鉄道会社がダイヤ改正を行う理由ーそれは、より利用者を増やすために増発やスピードアップを行うこと、乗り換えが必要だったところを乗り換えなしにするなどの利便性向上を図るため。もしくは、過剰となっている輸送力を減らし、需要に見合った運行本数に見直すーそうした目的があります。
ダイヤ改正を行う場合、鉄道事業者はプレスリリースとしてその概要について公表し、そのプレスリリース資料は各社ホームページで公開されて周知が図られます。
当局も様々な鉄道事業者のプレスリリース資料を読み込み、ダイヤをどのようにしていくのか研究を行っていますが、その中でIRいしかわ鉄道さんのダイヤ改正の周知の仕方が、とても利用者目線で良いものとなっています。
今回は、IRいしかわ鉄道さんの周知の仕方の良い点をみつつ、利用者に伝わる、利用者がより鉄道を利用しようと考えるPRの在り方について考察したいと思います。なお、記事中の図は、IRいしかわ鉄道プレスリリースより引用しています。
その前に、IRいしかわ鉄道の2026年3月ダイヤ改正の内容について考察した記事がありますので、下記リンクからご覧くださいね![]()
1.ダイヤ改正プレスリリースの良い点
(1)改正前後でどのようにダイヤが変わるのか、具体的に示している
一つ目は、ダイヤ改正を行うことでどのように変わるのかが明確である、という点です。例えば、次のような説明のみがなされていた場合、皆様はどのように感じられるでしょうか?
「通勤通学客の利便性を向上するため、金沢駅19時台において大聖寺行き快速列車を1本増発します。これにより、快速列車の運行本数は2本から3本となります。また、これに伴い、19時台の金沢発美川行きの普通列車1本の運行をとりやめます」
いかがでしょうか。金沢駅19時台に1本快速が増える、ということは分かりますが、その快速列車は19:00ちょうどに発車するのか、19:30くらいに発車するのか、もしくは20時に限りなく近い19:57発くらいなのか…この表現だけでは分かりません。また、減便となる列車の詳細についても、この表現だけではよく分かりません。
さらに、列車が増発される場合は、他の列車も運転間隔の調整や追い越しの関係で発車時刻や行先が変わることもあるため、全体的にどのように変わるのかが全く分かりません。
当局のように、あちこちの路線のダイヤ改正を研究しているのならともかく、利用者にとっては「普段利用している時間帯の電車のダイヤがどうなるのか」ーもっと言えば、「いつも乗っているあの電車のダイヤが変わるのか変わらないのか」ということが、一番気になる、知りたい情報になるかと思います。
それでは、下記のような図が一緒に掲載されていればいかがでしょうか。
<改正前(現行)>
<改正後>
IRいしかわ鉄道さんのプレスリリースでは、増発される快速列車だけでなく、その前後の列車も含めて、改正前後でどのように変わるのかを図で明示しています。
例えば、小松から金沢に通勤している人で、毎日金沢19:00発の普通小松行きに乗って帰っているという人であれば、この図を見て、
・ダイヤ改正後も今まで通り19:00発の普通があるから、これからもこの電車に乗ろう
・ん、19:15発の快速ができるのかー。いつも急いで19:00発の電車乗っているから、これからはゆっくり駅に向かって、19:15発の快速に乗るのでもいいな
などと、具体的にどう電車を利用するか、想像することができます。利用者に鉄道をどのように使おうかイメージさせるというのは、利用促進を図るうえで大事なことの1つだと思います。
(2)現行ダイヤの課題・対策・期待できる効果を明確にしている
2つ目は、現行ダイヤの課題・対策・期待できる効果をセットで明示していることです。例えば、次の説明を見た場合、どう感じられるでしょうか?
「通学利用者の利便性向上のため、15~16時台に金沢~大聖寺間で普通列車を1往復増発します」
これだけでも言わんとしたいことは何となく想像はできますが、「今のダイヤの不便なところがどう解消されるの?」「具体的に何時に列車が新設されるの?」というところは疑問のままになってしまうでしょう。
では、次の図があればどうでしょうか。
この図には、増発列車の時刻だけでなく、前後の列車の運転間隔がどのように変わるのかも明示されています。これにより、
課題:通学客の利用が多くなる15~16時台の運行本数が少ない
対策:1往復列車を増発する
効果:運転間隔が56分空いていたところが、30分前後になってより便利になる
ことが端的に読み取ることができ、利用者に利便性が向上することがより伝わる内容になっています。
(3)効果的な図の配置
これは(1)(2)にもいえることですが、図を効果的に配置することで、読み手(利用者)がイメージしやすい資料となっています。例えば、下図のようなものです。
この図は、2026年3月ダイヤ改正で設定される、富山発福井行き直通列車について補足しているものです。この福井行きは金沢で16分停車するのですが、同じホームの向かい側から先に発車する快速大聖寺行きに乗り継ぐことができることを示しています。
ただ、文章にして説明するよりも、上図のほうがはるかに分かりやすい、そう感じた方は多いのではないでしょうか。パッと見て、実際に鉄道を利用するシーンを想像できるよう、うまく作られていると感じます。
2.まとめ
いかがでしたでしょうか。ダイヤ改正の内容をうまくPRし、利用者により鉄道を利用してもらうためには
①改正前(現行ダイヤ)と改正後で、時刻がどのように変わるのかを具体的に明示する
②改正を行うことで、現行ダイヤと比べてどのような点が便利になるのかを明確にする
③文章だけでなく、図や時刻表なども掲載して、イメージしやすくする
こうしたところを押さえることが重要ではないでしょうか。当局もダイヤ改正の解説記事を書く上で、改正前後で具体的にどのように変わるのか、どう便利になるのか、どういった課題の解消が期待できるかーそういったことが明確に分かるようにすることを心掛けているつもりなので、半分自戒を込めて書いてみました。
とはいえ、あまり具体的に示しすぎてしまうと、運行範囲が広い路線であれば資料は膨大になり、かえって見づらくなってしまいます。また、沿線自治体から意見が申し入れが入り、本来予定していた改正がうまく行えなくなる、だからあえて具体的に明示しないようにしているーそうした事情もあると思います。特に、運行が広範囲にわたる路線を多く抱えるJRにとっては、悩ましい問題でしょう。
また、IRいしかわ鉄道は、令和6年の全線開業以来、積極的な増発を行い、利用促進を図っています。ここ3年間はプラスな内容の改正が続いており、アピールしやすい環境にあったともいえます。増発による利用促進策が一段落したり、減便をせざるを得ない状況に陥った際に、どのような表現で周知をするのかーそういったときこそ、広報の腕の見せ所となるでしょう。今後、どのようなPRで利用促進を図っていくのか、注目です。




















