日々報道などで報じられている新型コロナウイルスですが、妊婦さんはどのようなことに気を付けたらよいでしょうか。

現時点では、妊娠後期に新型コロナウイルスに感染したとしても、経過や重症度は妊娠していない方と変わらないとされています。胎児のウイルス感染症例が海外で報告されていますが、胎児の異常や死産、流産を起こしやすいという報告はありません。したがって、妊娠中でも過度な心配はいりません。

しかし、感染中の分娩方法は帝王切開が望ましく、新生児ともしばらく隔離が必要となるなど通常のお産はできません。まずは感染しないための予防が大切です。

手洗いはもちろんのこと、密閉、密集、密接、という3つの「密」が同時に重なるような場所を避けてください。

当院でも外来付き添いを控えていただく、換気する、風邪症状がある方は駐車場での窓越しの診察を行うなど、3つの密を避ける工夫を行っており、皆様にはご迷惑をおかけしております。

ご理解やご協力のほどをお願いいたします。

今回は早産についてお話します。妊娠36週までのお産を早産といい、そこで産まれた赤ちゃんを未熟児と呼びます。

一言で未熟児といっても、500g前後で生まれ、NICU(新生児集中治療室)での管理が必要な赤ちゃんと、一般診療所で36週にお産になる赤ちゃんは全く異なります。早く生まれれば生まれるほど重篤であり、せっかく産まれても治療の甲斐なく亡くなられたり、脳性麻痺による歩行困難や、酸素ボンベが必要になるなどの後遺症が残ったりすることもあります。早産の原因として様々なものがありますが、最も多い原因が子宮内の感染です。

これは妊娠前から元々起こっていることがあり、妊娠中の出血や下腹部痛など切迫早産の兆候、もしくは産科で計測する子宮頸管長の短縮が指摘されてからの治療では困難なこともあります。

子宮内の感染があることで妊娠しにくいことも知られ、治療を行うことで不妊の治療となるとともに早産も予防できる可能性があります。

検査希望のある方は当院へご相談ください。

 妊婦さんより、仕事をどうしたらよいか、との質問を頂くことがあります。

 妊娠したので仕事をしてはいけないわけではありませんが、確かに胎児への影響が気になる業務もあり、また、つわりや疲労しやすいなど、今までの働き方が難しい場面も出てきます。

 労働基準法では、危険有害業務、例えば冷凍庫内や5m以上の高所での業務を妊婦にさせてはいけないこととなっています。また、妊婦さんから事業所への申請を行うことで、時間外労働や、夜勤なども免除されます。また同じく事業所への申請により、外勤から内勤への変更など軽易な業務への変換が可能です。これら労働基準法には罰則もあるため、事業者の方には対応をお願いいたします。

 そして出血などの切迫流早産や、つわりにより飲食が困難な妊娠悪阻(にんしんおそ)など、休業等が必要と判断された場合、母性健康事項連絡カードで医師と事業者間での連絡を行ない、休業等の対応を事業所の方にお願いしています。これは男女雇用機会均等法で規定されており、事業者の方には医師の指示に従った対応へのご協力をお願いします。

 生まれた時点で何らかの疾患を持っている赤ちゃんは3-5%に存在すると言われています。多くは生活に支障を与えない軽度の疾患ですが、1-2%に生活に影響を与える先天異常を認めます。

 先天異常の60-70%が原因不明とされており、いわゆるダウン症などの染色体異常の確率は先天異常の中の5-6%と高くはありません。

 先天異常に対する出生前診断としては、ダウン症などの有無を調べる染色体検査が有名ですが、すべての異常がはっきりわかるわけではなく、自閉症や知的障害など、生まれる前には全くわからないものもあります。

 日本では、生まれてくる赤ちゃんの出生前診断は、ご両親が希望する場合のみ行っています。また、それぞれの検査によりどのような疾患が検査でき、その疾患の赤ちゃんをどのように治療するのか、その後の生活がどうか、といった説明は当院でもある程度は可能ですが、検査を受ける前には高知県では高知大学、もしくは高知医療センターで行っている遺伝カウンセリングを受けていただく必要があります。これは知識のないまま恐怖心のみで人工妊娠中絶を行うのを防ぐためであり、それぞれの施設で検査を受けていただくよう当院からご紹介しています。

妊娠に対する考え方はご夫婦でも色々おありのことと思いますが、それぞれのお考えをお聞きするのが我々の仕事です。ご心配などあればまずはご相談ください。

妊娠中にはいろいろなトラブルが起こりがちです。例えば出血や下腹部の緊満感により流産や早産の危険が高まる切迫流早産や、つわりが悪化することで必要な栄養や水分の摂取が難しくなる重症妊娠悪阻など、自宅安静や入院を必要とする状態も多くあります。

妊娠されながら職場に勤務されている妊婦さんも多く、事業所と医師との間の連絡が必要です。

また男女雇用機会均等法により医師からの指導事項にもとづき、事業所は適切な措置を講じなければなりません。

その内容は休業、勤務時間の短縮、立ち仕事の制限など細かい指導を必要とします。

 

今までは連絡に診断書を用いていましたが、これらの細かい指導が可能になるよう母性健康管理指導事項連絡カードがあり、簡便かつ安価であり活用されています。

しかし一部の事業所では診断書として認められないなど、認識の低さが問題となっています。元気な子供たちで高知の未来を支えていってもらえるよう、事業者の皆様の柔軟な運用へのご協力をお願いします。

年末年始に各地への旅行の計画を立てられる方もおられると思いますが、妊娠中の旅行については遠隔地での妊娠に伴うトラブルについて十分考えた上での行動が必要です。

よく安定期であれば大丈夫という記載もありますが、もしもその安定期に出血や細菌感染、破水などのトラブルを起こすと、その後出産までの長期間にわたり、切迫流早産として入院、もしくは未熟児として分娩となるような恐れもあります。

ご実家などの周囲などであれば、入院してもサポートを受けられますが、遠隔地や特に海外などであれば交通費や入院費などで多額の出費が必要となります。

良い思い出を残すはずの旅行が、後悔の残るものとならないように本当に必要な旅行であるかを十分考えた上で、移動先で診療が可能な病院の確認や、十分な休憩を含めた慎重な計画をお願いできればと思います。

今回は常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)についてお話させていただきます。妊娠中に起こりうる疾患の中で恐ろしいものの代表で、その名の通り胎盤が、妊娠中にもかかわらず剥がれてしまうものです。

赤ちゃんは急速に酸素が欠乏し、最悪死亡に至ります。また母体も血液凝固異常を起こし、出血からショック状態になってしまう可能性があります。

児の後遺症を残さない、母体の状態を悪化させないためにはとにかく発症してすぐに帝王切開で児を娩出することが必要で、高血圧や喫煙などのリスクのない人でも発症する可能性もあり、持続する腹痛、出血や頻繁な下腹部緊満感などの症状があればすぐにかかりつけに連絡をしていただく必要があります。

妊婦さんはご家庭の中でも、緊急時の移動手段などについて一度話し合いをされておくことをお勧めします。

細菌性腟症は、おりものの違和感や外陰部のかゆみを訴えて医院においでになられる方もいらっしゃいますが、症状をあまり伴わないことから、治療の対象とするかは議論のあるところです。

しかし妊娠初期に細菌性腟症になる、もしくは妊娠前からの細菌性腟症があることで、非常に重症の早産になる恐れもあり、今後妊娠を予定している方は積極的に治療を行うのもよいでしょう。

細菌性腟症は腟内の乳酸菌が減ることで発生するともいわれており、原因として洗いすぎ、性行為などがありますが、人からうつるものではなく、腟内の菌のバランスが悪化することが原因と考えられています。

妊娠初期に乳酸菌飲料を飲むことで早産の発症を2割予防できたとの最近の論文もあります。今後妊娠を予定される方に、ご自宅で簡単にできる良い予防法だと思います。

今後妊娠を考えられている方で気になる方は、検査、治療とも難しいものではありませんのでお気軽にご相談ください。

来る南海トラフ地震では、高知県全域で津波や激しい揺れが予想され、妊婦さんだけではなく我々医療者も被災者となります。

かかりつけ医が被災すると分娩や診察が不可能となるため、他の医療機関での診察が必要となります。

そこで、母子手帳を常に持っておくのが難しい方は、母子手帳の血圧や初期検査などが記載された部分を携帯電話の写真で保存しておくとスムーズです。

また、避難所に妊婦であることを伝えると、対策本部で妊婦の情報が集積されるため現在診察可能かといった情報や必要物資なども得やすいと思われます。

破水や陣痛、出血などの緊急時には、携帯電話より繋がりやすい公衆電話やLINEの固定電話に通話する機能でかかりつけ医や救急、保健所に設置される対策本部に連絡をしてみましょう。当院でも、TwitterなどのSNSを通じて緊急時には情報発信を行う予定です。

有効に活用してください。

妊娠中の体重管理は、以前より日本においては厳しく行われてきました。

しかし昨今は厳しい体重管理を行う根拠は乏しく, 体格など個人差を配慮してゆるやかな指導を心がけるようになっています。

近年、大規模な研究が行われ、推奨体重増加量より少ない場合には低出生体重児や早産のリスクが, 推奨体重増加量より多い場合には巨大児や帝王切開のリスクが高まることが明らかとなりました。

ではどのくらいの栄養を摂取する必要があるかというと、一般的体格の方の妊娠中摂取カロリーは初期には+50Kcal, 中期には+250Kcal, 後期には+450Kcalといずれも多くなり、後期では一般の成人男性ぐらい食べる必要があります。

日本人女性はもともとカロリー摂取量が少ない傾向にあり、過度の栄養制限は必要ないかと考えていますが、脂質摂取量が増えていることが指摘されています。また、偏食が強い方や不規則な生活をされている方もおられるため、バランスのとれた、規則的な栄養素の摂取を勧めています。