冬シーズンに観た作品たち (6) 幻想童話 | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

韓国ミュージカル
想像と創造だらけの翻訳
(注意: 目標はネタバレ100%)
近頃はメモ付き写真アルバムとしても使用中。

환상동화
幻想童話
観覧中、ほとんど笑いの絶えない舞台だった。3人の道化たちが語る物語なのだから、笑いが起きて当然だ。笑いすぎて涙が出た。
 

【台本の登場人物設定より】

道化たち:道化たちはそれぞれ違う個性を持って、劇を進めたり劇中の人物になったりする。 舞台を作る神であると同時にこの劇の作家、演出、俳優の役目を果たす。

 

「戦争の道化」

対立と戦争を象徴する道化。シニカルでカリスマに満ちている。この世の苦痛を話したがる。 それが現実であることを知らせる。

 

「愛の道化」

悲しみと愛を象徴する道化。 愛があるからこそ世界が存在すると信じている。理不尽で駄々をこねる子どものようだ。それでも憎めないのは、それが愛の本質だから。

 

「芸術の道化」

芸術と歓喜を象徴する道化。美しさを創造することだけが世界を救う道だと信じる。優雅で熱情的だ。「戦争」と「愛」の仲裁者として最も美しいエンディングを望む。

 

舞踊家と音楽家:道化たちの物語の中の主人公である。道化が神だとすれば、彼らは人間を代表する。

 

「マリ」

踊りを愛する自由な女性。カフェで踊りながら軍隊に行った兄を待つ。彼女の踊りは多くの人々に幸せと慰めを与えたが、戦争によって闇の中に閉じこめられる。

 

「ハンス」

美しい音楽の世界で暮らしていた作曲家。しかし軍隊に徴集され戦場に送られる。音楽の世界は彼を生きさせた唯一の希望だったが、戦争で静寂の中に閉じ込められる。

 

 

【あらすじ】

道化たちが公演前にどんな話を創造するか相談している。愛、戦争、芸術が人間の最も驚くべき才能だと主張するそれぞれの道化たち。結局3つすべてが入った話を作ることに決着する。
 
いよいよ物語が始まる。登場人物はハンスとマリ。戦争を舞台に物語が進む。戦場で負傷し取り残されたハンスは敵兵のピーターに出会い奇妙な友情を築く。ピーターはとあるカフェと、そこで美しく舞う妹マリの話をする。
 
カフェのある都市にも戦火が迫る。空襲が始まりカフェの人々は防空壕に隠れることを余儀なくされる。そこで誕生日を迎えるマリ。誕生日には手紙をくれるという兄の約束を思い出し、防空壕の外に出てしまう。
 
一方戦場では夜が明けて別れの挨拶を交わすハンスとピーター。
 
マリとハンス、2人は大きな爆発に晒され、マリは視力を、ハンスは聴力を失ってしまう。
 
幕が閉まる。すると幕の中から「愛の道化」の怒った泣き声が聞こえて来る。「愛」が飛び出してくる。「戦争と芸術の話ばっかりじゃないかー!もう帰るー!」と幼児のように泣き喚くのをなだめる「戦争」と「芸術」。今度は愛の物語にすると約束する。
 
(この辺りも笑いを誘う。大人が幼児を「高い高い」するかのように「戦争」が「おうちに帰ろうね〜、こっちだよ」とか言いながら「愛」を舞台中央に戻してくる。身長差のあるグァンイル「愛」とジフ「戦争」のペアだからできるのか、ハヌル君の時もやっているのか、違う演出なのか興味がある。)
 
(ちなみに日程的にハヌル君の回は観られなかったのだが、逆に幸いだったかも。もし彼の回だったら到底チケットが買えていなかったと思う。)
 
カフェのある都市はハンスの国であるドイツに占領されてしまった。ドイツ人のハンスはピーターの手紙の住所を頼りにカフェを訪れる。芸術の溢れるカフェに行き美しく踊る女性に会えば、失った音楽を取り戻せるのではないかと思ったのだ。ピーターは頭の中で唯一聞こえる爆撃の音に苦しんでいた。
 
ハンスは倒れた自分の体に誰かが覆いかぶさっていたので爆撃の中でも生き残れたのだと聞いていたが、なぜ自分がピーターの手紙を持っているのか思い出せない。(覆いかぶさっていたのはおそらくピーターだったのであろう。)
 
暗闇に閉じ込められ、踊れなくなってしまったマリ。
 
音のないガラス瓶に閉じ込められたようなハンスは、静かに座っている女性がマリだとは気づかない。
 
何日か過ぎた頃、軍から手紙が届く。誕生日に来るはずだったピーターの手紙が遅れて届いたのだと喜ぶマリ。しかしそれはピーターの死亡通知書だった。
 
到底マリに伝えることができず手紙を押し付け合うカフェの人々。マリに読んで聞かせることになったハンスは、それがピーターの死亡通知書であること、目の前の女性がマリであることに気づく。ハンスは死亡通知書の代りに自分の持っていたピーターの手紙を読み上げる。
 
マリとハンスは親しくなり、その親しさはいつか愛に変わっていった。
 
カフェではロミオとジュリエットが演じられるなど、束の間平安を取り戻したかに見えたが、軍の統制が始まり日没後は灯りをつけることも音を立てることも禁じられてしまう。
 
マリが魔法使いにさらわれた王女の童話を出してきて、劇中劇が始まる。
 
(「芸術」が読み手になり、登場人物たちはその語りに従わなければならない。「芸術」は悪い魔術師に扮する「戦争」にめちゃくちゃな指示を出す。片足を上げてウェーブをしながら回転して呪文を言うとか、さらに寝転んでやる…とか、日によって違うらしい。
 
2回目の時は、栄養失調の魔法使いは手も上げられないほど衰弱しているので、ハンス(王女を救いに来た勇者)が持っていた桃を食べさせる。ところが魔法使いは桃アレルギーだったので、バッタのように痙攣した挙句気絶する、というような指示。もしかするとパラサイトネタ?
 
ルール通りに「戦争」はヘロヘロになりながらも指示に従うが、無茶振りに素で呆れたりして見せるので、客席は大爆笑が収まらない。)
 
物語の中で勇者に救い出された王女(マリ)は悪い魔法のせいで失明し踊れなくなっていた。
 
「芸術」は本を閉じるが、勇者がピアノを弾くと王女は踊り出した、と語り続ける。
 
ピアノの前に行くが爆撃音が聞こえてしまうハンスは演奏できない。しかし、マリを見つめながら思い切って弾き始める。王女はハンスの演奏に合わせて踊り始める。そしてマリもついに踊りを取り戻す。
 
お互いを支え合い愛し合う2人は幸せな時を過ごし、音楽と踊りで人々にも幸せを与えていたが、連合軍が都市をドイツ軍から取り戻す。ドイツ人であるハンスは逃げなければ殺されてしまうだろう。
 
ピーターを待ち続けるマリはカフェを離れられないが、ハンスに逃げてくれと頼む。別れがやってくる。幕。
 
幕の間から「戦争」が出てくる。これが冷たい現実というものだろ?と客席に問いかける。2人の辛い心情に心を痛めている観客に、なぜそんな表情なのかと言いながら、実は「戦争」も辛いらしい。
 
(切なく悲しい気分なのに「戦争」が傲慢な様子で出てくるので思わず恨みがましく睨んでいたら、その表情は何だと言われたので(私にではないけど)、他の観客たちも同じような表情なのが分かって何やら一体感を感じた。)
 
再び幕が開く。「愛」と「芸術」が語る。1人残ったマリは踊り始めた。マリにはハンスの演奏が聞こえるかのようだった。マリはハンスが恋しくてたまらない。
 
しかし「戦争」は冷たい現実を語り続ける。ハンスのピアノの代りに聞こえてくるのは爆撃の音、ハンスは行ってしまった、あるのは心臓を締め付けるような悲しみ。
 
「愛」と「芸術」はそれぞれの話を続けようと試みるが、もはや言葉を続けることができない。
 
そこにピアノの音が聞こえてくる。ハンスが戻って来て演奏しているのだ。驚く「戦争」。
 
 
(エンディングと感想は次回に。)