はぁいどうも。
さて…ディズニーアニメーション映画史。時代は【ディズニー第3の黄金期】と言われる2010年代真っ只中です。
2013年「アナと雪の女王」による特大ブレイク、さらに続く「ベイマックス」「ズートピア」も大ヒットを記録する等2000年代の低迷が嘘のような快進撃をみせるディズニー。
しかし今回の黄金期の特長は…その人気の拡大と比例して…それ以上の勢いでアンチが大量に急増したという点。
その大きな理由には作品への思想やメッセージ性の露骨な内包、様々な意味でのディズニーイメージ転換戦略、近代映画トレンドに寄せた内容による伝統の破壊、等が上げられます。
新規ファン獲得の一方でこれまでディズニーファンだった人々が大量にアンチにまわったというのもまた事実だったんですよね。
そんな中公開された次作は…そんなアンチの声をと跳ね除けるようなファン待望のあのディズニーレジェンドコンビによる最新作でした。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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モアナと伝説の海
(原題:Moana)
2016年
監督
ジョン・マスカー
ロン・クレメンツ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ56作目の長編アニメーション。
海の世界に憧れる島娘モアナとかつて英雄と呼ばれた半神半人のマウイが世界を救うため大海原を旅する大冒険活劇を描いたスペクタクルファンタジーアドベンチャー。
原作の無いオリジナルストーリーですが作品の舞台である南太平洋ポリネシアに伝わる伝説や伝統からインスパイアされ制作された物語です。
監督の2人が【ポリネシアの伝説の神・マウイの物語を映画に】と発案した事から始まったプロジェクトでした。
〈制作スタッフ〉
感想
こんな映画を待ってました。
これぞまさしく【ディズニーのエンターテイメントムービー】。
「良いんだよ、良いんだけど、なんか…」という…アナ雪以降のなんとなく続いていたモヤモヤ感を完全にふっ飛ばしてくれましたね。
「これこれ!こういうのが良いんだよ!」とはまさにこの映画のことですよ。
小難しい社会への強すぎるメッセージや、変にこねくり回した複雑なストーリーなんていらない。
少なくともディズニー映画には。
この映画に社会へのメッセージや会社のイメージ戦略が全くゼロだとは言いません。
でも間違いなく主役はそれじゃない。
それを主役としていない。
【魅力的なキャラクターと、応援したくなる主人公、素晴らしい音楽と、別空間を疑似体験できる映像世界、万人に染み入るわかりやすくも胸を打つテーマ。そして少しの魔法と笑いとワクワクするような大冒険。】
エンターテイメントこそがこの映画の主役です。
それこそが本来のディズニーのアイデンティティ。
重ねてにはなりますが…こういうディズニー作品を本当にずっと待ってました。
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※雑念のない制作姿勢
上記の様に、ホントに細かい所までポリネシアの伝統と文化に拘り抜いて制作された今作。
改めて観ると、その作り込みに驚きます。
画面の端っこに写ってるモブキャラクターの動きや空を飛ぶ鳥の動き等、その全てに意味が込められています。
ただ本筋自体は特に捻りの効いた、現代アニメによく見られるような複雑なストーリーではありません。
昔ながらの至ってシンプルなアドベンチャーストーリーです。
パブリックテーマも【本当の自分の声を聞く】という、わりとスタンダードな物です。
プロットだけ見ると感動要素は特に無いように感じます。それどころか所々強引でご都合主義な部分も散見されます。
しかし、この映画はそこらのお涙頂戴映画よりよっぽど泣けるし、よっぽど心を震わされるんです。
その要因の一つが【映像の説得力】です。
例えばモアナをはじめとする島の人々のポリネシア地域独特の体型や顔立ち。髪の質感。
表情の細やかさ。
物凄い再現度です。それもディズニーらしさを損なわずに再現しています。
モアナの髪型等は、現地の女性に何日にも渡りひたすら色々な動きをしてもらいそれを全て撮影して映像に反映させる徹底ぶりだったそうです。
そしてやはりこの映画の最重要要素である【海】の表現。これが圧巻なんです。
なんだろう、ピクサーのような写実的なリアルさとも少し違う、アニメーション映画として最高に魅力的な海なんです。
監督のジョン・マスカーとロン・クレメンツはこれまで徹底的に2Dアニメーションに拘る事で有名な二人でした。
CG完全移行後にも関わらずわざわざ手描きアニメーションを復活させて「プリンセスと魔法のキス」を作った程です。
その2人がはじめてCGアニメーションを選択したのがまさに【この作品の心臓と言える海と人物の描写がより理想的に表現できるから】という理由からでした。
これは本当に英断だったと思いますし、その狙いは見事にハマったと思います。
その映像一つ一つから溢れる【作り物を越えた説得力】が観ている者を否応無く引き込むんですよね。
そしてやはり忘れてはいけないのが音楽。
この作品の音楽は他のディズニー映画とは一風異なります。
前述の通りサモア出身のオペタイア・フォアイを迎え、徹底的に伝統の音楽を取り入れているのですが決してそれだけではありません。
マウイが歌う「You're Welcome」さらにタマトアが歌う「Shiny」等クセがあって独特なんだけどちゃんとポップで癖になる音楽達が、観客の心をしっかり乗っけてくれます。(※タマトアの「Shiny」は日本語版ではROLLYさんがそのクールな歌声を披露してくれていますね。)
最初「何これ…」と思った曲に気がついたら引き込まれていたと言う人結構多いんじゃないでしょうか。
そしてやはり何よりも圧巻なのがモアナが歌う「How Far I'll Go」です。
旅に出る前と、終盤でモアナが覚醒する時の2回歌われるんですが、2回とも泣きましたw
これぞ音楽の力。
この曲を通してモアナというキャラクターとその悩み、決意を観客が共有し、一気に感情移入してしまうんです。
ありふれた少女の悩みです。
そのありふれた悩みが、素晴らしい音楽と映像に乗っかることで観客にリアルな感情として迫ってきます。ヒリヒリする程に。
これは本当に圧巻でした。
決して捻りのある物語でもテーマでもない。
だけどそこに音楽と映像の魔法がかかるとこんなにも観ている人を引き込むんですよ。
ディズニーがこれまでずっとずっと大切にやってきた事です。
※エンタメとしての矜持
ここまで読むと特定文化を題材として扱った少々お硬い映画なのかと思うかも知れませんが…
全くもってそんなことはありません。
要所で挟まれる小気味よいギャグの応酬。
実写映画顔負けな見応えたっぷりの海洋アクション。
そしてクライマックスのスペクタクル。
誰が観ても楽しめる極上の娯楽映画としてしっかりと仕上がっています。
主要な登場人物がかなり少ない作品だと思うのですが…その分各キャラクターの描き方がとても丁寧なんですよね。
そしてこれ大事なところだと思うんですが…登場人物が皆何処か緩くて明るいんです。
これもおそらく現地の人々を密に取材した制作陣の感触が大きく反映されているんだと思います。
そしてその少ない登場人物一人一人が、物語の大事なピースとして丁寧に表現されているんです。
モアナとマウイはもう言わずもがなだと思うんですが、個人的にとても大きいと思うのはやはりモアナの祖母・タラの存在。
彼女をとても丁寧に描いていることが、この作品の奥行きと味わい深さを何倍にもしてくれているのは間違いありません。
両親や兄弟、恋人といった類ではなく祖母の理解と導きでモアナが動いていくというのは、先祖の導きを大切にするこの地域題材の作品ならではだと思います。
描き方もホントに素敵なんですよね。
皆に変人扱いされながらも島のイベントの日ですら海辺で1人好きなダンスを踊って過ごし、背中にはマンタの大きなタトゥー。
決して強制することはなくモアナの覚醒を待ち、最後は自分の命と引き換えに送り出す。
いやぁ。タラおばぁちゃんカッコイイっす。
そして…この作品で忘れてはいけない重要キャラクターが【海】です。
そう、この作品では【海】を擬人化した1人のキャラクターとして登場させています。
いやぁこれはやられました。こう来たかと。
だって後半とかだんだんこの海が可愛く見えてくるんですもの。【海】がですよ?
別にお茶目な顔とか手足があるわけじゃない、ただの海が可愛く見えてくるんですよ。
これはポリネシアの人々の【海には意思があり人や島を繋いでいる】という考え方を形にした物なんですけど、この手法は流石です。
ディズニーのキャラクター力の底力を見ました。
さらに…ファミリーエンタメとして大事な役割を担っているのがマウイのタトゥーの中でモアナ達を見守ってくれるチビマウイと鶏のヘイヘイ。
この作品の登場人物の中で唯一が2Dアニメーションで描かれたチビマウイ。
この表現もまた【タトゥーはその人を表す履歴書のような物であり、大切な自己表現である】という現地の考えの元に発案されました。
そして作品が仕込んだ最大のコメディリリーフであり、単調になりがちな一本筋のストーリーにおいて笑いを生み出す起爆剤となったヘイヘイ。
グーフィーの系譜を脈々と受け継ぐ…ディズニー伝統の「愛すべきおバカさん」ですね。
このチビマウイとヘイヘイの存在は…この作品がファミリーエンターテイメント映画であることを観客に思い出させてくれる大切な存在でした。
この作品は決して特定文化の歴史や伝説をただ描いたお硬い映画ではないんですよね。
ディズニーのエンターテイメントとポリネシア文化をどちらも損なう事無く両立させた、、まさに奇跡のような作品です。
※それぞれの立場の尊重

これまでのジョン・マスカー&ロン・クレメンツ作品は【現状に不満を持った主人公がそれを打破する物語】というのが基本にありました。
アラジンしかり、リトル・マーメイド、トレジャー・プラネット等ほぼ全てがそうだと思います。
この「モアナ」も基本プロットはその慣例通りなんですが、、これまでの作品とは決定的に違う点があります。
それが、、主人公の内面的物語に特化していること。
モアナは珊瑚礁の外の世界に憧れを抱き現状に窮屈さを感じながらも、それでも島での暮らしや島で暮らす人々を認め心から愛しています。
それは彼女が歌う「How Far Ill Go」の【皆幸せそう、それはわかるの。】【自分の居場所があるのってホント素敵な事よね。】という歌詞にも現れていますし、実際に彼女は一度海への憧れを抑え込み村長の跡を継ぐ決心をしています。
往々にして、人は何か一つの考えに執着すると他の事を軽視しがち。
ジャスミンが王宮での暮らしを「囚われの身」と表現したりアリエルが人間の世界に憧れるあまり故郷の海底を疎かにしていたのが良い例です。
しかしモアナは現状の環境が恵まれていること、周りから必要とされている事をしっかりと理解しています。
彼女が向き合うのは…周囲の環境ではなく自分の内面。
この過程がしっかり描写されているからこそ、後のタラによる後押しや「How Far Ill Go」での決意…
そしてクライマックスの[私はモアナ。]が観ている人にとてもリアルにヒリヒリと伝わってくるんですよね。
周囲の環境や誰かの意向ではなく、、自分の[魂]のルーツ…心が望む場所と生き方と徹底的に向き合ったのがモアナ。
最高に魅力的な主人公です。
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まとめ





















