今日は、

甘やかされて育ったことで抱えた

「私的知性」によって自分を

拘束してしまった男性について

書きました。

 

「人生から撤退する癖」が

なぜ発達したのかを

見ていきます。

 

目次

・勝利させてくれないから撤退する

・36歳の弁護士の男性の話

・「人生から撤退する癖」の理由

・生きやすくなる鍵は、勇気

 

■勝利させてくれないなら撤退する

アルフレッド・アドラーは、

個人的に形成した信念が

生涯変わらなかった例として

36歳の弁護士をあげています。

 

その信念とは、

世界が自分に勝利させないなら、

私は撤退する」というものです。

 

その信念の実現方法が

人生から撤退する」です。

 

「人生から撤退する」とは、

人生の課題を避けることです。

 

信念が生涯変わらなかった、

ということは、

人生の課題にも立ち向うこともなかった

ということです。

 

そのため36歳にして

うまくいかない弁護士の仕事を廃業し、

実家に戻って両親に身の回りの世話を

依存することになりました。

 

なぜそのようになったのか、

アドラーの説明を私なりに

追ってみたいと思います。

 

■36歳の弁護士の男性の話

この男性は、一人っ子であり、

母親に過度に甘やかされて育ちました。

 

母親は子が将来とても優秀になる、と

父親と子を説得しました。

 

子は、その期待に応えようと

学業に励み、

実際に優秀な成果を実現することで

見事にその期待に応えました。

 

しかし、この男性は、

マスターベーションに過度に支配され、

その誤りを学校の女子に知られてしまって、

嘲笑の的になりました。

 

アドラーによれば、

この男性はエディプスコンプレックス

だったそうです。

 

エディプスコンプレックスとは、

ジークムント・フロイトによる概念であり、

息子が母親を性的な対象と見ること

示しています。

 

ギリシア神話のエディプス王の話では、

エディプスは実母のことが好きで、

父親を殺して実母と結婚した、

となっています。

 

エディプスをオイディプースと

書くこともあります。

 

アドラーは、

”マスターベーションの誤り”

についての詳細を述べていないのですが、

おそらくこの男性のマスターベーションと

母親との間に

何らかの関係があったのだと考えられます。

 

その関係を学校の女子に知られて嘲笑され、

ひどく傷ついた、ということでしょう。

 

それ以来、この男性は

女性との関係を断ちました。

 

つまり、

このときに人生の課題のひとつである

愛と結婚の課題から撤退したのです。

 

撤退した理由はひとつです。

 

共同体感覚を十分に

発達させることができなかったからです。

 

 

この男性は、学校生活を終える頃に

経済的に自立する、という課題に

直面しました。

 

ここでもこの男性は

うつ病になることで撤退しました。

 

人生の課題に立ち向かわなくても

世話してくれる母親の元に居れば

安心だからです。

 

ここでは人生の課題のひとつである

仕事の課題から撤退しました。

 

それまでも、それからも、

友人との関係を持つことは

ありませんでした。

 

つまり、

人生の課題の3つのうちの

最後の1つである交友の課題からも

撤退したのです。

 

 

アドラーは、

この男性を36歳で弁護士と

説明していますので、

その後に弁護士の仕事を始めて

弁護士としての形式だけは

あったようです。

 

仕事としては成功しているとは

いえない状況でした。

 

この男性は、その状況の責任を

自分はお客さんに悪い印象を

与えているせいだとしました。

 

これについては、この男性の

仕事の課題からは絶対に撤退する

という意志が感じられます。

 

さらには、どういうわけか、

この男性は結婚を拒否していたのに

ある女性と結婚しました。

 

その結婚は一年で離婚となり、

このときの年齢が36歳だったと

考えられます。

 

ここでもこの男性の

愛と結婚の課題からは絶対に撤退する

という意志が感じられます。

 

36歳で弁護士を廃業し、

実家に引きこもって

自分の世話を両親にさせることに

なりました。

 

アドラーは

「生涯変わらなかった」と

説明していますので、

その後も人生から撤退することは

やめなかったと推測できます。

 

■「人生から撤退する癖」の理由

この男性は

母親との世界にいるときは

母親が自分に勝利をもたらしてくれるので

とても居心地がよいのです。

 

しかし、

その世界の外へと出ると

誰も自分に勝利をもたらしてくれません。

 

そんな環境で育ったために

「世界が自分に勝利させないなら、

私は撤退する」という信念が

形成されたのでしょう。

 

そうして

人生から撤退する癖」を

抱えることとなったのです。

 

アドラーはこの信念について、

それは理性でも

一般認識(コモンセンス)でもなく

私的知性」である、と指摘しています。

 

私的知性とは、端的にいえば、

個人的な思いや価値観のことです。

 

この信念はなかなか奇妙なで、

例えば車に乗るときに、

私を目的地まで運べたなら

お礼に燃料を入れてあげよう」と

しているようなもので、

うまくいくはずもない信念なのです。

 

燃料を入れないと車が走らないように、

勝利したいなら撤退せずに

困難に立ち向かう必要があります。

 

この男性は、

そこで勇気を使う選択をせずに、

母親に依存する方が楽なので、

そちらを選択し続けた、ということです。

 

つまりは、

「負けたくない」

「勇気を使いたくない」

すなわち「楽したい」のです。

 

核にこれがある限り、

共同体感覚を発達させるのは

とても困難です。

 

甘やかして育てることは

子どもを喜ばせているようで、

実際には生きづらい方へと

追いやってしまうことに

なってしまうのです。

 

■生きやすくなる鍵は、勇気

この男性が

生きづらさを減らして

生きやすさを増やすなら、

共同体感覚を発達させることです。

 

共同体感覚とは、端的にいえば、

自分の居場所がある感覚です。

 

他者への関心を養い、

他者と協力関係を築くことで

他者貢献の機会を得ます。

 

そこで貢献できたら

共同体感覚が発達するのです。

 

そうして取り組めば、

愛と結婚の課題も、

仕事の課題も、

交友の課題も、

反射的に撤退することはなくなり、

「どうすればうまくいくか」に

興味が湧いてくるようになるでしょう。

 

その取り組むときに使う

心の力を「勇気」と言います。

 

 

 

 

お読みいただき、

ありがとうございます。

 

プロコーチ11年目、常楽でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「男性優位社会を知る」シリーズ

 

 

結婚は”女性の役割”との和解ではない

~36歳の女性の例に学ぶ シリーズ(全6回)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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