JR東日本とJR北海道は7日、会員制予約サイト「えきねっと」限定で発売している商品の発売・見直し等について公表しました。今回はこれについて考察します。

 

「えきねっと」で発売するWEB限定割引商品の発売・見直し等について

 

1.トクだ値28の発売

 新幹線や特急列車が半額となる「トクだ値スペシャル28」が発売されます。利用できる期間は10月14~27日の平日及び12月7日~17日の平日乗車分に限ります。また、28日前までに予約が必要です。平日に旅行や出張などで関東~信越・東北方面を行き来する人は使わない手はないでしょう。

 

2.JRE POINT優遇

 9月25日~10月9日及び1月18~31日乗車分において、JRE POINTから新幹線eチケットへ交換するためのレートが通常の35%オフとなります。例えば、東京~仙台で「はやぶさ」普通車指定席を利用する場合、通常価格11,430円のところを、JRE POINT6,000ポイントでeチケットに引き換えて利用することができます。JRE POINTを多く保有しており、平日にJR東日本の新幹線を利用する人にとってはとてもおトクです。

 

3.チケットレス特急券サービスの拡大

 新潟と上越妙高を結ぶ特急「しらゆき」、新潟と酒田・秋田を結ぶ特急「いなほ」で、11月1日から新たに「チケットレス特急券」サービスが開始されます。特急料金が25%引きとなる「トク割」商品や、JRE POINT特典も同時に設定されます。

 

4.えきねっと限定商品の廃止・縮小

(1)トクだ値14、トクだ値1の廃止

 JR東日本の全新幹線に設定されている「新幹線eチケット(トクだ値14)」が9月16日に、「新幹線eチケット(トクだ値1)」が9月29日をもって発売終了となります。これにより、JR東日本の新幹線において、通年販売されるおトクな切符は全て廃止されることとなります。

 また、特急「いなほ」に設定されている「特急トクだ値14」、特急「いなほ」「しらゆき」「日光」「きぬがわ」等に設定されている「特急トクだ値1」が廃止となります。「いなほ」の「特急トクだ値14」及び特急「しらゆき」の「特急トクだ値1」は、廃止以降はチケットレス特急券の特割商品が後継となりますが、割引率は30%から25%となるため、実質的には割引率の縮小と言えます。「日光」「きぬがわ」等については、通年販売のおトクな切符が廃止されることとなります。

 

(2)在来線チケットレス特急券のトク割廃止

 「あずさ」「かいじ」「ひたち」「ときわ」「成田エクスプレス」「踊り子」「草津・四万」「鎌倉」に設定されている、在来線チケットレス特急券のトク割が廃止されます。「日光」「きぬがわ」等と同様、今後お得な切符は特定の平日のみ発売されることとなります。

 

(3)在来線チケットレス特急券 割引廃止

 在来線のチケットレス特急券をえきねっとで購入した場合、利用日に関わらず通常より100円引き(小人50円引き)となっていましたが、10月1日以降に操作するものからはこの割引がなくなります。

 

(4)在来線チケットレス特急券(トク割)割引率縮小

 特急「つがる」「スーパーつがる」 のチケットレス特急券(トク割)の割引率が、10月1日乗車分から35%から25%に縮小されます。

 

〇狙い

 JR東日本・JR北海道の狙いは、大きく分けて4つあるとみています。

 

①閑散期の稼働率を上げたい

 利用者が多くなるのは、GW・お盆・年末年始や3連休時期となります。逆に連休直前直後や観光のオフシーズンの平日は利用が伸び悩みます。そこで、閑散期は大幅な値下げをしてでも、稼働率を上げたいという狙いがあるとみられます。逆に言えば、行楽利用が多くなる土休日や、平日でも連休近くや学校が長期休業になっている時期は利用が見込めるため、割引はしない、したくないという意思も感じます。

 

②年間の需要の波を小さくしたい

 ①と関連する内容になりますが、閑散期に使える期間限定のお得な切符を発売し、繁忙期から閑散期の利用へのシフトを促すことで、年間の需要の波を小さくしたいという狙いもあるとみられます。年間の需要の波ー特にハイシーズンの混雑のピークを下げることができれば、それだけ保有する車両や人員を少なくすることができるため、経費削減に繋がります。鉄道事業者側はそこまで考えているとみられます。

 

③JR東日本のサービスユーザーをより優遇したい

 期間限定でJRE POINTから新幹線eチケットへの交換レートを下げる取り組みが行われます。JRE POINTを貯めるには、JR東日本の鉄道路線を利用する、ルミネなどJR東日本の関連施設でモノやサービスを購入する必要があるため、必然的にJR東日本関連のモノやサービスを多く購入している人ほど恩恵を受けることとなります。より多くの利用者をJR東日本の経済圏に取り入れることも狙いとしてあるとみられます。

 

④首都圏の特急列車で増収を図りたい

 在来線のチケットレス特急券(トク割)の廃止と、チケットレス特急券100円引きの廃止は、主に首都圏を発着する特急列車が対象となっています。首都圏を発着する特急は、他の地域より割安な特急料金体系が採用されているたこと、一定の利用があることから、それ以上の割引はせずに増収を図りたい意図があるとみられます。

 

〇まとめと考察

 いかがでしたでしょうか。お得な商品については、紙のきっぷを廃止してネット予約限定商品へ移行する動きが進められてきましたが、ついにネット予約限定商品においてもお得な切符の通年販売が廃止されることになりました。大きな動きとしては、お得な切符を常時発売することから、閑散期のみに割引率の高いお得な切符を出す方向にかじを切ったといえます。

 元々平日が休みの人や、曜日に関係なく動ける人にとってはとてもお得になりますが、そうでない人にとっては大幅なサービス縮小に感じられる内容だと思います。それだけ、JR東日本を取り巻く環境が厳しいということなのかもしれません。

 今後のえ「えきねっと」商品のゆくえはどうなるのかーそこには従前からの料金制度、きっぷの制度の変革も関わる問題にもなってきます。今後の展開に注目です。

 JR東海・JR西日本・JR九州は6日、「EXサービス」の機能強化や「e5489」との連携強化を図ることを公表しました。今回はこれについて、新たな割引商品「EX U22割」と学割のゆくえを中心に考察します。

 

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1.EXサービスとe5489の連携強化(10月20日~)

 「EXサービス」は、東海道・山陽・九州新幹線のネット予約&チケットレス乗車サービスの総称であり、年会費がかかる「エクスプレス予約」と年会費無料の「スマートEX」から成り立っています。

 

 

 「e5489」は、JR西日本が運営する新幹線や特急列車の予約ができる会員制予約サイトです。EXサービスとe5489は互いに独立したシステムであるため、これまではそれぞれにアカウントを作り、それぞれにログインして予約して…という手続きを踏む必要があり、利用者にとっては手間となっています。

 今後は、EXサービスとe5489の連携が図られ、それぞれのサービスで予約した内容を一覧にしてみることができるようになったり、一方の会員となっている人がもう一方のサイトに会員登録する際の手続きが簡略化されます。

 

2.EXご利用票の電子化(9月15日~)

 現在は、EXーICで新幹線の改札を通過した際に紙のご利用票(座席のご案内)が出る仕組みとなっていますが、これが電子化され、乗車日当日にEXアプリに通知が届く仕組みに変更されます。これに伴い、紙のご利用票は2027年2月で終了となります。

 

3.マイナンバーカードを活用した割引商品の設定(10月1日~) 

 ①「身体障がい者・知的障がい者割引」②「EX U22割(乗車日当日時点で18歳以上22歳以下対象)」③「EX 65+割(乗車日当日時点で65歳以上対象)」が新たに設定されます。利用の際はマイナンバーカードの情報が利用されます。

 いずれの割引制度も、東海道・山陽・九州新幹線に100km以上乗車することが条件となっています。運賃と特急料金が一体となった割引商品として発売されます。

 

4.どうなる学割

 ここで気になるのが、「EX U22割」の存在です。「EX U22割」は18歳以上22歳以下の利用者を対象としており、これは大学生の利用を想定しているとみられます。プレスに掲載されている東京~新大阪間、新大阪~熊本間の発売額をみると、運賃部分を2割引きした額となっています。

 ここまで書けば、勘のいい方はピンときたかもしれません。100km以上利用した場合に運賃が2割引きになる制度ー学生割引乗車券(以下、学割)と全く同じなのです。

 学生割引乗車券は、指定された中学・高校・大学等に在籍する学生が、学校から学割証を発行してもらうことで購入できます。年齢による制限ではなく、学校に在籍しているかどうかで購入できるかどうかが決まります。

 一方、「EX U22割」は年齢により利用可否が決まるので、例えば一浪している大学4年生や、長年大学に在籍している方などは使うことができません。その点が学割との大きな違いです。

 また、学生割引乗車券は、JR線(在来線も含む)に100km以上乗車する場合に運賃が2割引となりますが、「EX U22割」は東海道・山陽・九州新幹線に100km以上乗車する場合しか使えません。そのため、学生割引乗車券を買うほうがお得なケースもあります。

 

(例1)千葉駅~(JR総武線)~東京駅~(東海道新幹線)~小田原

 千葉~小田原間は100km以上あるため、学生割引乗車券を購入すれば運賃は2割引となります。しかし、東京~小田原間は100km未満であるため、「EX U22割」は使用することができず、通常運賃が必要となります。

 

(例2)名古屋駅~(東海道新幹線)~東京駅~(東北新幹線)~新青森駅

 学生割引乗車券の場合、名古屋~新青森間の運賃が2割引となります。しかし、「EX U22割」を利用した場合、東海道新幹線部分の名古屋~東京間しか割引にならないうえ、東京~新青森間は別途乗車券・特急券が必要となります。

 

4.終わりに

 「EX U22割」「EX 65+割」の利用期間は、2026年10月1日~2027年3月31日までとなっています。恐らく、この半年間の利用状況を見て、今後の対応を決めるのだと思います。

 懸念されるのは、学生割引乗車券が廃止され、会員制予約サイトで若年層向けの割引商品の発売へ移行することです。学生割引乗車券は、片道100km以上乗車で2割引という、制約が比較的緩く割引率も大きくなっているため、帰省や実習などで遠方へ向かう必要のある学生にも重宝しています。

 しかし、学割によく似たU22割を発売したところをみると、学割という制度自体を廃止はしないでも、縮小してネット予約へ移行させたいという意図は持っているとみられます。ネット予約へ移行していくこと自体は否定しませんが、お金のない学生が鉄道を利用するハードルが上がることを懸念しています。 今後のEX U22割と学割の動向にも注目です。

 

 

 西武鉄道は5日、西武鉄道の有料列車を新車両「トキイロ」に統一し、有料着席サービスを刷新することを公表しました。今回はこれについて考察します。

 

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2027年春「トキイロエクスプレス」運行開始!~新たに田無駅・新所沢駅に停車します~ :西武鉄道Webサイト

 

<参考>

 

1.概要

 西武新宿線では、西武新宿~本川越間を走る有料特急列車「小江戸」号と、拝島線と直通して西武新宿~拝島間を走行する「拝島ライナー」の2種類の有料列車が運行されています。

 このうち、特急「小江戸」号については、2027年春に全列車がライナー列車「トキイロエクスプレス」に置き換わることが公表されました。また、「拝島ライナー」については、2028年春からは「トキイロライナー」として運行されます。

 「トキイロエクスプレス」「トキイロライナー」いずれも、新型車両トキイロ車両を用いて運行され、西武新宿線の有料列車は「トキイロ」に統一されます。

 

2.運行形態について ~特急「小江戸」より停車駅は増える!~

 西武新宿線を運行する「トキイロエクスプレス」については、現行の特急「小江戸」停車駅(高田馬場・東村山・所沢・狭山市)に加え、新たに田無と新所沢の2駅に停車することとなりました。

 田無駅については、昨年から特急「小江戸」の一部列車を停車させる試みを行っていましたが、一定の利用があったのか、停車駅に加わりました。やはり田無駅の臨時停車は、ライナー導入を控えての実証実験だったといえます。

 

 

 田無駅に停車することで、西武新宿~拝島線方面の往来でも「トキイロエクスプレス」を活用することができるため、その点も狙いにあるとみられます。

 新所沢駅は、近隣に新宿線の車両基地(南入曽車両基地)があり、運行拠点の一つとなっています。また、列車の追い抜きができる構造となっているため、トキイロエクスプレスと一般列車を乗り継ぐことができるようにするために停車駅に加えた可能性があります。

 一方、拝島ライナーから名称変更される「トキイロライナー」については、停車駅は現行の拝島ライナーと同じです(高田馬場・小平~拝島間の各駅)。

 両者共通の途中停車駅は高田馬場のみで、新宿線内では「トキイロエクスプレス」は田無駅、「トキイロライナー」は小平駅に停車することとなります。あえて停車駅を分けることで、より広く需要にこたえる狙いがあるとみられます。

 

3.まとめ

 いかがでしたでしょうか。特急「小江戸」がライナー化されるのにあわせ、現行の「拝島ライナー」も含めて有料列車はライナーに統一されることとなりました。使用車両も新型車両で統一されるので、これまでよりも柔軟で効率的な車両運用やダイヤ作成ができることも期待されます。

 詳細なダイヤや料金については、今後発表される予定です。その際はまた考察記事を出せればと思います。

 

4.おまけ ~通勤急行と快速急行は存続の危機!?~

 今回の「トキイロエクスプレス」導入により、存続するかどうかという列車があります。それが「通勤急行」と「快速急行」です。

 

(1)通勤急行

 通勤急行は、平日朝に本川越→西武新宿で1本だけ設定されている列車です。急行が全線の半分以上の区間(田無~本川越間)で各駅に停車するのに対し、通勤急行は全区間で急行運転を行っているのが特徴です。

 停車駅は、狭山市・新所沢・所沢・東村山・田無・上石神井・鷺ノ宮・高田馬場です。「トキイロエクスプレス」との停車駅の差は2駅で、通勤急行は上石神井・鷺ノ宮には停車するのが特徴です。

 通勤急行は、川越や狭山・所沢から新宿への速達列車としての一面があること、現状1本しか設定されていないことを考えると、「トキイロエクスプレス」へ置き換えられる可能性は十分考えられます。

 

(2)快速急行

 快速急行は、土休日の9時台に西武新宿→本川越で1本設定されており、新宿から川越への観光需要にこたえる形で設定されています。停車駅は高田馬場・田無・東村山・新所沢と新所沢~本川越間の各駅です。

 新宿から川越への速達列車となっていますが、西武新宿~新所沢間は「トキイロエクスプレス」と同じ停車駅であること、現状1本しか設定がないこと、観光用特急車両が新たにデビューする予定であることを踏まえると、ライナーや観光特急に置き換えられる可能性は十分考えられます。

 

 2027年もしくは2028年に、西武新宿線のダイヤが大きく変わると予想されます。ライナーの運行体系だけでなく、ダイヤ全体がどのように変化するのか、注目です。

 

 

 

 

 大阪と京都を結ぶ京阪電車のレア列車を取り上げるシリーズ、ラストの第4回は「区間急行」編です。

 

京阪レア列車シリーズ

 

 

0.京阪本線について

 京阪本線は、大阪市の淀屋橋駅と京都市の三条駅を結ぶ路線です。三条駅~出町柳駅間は鴨東線(おうとうせん)がそのまま伸び、本線と一体的なダイヤが組まれています。

 淀屋橋駅・北浜駅・天満橋駅・京橋駅が大阪市内のメイン駅で、七条駅・祇園四条駅・三条駅・出町柳駅が京都市内のメインとなっています。種別・停車駅については下図をご覧ください(京阪電鉄ホームページから引用)。左側が大阪側、右側が京都側です。

 

 

 

1.区間急行について

 区間急行は、日中時間帯以外の早朝・朝時間帯・夕夜間・深夜帯に運行されています。各駅停車の次に遅い種別で、複々線区間のうち守口市~京橋間のみ急行運転を行うという列車です。複々線区間のうち、萱島~守口市間は緩行線、守口市~天満橋間は急行線を走行します。大半が萱島~淀屋橋もしくは萱島~中之島間で運行されているため、京阪電車を普段利用されている方でもなじみがあまりないという方もいらっしゃるかもしれません。

 

2.区間急行の役割

(1)準急通過駅の利便性確保

 区間急行の役割の一つが、準急通過駅のカバーです。大阪モノレールとの乗換駅である門真市駅などへアクセスするには便利の良い列車です。また、西三荘駅付近にパナソニックや関連企業の事業所も立地しており、パナソニック関連の通勤客の利用も一定数みられます。

 

(2)朝ラッシュ時の守口市駅利用者のフォロー

 平日の朝ラッシュのピーク時間帯は、快速急行が「通勤快急」に、準急が「通勤準急」に差し替えられ、守口市を通過してしまいます。そのため、同時間帯に守口市から大阪方面へ向かう優等列車は区間急行のみとなります。

 守口市から大阪方面への通勤通学客にとっては、区間急行は貴重な存在なのです。

 

(3)寝屋川車庫への入出庫

 もう一つの隠れた役割として、寝屋川車庫への入出庫があります。

 

 

 天満橋~萱島間は複々線となっており、緩行線は萱島駅の先でそのまま寝屋川車庫へ繋がっています。そのため、寝屋川車庫から大阪方面(淀屋橋や中之島)へ車両を送り込む場合、または淀屋橋や中之島から寝屋川車庫へ車両を戻す場合、淀屋橋・中之島~萱島間を区間急行として走り、乗客も捌きつつ入出庫させるという運用もみられます。各駅停車と比べて、区間急行のほうが大阪側へより早く車両を送り込むことができるため、車両運用を効率的にするのに一役買っています。

 

3.終わりに・おまけ

 いかがでしたでしょうか。準急通過駅の需要を拾ったり、朝ラッシュ時に守口市から大阪方面への唯一の優等列車としての役割を担ったり、入出庫ついでに運用されたりなど、区間急行は実は便利屋さんであることがうかがえます。

 とはいえ、本数は決して多くはなく、2025年のダイヤ改正で一部は4両ワンマン運転となるなど、少し寂しい一面も持ち合わせています。区間急行の今後に注目です。

 私は京阪沿線にかつて住んでいましたが、区間急行は見かけることもあまりなく、なじみのない列車でした。他の種別は乗車経験がある中で、区間急行だけ乗ったことがなく、昨年初めて乗車しました。

 急行運転を行うのはわずかに5分程度で、後の区間は各駅停車となるわけですが、急行運転を行う守口市~京橋間では最高時速110km/hでかっ飛ばします。そうしたギャップも面白いなぁと思います。

 

 

 大阪と京都を結ぶ京阪電車のレア列車を取り上げるシリーズ、第3回は「通勤快急」「通勤準急」編です。

 

京阪レア列車シリーズ

 

 

0.京阪本線について

 京阪本線は、大阪市の淀屋橋駅と京都市の三条駅を結ぶ路線です。三条駅~出町柳駅間は鴨東線(おうとうせん)がそのまま伸び、本線と一体的なダイヤが組まれています。

 淀屋橋駅・北浜駅・天満橋駅・京橋駅が大阪市内のメイン駅で、七条駅・祇園四条駅・三条駅・出町柳駅が京都市内のメインとなっています。種別・停車駅については下図をご覧ください(京阪電鉄ホームページから引用)。左側が大阪側、右側が京都側です。

 

 

 

1.通勤快急・通勤準急について

 通勤快急・通勤準急は、平日朝ラッシュのピーク時間帯に運行されており、大阪方面(淀屋橋行き、中之島行き)のみ設定されています。通勤快急と快速急行、通勤準急と準急の違いは、いずれも守口市駅を通過するという点です。どうして平日朝の大阪方面行きだけ、わざわざ守口市駅を通過する通勤快急・通勤準急を設定しているのでしょうか?

 

2.通勤快急、通勤準急の役割とは?? ~守口市を通過する理由~

 

(1)遠近分離

 朝ラッシュ時間帯は、樟葉・枚方市・香里園・寝屋川市を中心に、大阪方面へ向かう通勤通学客が多く利用するため、快速急行や準急はとても混雑します。そこで、ハイピーク時間帯は快速急行・準急に代わって「通勤快急」「通勤準急」を運行することで、萱島より京都側の駅(枚方市・寝屋川市など)からの長距離利用客は通勤快急・通勤準急へ、萱島より大阪側の駅(門真市・守口市など)からの短距離利用客は区間急行・各駅停車へ誘導することで、列車により利用者の棲み分けを図ることができます。このような手法は「遠近分離」とよばれます。

 

(2)優等列車の速達性確保

 京阪本線は、天満橋~萱島間は複々線となっており、両方向とも線路が2本ずつあります。道路で例えれば、片側2車線確保されている状態であり、各駅停車を走りながら追い抜くことが可能となっています。

 同区間では、準急以上の列車は急行線、各駅停車は緩行線を走行しており、急行線のほうは京橋・守口市のみホームがあります。京橋駅には全列車が停車しますが、守口市駅は特急は通過、その他の列車は停車する形となっています。

 

 

 平日朝のラッシュピーク時と、その他の時間帯を比較すると、上図のようになります。朝ラッシュピーク時は区間急行を除き、萱島から京橋まで複々線区間をノンストップで走っていることが分かります。こうすることで、守口市での乗り降りにかかる時間を省略できるだけでなく、急行線を走る列車が一定の間隔で安定して走ることができるため、速達性を確保できることができます。

 

3.昔から守口市通過はあった

 「通勤快急」「通勤準急」、そして「快速急行」は、2008年に登場した比較的新しい種別です。しかし、快速急行導入以前から、朝ラッシュ時の守口市駅の優等列車通過措置自体は行われていました。

 2008年以前は、守口市駅には急行・準急・区間急行が停車していましたが、急行は日中時間帯と夕夜間のみの停車で、早朝深夜と朝ラッシュ時は両方向とも通過していました。さらには準急も朝ラッシュ時は両方向とも守口市を通過していました。

 そこから少しずつダイヤが変化し、京都方面行き列車はこのような時間帯による通過措置はなくなり、急行も停車時間帯が拡大していきました。2008年のダイヤ改正時に、同じ種別名でありながら時間帯によって停車駅が異なるのはややこしいと考えたのか、ラッシュ時に守口市を通過する列車を「通勤快急」「通勤準急」という別種別に分離した、というわけです。

 

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。「なぜわざわざ停車駅が1駅違う列車をわざわざ仕立てているのか?」と疑問がわくところですが、その裏には列車の混雑を分散させる、列車の速達性を維持するためという目的が隠れていることが分かります。

 守口市を通過する列車を「通勤快急」「通勤準急」として新しい種別を設定したことは、京阪としては分かりやすくする意図があったと思われますが、実際には列車種別がかなり増えてしまい、かえってややこしくなったと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 通勤通学で京阪を利用する方でないと、なかなかなじみがない列車とは思いますが、朝時間帯に京阪電車を使うことがあれば、通勤快急と通勤準急の設定はダイヤの工夫の一つだ、ということを感じてみてはいかがでしょうか。