理想を掲げ
実現しようとするとき、

常に「足りてない自分」を
自分は直視することになります。

そこで感じる劣等感は
「足りてない自分」を
正当化するための手段では
ありません。

「足りてない自分」を
「足りてる自分」へと
進化させる力の源こそ、
この劣等感です。




劣等感とは
今のままではダメだ、と
感じる感情です。

それは
理想に向かうにあたって
今のまま同じ周回軌道を
まわっているだけでは
理想にはたどり着かないと
十分わかっているから
感じる感情です。

自分の存在が
「悪である」という意味では
ありません。

ましてや、他人から見て
「あなたは劣っている」という
ものとも違います。




理想の自分になると
自分はもっとしあわせになると
信じていて、

その理想が今ここにないために
その「差」として劣等感を
感じています。

理想の自分を見るからこそ
生まれる感情が、劣等感です。

すなわち、
劣等感を感じている時は
理想の自分がある、ということです。



劣等感は、
自分の見栄えをよくするために
理想の自分を提示して
その自分が今ここにないことを
相手に「それじゃしょうがないよね」と
納得してもらうために
利用するものでも、ないのですよね。




私が幼い頃、
私の母親は
本を読むことは
すばらしいことだと
話してくれました。

本が読めれば
しあわせになれると
熱心に話してくれました。



しかし、母親は
まったく本を読みません。

なぜ読まないのかを訊くと
自分は読みたいのだが
読めない状況になっていると
そのやむを得ない事情を
答えてくるばかりです。

買うお金がないから。
→図書館があるよ。

家事がいそがしいから。
→一日一行だけなら読めるよ。

本を読むと寝ちゃうから。
→寝るまで読めてるのでは?

できる範囲でやったら?と
言ってみても、
急に話題を変えられたり
急に用ができたと席を立ったりして
うやむやにされてしまいます。

本を読むのが苦手、と
そう見えるのですが
自分は違うと言い張ります。



それでも
高いところから
「読むといいことがあるよ」と
言ってくるので、

読んでよかった経験もないのに
なんでそう言い切れるんだろう?と
幼い私には、謎でした。


みんなそうだから。
そう言っている人がいたから。
誰が見てもそう見えるから。
だから、読書はすばらいい、だそう。

???謎は深まるばかりです。



高校生の頃に
娯楽小説がおもしろくて
読んでいました。

それを見た母親は
本を読んで、あなたは偉いと思う、と
話してくれました。

娯楽小説読むのが偉い?
わからない...



その後、成長した私は
本には種類がある、とか
いろんな読み方がある、とか
本に接する中で知りましたが、
母親はまるで知らないようです。


そこで気づきました。


母親は、読書できる自分、が
理想の自分。

でも自分はできない、と
信じている。

自分にはできないが、
子供には読んでしあわせに
なって欲しい。

だから読むように伝えてる。

そう伝えるのが理想の母親。
その理想を実現してる。


それが表面。



中身は次のように見えました。


読書できない人は
他人より劣っている人、と
信じている。

だから、
読めない自分は、劣っている。

劣っている自分を
知られたくないから、
本を読むとしあわせになれると
知っている自分を演じることで
劣っている自分を隠そうとする。


読みたいと渇望しているが
やむを得ない事情があって
読むことは叶わない状況だ、と。


劣等感を
自分の身を守ることにだけ
使っているように、見えました。




それなら
高いところから
「読めばしあわせになれるから、読め」
みたいに言わないで、

「私は読書苦手だけど、
きっとしあわせになれるから
読むといいと思うよ」みたいに

同じ高さからお勧めしてくれたら
気持ちよく受け取れたのに...



理想の自分を
絵にかいた餅を眺めるごとく
そのまま見るだけでは
何も変わりません。

理想の自分は
自分が本当になりたい自分。

今ここにないものが
ある自分。

その自分を、実現するには
その理想に向けた
具体的な一歩を踏み出すことです。



劣等感を感じるということは
それだけ理想がすばらしいと
いうことです。

そして、劣等感が強ければ強いほど
今の自分との「差」が大きい、
ということです。



高い理想もあれば
その途中の理想もあります。

まずは
今の自分が
負担できる劣等感に
対応する程度の理想を目標として
時間と行程を定めていけると、

今の自分にふさわしい
行動計画ができますね。



理想があれば
劣等感もそこにある。

そう思えば、
自分らしく
劣等感を乗りこなして
いけますね。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ7年目、常楽でした。



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