■「治療」が起きるかどうか

目の前のカウンセリングに
力があるかどうかは
それが理想主義か現実主義か
どちらを軸としているかを
見ることでわかります。

「治療」が目的なら
そのカウンセリングは
理想主義を軸としており
力のあるカウンセリングです。

しかし、
「治療以外」が目的なら
そのカウンセリングは
現実主義を軸としており
力のないカウンセリングです。

現実主義は現状を
変える力を持っておらず、
一方で理想主義は
現実を変える力を
持っています。

「治療」は
現実を変える力があるときに
起きるものであり、
「治療」が起きるカウンセリングこそ
力のあるカウンセリングです。

■目的論と原因論

理想主義は
理想を中心に
思考・行動することです。

現実主義は
現実を解釈・説明することで
終わる論理です。

理想主義は
「事前論理」と呼ばれ、
現実主義は
「事後論理」と呼ばれます。

そして「事後論理」には
現実を変える力はない
とされています。

例えば哲学は
「事後論理」であり
現実主義です。

現実を解釈し説明して
終わります。

アルフレッド・アドラーは現実を
解釈・説明して終わるだけでは
満足しませんでした。

それはアドラーが
原因論ではなく目的論を
採用していることからも
明らかです。

アドラーが
「治療」に効果があり、
実際に患者の役に立ったのが
目的論です。

目的論とは
「何が現状の原因か」ではなく
「何が現状の目的か」に
注目して思考・行動することです。
まさしく理想主義です。

患者が「こうなりたい」
「こうなったらうれしい」
という理想を中心に
思考・行動するように
促したわけです。

一方で原因論を採用した
カウンセリングだと
どうなるでしょう。

「何が現状の原因か」に
注目するため、未来ではなく
現状や過去に目を向けます。

そして現状や過去を
解釈・説明して終わります。

そこで原因を見つけると
今の問題の責任が
「自分のせいではなかった」と知り
安心できるのがせいぜいです。

安心できることには
一定の価値はありますが、
現実を変える力はありません。

■神経症の治療

神経症(心の病)になるのは
自分の属するいずれかの
共同体の利益と
自分一人の利益とが
相反するからです。

例えば空腹で
持っているお金がない場合。

他人の食料を
本来はお金と交換できれば
共同体の利益も
自分一人の利益も
満たされます。

しかし肝心なお金を
持っていないため
お金を使わずに
空腹を満たす方法を
選ばざるを得なくなります。

奪ったり盗んだりしたら
共同体の利益に反します。

お金を入手する方法もありますが
それを困難と感じれば
選択肢から外れてしまいます。

そんな場合に人は
神経症になります。

神経症から回復するには
「治療」が必要です。

その「治療」には
現実を変える力が必要です。

共同体にはたらきかけて
無償で食料を配ってもらったり
一時的に立て替えてもらったり、
または自分を変えて
お金を入手したり、といった
理想を実現させる思考・行動が
必要になります。

その活動をカウンセリングで
支援しようとする場合に、
現実主義を軸とした
カウンセリングだと
現状の解釈・説明で終わりますから
治療の効果はないでしょう。

理想主義を軸とした
カウンセリングであれば
理想とは何か、
その理想はどうしたら実現できるか、
そのために今できることは何か、
そんな具体的な思考・行動を
起こすので、
治療の効果はやがて
かたちになるでしょう。

■コーチングとの違い

コーチングが
カウンセリングと違うのは
目的が「治療」ではなく
「変革」なところです。

「治療」と「変革」は
同じ理想主義ですが、
違うものです。

「治療」は今の問題を
解決することです。

「変革」は現状にはない
理想を実現することです。

「治療」は問題がなければ
不要です。

「変革」は理想がある限り
続きます。

そしてその理想は
自身の成長とともに
成長していきます。

さらに理想が成長すると
自身の成長の可能性も
広がっていきます。

そんな理想と自身との
成長が相互に作用し合うことに
興奮します。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



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