(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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新くまのプーさん
(原題:The New Adventures of Winnie the Pooh)
1998-1991
制作指揮
カール・グールス
ケン・ケッセル
データ
1989年〜1991年に制作・放送された全50話のディズニーのテレビアニメーションシリーズ。
ディズニー初の本格テレビアニメーションシリーズと言われれた「ダック・テイル」の大ヒットを受けて、新たに企画制作されたシリーズの一つ。
ディズニー長編映画の作品とキャラクターをテレビシリーズ化した史上初の作品です。
制作はカール・グールスとケン・ケッセル。この2人をはじめカーター・クロッカーやマーク・ザスラブ等、後の名作「くまのプーさん クリストファー・ロビンを探せ!」をはじめプーの様々なテレビ・ソフト作品を手掛けていく言わばテレビ版プーさんの生みの親と言える面々が揃っています。
さらにエピソード監督の一人としてディズニー往年の短編映画【プルートシリーズ】やミッキー・マウスの短編作品も数多く監督してきた超ベテラン、チャールズ・A・ニコルズも参加。
1977年に公開された「くまのプーさん完全保存版」の世界観をベースに、原作や劇場版とは全く異なる設定やテーマを付与した新しいプーさんの物語。
お馴染みのプーとクリストファー・ロビンに加えてピグレットら100エーカーの森の仲間たち、ディズニーオリジナルキャラのゴーファーも含めて「完全保存版」に登場した全てのキャラクターが登場。
果にはクリストファー・ロビンの母親やベビーシッター等…
実に様々な新キャラクターが登場します。
最大の特徴はこれまでのプー作品と一線を画すその斬新な設定変更。
全てにおいてアメリカナイズされており、原作や 劇場版の【空想の世界】【本の中の世界】という 大元設定は完全無視。
舞台はイギリスからアメリカへ変更されていて、100エーカーの森はロビンの住むアメリカの街と直結しています。
ロビンの家には母親やベビーシッターも普通に登場。プーたちは現実に実在するクリストファーロビンのおもちゃとして扱われており、ロビン以外の人間がいるときはプー達はおもちゃのフリをしていたり、時には普通に人間界の映画館やスーパー等の街にも繰り出します。
分かりやすく言うと「トイ・ストーリー」にかなり近い設定で、実際にジョン・ラセターはトイ・ストーリー制作の際、この作品から着想を得たという旨の発言を残しています。
その反面100エーカーの森の方は原作以上に奇想天外な世界になっていて、空が落ちてきたり森中に魚が大量発生したり、井戸やベッドの下が異次元空間に繋がっていたり…まさに何でもあり。
もともと子供の視点で描いたマナーコメディ(風刺コメディ)という初期案でスタートしたこのシリーズ。最後までその姿勢はほぼ変わりませんでした。
プーさん達は原作等よりもより子供っぽくより風変わりであり、全編通して子供に楽しいコメディを貫きながらも、各エピソードの中に必ず1つ大人たちや社会への風刺・子供たちへのメッセージを織り交ぜるという構成が取られています。
ここまで大きな改変を行いながらも、この作品はディズニー テレビアニメーション史上に残る空前の大ヒット作品となりました。
子供だけではなく一般の大人や高齢者、そしてディズニーファンなど非常に幅広い世代から受け入れられ、数々の賞も受賞。
コミックやゲーム等様々なメディアミックスが展開され、シリーズ終了後もいくつものスペシャル版続編が制作されています。
この作品のヒットで、1980〜90年代にかけてプーさん人気は世界中で大爆発。
1977年の映画【完全保存版】は好評価を得ながらも決して大ヒットしたわけではなく、当時プーさんは今ほどメジャーな存在ではありませんでした。そんなプーさんの世間認知度を一気に高め、ミッキーマウスに追随するほどのディズニーメジャーキャラクターまで押し上げた一番の立役者がこのテレビシリーズ「新くまのプーさん」です。
現在でも特にアメリカでは強い支持を得続けており、日本でも【マニアックなプーさん作品】としてファンから愛され続けています。
何よりも、この作品のヒットは以降のトゥーンスタジオによる劇場版プーさんの復活や、後続の「ブック・オブ・プー」「プーさんといっしょ」等のテレビシリーズに脈々と枝葉を伸ばし続けており、ディズニーのプー作品においてターニングポイントとなるとても大きな作品であったことは間違いありません。
あらすじ
※The Wishing Bear
ある冬の日プーはクリストファー・ロビンから願い星の話を聞く。夜空に光る一番星に呪文を唱えて願い事をするとそれが叶うという。
翌日願い星の事を知ったピグレットやティガー達は自分の願いを叶えて貰えると喜ぶが、プーは肝心の願い事に必要な呪文を忘れてしまっていた。
やっとの事で呪文を思い出し、それぞれの願いを唱えた一行だったが最後のプーが願いを唱えた時、突然願い星が空から消えてしまった。
責任を感じたプーは願い星の代わりに皆の願いを叶える事を決意するが……
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感想
大胆な破壊と通った芯
前述した通り原作や【完全保存版】のファンであれば怒っても何ら可笑しくないような設定・世界観の崩壊具合です。
素人のパロディや二次創作でもここまでしないでしょう。それくらいぶっ飛んでます。
しかし、これがこの作品の驚愕するところなんですが、設定崩壊・キャラ崩壊とも言える突飛な内容の目白押しながらも、世界観とキャラクターの根っこの部分が間違いなく【クマのプーさん】なんですよね。
これは本当に凄い事だと思います。
見たことある方なら言いたいことわかると思いますが、本当に、容赦なくぶっ壊してますからw
ラビットが街のおもちゃ屋で売りに出されたり、プー達がロビンと映画館で映画見たり、小さいピグレットみたいな部族が独自の文化で暮らす国があったり、空のかけらが落ちてきて天空に雲製造マシーンを直しに行ったり、魚が森中に溢れかえったり、ティガーの縞模様が急に消えたり…
上げだしたらキリがないです本当に…
ここまでメチャメチャやっても、それでもこの作品は紛れもないプーさんなんです。
それは【ぶっとい芯の部分】が他のプー作品と何ら変わらないから、、なんですよね。
「童心」と「純粋さ」いう根幹のテーマ、クリストファー・ロビンとプーの関係性、、、この作品の根っこの部分が原作や完全保存版から奇跡的に全くブレていないんですよ。
キャラ崩壊してるのに、それぞれの大事なアイデンティティだけは頑なに死守してるんです。
プーのロビンへの想い、そしてロビンのプーへの想い…ラビットのコントロール欲、ティガーの多動性、オウルの自己顕示欲、ピグレットの恐怖症、そして一同のロビンへの依存性…
そして物語に置いても【童心と純粋さ】この2つを起点として動いていくという構図が本当に一貫してます。
どんなに好き放題やっても、この芯が全くブレない所が、この作品を「間違いなくプーの物語」だと感じさせる強固な要因だと思います。
風刺とキッズコメディの見事な融合
それとこのシリーズならではの要素、ハイテンションハイスピードのぶっ飛びコメディでありながら、各エピソードにひっそりと一つずつ込められた社会風刺やメッセージ。
これがまた絶妙にハマっているんですよね。
前述の通り子供の視点で描いたマナーコメディ(風刺コメディ)をテーマとして制作されているので、簡単に言うと【子供から見た大人達や社会のおかしな所・いびつな所】に結構ザクザク切り込んでいます。
社会派作品というと昨今の「ズートピア」等のディズニー映画の主流になってきてるワードではありますが、この作品がそれらと決定的に違うのは【あくまでも子供の視点に立っている】という点。
これは本当に画期的だったと思うし、今のディズニー映画のやり方より数倍上手いと思いますね。
実際にこの作品がアメリカで最も評価されてる点はこの部分なんです。
子供は楽しいプーのカオスなコメディを観ながらそこから毎エピソード必ず何かしら学んだり気づいたりできるようになっているし、それ以上に大人がハッとさせられるエピソードもかなり多いです。
よくある子供向けの教育アニメとかとは似ているようで全く性質が異なります。
カオスな部分だけがよく抜き取られて話題になる今作ですが、ぜひこの側面をもっと沢山の人に知ってほしいですね。
ザ・カオスコメディ
最後に、やっぱり無視できないのは毎回繰り出されるトンデモアメリカンコメディの応酬ですw
もうネジ一本抜けちゃってるようなカオスな展開も目白押しです。
このノリがよくプーで出来たなと感心させられますね。
ちょっとある意味先の展開やキャラクターの行動が予測不能なんですよね。
なのにちゃんと子供も大人も笑えるコメディに仕上がってるんです。
プーさんシリーズって、実は作品内容自体は子供への受けがあまり良くないんですよね。
空気感がスローすぎたり、哲学ギャグみたいなのも多いから結構飽きちゃうんですよ。
何気に子供が見ていて一番面白いプー作品がこの「新くまのプーさん」なのは間違いないと思います。この辺はアメリカナイズした空気感がとても功を奏してる部分ですね。
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まとめ

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