ハイドーモ。
今日は再掲記事で失礼します。
さて、今回はこちらも恒例のプーさんシリーズ語りです。
プーシリーズの大ファンなおときち。
どうしてとプー作品の語りはマニアックな内容になってしまう事をご容赦くださいw
↓これまでのプーシリーズ語りはこちら↓
くまのプーさん クリストファー・ロビンを探せ!
(原題:Pooh's Grand Adventure: The Search for Christopher Robin)
1997年
監督
カール・グールス
データ
オリジナルビデオとして公開されたディズニープーさん史上2番目の長編アニメーション。
トゥーン・スタジオの制作という事にはなっていますが、1988年〜1991年まで放送されたテレビシリーズ「新くまのプーさん」の特別版OVAという要素も兼ねた作品であり、監督のカール・ゲールズをはじめとしてテレビジョンアニメーションから「新くまのプーさん」のスタッフも多数制作に参加しています。
さらにウォルト・ディズニー・アニメーション・ジャパンと共同で制作された作品でもあり、多くの日本人スタッフも携わって作られているという特徴を持っています。
※この時代のトゥーンスタジオはまだ完全に独立したスタジオにはなっていなかった為、当時のテレビやOVAのディズニー作品はこのスタイルで制作されたものが実は結構あります。
前述通り監督はテレビシリーズ「新くまのプーさん」の監督も務めたカール・ゲールズ。
脚本には「ピーター・パン2」のカーター・クロッカーも参加。
ディズニーの完全オリジナルストーリーという体裁ですが、実際は原作のとあるエピソードを大元として制作されています。
(※ちなみに2011年に本家ディズニースタジオが制作した「くまのプーさん」とはこの元としている原作エピソードが同じだったりします。良く観てみると似たような大枠のストーリーである事がわかると思います)
「新くまのプーさん」と森の全体図や各種設定等は一致していますが、完全な地続きというわけではありません。
主役はお馴染みのプーとクリストファー・ロビン。この作品では特にこの二人の絆にフォーカスが合わせられた物語となっています。
お馴染みの森の仲間達からはピグレット、ティガー、イーヨー、ラビット、オウルが登場。
作中で登場するキャラクターはこの7人のみ。
本当にこの7人しか出てきません。
実はプーの長編作品の中で最も登場人物の少ない作品であり、唯一カンガとルーが登場しない長編作品でもあります。
プーさんのジム・カミングス。
日本語版は八代駿さん。
ピグレット役のジョン・フィドラー。
日本語版は小宮山清さん。
ティガー役にはポール・ウィンチェル。
日本語版は玄田哲章さん。
ラビットにケン・サンソム。
日本語版・龍田直樹さん。
イーヨーはピーター・カレン。
日本語版・石田太郎さん。
オウル役にアンドレ・ストイカ。
日本語版は上田敏也さん。歌・福沢良一さん。
プーさんシリーズで最も有名な所謂ゴールデンキャストによる布陣となっています。
前述しましたがテレビシリーズのスタッフ中心に制作された特別編ながら、ディズニー制作の全てのプー作品の中でも、3本の指に入る程の評価と人気を誇る作品です。
そのクオリティの高さ故に本家アニメーションスタジオ制作の正式続編だと勘違いさている方も多い程。
まさに隠れた名作として、今も大人から子供まで幅広い支持を集め続けています。
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あらすじ
それはキラキラと輝いた夏の最後の日。
プーとクリストファー・ロビンはいつもの場所で思いつく限りの事をして遊びました。
しかしクリストファー・ロビンは遊ぶ事に夢中になり、プーに大切な事を言うのをすっかり忘れてしまったのです。
翌朝、秋の最初の日。
プーは家の外にはちみつのツボを見つけました。
そこには手紙がついていましたが、プーにはそれを読むことができません。
クリストファー・ロビンに読んでもらおうといつもの場所に向かうプーでしたが、そこにロビンの姿はありませんでした。
手紙を読んで貰うため仲間たちと共にオウルを訪ねたプーは、そこで驚きの事実を知ることになり……
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感想
まず言えるのは、プーシリーズの中でダントツで間違いなく一番のエンターテイメント作品として仕上がっているということ。
見易さは圧倒的ナンバーワンです。
そして実はこれまで描かれていそうでいなかったプーとクリストファー・ロビンの関係性についてかなり突っ込んで描写している稀有な作品でもあります。
原作のスローな雰囲気を大切にしたディズニープーの原点「完全保存版」やキャラクター性を強調した2011年の劇場作品はプーの世界を堪能できるかわりに一本の映画としては非常に癖のある内容である事は否めなかったのに対し、この作品はプーという題材を上手く使いながらも王道の友情冒険アニメーションとして非常に秀逸に仕上がっています。
その代わり「子供の空想感」とか「童心」というテーマとかイギリス的な空気感とかシニカル感とか「純粋さから来る少しズレた世界」感とか、そういう所謂【プーらしさ】は全体的に少々薄め。
それでもプーとしての色はしっかり出ているし、そこにアメリカ的なジョークやギャグ、さらにポップな音楽による親しみやすいミュージカルシーンが多数組み込まれた、隙のないエンタメ作品です。
個人的にはプー作品の入門編として、完全保存版の次に観る作品としてとてもオススメしたい作品ですね。
馴染みやすい安定したストーリーと演出
一本のアニメーション作品としてしっかりと起承転結があり、キャラクターの感情や個性の表現等も明確なのでとてもわかりやすく馴染みやすいストーリーとなっています。
珍しい派手めの山場やアクション、伏線と回収等、プーファンからすると少し大袈裟なくらいの演出はやはり日本人スタッフが多く携わってる影響も大きいんでしょうね。
そして要所で組み込まれるアメリカ的なギャグやコメディ。これがまさしくテレビシリーズ「新くまのプーさん」から引き継いだ系譜ですね。
現代文化や固有名詞等を使ったカートゥーン的なアメリカンジョークは他のディズニープーシリーズにはほとんどない要素なんです。(例外として完全保存版のゴーファーとオウルのやりとり等がありますが)
特にティガーやオウル、ラビットの発言に注目すると分かり易いかもしれません。
一番分かり易いのはオウルのくだり。
指名手配のポスターが登場したりアメリカ国旗を思わせる帽子をかぶったりレバーを引くと床が落とし穴になったり、、。
こういうギャグは原作の雰囲気を大事にする本家シリーズやトゥーンシリーズにはほとんどない手法です。
この作品に関してはこれがとっても功を奏してるんです。
前述の日本的なプロットとの合せ技で、エンターテイメントとして非常に良いバランスになっていてとっても見易いんですよね。
プーであることを活かしたギミック
そしてこの作品が凄いのはそんな「プーらしくないこと」を沢山やりながらも、ちゃんとプー作品として成立している事なんですよね。
例えば今回プー達はクリストファーロビンを探す危険な大冒険に出ます。
しかし実はなにも危険な事は起きてなくて、めちゃめちゃ近所に散歩しただけだったっていう「結局普通のいつもの楽しい一日でした」というラストは実にプーらしい逸品なオチだと思います。
そして何よりも、原作にも登場する「何もしない」というフレーズの使い方がこの作品はもう本当に最高なんです。
個人的には「プーと大人になった僕」の「〜最高の何かに繋がる」という使い方より数倍好きです。
「君たち(ピグレットたち)とは何でもできる。だけどクリストファー・ロビンとは‘なんにもしないこと‘もできるんだ。」
というプーの台詞からわかる通り、今作では「なんにもしないこと」はロビンとプーとの2人だけの絆の象徴として描かれてるんですよね。
これは本当にうまいし、素敵な原作要素の使い方だと思いましたね。
エンタメ性に比重が置かれてるぶん全体的にはプーらしさは薄めですが、要所要所でしっかり「プー」してるので、違和感がなくプー作品として観楽しめる内容になっています。これが凄い。
それと、今作は2011年版と同様各キャラクターの個性がピックアップされる展開なんですが、これもこちらの方が数倍うまいと思いました。
クオリティの高いミュージカルシーン
最後に、今作は音楽とミュージカルが抜群の出来です。
シャーマン兄弟の曲とはまた違う、ポップミュージック版のプー。これが非常にハマってましたね。子供も覚えやすく大人にも印象に残る素晴らしい楽曲達です。
これも、あと一歩で世界観を壊しちゃいそうで壊さないギリギリのラインを突いてますよね。
特にプーが歌う「どこにいるの?」は本当に名シーンだと思いますね。
ラビットが地図の切れ端をプーにかけてあげる細かい描写とかも本当に素晴らしいなと思いました。
今作の楽曲は全てマイケル・アボットとサラ・ウィークスの制作です。
名曲揃いで驚きましたほんと。
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まとめ
繰り返しになりますが、プーシリーズの中で間違いなく一番見易い作品です。
大人にも子供も。
王道のミュージカル冒険アニメーションとして凄まじく完成されています。その中でちゃんとプーの味付けもしてあるので、本当にプーさんの入門編として沢山の人に観ていただきたい一本ですね。
改めて、テレビスタッフがメインのOVA作品でここまでのクオリティは見事と言う他ないですし、他にはなかなか無いと思います。
作画とアニメーションも、劇場用作品には劣りますが力の入った渾身の出来です。
初心者向けのプー作品として「ティガー・ムービー」と肩を並べる2大巨頭として今も本当に人気のある作品です。
子供向けのビデオ作品と思ってスルーしてる方がいたら、是非一度観ていただきたいですね。
そして気に入った方は、ぜひ他のプー作品も観てみて欲しいです。
ちなみに、このテレビシリーズスタッフによるプーさん特別編はこの作品の他にもテレビスペシャル用に何本か中編が作られています。
それもまた良い出来の物ばかりなので、その話はまた今度ぜひ。
というわけで。
今回はこの辺で。
長々とお付き合いありがとうございました。
しーゆーねくすとたいむ。