■ダメに見る目的がある

自分がダメに見える、
ということは
自分をダメに見たいときです。

別にすべてがダメでない自分を
ダメに見るということは
そう見ることで
得られる利益があって、
その利益を得ようと
しているだけです。

自分はダメな部分も
あるかもしれませんが、
ダメじゃない部分も
たくさんあります。

その「ダメな部分」に注目して
「自分はダメだ」と思おうと
しているだけです。

それはただ
休みたいだけかもしれません。

それはただ
活動を開始したいだけかも
しれません。

それはただ
他人の期待に応えることに
疲れただけかもしれません。

それはただ
他人の世話ばかりして
自分のことが後回しに
なりすぎているだけ
かもしれません。

何かと何かのバランスが偏り
片方が重たくなりすぎている
状況です。

そのバランスをとろうとする
ひとつの手段として
「自分をダメに見る」を
利用しようとするわけです。

そんなときは
「自分をダメだと見る目的」を
知るときです。

その「目的」がわかれば
自分をダメだと見続ける
必要がなくなります。

なぜなら
その「目的」に
直接向かえば済むからです。

■専門職Aさんとのセッション

専門職のAさんは
ここ最近ずっと
「自分はダメだ」と
感じています。

職場で同僚やお客さんと
上手にやりとりできなかったり、
家では家族とのやりとりが
上手にできなかったりして
すっかり自信を喪失しました。

――Aさん、
最近の自分の日常に出てくる
「自分をダメだと思ってる自分」を
上空から客観的に観察してみて
いただいてもよろしいですか?

Aさんは
職場での、ひと場面をあげて
客観的に観察してみます。

しばらくすると
Aさんの様子が
少し変わりました。

――今、何を感じていますか?

そう訊くとAさんは
「疲れてる...」と言うと同時に
涙がぽろりとこぼれました。

――そこでのAさんは
心の中で何を感じてますか?

「いい仕事がしたい。
でもできない。と感じてます。」

――いい仕事って、
具体的にどんなもの?

「はい。お客さんが喜ぶ内容、
かつ、自分が納得できる内容です。」

――それをするには
何が必要?

「準備です。
ちゃんと準備してから
お客さんに会うことです。」

――今、その準備は
百点満点で、何点?

「う、それは...5点かな。」

そんなやりとりをして
「準備の時間が足りない」と
わかりました。

そして
「準備の時間が足りない」のは
プロとして失格なので
自分はなんてダメなんだろうと
思っていたそう。

時間のやりくりも
しているつもりでも
なかなかうまくできない。

それはどうして?を知るために
現状分析に入ります。

すると
「頼まれごとを引き受けすぎ」
との結論に達します。

職場でも家でも
あれこれと言われると
つい「OK」と引き受けてしまう。

そのしわ寄せが
仕事の準備不足に現れた、
ということがわかりました。

でも頼まれごとを断ると
不満を持たれそうで怖い。

「いい仕事をする」を目的に
その目的が果たされた後も含めて
改めて一緒に見ていきます。

するとAさんは
急に立ち上がり
情熱を込めて語り始めます。

「私、いい人すぎです。
それも含めて自分はダメだと
思っていました。
それも今ここでやめます。
だって、このままじゃ
本当に自分がダメに
なってしまう。
そんなのは絶対にイヤだから。」

自分をダメだと見るのは
Aさんにとっては
他人にいい人と見られたい
最後の手段でした。

その「いい人」の解釈を変えて
「引き受けすぎ」の現状から
「適度に引き受ける」の状態へ
まずは変えていくことを
目標に設定しました。

頼まれごとをされたときに
それが本人にできることなら
本人にやってもらうように話します。

本人ができることを
自分がやってしまったら
その人の成長の機会を
奪ってしまいかねないので、
その機会を増やすことは
本人にとって良いことだ、と
解釈して。

※このセッションは
過去の複数のセッションを
わかりやすく再構成したものです。


■生きようとしている自分

人の究極の目的は
「生き延びること」です。

なので、
「自分はダメだ」と見ることの目的は
「生き延びること」と見ることも
できます。

「自分がダメ」と見るときは
自分をダメに見たいときです。

そう見る目的は
「生き延びること」に
役立つ何か
です。

自分がダメ、で止まらないで
その目的まで見ることです。

そこには
今の自分が
本当はどうしたいのか、を
知るヒントがあります。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



ダメな自分は、悪ではない。その思いは努力の証。
「ダメな自分」は結論じゃない。出発点だよ。
「自分はダメなのかどうか」よりも大切なこと
ダメな自分への声かけ
自分をダメだと思ったときは、生きようとしてるとき

自分はどう生きたいか、を知る方法