こちらの本を読みました。
ストーリー仕立てのまんがと、それにまつわる「働くとはどういうことか」をテーマにすえた本文とが交互にあり、小学生でも読みやすい一冊になっています。
まんがは、中学受験をして進学校に進学した主人公が、優秀な友人たちに囲まれて劣等感を感じて、中2で不登校になるところから始まります。
母の実家である広島に、父は東京で単身赴任のまま、仕事をやめた母と二人で行き、広島で祖母と叔母の4人で暮らし始めるという設定です。
本のデザインをしている叔母が働くということのやりがいを教えてくれたり、
東京で大人向けに英語講師をしていた母が今度は広島で子ども向けの英語講師として生き生きと働き始めたり、
好奇心旺盛で還暦を過ぎてもピアノを習い始める祖母がいたり、、
少々設定が出来すぎている感じはあるものの、
「働くとは、生きるとはどういうことなのか?」というテーマに対して、逃げずに向き合っている、とても分かりやすくよい本だと思います。
本文抜粋
学歴が高い方が就職試験を受けられる会社の数が増えますし、行きたい企業に入れる可能性も高くなるでしょう。中略
学校の勉強を頑張ると未来の選択肢の幅が広がるのは一つの事実で、学歴は就職するときに有効な一種の資格のようなものです。
しかし、当たり前のことですが、学歴がいちばん大事なものではありません。中略
自分のやりたい仕事を見つけ、充実した毎日を送っているかどうかは学歴によりません。
いちばん大切なのは自分が何をやりたいか、ちゃんと考えて生きているかどうかなのです。
反対にいちばん良くないのは、学校の成績を上げることだけに一生懸命になり、自分の夢や、やりたい仕事について考えないこといます。勉強さえしていれば、自分に適した仕事を誰かが与えてくれるわけではありません。
抜粋終わり
この内容こそ、まさにこれまで私が感じてきたことのすべてです。
学歴はあくまでも、自分のやりたいことをやるための手段に過ぎないのに、それが目的になってしまう人がいかに多いか。
でもそれって、子どもだけではなく多くの大人もそうだと思うのです。
戦後75年。
自分の夢をもつことを許される時代になってからまだ何十年もたっていないわけで、無理もないことだと思うのです。
長らく、与えられた仕事を機械的に処理することが是とされていた時代だったわけですから。
そういう意味で、子どもにモデルを示せない大人も多いのです。
幸せになる最善最短の答えを与えられていた時代から、一人ひとりが考えなければならない時代に変わっているので、今は大人も子どもも、みんな混乱している時代といえるでしょうね。
昔、サラリーマンだった私の父は、
「男は会社に行くと7人の敵がいる」と話していたものでした。
金曜日の夜は機嫌がよく、日曜日の夜は機嫌が悪くなる。
神経質な父にとって仕事とは、苦痛以外の何ものでも無かったようです。
そんな父をずっと見てきた私は、
「働いてお金を稼ぐことは、辛くて苦しいことなんだ。大人になるってイヤだな」と、子供心に思っていました。
でも社会人になり、仕事そのものが辛いわけではなく、自分に合わない仕事をするから辛い、ということに気づいたのでした。
それと同時に、私が父の姿をみて、働くことに対してどこかネガティブな気持ちをもってしまっていたことからも、親の言動ひとつが子どもにとてつもない影響を与えるのだなとしみじみと感じたんですよね。
こうした本に、もし子どものころに出会えていたら、やっぱり人生は違うものになったのかなと思います。
子どもたちにもいつか手にとって読んでもらえるよう、ずっと本棚に入れておきたいと思います。