実家に「気色悪い木」がある。

 

枝全体に、カミソリの刃ようなものが付いている木。

 

 
 
 

 

見た目通りに「カミソリの木」と呼ばれるこれ、寒さが緩み春になると更に気持ち悪さが増す。

 

カミソリの束の隙間から、虫の触角のような新芽が飛び出すのだ。

 

 
 
 
長年剪定されないまま置かれていたもんだから、木全体のシルエットが凄まじいことになっている。

 


 

 

15年前、夫が私の実家へ結婚の挨拶に来たときにも既にこのカミソリの木があった。

「気色悪いな〜」とひとしきり二人で盛り上がった、ある意味では思い出の木でもある。

 

 

用事があり、先日急な日程で帰省した際、実家でこの木を久しぶりにじっくりと眺めた。

 

夫にも「(気色悪い木、)まだあるよ」と写真付きでLINEしたら、「ニシキギ」とすぐに返事があった。

 

夫はこの数年で突然園芸に目覚めたから、「気色悪い木」ではなく、正式名称がすぐに分かったらしい。

 

 

夫からのLINEには続きがあった。

 

「(こんなに気色悪いのに、)なぜか紅葉は美しい」。

 

え、そうなの?

と思ってネット検索してみたら、本当だ。

めちゃめちゃ美しい。

 

 

なんでも「世界三大紅葉樹」のひとつとされているらしいのだ。

秋の紅葉が錦の織物のようにきらびやかだから「ニシキギ。」

 

あのカミソリは、コルク質の「翼」と呼ばれるものらしい。

気色悪いとか言ってごめんなさい。

 

でも茶色いあのギザギザ、私にはやっぱり不気味に見えるな。

 

 

 

 

私が生まれるずっと前から実家の庭に生えている木なのに、その名前も、紅葉の事実すらも知らなかった理由は、実家暮らしだった頃の私が一切植物に興味が無かったからだ。

 

そして、進学のために実家を出てからは、紅葉の季節にこの庭を眺める機会が無かった。

 

帰省するのは夏休みがせいぜいで、秋に実家で過ごすことが無くなってしまったのである。

ニシキギの紅葉を見るチャンスも無くなっていた。

 

 

今の私には、気色悪いけど美しいこのニシキギが、実家との距離の象徴となっている。

 

「自分が生まれ育った家なのに、庭木の紅葉すらこの目で見ることができないのか。」


 

両親の年齢を考えると、私が実家で過ごす日も人生であと何度あるか分からない。


次の帰省は夏ではなく、秋にしてみようか。

真っ赤になったニシキギが見られるだろうか。

 

妙に切ない気持ちになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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