■悲劇を体験させる親

アルフレッド・アドラーは、

母親の甘やかし等によって

子どもと父親との距離を遠ざけて

共同体感覚の拡張を妨げることがある

と指摘しています。

 

通常、子どもは生まれてから

主に母親に世話をされて育ちます。

 

父親の世話は、普段はないため、

非日常的なこととして扱われます。

 

これは、

子どもは母親と結びつきやすく、

父親とは結び付きにくい

ということを示しています。

 

例えば、

「厳格な父親」が子どもに

厳しい態度で臨んだときに、

母親が子どもを擁護すれば、

子どもは母親との結びつきを深め、

父親とは離れることとなります。

 

こうして片方の親だけと

偏って結びつくことは、

共同体感覚の発達を妨げることと

なりやすいのです。

 

同じ家族なのに、

子どもから見て母親は味方で、

父親は敵となると、

協力関係をもって共同生活するという

交友の課題の解決が困難な状況になります。

 

目の前の親が、

協力関係をもって共同生活をすることが

できているのであれば、

子どもはそれを手本として

共同体感覚を発達させていけます。

 

でも反対であれば、

子どもは共同体感覚を発達させることに

役に立たないことを

親から学ぶこととなります

 

子どもを甘やかす母親を

父親が阻もうとすれば、

それだけ母親の擁護も強まるため、

結果、子どもと父親の距離は

さらに離れるだけとなります。

 

アドラーは、このような状況を

生み出す母親がいる場合について、

子どもが母親によって悲劇を体験した

ということを示している

と指摘しています。

 

もちろん反対に、

父親が甘やかして、

母親がそれに反対する状況であれば、

子どもは父親と結びつきやすく、

母親と結びつきにくくなりますから、

この場合であれば子どもは

父親によって悲劇を体験した、

となるでしょう。

 

さらにアドラーは、

このようなことが起きるのは

子どもの人生の第二段階である

と指摘しています。

 

正確に”人生の第二段階”とは

何歳のことなのかはわかりませんが、

おそらく早期の子ども時代後から

思春期前の4~6歳頃と思われます。

 

現代の年齢でいえば、

6~10歳頃に相当すると考えられます。

 

なお、

共同体感覚とは、端的にいえば、

自分の居場所がある感覚です。

 

この感覚が発達すればするほど、

感じるしあわせが増えます。

 

■子どもの父母としての協力関係

父親が仕事で家計を支え、

母親が家事を支える家庭であれば、

子どもは母親と過ごす時間の方が

長くなります。

 

父親が子どもにかかわろうと

する人でなければ、

子どもと父親の時間は

より少なくなります。

 

さらに、病気や身体的事情などで、

母親が介助するような子どもであれば、

母親とのつながりは、なお深くなります。

 

このような状況であれば、

母親が父親に

子どもに接するように促したり、

父親が母親に子どもに接する方法を

助けてもらったりすることで、

父親と母親が協力関係もって

共同生活をしていることを

子どもに示すことができます。

 

こうして示せることで、

子どもの共同体感覚は

発達しやすくなります。

 

目の前に手本となる人がいることで、

それを自分と誰かとの関係に

応用しやすくなるからです。

 

しかし、

母親が父親を利用して、

子どもとの距離を近づけようと

する人であったりすると、

たちまち母親と父親は

協力関係ではなく敵対関係となり、

共同生活ではなく

どちらが相手を支配できるか、

という交戦状態となります。

 

例えば、

子どもを甘やかす母親であれば、

子どもは自分の問題はすべて

母親が解決してくれると学ぶため、

母親を味方とし、父親を敵として

扱うことになるでしょう。

 

父親が、そんな母親の甘やかしを

やめさせようと議論するなどで

やりとりをしても、

甘やかされた子どもは母親により近づき、

父親とより離れようとするために、

家族なのに2対1に分かれてしまいます。

 

それは、母親が、

「子どものことを

最もわかっているのは自分」とか、

子どもの病気や身体的事情について

今までの経験を引き合いに出して、

「子どもの面倒を一番よく

みられるのは自分」などと父親に言えば、

父親はその通りであるため

反論できなかったりする状況に

なったりすることも同じです。

(母親と父親が反対の場合も考えられます)

 

つまり、

母親と父親との関係が、

協力関係によって共同生活をするような

ものとなっていないのであれば、

それが子どもの共同体感覚の発達を

妨げることになる、ということです。

 

それは、

母親と父親との関係が、

協力関係によって共同生活をするような

ものとなっていれば、

子どもの共同体感覚は

発達しやすい状況となる

ということでもあります。

 

■母親と父親の協力関係を高める

母親と父親の協力関係を高めるには、

それぞれ互いが「他者への関心」を

養うことです

 

「他者への関心」が十分に養われれば、

自然と相手に何をすれば

貢献となりそうかが見えてきます。

 

例えば、

父親が母親の

子どもの世話の苦労について

関心を向けられたならば、

その苦労話を聞いてあげると

貢献になりそうだと見えてきます。

 

また、例えば、

母親が父親の

仕事の苦労について

関心を向けられたならば、

その苦労話を聞いてあげると

貢献になりそうだと見えてきます。

 

他には、

「今は大変な時期だから、

最低限の要求だけ伝えるだけにしよう」

などと寛大になれたりとか、

互いの現状について共有する時間を

持つことが役に立つと感じられるような

ことです。

 

子どもの共同体感覚を

適切に発達させるなら、

まずは親自身が「他者への関心」を

養うことが最も効果的です

 

母親と父親が協力して

築いていく家庭の理想の状況

について共有して、

同じ目標を目指す仲間となること

役に立ちます。

 

■共同体の利益に奉仕する

父親に現状の悪い責任を押し付ければ

子どもが近づいてくれるので、

それに優越感を感じる母親も

いるかもしれません。

 

逆に、

母親がいかにダメかを説明して

子どもに自分と一緒に居た方が

生き延びるのに有利だと示すことで

優越感を感じる父親も

いるかもしれません。

 

でもそれは、

個人的利益を追求しているだけで、

相手を征服して自分が支配者になろうと

していることになり、

共同体感覚は高まることはありません。

 

共同体感覚が高まらないので、

感じるしあわせは増えず、

生きづらさを感じる日々を

すごすこととなります。

 

一方で、

”家族”という共同体の利益に奉仕すれば

共同体感覚は高まっていきます。

 

共同体の利益があがることは、

共同体に属する人すべてに

利益があがる、ということです。

 

例えば、

父親が健康であるのは、

父親だけではなく

母親と子どもにも利益となります。

 

母親の困りごとが解決することは、

母親だけの利益ではなく

父親や子どもの利益にもなります。

 

もちろん、

子どもの課題が解決されることも、

母親や父親の利益にもなります。

 

そしてこのような状況を

自然と整えてくれるのが

他者への関心」なのです。

 

具体的な行動については、

子どもと父親との距離を

参考にすることで、

何をすれば効果的なのかが

見えてくる、というわけです。

 

 

 

 

 

 

お読みいただき、

ありがとうございます。

 

プロコーチ11年目、常楽でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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