はいどうもぉ。
さて、今回はこちらも恒例のプーさんシリーズ語りです。
プーシリーズの大ファンなおときち。
どうしてもプー作品の語りはマニアックな内容になってしまう事をご容赦くださいw
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240126/16/yuzupill/3a/11/j/o0329047515393889893.jpg?caw=800)
くまのプーさん ルーの楽しい春の日
(原題:Winnie the Pooh: Springtime with Roo)
2004年
監督
エリオット・M・バー
ソール・アンドリュー・ブリンコフ
データ
ディズニー屈指の人気を誇る「くまのプーさんシリーズ」第7作目となる長編アニメーション作品。
トゥーン・スタジオ名義としては4作目となり、OVAとして2004年にリリースされました。
「ティガー・ムービー」の成功を受けて本格始動したトゥーン・スタジオの平成プーシリーズの1つ。
トゥーン・スタジオのソフト用プーシリーズとしては、初めて過去作とのオムニバス形式を取らない完全新作長編アニメーションとなっています。
一口にトゥーン・スタジオのアニメーションといっても実は下請け的な実質の制作スタジオは作品によって本当に様々であり、今作ではフィリピンの外部制作会社トゥーン・シティによりメインの制作が手掛けられました。
監督は本家スタジオで「アラジン」「美女と野獣」「ライオン・キング」等のアニメーターを務めたエリオット・M・バー。
そして同じく「ターザン」や「ノートルダムの鐘」の制作スタッフだったソール・アンドリュー・ブリンコフの二人が務めています。
脚本は「ティンカー・ベル」シリーズや「わんわん物語2」等を手掛けたトム・ロジャース。
音楽は「ミッキーのミニー救出大作戦」や「アラジン」の続編シリーズも担当しているマーク・ワッターズ。
子供カンガルーのぬいぐるみ・ルーを中心に、100エーカーの森の仲間達がイースターを過ごす物語を描いたファンタジーミュージカル。
A.A.ミルンによる原作には無いオリジナルストーリーで展開します。
ただし、公式のクレジットはありませんが今作はチャールズ・ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」をストーリーや全体構成の大元としていて、さしずめプーさん版クリスマスキャロルとも言える内容になっているのが最大の特徴です。
プーさん役はお馴染みのジム・カミングス。
日本語版は2代目の亀山助清さん。
ピグレット役のジョン・フィドラー。
日本語版は小形満さん。
ティガー役はプーと二役でジム・カミングス。
日本語版は玄田哲章さん。
ラビットにケン・サンソム。
日本語版・龍田直樹さん。
イーヨーはピーター・カレン。
日本語版・石田太郎さん。
ルーを演じたのはジミー・ベネット。
日本語は杉本征哉さん。
ナレーター役にはデビッド・オグデン・ティアーズ。日本語版は青森伸さん。最新作の「プーと大人になった僕」を含む全プー作品のナレーターを務めています。
2000年代前半はプーさんシリーズにとって何度目かの再ブーム到来機であり、日本も含めて非常にプー人気が加熱していた時期でした。
東京ディズニーランドでのプーさんのハニーハントオープンやティガー・ムービーのヒット等非常に勢いに乗っていて、関連作品も矢継ぎ早にリリース。
毎年のように新作OVAがリリースされましたが、その多くは過去のテレビ作品等を編集したオムニバス作品でした。
そんな中で実に1997年の「クリストファー・ロビンを探せ!」以来となった完全新作の長編OVAがこの「ルーの楽しい春の日」です。
「ティガー・ムービー」などで注目度が上がっていたサブキャラクターのルーを主役とした作品で、現在にいたってもまだ珍しい「イースター」という季節行事を主題としたアニメーションです。
作画アニメーションの粗さやクリスマス・キャロルに類似し過ぎたストーリー等批判点も多く上がりましたが、安心して子供に見せれるプーの新たなストーリー作品としてトータル的には好意的に受け入れられ、現在でも知る人ぞ知るプーシリーズのコアな長編作品として一定の人気を獲得しています。
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あらすじ
感想
まんまクリスマス・キャロルではありますが、ストーリー自体はプー作品の中ではわりと良い方に入るとは思います。
ストーリーよりも空気感が重視されるこのシリーズにおいて【ドラマ性】という意味ではシリーズ中トップクラスでしょう。
ただそれが果たしてプー作品として正解かどうかはちょっと微妙なところで…。
プーでこれをやる意味ある?という話にはどうしてもなっちゃいますよね。
それとやっぱり何よりも残念なのはキャラクター作画とアニメーションです。
プーの長編作品の中では間違いなく一番酷いですね。ただ粗いとかいう事でもなくてなんというか…キャラクターを捉えていないんですよね。。
まぁちょっとそのへん含めて詳しくは↓以下↓で〜。
ストーリーは悪を生む
そもそも原作を含めてプーというシリーズはどこに魅力があり、どういう作品なのか。
もちろん人によってそれぞれだとは思いますが、大きなところとしてはやはりキャラクター達がかもし出す純粋無垢な世界でしょう。
それを最大限に活かすためには正直捻ったストーリーは邪魔なんですよね。
何故かというと【ストーリーは悪役を生む】からです。
プーという世界の個人的な最大の魅力は【みんなが悪役でありみんながヒーロー】であるところなんですよね。
何処か間の抜けた登場人物達の誰もが無意識に誰かを傷つけ、無意識に誰かを助けてる、そういう世界観です。
ストーリーを、特に子供向けに面白いものにしようとすれば、明確な【悪い人】が絶対に必要になってくる。
だからプーはストーリー映画と相性が悪いんです。
今作で言うとストーリーはクリスマスキャロルをなぞっています。このストーリーは「スクルージ」という誰がどう見ても【悪い人】が改心する物語なわけで、その役目を「ラビット」が担ってるわけですが、これがまずやはり無理があります。
確かにラビットはプー世界の唯一の現実主義者であり自己顕示欲の強いキャラです。
だけど決して【悪人】ではありません。
誰かを悲しませる事もありますがそれは意図したものじゃなく、心では仲間を想っています。
それを本当に上手に表現してたのが「ティガー・ムービー」でした。
それを無理矢理【スクルージ】に仕立ててるわけで、そうするとやっぱりそれに伴って他のキャラクターの行動も不自然になり、どうしても世界観がおかしくなります。
今作はそれでも【プー作品らしさ】を維持しようとかなり色んな努力はしてるんです。
本の世界という設定を非常に巧みに利用してますし、細かなところでプー達の純粋さやマヌケさもちゃんと挟んでます。
特にプーの【くしゃみ】の下りとかラスト無理矢理上手いこと言おうとして得意気に締めるプーとかは本当にらしくて素晴らしいシーンだったと思います。
ただやっぱりクリスマスキャロルのストーリーとリンクさせ過ぎてしまった事で妬みや僻み等の心の影の部分を強調して描くことになり、プーならではの独特の空気感は薄くなってしまっています。
まぁこんな事気にするのは相当のプーファンだけでしょうから、もちろん普通にお子様が見るぶんには「友達の気持ちを大事にしようね」という素敵な教訓映画だとは思いますが。
プーさんが観たいなぁと思う時に個人的にはこの作品は選びませんね。
アニメーションと作画
やはりどうしてもキャラクターの作画とアニメーションが…
これはちょっと看過できないレベルなんですよね。
プーのトゥーン作品中で一番酷いです。
背景画はすごーく良いんですよこの作品。
細かく描き込まれています。
あとデジタル作画なんで映像自体はキレイなんです。
それだけに残念なんですよね。
端的に言うとキャラクターの芯を捉えていないんですよね。
体のバランスや表情、そして動き。
それらがどう見てもプーたちのそれじゃないんです。
らしくない動きや表情、ぎこちない動作が多すぎます。
このトゥーン・シティという会社は元ディズニークリエイターが代表を務める会社で、他にも素晴らしいディズニー作品を幾つも請け負っているんですが、本当にこの作品だけ目に見えて酷いです。
もちろん低予算OVA作品ですからそんなに良い物は期待しないですが、質が多少粗くなったとしても基本のデザインや動作原理等だけはしっかりおさえてくれないと、作品に入り込めないんですよね。
音楽はワッターズの楽曲が良い味出してるし、エフェクトや視覚効果関係も良い出来なだけに…やはりこの1点は重ね重ね残念でした。
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まとめ
題材的にもまだまだ浸透しきれていないイースターですし、内容的に考えても、豪華なファンアイテムの1つかお子様向けの消費ビデオかな…というのが正直なところでしょうか。
本やナレーターの使い方とか演出とか、面白い部分も沢山あるんですけどね。
個人的にはトゥーン制作のプー作品はどれも本家を超えるくらいのクオリティを誇る素晴らしいシリーズだと思ってるのですが、今作だけは唯一そこから外れてしまうかな…という感じですね。
色々な意味で番外編的な立ち位置の作品である事は間違いないので、、まぁこれだけを観てプーシリーズを判断しないでほしいなとは思います。
色鮮やかなイースターは見てても楽しいですし教訓もわかりやすいので、お子様にはオススメできますよ♪