はいどうもぉ。
さて、今回は恒例のプーさんシリーズ語りです。
プーシリーズの大ファンなおときち。
どうしてもプー作品の語りはマニアックな内容になってしまう事をご容赦くださいw
これまでの記事でも語ってきましたが、ディズニーのプーさん作品は大きく分けて3つのカテゴリーに分類することができます。
①ディズニーアニメーションスタジオ、そしてディズニーピクチャーズ制作による「ディズニー本家シリーズ」。
※原作の雰囲気やストーリーを大切にしたシリーズです。
②ディズニー・トゥーン・スタジオ制作による劇場作品を中心とした「トゥーンシリーズ」
※原作の雰囲気を残しつつディズニーオリジナルのストーリーが展開されるシリーズ。
③ディズニー・テレビジョン・アニメーションが制作したテレビ向けの「カートゥーンシリーズ」
※原作からの設定を大きく変更しアメリカカートゥーン味をふんだんにプラスしたパラレルシリーズ。
やっぱりトータルだと①の本家シリーズが有名ですが②の「ティガー・ムービー」等も屈指の名作として広く知られていますよね。
今回語るのは②の「トゥーンシリーズ」から、「ティガー・ムービー」に続いて劇場公開されたトゥーンプーさんを代表する一本です。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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くまのプーさん 完全保存版II ピグレット・ムービー
(原題:Piglet's Big Movie)
2003年
監督
フランシス・グレイバス
データ
ディズニーによるくまのプーさんシリーズ3本目の劇場公開用長編アニメーション映画。
前作「ティガー・ムービー」の大ヒットを受けて今はなきディズニートゥーンスタジオが本格的に参入し、制作を行った作品。
トゥーンスタジオの日本とフィリピンの支部を中心となり制作され、多数の日本人スタッフが携わった作品としても有名です。
1977年の「完全保存版」以来、実に約25年ぶりにA.A.ミルンによる原作小説を直接扱ったプー作品であり、この点と、完全保存版のDVDセールスが日本で非常に好調であった事から「完全保存版Ⅱ」とのタイトルが邦題にのみ付けられました。
原作となる2冊の小説から計3つのエピソードが使用されていますが、全体の縦軸となるピグレットを主役としたストーリーはディズニーのオリジナルとなっています。(厳密に言うとテレビシリーズ「新くまのプーさん」のとあるエピソードが元ネタとなっています。)
自分の体が小さい事に悩むピグレットと、彼にまつわる思い出を辿るプー達の絆を描いたハートウォーミングストーリー。
監督はフランシス・グレイバス。
「ファンタジア2000」の監督をはじめ「ノートルダムの鐘」「アラジン」「ライオン・キング」等錚々たるディズニー作品のストーリーを担当してきたクリエイターです。
脚本は数々のプーシリーズを手掛けている事で知られるブライアン・ホールフェルド。
音楽は「ノートルダムの鐘Ⅱ」や「くまのプーさん/クリストファー・ロビンを探せ」等も手掛けるカール・ジョンソン。
楽曲制作はトップミュージシャンであるカーリー・サイモン。アカデミー賞、グラミー賞、ゴールデングローブ賞を全受賞している稀有なアーティストであり、余談ですが彼女は竹内まりやさんが名曲「元気を出して」を作った相手として日本でも有名です。
彼女は今作を含め3作品のプーシリーズに書き下ろし楽曲と歌唱を提供しています。
プーさん役はお馴染みのジム・カミングス。
日本語版は八代駿さん。今作は長きに渡り日本語版プーを演じてきた彼の遺作となりました。
ピグレット役のジョン・フィドラー。
今作で唯一のオリジナルからの継続ボイスキャスト。日本語版は小形満さん。現在でも専属声優となっている彼がピグレットを演じた初の長編作品が今作でした。
ティガー役はプーと二役でジム・カミングス。
日本語版は玄田哲章さん。
ラビットにケン・サンソム。
日本語版・龍田直樹さん。
イーヨーはピーター・カレン。
日本語版・石田太郎さん。
オウル役にアンドレ・ストイカ。
日本語版は上田敏也さん。
ルー役にニキータ・ホプキンス。
7年に渡りルー役を務め、最もポピュラーなルーボイスとして知られています。
日本語版は小倉裕大さん。
前述通り、日米合わせボイスキャスト関連でのトピックが特に多い作品となっているのが特徴的です。
2000年代前半はプー人気の再過熱期であり、想定外の大ヒットを記録した前作「ティガー・ムービー」の後に続く形で制作が開始。
ティガー・ムービーの完成度と人気の高さから、日米共に公開前の期待値が非常に高い作品でした。
日本でも劇場公開が予定されていましたが、最終的には公開見送りになり、翌年ビデオスルーでのリリースに変更されています。
興行収入はしっかりと収益を記録するものの、数字としては前作ティガー・ムービーの半分程度にとどまる形に。
評価面では久しぶりの原作フィーチャー作品である点やピグレットを中心にした子供にも伝わりやすいメッセージや心暖まるストーリー等が好評を獲ますが、プロットや構成の作り込みの甘さや原作と大きく乖離した空気感など批判点も多く全体的なパブリックイメージとしては「ティガー・ムービーの二番煎じを狙ったものの全てにおいて及ばなかった作品」という印象に落ち着いています。
日本ではプーブーム過度期でのリリースであった事や、ピグレットの潜在的人気の高さ、「完全保存版Ⅱ」という邦題の影響相まってシリーズの中でも比較的知名度と人気の高い作品となっています。
日頃から体が小さい事に劣等感を感じていたピグレット。
ある出来事から自分が皆の役に立てない事に強く思い悩み、100エーカーの森を彷徨っていた。
一方プー達はピグレットが居なくなったと勘違いし、捜索を開始。
彼の残した思い出のスクラップブックから過去を辿り、居場所のヒントを得ようとする。
しかしプー達はそんな捜索の中で、小さなピグレットの存在の大きさを思い知ることになるのであった…。
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感想
ディズニーの制作する数あるプーさんシリーズの中でも特にこのトゥーン・スタジオの劇場版シリーズは大好きですし功績も凄く大きいと思っています。
プーとクリストファー・ロビンだけじゃなく個性豊かな森の仲間達の魅力をしっかりと引き出し、何よりも難しいと言われていたプー作品を良質なストーリー映画として成り立たせるという試みを見事に成功させました。
2000年代から現代に及ぶプーさん人気の安定化は間違いなくこのシリーズの功績がとても大きいと言えます。
しかしながらこの作品に限って正直に感想を言うと「狙いすぎた」の一言に尽きるかなと。
あのティガー・ムービーの感動をもう一度!という意気込みだけがやや空回りしてしまった感があります。
全体のアニメーションや作画、音楽はとても力が入っていたし、久しぶりに原作エピソードを扱ったストーリーや全体を通した「心の大きさ、存在の大きさ」というテーマ性も素晴らしかったのですが…
良いお話しにしようとし過ぎて細かい所に手が届いていない構成と、原作を扱っているにも関わらず作風がその原作から大きくかけ離れてしまっていたのが残念でした。
普通に何も考えずに見たら綺麗にまとまったワリと感動する良いお話なんですけど…
ちょっこう、小手先感とかそれこそ文字通り子供騙し感が透けちゃう所が多くて、イマイチ入り込みきれないんですよね。
まぁごめんなさいちょっと自分の見方がマニアック過ぎるのも大いにあると思います。
余談なんですが、このプーという作品は本当に特殊で一般的な脚本家やストーリーアーティストの良し悪しとはまた違うベクトルだな、と常々思うんですよね。
今作の監督をはじめ、プーシリーズの中にも「実力や実績の高い名ストーリーアーティスト」が参加した作品はいくつかあります。
ただそれが必ずしも名作となっているかと言われればそうではなく…。
実績や実力以上に、原作から脈々と流れるプーという作品の本質を理解しているかどうかが作品の質に最もダイレクトに影響するシリーズだと思うんですよね。
そのうえで作品として面白いものに昇華できるか…という話になってくるわけで。
だから駆け出しや無名のクリエイターさんが手掛けた作品でも、プーの本質を見事に捉えた作品はやっぱり未だに名作と呼ばれているんですよね。
つくづく…アニメーション映画化の難しい題材だと思いますね。
原作に寄り添い過ぎれば1本の映画として成立しないし遠ざかり過ぎればばただのキッズカートゥーンになってしまう。
ここに目をつけてさらに「積み上げ方式」を選択したウォルトはやっぱり凄かったんだなぁと思いますね。
ちょっとだけ強引なアレコレ
ピグレットのコンプレックスにフォーカスを当てて「体は小さいけど実はみんなにとって大きな存在だった」という流れに持っていく母体は良いのですが、その経緯が少々強引で無理があります。
まず原作含めプーシリーズの全てに漂う裏テーマで「純粋故の残酷さ」というのがあるのですが、この部分の表現がこの作品はちょっと強引でしたね。
ティガー・ムービーや完全保存版ではとても上手く表現できていたのですが…
プーや仲間達が知らず知らずのうちにピグレットを雑に扱っていた事に気づいて彼の存在の大きさに気がつく…
という流れを見せたいのはわかるのですがそのピグレットを貶める描写がとても雑で、明らかに「これはただの意地悪では」と見えてしまうシーンがいくつかあります。
プーシリーズで度々表現される「純粋故の残酷さ」と「ただの意地悪」は似ているようで全く性質の異なるものです。
前者のように見せようという努力はちゃんと感じるのですが、んー、ちょっと無理矢理感が否めないんです。
ただこれは、そもそもディズニープーさんと原作プーさんのキャラクターの違いもあると思いますけどね。
例えばプー横丁命名の下りでプーが「プーとピグレット横丁より、プー横丁の方が良い名前だから〜」とピグレットを押し切るシーンがあります。
これは原作通りなんですが、それがなぜかディズニー版だとしっくりこない。
どちらも「童心の塊」というのは共通しているんですが、原作のプーは実は自尊心が強い性格として描かれているんですよね。
だからああいう事を言っても違和感がない。
対するディズニープーさんはおっとりした温厚な部分ばかり強調されて描かれているので、原作と同じ事を同じように言わせると違和感が出てしまう部分があるんですよね。
これは本当に難しいと思います。
まぁそれを差し引いても今作はキャラクターの動かし方が全体的にちょっと雑だったとは思いますが。
そしてこれも大きな点だと思うのですが、折角原作から3つの人気エピソードを引っ張ってきているのに、ファミリー向けの教訓映画として良い話にしようとし過ぎて原作や完全保存版等の独特の空気感がほとんど表現できていません。
わかりやすく言うと普通のどこにでもあるキッズカートゥーンのノリになっちゃってるんですよね。
ピグレットは目立たないけど実はいつも皆のことを思って行動していた…という繰り返しの描写もやはりちょっと強引でクドいのは否めません。
そしてストーリー上のわかりやすい最大の穴は「皆が探し回っている間ピグレットはいったいどこで何をしていたのか」という部分が最後まで回収されないこと。
まぁ総じて言うと、全体通して持っていきたい筋書きや流れの為にキャラクターを無理矢理動かしている感がちょっと強いという事なんですよね。
プーさんでストーリー性の高い物を作るのは難しいとは思いますが、それがティガー・ムービーでは完璧に仕上がっていただけに。
やっぱりちょっと比べると厳しいのは事実です。
プーコーナー初映像化
ただプー横丁のお話に関してはかなり良かったと思います。
原作の空気感も残ってましたし、カーリー・サイモンの曲が何しろ素晴らしかったですからね。このエピソードだけはしっかりと「プーさん」してました。
改変も多々ありますが原作の大事な部分はしっかり残す努力はしていて、さらにこのエピソードではちゃんとプーがピグレットの功績に気付いていた描写など細かいところにも手が届いていて良かったです。
ちなみにこのプー横丁すなわちプーコーナーは、東京ディズニーランドのショップ「プーさんコーナー」の元ネタとしても有名ですね。
音楽に関しては、劇伴はちょっと個人的にはあまり好みじゃないんですが兎に角カーリー・サイモンによる楽曲と歌が本当に素晴らしいです。
特にメインテーマの1つである「With A Few Good Friends」はホントに名曲ですね。
エンドロールでは本人出演のミュージックビデオも堪能する事ができます。
彼女の歌声は本当に独特な魅力を持っているので、特に今作に限っては吹き替えではなく原語版で見て欲しいですね。
ただ反面、ミュージカル要素をほとんど撤廃してしまったのは失敗かな、と。
カーリーの歌は本当に素敵なんですが、プーさん作品で歌い上げる系の強い女性ボーカルをBGMで流すスタイルは、基本的には合ってるとは言えないかな、と。
やっぱり基本的にはミュージカルとしてキャラクターに歌わせてほしかったですかね。
いや本当楽曲と歌声は素晴らしいんですけどね。
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各キャラクター個別の描写は丁寧に可愛らしく描かれているし過去作の小ネタなんかも散りばめていたり、作品への熱意はひしひしと感じます。
そして前述の通り子供向けのハートウォーミングな教訓アニメーションとしても十二分に素晴らしい出来です。
テーマもわかりやすく見た人全てに伝わるように作られています。
ただその分、プー作品としては少々残念な部分も多く、わかりやすい良い話にしようとし過ぎてちょっと強引で雑な面があるのも事実です。
プーさんでストーリー物の名作を成功させた前作「ティガー・ムービー」を意識してるのは間違いなくて、その空回り感がちょっと残念でした。
まぁちょっと前作が完璧すぎましたよね。
それに続くような「良い話」を狙いすぎてしまったかなと。
と、まぁマイナス面を色々と綴りましたがプーの劇場用作品として見所は沢山ある作品ですし、丁寧に作られているのは間違いありません。
ファンとしてもやっぱり3つの原作エピソードの映像化は一見の価値ありです。
ディズニープーさんシリーズにおいてマストな一本である事は間違いないので未見の方は是非一度チェックしてみて下さいね♪
「くまのプーさん 完全保存版Ⅱ/ピグレット・ムービー」は現在ディズニープラスで配信中です♪
はい。
というわけで今回はこの辺で!
今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪
しーゆーねくすとたぁいむー。
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