋のパターンを用いた銅板張りで仕上げているが、次ぶりに出てきそうなほど洒落た外観だ。

 

ユニークな外観の商店などが並べられているが、なんかジブリっぽさがすごいある。ジブリスタジオからも近いので宮崎駿さんがインスピレーションを得ていた可能性もある気がする。

 

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子宝湯。銭湯ですね。足立区千住にあった宮造りの銭湯。昭和初期ぐらいまでは当時は家にお風呂はなくて、銭湯に通っていた。ちょうど特別展で「タイル展」をビジターセンターでやっていたのだが、それによると、タイルは日本では近代化の象徴でもあり、タイルは掃除もしやすいので衛生意識の高まりの中で広まったそうだ。奇しくも100年ちょっと前にスペイン風邪が流行して、現在のようなパンデミックになっていた。タイル張りのお風呂は当時としては最先端だったそうだ。

 

内部も非常に天井が高く広々とした空間になっている。現在も営業していれば、レトロなスポットで人気になりそうだ。

 

皇居正門石橋飾電燈。皇居正門石橋(二重橋の手前側)の欄干に設置されていた6基の飾電燈の一つだが、老朽化で交換されたものらしい。

 

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天明家(農家)。あれこれ華族やらモダン建築などばかりに着目したが、江戸時代の農家の建物も移築保存されている。これは、長屋門をもつ格式高い豪農の住居である。当時、身分制度があり、士農工商とはいえ、豪農は下級士族よりは裕福だったことがうかがえる。

 

犬山市の明治村も良かったが、「江戸東京たてもの園」も素晴らしい。あまり知名度がないのが残念なのと、ちょっと交通アクセスが悪いのもネックだ。ただ「二・二六事件」の舞台になった高橋是清邸や、モダニズム建築の泰斗の前川國男邸などもあり魅力は多い。建築好きにはぜひお薦めしたい施設である。

さて、せっかくのGWだし天気も良いので、前から行きたかった「江戸東京たてもの園」へ行ってきた。東京は建築がスクラップアンドビルトで建て替えられていくが、歴史的な価値ある建築は後世に伝えるべきものもある。例えば、西洋化の象徴だった鹿鳴館を維持費の観点で解体してしまったことは、建築の歴史的価値を軽視した結果である。江戸から東京の歴史的な建築を移築し保存、展示する目的で設置されたのが本博物館である。犬山市にある明治村も同様の趣旨の施設である。

 

さて、東京都小金井市にあるのであるが、初めて降り立ったかもしれない。それにしても三鷹駅からバスに乗っていったのだが、ほんと東京の郊外って落ち着いていていいですね。東京の市部って自然も多いし、ファミリー層にはいいだろうな、中央線ならアクセスも良いし、と不動産業者みたいなことも思いつつ。。

 

さて、ビジターセンターで出入口。旧皇居外苑光華殿である。近衛文麿内閣主催の「紀元二千六百年記念式典」が開催されたおりに、式典のために寝殿造の会場「光華殿」が設営されたが、それが移築されたものである。「紀元二千六百年記念式典」とは、日本神話上、神武天皇が即位してからちょうど2600年なので皇紀2600年を祝ったものである。

 

田園調布の家(大川邸)。「分離派建築会100年展」(パナソニック汐留美術館)でこの紹介があってから気になっていたが、よくやくみれた。当時、人口急増で都市は過密状態で、郊外に生活圏を求める機運が高まっており、機能的な家が模索されていた当時の建築である。緑豊かな理想の住宅地づくりを提唱して田園調布をつくったのは日本資本主義の父こと渋沢栄一子爵である。これは西洋の田園都市の発想を取り入れたもので、田園調布の放射状の都市計画はパリの凱旋門広場がモデルと言われている。この家を見ればわかるが、当時は富裕層向けではなく、中流のサラリーマン向けである(中流でも上位のアッパーミドルだろうが)。しかし、その後、どんどん東京都市圏が拡大する中で地価上昇もあって現在のような高級住宅街になった。

 

内部をみても驚かされるが非常にモダンであり、現在でもこのデザインで販売しても普通に売れるだろう。大正14年の建設であり、「大正ロマン」を感じる。

 

常盤台写真館。こちらも昭和初期竣工のようだが、あまりのモダンな外観に驚かされる。

 

照明技術も低かったので、内部は自然をふんだんに取り込んでいる。

 

前川國男邸。これも気になっていた建築。木造モダニズムの傑作である。ル・コルビュジエに師事し、アントニン・レーモンドの事務所で働いていた。東京文化会館、国立国会図書館、神奈川県立音楽堂などの公共建築を設計している。1942年に建設されたそうである。外観は日本家屋のように見える。

 

しかし、内部は吹き抜けの広い空間が出現し、ロフトも配され、大変モダンな空間になっている。内部は木造コテージのようである。

 

何よりもすごいのがこの大きな窓。外光をふんだんに取り入れて非常に明るい室内空間を実現している。

 

さて、モダニズム建築の次は高橋是清子爵邸。高橋是清は総理大臣・財務大臣・日銀総裁を歴任した大御所である。なお、若い時には留学の際に年季奉公人(要は奴隷)の契約をしてしまってアメリカでこき使われたそうだ。もともと港区赤坂七丁目にあったものが移築されているが、当時とはいえ、赤坂にこれだけ立派な日本家屋があったとは。

 

高橋是清はかなり人気も高かったようだが、「二・二六事件」で暗殺されている。ちょうどこの二階で凶弾に倒れたそうだ。

 

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伊達家の門。伊達侯爵家(旧宇和島藩伊達家)が白金三光町に建てた屋敷の表門である。東京は武家屋敷が立ち並ぶ都市だったが、関東大震災と第二次世界大戦の空襲で焼け野原になってしまった。こうした大名屋敷の門の現存は珍しい。ちなみに、東大の赤門も前田侯爵家の表門である。鳥取藩池田家の上屋敷表門も現存しているが、上野にあり、最高の格式を誇り重要文化財に指定されている。
 
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こちらは三井八郎右衛門男爵邸。財閥三井本家の和風邸宅である。三井八郎右衛門の名は、三井家総領家である北家が代々名乗ったが、本邸宅は第10代高棟が遺したものである。なお、高棟は男爵を叙爵している。なお、ジョサイヤ・コンドルに発注した洋館は「綱町三井倶楽部」として三田に現存している。こちらもみて観たい建築だが、「綱町三井倶楽部」は、三井グループの会員制倶楽部で、会員会社の管理職以上の役職者および役員OBの方と紹介者様限定しか入れないので、三井に縁もゆかりもない平民の私は入れない( ̄▽ ̄;)
 
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外観は和風であるが玄関にある電灯は非常にモダンである。
 
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和の空間であるが、豪奢なシャンデリアが廊下を照らす。和洋折衷である。

 
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襖絵などをみても、三井財閥・華族(男爵)の優雅な生活を偲ばせる。

 

写真が多いので、「江戸東京たてもの園」を訪問②へと続く・・・。