トリップ逆ハー連載 19 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

※トリップモノです。

そういう非現実的な話が苦手な方はこの先へ進まれないようお気をつけください。

読んでからの苦情はご遠慮願います。


続きものとなっております。こちら↓から先にお読みください。
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眼鏡少年こと柳生君に協力してもらえる事になった私は、足取り軽く家路に着いた。

できる事なら今日中にいくつか試したかったのだけど、「もう遅いので日を改めましょう」と言われては無理も言えず、その日は大人しく家まで送られるだけにした。

家に帰るまでの間は特になにも起こる事はなかった。

別れ際「変なお願いしてごめんね」と謝る私に、柳生君は「あなたのお役に立てるのなら、私も嬉しいですから。」と優しく微笑んでくれて、その微笑にちょっとドキッとしたけど、それ以外は私のデリケートな心臓は静かなままだった。


どれくらいでどんな症状がでるのかわかれば、次はそれを回避すればいいだけの事。

もしかすると『慣れ』で克服する事もできるかもしれない。


協力者を得れた事で、私は心強さを感じていた。




恋愛ビギナー 返り咲き!?





翌日、学校に着いてすぐに赤髪少年が駆け寄って来た。

苦手意識が薄れたとはいえ、やっぱり彼を見ると身構えてしまう。

朝っぱらからなんの用事だ?




「お前大丈夫かよ!?」

「え?なにが?」

「気分悪くなって帰ったって聞いて心配したんだぞ!」

「あぁ・・・・。」




そう言えば、昨日途中で抜け出した理由を、「体調が悪そうだから」という事にしたと柳生君が言っていた。

それなら怪しまれないだろうと思っていたけど、こんなに心配をかけていたなんて・・・。

お母さんも未だに過剰な心配をするし、まったくもって元気な私としては少し心苦しい。




「ちょっと人に酔っただけだから・・・もう大丈夫。」

「ホントかよ?」

「うん。」




心底心配そうな顔をされて、その意外な優しさに胸がキュンとなる。

あ~ダメダメ!ときめいたりしちゃったらまたあの症状が・・・・・・。

そう思うと同時に顔が熱くなって鼓動が早くなっていく。

これくらいでときめくってどんだけ純情なわけ?

また勘違いされちゃうじゃないか!!


やっぱ俺のこと好きなんだろ?なんて騒がれないうちに立ち去ってしまおう。

そう思って「心配してくれてありがとう」とだけ言い残し、顔を伏せて立ち去ろうとしたのだけど、彼の横を通り過ぎようとした時パッと腕を掴まれた。




「お前さ・・・・・」

「な、なに?」

「もしまた気分が悪くなった時は・・・・・俺に言えよ。」

「え?」

「他のヤツじゃなくて・・・・・俺を頼れよ。」




見上げた赤髪少年の顔が、今まで見たどの表情とも違って息を飲む。

真っ直ぐに向けられた瞳から強い想いが伝わってきて、私は慌てて視線を逸らした。


自分に気があると知り、意識し過ぎるあまりに自分も好きなのかも?と錯覚してしまう事はよくある事だ。

中学生くらいならなおさらだろう。

彼の場合も、恐らくそうだ。

本気で私を好きなわけじゃない。

だけどそこから本気の恋に発展するというのも、珍しい話じゃない。


もし赤髪少年が本気で私を好きになったら・・・・・・


今まで以上に面倒くさい事になりそうだ。

そう思う反面。どこか嬉しいと感じている自分がいた。






昼休みになり、私はお弁当片手にそそくさと教室を抜け出した。

向かった先は柳生君との約束の場所である生徒会室。

なんで生徒会室?って思ったけど、心静かに一人で過ごしたい時などによく使うらしい。

学生時代に生徒会室なんて入った事がない私は、ちょっとドキドキしながら扉を叩く。

「はい。」と柔らかい返事と優しい笑顔に迎えられ、初めての生徒会室に足を踏み入れた。


なんとなく、プリントや資料なんかでごったかえしているイメージだったのだけど、部屋の中は綺麗に生理整頓されていて、会社の会議室に似ていた。

長机に2人並んでお弁当を広げ、「いただきます」と手を合わせる。

しばらく他愛無い話を交わし、穏やかな昼食タイムを過ごした。


お弁当を食べ終わった所で、彼が眼鏡を押し上げながら本題を切りだした。

少し緊張して見えるのは気のせいではないだろう。

私も姿勢を正して、彼の方へ体を向けた。




「えぇ・・・まず、花村さんはご自分で『今顔が赤くなっている』という事は理解しているのですか?」

「うん。自分の顔が赤くなってるかなってないかはわかるよ。」

「では、今までどんな時に顔が赤くなりましたか?」

「う~ん・・・1番多いのは、顔が近づいた時かな?」

「どれくらいでしょうか?これくらいなら大丈夫ですか?」

「わっ。」

「・・・・・・・・・。大丈夫そうですね。」

「・・・・そうでもないかも。」




いきなり顔を近づけられて驚きはしたものの、それ以上の反応はない。

柳生君は私の顔をじっと観察するように見つめている。

自分で頼んだことだけど、こんな近くでじっと見つめられるとなんだか恥ずかしい・・・・・・と考えた辺りで、ドクンドクンと心臓が騒ぎだした。

じわじわと顔が熱を帯びていく。




「あぁ。本当ですね。顔が真っ赤ですよ。」

「うん・・・。」

「顔を近づけただけでここまで赤くなるとは・・・・・」

「重症だよね。」




柳生君が元の体勢に戻り、顔が離れていくと、すぐに赤みも消えドキドキも治まった。

そう言えばドキドキしたり顔が赤くなってもそれが長く持続する事はないように思う。

離れてしまえばその症状はすぐに治まるという事か・・・?




「では、触れられた時などはいかがですか?」

「え?」

「こうして手を握ったら・・・・・」




膝に置いていた手に柳生君の手が重なる。

彼の心と同じ優しい温もりのする手。

だけど私の手をすっぽりと覆ってしまうほどの大きさに、やはり男の子なんだと意識せずにはいられない。

そしてまた今回も、『大きな手だな。やっぱり男の子だな。』と考えた辺りでドキドキと鼓動が早まりだした。

今度はじわじわではなく、一気に顔が熱くなる。




「っ!!」

「すごいですね。指先から鼓動が伝わってきそうですよ。」

「柳生君。面白がってる?」

「そんなつもりはないのですが・・・・」

「でもちょっと楽しいと思ってるでしょ?」

「すみません。こうも期待通りの反応をされると・・・・・」




そりゃそうだよね。

もし私が逆の立場だったら、めちゃくちゃ楽しいと思うもん。


軽く柳生君を睨みながら手を抜きとると、苦い笑いを浮かべながら「すみません」と謝られた。

昨日も思ったけど、やっぱり柳生君って二面性があるかも・・・・。

誠実そうで真面目っぽいけど、時々少年のようなイタズラな一面を見せる。

女ってこういうギャップに弱いんだよな・・・。

あぁ~ほら。そういう事考えちゃったからまたドキドキしてきた・・・。


火照る頬を両手で押さえながら俯くようにして顔を隠す。

ホント、これじゃぁ恋する乙女みたいな反応だ。

目の前で異性にこんな反応されたら、自惚れちゃっても仕方ないかも・・・。




「・・・・・・・・実験だとわかっていても、そんな顔をされると勘違いしてしまいそうになりますね。」

「え?」

「いえ、なんでもありません。」




よく聞こえなくて聞き返したけれど、柳生君はニコリと微笑むだけ。

なんて言ったんだろう?


なんとなく気になってもう1度聞き返そうとした時、コンコンと扉をノックする音が響いた。


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柳生のターン終了。

ノックしたのは誰だ!?