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 今回はJR京浜東北線のダイヤについてのお話です。京浜東北線は、さいたま市にある大宮駅から神奈川県横浜市の横浜駅までを結んでいます。横浜~磯子~大船を結ぶJR根岸線と一体的なダイヤになっており、実際は大宮~大船間をさして「京浜東北・根岸線」と案内されていることが多いです。

 そんな京浜東北線は、並走する東北本線・東海道本線が通過する駅に停車するほか、東京都心を南北に貫き、埼玉と神奈川を一本で結んでいる数少ない路線としての役割もあります。

 

〇京浜東北線の運行形態

 京浜東北線では、「各駅停車」「快速」の2種類の列車が走っています。「快速」といっても、快速運転を行うのは東京都心部の浜松町~田端間のみで、通過駅は新橋・有楽町・御徒町(平日のみ)・鶯谷・日暮里・西日暮里となっています。そのほかの区間は(根岸線部分も含めて)各駅に停車します。

 それで、この京浜東北線のダイヤなのですが、なんとも二重人格なのです。というのも、

 

(1)早朝・朝夕ラッシュ時・夜間は「各駅停車」のみ運行する。

(2)日中(東京駅基準で10時半~15時半ごろ)は「快速」のみ運行され、各駅停車は一切運行されない


という、とても変わったダイヤなのです!!

快速運転中の通過駅の様子はどうなっているのか、実際に、日中時間帯の有楽町駅に行ってみました!!

 

 駅の案内板には次駅の列車案内はなく、「快速運転中 通過」とだけ記されています。駅時刻表を見ると、11~14時台は真っ白…

 列車がやってきても…

 待っても待っても、ひたすら列車は駅を通過していきます。10時半ごろになると、ずっと快速列車のターンに入り、約5時間もの間、一切京浜東北線の列車は停車しません。

 ここまで読んだ方で、関東在住以外の方は「全部快速にされたら、通過駅に行きたい人はどうすりゃいいんだよ?」と思った方もいるかもしれません。しかし、快速運転を行っている区間は、山手線が並走しているため、通過駅に行きたい場合は山手線に乗れば問題ありません。駅や車内アナウンスでも、「通過駅へ行く人は山手線をご利用ください」との案内が繰り返しなされています。

 

〇快速運転の背景

 ではなぜ、京浜東北線は日中の全列車を快速にしているのでしょうか。理由は、日中は朝夕に比べて利用者が少ないことにあります。そのため、京浜東北線は都心部では主要駅のみに停車し、通過駅は山手線が担うという役割分担をしているのです。

 快速運転が始まったのは、JR化した直後の1988年のことでした。当時は湘南新宿ラインも上野東京ラインもないどころか、2000年代に入るまで、埼玉と神奈川を一本で結ぶ路線は京浜東北線しかありませんでした。そのため京浜東北線は、東京都心部を南北に通り抜ける(例:川口~川崎、上野~横浜など)需要を担う存在でもあり、その需要に応えるために、快速が設定されたと考えられます。当初の通過駅は浜松町・新橋・有楽町・神田・御徒町・鶯谷・日暮里・西日暮里と、8駅も通過していました。

(そのあと、2002年に浜松町駅が停車駅に追加)

 

 2001年に新宿経由で横浜方面と大宮方面を直結する湘南新宿ラインが開業し、2004年には湘南新宿ラインが大増発。大宮方面~横浜方面の移動は湘南新宿ラインが主力となりました。

 京浜東北線にとって一番の転機となったのは、2015年の上野東京ラインの開業でしょう。これにより東北本線・高崎線と東海道本線が直結し、直通運転が開始されたことで、埼玉~神奈川の移動は完全に上野東京ラインと湘南新宿ラインが担うことになりました。

 そうした事情と、上野~東京間の工事の見返りというところもあり、快速は神田に停車、土休日は御徒町にも停車するようになり、今に至ります。上野東京ライン開業以来、京浜東北線は都心部を南北に通り抜ける需要を担うという役割は薄れたのです。

 

〇快速は廃止にならない?

 上野東京ラインの開業により、京浜東北線の快速運転は廃止になるのではないかと言われたこともありましたが、実際には廃止になりませんでした。その理由としては、通過駅需要は山手線だけで足りるというところと、日中は快速運転を実施することで、運行に必要な車両と人員を少なくしたいという狙いがあるとみられます。

 

〇まとめ

 いかがでしたでしょうか。かつてより停車駅が増えましたが、それでも山手線と比べると浜松町~田端間で6~7分速いので、都心部を速く移動するには重宝します。

 東海道本線や東北本線(俗にいう上野東京ライン)は速いものの、停車駅がかなり絞られています。京浜東北線は、上野東京ラインが停車しない駅もカバーしながら、ささやかに速達運転も行っており、かゆいところに手が届く存在という見方もできます。

 こうしてみると、かつてより都心通り抜けの役割は薄まりましたが、京浜東北線には京浜東北線の役割があり、その役割を粛々と果たしていくこととなるのではないでしょうか。