ディズニー映画語り ザ・ブック・オブ・プー | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。



はーいどうも。

今回はディズニー制作のテレビ用アニメーションについて語っていきたいと思います。

ディズニーと言えば劇場用アニメーションがやはり代表的な主流事業であるイメージがもちろん強いと思いますが、実は1980年代頃からディズニーはテレビカートゥーンにもかなりの力を入れていて、現在でもディズニーチャンネルを中心に沢山のテレビアニメーションの名作を生み出し続けているんです。

以前語った「悪魔バスター スター・バタフライ」をはじめ、他に有名なところでいくと「フィニアスとファーブ」「キム・ポッシブル」

最近では「ミラキュラス レディバグ&シャノワール」「怪奇ゾーン グラビティフォールズ」等が高い人気と評価を得ています。


今回はそんなディズニーのテレビ作品郡の中から、あの人気シリーズ変わり種隠れた名作として根強い人気を誇り続けるこちらの作品について語っていきたいと思います。


(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)




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  ザ・ブック・オブ・プー

(原題:The Book of Pooh)

2001年〜2003年

全51話

総監督

ミッチェル・クリーグマン


データ


ディズニーチャンネル内のプレイハウスディズニー(現ディズニー・ジュニア)枠で制作・放送された「くまのプーさん」テレビアニメーションシリーズの1つ。


1988〜1991年に放送された「新くまのプーさん」実質的な続編シリーズでもあります。



背景はCGアニメーションキャラクターはパペットによる人形劇というシャドウメーションと呼ばれる特殊方式が採用された映像表現最大の特徴です。


ちなみにこのシャドウメーションという人形劇技術は、日本の伝統芸能・文楽を参考として構築されました。


総監督を務めたのは前述したシャドウメーションの特許を持つ第一人者ミッチェル・クリーグマン


脚本にはマーク・ザスラブ等の前作「新くまのプーさん」を手掛けたクリエイター達も加わっており、これはシャドウメーションという新しい方式の今作において、前シリーズのプーらしい空気感引き継ぐ事に大きく貢献しました。



音楽はブライアン・ウッドベリーショーン・アルトマンなど。

今作はほぼ毎エピソードに渡って新曲によるミュージカルが展開されるのも大きな特徴で、今作のために大量の楽曲が生み出されました。



他のプーシリーズ同様100エーカーの森での仲間達の暮らしを描いた作品ですが、今作はタイトルの通り本の中の世界という設定が強く押し出されていて、クリストファー・ロビンは登場はするものの顔は写らず、プー達とコミュニケーションを取ることもほとんどありません


プーが本の世界から現実世界へ自由に移動できる等、独自の設定改変が多く加えられた世界観で展開。


さらに前シリーズ「新くまのプーさん」から、オリジナルキャラクターであった小鳥のケシーが今作で主要メンバーとしてレギュラー入りするなど、同作とのリンクが多く見られます。

(※その代わり今作ではカンガルーゲスト扱いになっており、登場回数が極端に少なくなっています。)



子供向けとしながらもその裏でマナーコメディ(風刺コメディ)として大人へ向けた要素も多分に含まれていた前作と違い、最初から子供向けのプレイハウスディズニー用の作品として制作されており、よりわかりやすい教訓やテーマを内包したミュージカルストーリーとして仕上げられています。



プーさん役はお馴染みのジム・カミングス

日本語版は八代駿さん→2代目の亀山助清さん。

ピグレット役のジョン・フィドラー

日本語版は小宮山清さん→小形満さん。

ティガー役は二代目のジム・カミングス

日本語版は玄田哲章さん。

ラビットケン・サンソム

日本語版・龍田直樹さん。

イーヨーピーター・カレン

日本語版・石田太郎さん。

オウル役にアンドレ・ストイカ

日本語版は上田敏也さん。歌・福沢良一さん。

ケシー役はステファニー・ダブルッツォ。彼女は声優だけではなくケシーの人形遣いも担当しています。日本語版は岡村明美さん。


この作品が放送された時期は丁度日本語版プーさんピグレットの声優が相次いで交代した転換期であり、2キャラクター共に両者の声が混在して使用されています。


現在でこそ認知度の低いマニアックなプー作品の1つとなっていますが、放送当時はその斬新な映像表現と内容がメインターゲットの子供だけではなく大人のファン達の間でもかなりの注目集め、大きな話題となった作品でした。


2002年にはエミー賞も受賞しています。


キッズ枠での放送であったにも関わらず、拘ったシャドウメーションでの映像表現やこれまでのプーのテレビ作品に欠けていた【原作の持つ情緒的・哲学的ユーモアが復活した独特の空気感】が前作「新くまのプーさん」以上に大人たち、特にプーファンから強く支持され、現在でもディズニープーの隠れた名シリーズとして根強い人気を誇り続けています。



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あらすじ



ここはクリストファー・ロビンという幼い男の子の部屋。

この子供部屋には沢山の本がある。

中でもロビンのお気に入りは「ザ・ブック・オブ・プー」。

彼の大好きな100エーカーの森の仲間たちが暮らすこの本の中では、今日もプーと仲間たちが日々何かを学びながら楽しく暮らしていた。

クリストファー・ロビンが学校へ行ったあと。
そっと本のページは捲られ、今日も彼らの物語は進んでいく…。

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感想


数あるプーさんシリーズ作品の中でも一際異彩を放つこの「ザ・ブック・オブ・プー」

子供向けの人形劇というのは超メジャータイトルであるセサミ・ストリートをはじめさほど珍しいものではないのですが、今作のシャドウメーションという技術の特徴的なのは実際のパペットCGによるアニメーション融合させた映像作品になっているという点です。

2000年代前半テレビ用CG技術なのでまだ荒削りなものの、プロの人形遣いによる巧みなパペットの動きとCGによる背景等が組み合わさった独特な世界観は見れば見るほどになります。

基本的にはわかりやすい子供向けなストーリーが多いのですが、その台詞回し空気感は全体的にどこか哲学的シュール的でもあり、プーという題材に良く合っています。

特に海外ではこの脚本世界観形成が非常に評価されていて、「新くまのプーさん」原作から大きく逸脱したディズニープーの【原点回帰的作品】とも言われるほどです。

ただし設定としては「新〜」との共通点も多くキャラクター等が大きくアメリカナイズされてる点も変わってないので、あくまで空気感や脚本原作のそれに近づいた…という事でしょう。

それと「新〜」等で無視されていた【本の中の世界】というのを全面に押し出した事も、ファンからは好意的に受け入れられました。

製作陣の意図とは裏腹に、メインターゲットである子供はどちらかというと純粋なドタバタコメディアニメーションの「新〜」の方を好み、キッズ受けは期待値を下回りましたが、大人達からは未だに根強く評価され続けている作品です。


個人的には子供にもメッセージテーマわかりやすく伝わるようになっているし、それと同時にファンも唸るようなプーらしい空気感や魅力も上手く混合させた、非常にバランスの良い素敵な作品だと思いますね。

このあとのテレビ用のプー作品は、ちょっと大人の視聴には耐えられないような正真正銘ただの子供向け番組と化してしまうので、そういう意味でもこの作品は原作やこれまでのプーとしての魅力を残した最後の、貴重なテレビシリーズだっとも言えます。


子供番組を凌駕する職人芸



まず感心するのはこの番組としてのトータルクオリティの秀逸さです。

まずはその人形劇としての完成度の高さ。

これはもう見事としか言いようがありません。

キャラクターの仕草、目や顔の動き、非常に細やかな職人芸を観る事ができます。

CGによる背景もそうですがリアルの小物や衣装等も1つ1つ丁寧に作られていて仕事の細かさに驚きます。

それとやはり目を見張るのは毎エピソード繰り広げられるミュージカル

なんと使いまわしの曲はほとんどなく全51話の計96エピソードほぼ毎回録って出しの新曲が使用されています。

これにはホントに恐れ入りました

しかも一曲一曲もちろん多少のクオリティの差はありますが決してやっつけではなく、しっかり作り込まれた楽曲達なんですよ。

曲のジャンルテイストも毎回違いますしね。

それらの楽曲による趣向を凝らしたミュージカルシーン毎回展開されるというのは、普通にアニメーションテレビ作品としてかなり凄いことですし、これだけでも大人が見る価値が十分あると思います。

もちろん子供も楽しいですしね。

今作はこのシャドウメーションという方式を最初に本格導入したテレビシリーズであり、その事からやはり監督のクリーグマンを筆頭に製作陣がかなりの気合で挑んだ作品だったんだなと言う事が見ているとよくわかります。


これら1つ1つのこだわり作り込みが作品を通してひしひしと伝わるからこそ、消費型の子供向け番組でありながら現在でも風化しない1つの作品として存在感を放ち続けているんだと思いますね。


丁寧な脚本と演出



そしてもう一つ重要なのは、このシリーズがしっかりとプーという作品の醍醐味や魅力継承している部分です。

人気作品を子供向けにリファインすると、どうしても作品元来の特長や魅力が失われテンプレートなキッズ番組になってしまいがちなんです。

ですが今作では「新〜」のスタッフも携わってることもあり、子供向けにリファインしながらもプーの世界観や醍醐味を非常に大切にした丁寧な脚本となっています。

さらに「新〜」のときのアメリカンカートゥーンっぽさが薄くなり、のんびりとしてどこか詩的なだけどどこが間が抜けた空気感会話がなされていて、これが原作の雰囲気非常に近いんですよね。

例えばエピソードの例をあげると、「韻を踏むと願いを叶えられる韻踏みヒーローとしてプーが崇められる」話しとか「差出人名がない手紙を'私さん'からだと思い込み'私さん'を探しまわる」話しとか、、そんなんですw

言葉のあやとかちょっとした勘違いをうまく物語に発展させているちょっとシニカルなところも、かなり原作に近いんですよね。

中には「新〜」のエピソードのリメイクもいくつかあって、そういうファンしか気づかないような点が結構あるのもポイントです。


それとやはりプー達があくまで本の中で暮らしていてナレーターと会話したりするのも、原点回帰的と言えます。


これだけだと「完全保存版」のように子供が退屈してしまうんですが、前述のように子供が食いつくような賑やかなミュージカルシーンもしっかり挟んでるのでとてもバランスが良いんですよね。


各キャラクターの個性もイメージを壊すことなく子供にもわかりやすい表現や演出調整されていて、とても細やかで丁寧な作りだと思いました。



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まとめ




昨今の子供向け番組は兎に角効率重視

一にCG、二にCGの時代です。

こういう職人技の光るような、手作りの温かみが感じられる子供番組も随分少なくなってしまいました。

実際にこのシャドウメーションという技術もこの後大きく躍進する事はなく、製作を手掛けた監督の会社【シャドウプロジェクト】は現在閉鎖され、最早過去の遺産の1つとなってしまっています。


現在技術の進歩やそれによる作品を否定するつもりは全くありません。

ただ、こういう過去の素晴らしい作品が、消費されるだけのいち子供番組として流れ忘れ去られていく事はホントに残念なんですよね。

劇場用の映画作品はいつまでも残るパッケージとしてある程度保存が確約されていますが、テレビ番組に関してはどんなに素晴らしい作品であっても一度の放送を逃すともう二度と見る事ができない…。なんて事がこれまでは日常茶飯事でしたから。


現在はディズニープラスをはじめとした動画配信サービスのおかげで、今作のような「全話観る事が事実上不可能だったマイナーな作品」も沢山見れるようになりました

ホントにこれはありがたい良い兆しだと思います。


これを機会に今の令和の子どもたちにも、こういう作り手の情熱や技術が込められた、手作り感溢れる一世代前の子供番組も、ぜひ見せてあげて欲しいですよね。

今の番組とはまた違った喜び発見が必ずあると思います。

そしてプーさんファンでありながら人形劇というだけで今作を避けていたそこのあなた!

プーファンにとってはこの作品は最早1つも子供向けではありませんw

むしろマスターピースです。


ぜひ、重い腰をあげて1度は観ておくことをオススメしたいですね☆





「ザ・ブック・オブ・プー」は現在ディズニープラスで全話配信中です♪






はい。

というわけで!



今回はこの辺で。


いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!


では、また次回!


しーゆーねくすとたぁーいむ。


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