本日は仕事終わりに浜離宮朝日ホールで、ルーカス・ゲニューシャス ピアノリサイタルを拝聴。ルーカス・ゲニューシャスは、ロシア人ピアニストで、祖母は名教師ヴェーラ・ゴルノスターエワという音楽一家出身。ショパンコンクールとチャイコフスキーコンクールという二大コンクールで各第2位入賞の実力者である。
(前半)
シューベルト:
即興曲集
D935 第1番 ヘ短調
D899 第2番 変ホ長調
D899 第3番 変ト長調
D935 第4番 ヘ短調
メヌエット 嬰ハ短調 D600
(後半)
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第1番 ニ短調 op.28 《オリジナル版/日本初演》
(アンコール)
ゴトコフスキー:トリアコンタメロン、3拍子による30の雰囲気と光景 より 第11曲「懐かしいウィーン」
シューベルト(ゲニュ―シャス編):38のワルツ、レントラーとエコセーズ 作品18 より 第6曲
デシャトニコフ:ブコヴィナの歌 より 第22番
シューベルトは繊細なタッチで、どこかあえて素朴に、音を紡ぐ。派手さはなく、ペダルも控えめで、どこか古風な印象を受ける。珍しく「メヌエット 嬰ハ短調 D600」を取り上げているが、舞曲とは思えないテンポのシリアスな、どこかバッハを思わせる曲想。
一転して、後半はラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番のオリジナル版。ラフマニノフは遅れてきたロマン派ともいわれるが、本局はロマン派よりモダンな響きに驚かされる。ゲーテの「ファウスト」に着想を得たようであるが、標題は放棄されている。40分におよび長大なソナタであり、複雑さと曲の深遠さに畏怖を感じる。
ルーカス・ゲニューシャスの曲の深い理解と、その演奏の卓越性は、素人の私の理解の域を超える。ただこれだけの類まれな才能であるのに、ショパンコンクール及びチャイコフスキーコンクールで優勝しなかったというのは、その深淵で仙人のような、”近寄りがたさ”になるのだろうと想像する。コンクール優勝者が持つカリスマ性とスター性とは異なる、音楽の極致に向かう崇高な才能なのだ。
それにしてもアンコール曲が素敵だった。ゴトコフスキーの「懐かしいウィーン」は、ウィーンの華やかさと愛らしさとどこか都市の背負う歴史故か、哀愁を感じる。ラストのデシャトニコフ作曲の「ブコヴィナの歌 より 第22番」が、個人的にはヒット曲だった。ショパンの24の前奏曲を模して作曲されている。現代的だが、ブコビナ地方(北部がウクライナ、南部がルーマニアにまたがったカルパティア山脈の丘陵地帯)の民族音楽を取り入れた独特の曲想がある。知名度は低いが、素晴らしい作曲家は果てしなくいるのだと思い知らされる。









