西日本鉄道は4月11日、4月・5月に臨時有料座席列車「Nライナー」を運行することを明らかにしました。今回はこれについて分析します。
1.概要
臨時有料座席列車「Nライナー」の概要は以下の通りです。
設定日 :4月19日(金)・5月7日(火)・5月17日(金)・5月21日(火)の合計4日間
設定本数:西鉄福岡発大牟田行き1本、西鉄福岡発花畑行き2本(詳細時刻は後述)
停車駅 :西鉄福岡~西鉄二日市間はノンストップ、西鉄二日市~大牟田間は急行停車駅に停車
利用条件:乗車整理券300円が別途必要となります。乗車整理券は運行日当日に西鉄福岡駅で販売されます。電話やインターネット予約はできません。
座席定員制で、座席の指定はありませんが、指定された号車の空いている席を利用できます。定員数に達し次第、受付は終了となります。また、乗車できるのは西鉄福岡駅のみ、西鉄二日市~大牟田間は降車のみで乗車はできません。
2.Nライナーの設定を分析する!
Nライナー運転日の時刻表は以下の通りです。
Nライナー(黄色部分)は、西鉄福岡21:11発の大牟田行き、22:11発、22:36発の花畑行きの3本が設定されます。西鉄福岡~西鉄二日市間はノンストップで走りますが、既存の列車の合間をぬって走っていることもあり、所要時間は急行とほぼ同じです。
時刻表を見ると、3本とも定期急行列車の前後を走っていることが分かります。これは、他の列車のダイヤを変えずにNライナーを走らせるためです。
元々急行・特急の待避や運転間隔調整のために、普通列車が大橋・西鉄二日市・西鉄小郡などで長時間停車することがあるのですが、Nライナーと急行を連続して走らせることで、普通列車が長時間停車しているタイミングでNライナーが普通を追い抜くという設定になっています(図の赤・青囲みの部分)。
なおNライナーは、西鉄二日市・西鉄小郡で普通列車に乗り換えが可能なため、西鉄二日市より先の急行通過駅利用者にとっても使える列車となっています(図の赤囲みの部分)。
3.設定日について
設定日は前述の通り、4・5月の火曜・金曜に2日ずつとなりました。金曜日は休前日ということもあり、飲み会等で夜遅くに帰宅する需要が増えると思いますが、私が調べた限り、運転日の5月7日(火)・21日(火)に福岡市内で多人数のイベントが行われる予定はありません。なぜ、夜間移動需要がそこまで増えなさそうな火曜日にもライナーを設定したのでしょうか。
今回の臨時列車「Nライナー」は、今後臨時列車を導入するかのいわば”観測気球”です。そこで、休前日の平日と週の真ん中にある平日ーいわゆる”ド平日”ーの双方に設定し、利用動向のデータをとったうえで、有料列車を平日は毎日運転とするのか、休前日のみ運転するのか、それとも導入を見送るのかを検討する狙いがあるとみられます。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。2018年12月10日の共同通信が行ったインタビューでは、西鉄の社長が「2019~2021年度に有料座席列車の運転を始めたい」と明言しています。また、西鉄は2019年に発表した第15次中期経営計画において、有料座席制度の導入を明文化しています。
https://www.shikoku-np.co.jp/national/life_topic/20181210000544
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/news/news20190221103045/main/0/link/18_169.pdf
その直後に新型コロナウイルスが猛威をふるい、利用者が激減してしまったため、有料座席列車の導入が見送られたと思われますが、新型コロナウイルスも5類になり、移動需要も回復傾向にあることから、改めて有料座席列車の導入に向けて動き出すこととなり、その試金石として今回臨時列車を走らせる、とみてよいでしょう。
今回の臨時列車Nライナーがどのように利用されるのか、そしてその結果を受けてどのように有料列車を導入するのか、今後の展開に注目です。