文教委員会想定問答(文京区学校給食費を無償化にする条例案)
議員提出議案「文京区給食無償化にする条例」は3月13日の本会議で、否決されました。
文教委員会で否決された後も、もう一度、全会派をまわってお願いしたのですが、残念です。
2月21日の文教委員会には私が説明者として出席しました。
議案説明にあたり、以下のような想定問答を作成しました。
Q1:私会計から公会計への移行が文科省から求められている。無償化により、公会計化への影響はあるか。
A1:公会計化に伴いシステム改修費、学務課職員の拡充が必要と言われている(一説によれば1億円程度)が、無償化により、複雑な計算や給食費徴収等がなくなるため、その移行コストの多くが不要になる。
Q2:就学援助世帯への給食食材費補助の事務量は無償化するとどうなるか。
A2:現在のようにそれぞれの子どもの状況を細かく計算する必要がなくなるので、事務量は圧倒的に減る。
Q3:塾代助成の方がいいのではないか。
A3:給食は学校内でできる支援。塾も重要だが、本来は義務教育の中でしっかり勉強ができ、学力向上が図られるようにすべき。学校の外の話と比較することはできず、一緒に議論できない。子どもが学校で家庭の経済力にかかわらず、おなかをすかせず授業が受けられるようにするべき。
子ども宅食や子ども食堂が増えているなど、食事の提供へのニーズは確実にあり、実際に子育て家庭の食費の負担感が強いという民間アンケートもある。一方で子ども宅食等の周知には限界があり、義務教育において、食事の提供を行うことが大切と考える。
Q4:特別区ではどのくらいの区が無償化するのか。(2月20日時点NHK調査)
A4:新年度、給食費を無償化する方針:8区
・中央区、台東区、品川区、世田谷区、北区、荒川区、葛飾区の7区は小中学校で無償化方針
・足立区は中学校の給食費を無償化する方針
理由:物価高対策としての保護者の負担軽減や子育て支援など
・「新年度当初ではないが、年度途中など今後導入方針」:江東区と杉並区の2区
・「導入するか、しないかを含めて今後検討」:中野区、豊島区、江戸川区の3区
・「現時点で導入する予定なし」と回答:その他10区
理由:「財源の継続的な確保に課題がある」「国が方向性を定めて全国一律の対応をすべきだ」など
Q5:給食の質が担保できるか
A.5:文京区が財政的に責任をもって給食を実施できるので、給食費に依存し、物価や集金状況により給食内容に影響が出ることがなくなることと、無償化と公会計化の両方を行えば、スケールメリットを生かして効率的に食材調達などが行えるため、給食内容の充実が期待できる。もしも予算が浮けば、例えば、和食の日※1を増やすことが可能ではと考える。
Q6:食材調達の際に区の商店等を使えなくなるのではないか。
A6:区の商店等から調達できる食材は優先的にそちらから調達するよう調達コードを作成するなどの対応策がある。SDGsの観点からも、近くの商店から調達することは望ましい。
Q7: 既に、低所得世帯に就学援助として給食費相当額を補助している。
A7:就学援助を利用することは当然の権利であり、積極的に利用してほしいが、そのメッセージが伝わり切らず、親や何かのきっかけで就学援助を受けていることを知った子どもにスティグマ感を与える可能性がある。格差是正のために就学援助があるにもかかわらず、逆に心理的・精神的に格差意識を助長することになる恐れがあるので、無償化し、全員が安心して食べられるようにしたい。
また、アレルギーがあり、給食のほとんどの食材を食べられないなどして、一部食材費のみ支払いたいという要望もあるが、現状では対応できず、給食そのものをたべられないというケースがある。そのような場合も、食べられる食材だけ飲食できるようになると期待される。
Q8:子どもが就学援助を受けていることを知ることやスティグマを感じる事例など起こるはずがないのでは。
A8:もちろん、基本的にはそう考える。そもそも就学援助は権利であるし、親が子どもに伝える事例はまれだと思う。しかし、ヤングケアラーについても、取り組みを始める前は1~2件程度しか補足できていなかったが、会議体を始めてたった1年で24件もの気がかりな事例の情報が集まった。今、見えていないから「ない」と断定してしまうことこそ危険である。親のスティグマ感についてもまだまだ日本社会の雰囲気を変えていく必要を感じる。
Q9:食べ物はただでは手に入らない。食料生産者への感謝の気持ちをもって、お金を払うことこそ食育。
A9:生産者への感謝の気持ちはとても重要。ただ、そもそも給食費を支払うのは親であり、子どもが給食を食べるたびに都度お金を払うわけではない。食料生産にはコストがかかることや生産者への感謝などの基本的な食育は給食活動の中で別途行われるべきである。また、教育を受けさせる義務を負うとはいえ、親の経済的負担が教育になるという考え方は子育て罰につながり、慎重になるべきである。
Q10:財源はどうするのか。子ども予算の優先順位は。
A10:予算は食材費相当額約7億円から、就学援助世帯への補助分を引いた約6億5000万円程度と考える。
これまで区は、学校施設に改築等を優先するので、給食費の無償化は考えていない、との見解だったが、先般、文京区子ども応援臨時支援金子ども一人30000円、約12億円規模を実施しており、さらに予算発表時には、区長が都の児童手当5000円に加え、高校生への現金給付を示唆している。試算するとその予算規模は約3億6,000万円+事務経費とも想定されるなど、子育て支援のための予算が拡充されている。また、このように、子育て世帯への経済的支援(それも現金給付)が行われていることから、学校施設整備を優先するという区のこれまでの主張は既に崩れている。
さらに、文京区の財政規模は令和4年2月補正で約1343億円(一般会計)。令和4年度末の早期金残高は634億円の見込み。令和3年度の決算剰余金は約67億円であり、近年継続的に多額の決算剰余金が出ているので、給食無償化の意義を考えれば、十分な財源、それも継続的に捻出が可能な財源があると考えられる。給食無償化は、お金で解決できる問題※2であり、そのお金があることがわかる。
ちなみに、財政運営に関しては安全を図り、堅実であるべきことは言うまでもなく、財政状況が許せば、区民還元をできるだけすべき(提案者の中には確かにそういう考え方の人もいる)ということが言いたいのではなく、あくまでの給食の重要性と効果を考えたときに優先度が高いと考えるからである。
Q11:なぜ条例案か。要綱ではだめか。
A11:給食の無償化自体は要綱に依らず現行の補助制度でできる。現在特別区で検討している区では規則による実施は1区、要綱を定める方針の区が数区、特に要綱等を定めず、現行の補助制度で行う区もあると確認している。
実施方法はどの方法でもいいが、区教委から無償化するとの確約がない以上、議会の力で確実に無償化を実現したいと条例案を提出した。どの会派が提出したということではなく、ぜひ、皆さんのお力で、議会主導で、給食の無償化を実現したい。
Q12:国がすべきではないか。
A12:もちろん国がすべきと考える。
しかし、むしろそのためには、文京区で実施し、無償化実施自治体が増えることで国の検討が早まるものと考える。また、1日も早く無償化を実現するためには、まずは区で始める必要がある。
Q13:なぜ10月1日施行なのか。
A13:保護者に無償化の教育的意義や食育の重要性について説明することや事務等対応など、準備や周知期間を考え、10月1日施行とした。
Q14:文京区の子どもの半分は中学受験をするので、半分の子どもしか対象にならないのでは。
A14:私立・国立に受験されることはご家庭の教育方針による選択で結構なことだが、区立学校の給食が無償化したことで、区立に行きたいとお思いになるご家庭が増えるなら、区立学校の魅力の一つとして区はアピールできる。私立中学への進学はその選択が可能な家庭でしか難しいが、区立中学には選択肢がある家庭もない家庭も両方進学する。学校給食を無償化するとは、すなわち所得制限・所得差別なく食育・義務教育を行うということである。結果の平等より、機会の平等※3を重視する区長の考えとも合致する。
ちなみに、小学校は区の対象児童の約9割が区立小学校に通っている。
Q15:4月以降の給食費の加算はどのくらいか。
A15:昨年6月10円上乗せしてから、拡充され、1月から既に、小学校15円+、中学校20円+の補助が行われ、4月以降も継続の予定。
Q16:給食費は引き落としのため、教職員への負担はないのではないか。
A16:前回の委員会で学務課長から、今は教員の負担はないとの答弁があったが、実際に現場の先生に聞いたところ、現在も引落口座の残金不足による滞納が常態化している世帯があり、毎月、引落できたかどうかを確認しながら精算しているとのこと。また、今もそのたびに担任教諭が当該生徒に督促通知を手渡ししており、周囲の生徒への配慮にも苦慮しているとのことで、実態として給食費の徴収がある限り学校の教職員の負担は残り続けることがわかった。無償化による働き方改革が望まれる。
※1:和食の日を推進する議員へのアピール
※2:「お金で解決できることはお金で解決すべき」と過去に委員会でご主張になった議員へのアピール
※3:成澤区長の初当選時のキャッチコピー「結果の平等より、機会の平等」より
令和5年度予算態度表明について
3月9日、予算委員会最終日に会派の宮崎議員が読み上げた会派の意見です。
令和5年度予算態度表明
「創」の会派意見を申し上げます。
令和5年度予算は、会派「創」が提案・要望してまいりました、子どもの保育環境向上事業、自殺対策事業の強化、リカレント教育普及促進事業、インクルーシブスポーツ推進事業、ICT支援員の増員、脱炭素の取組みに対する意識の醸成、電子申請DX等の全庁的推進など多くの事業が予算化されたことを評価します。
その他、区政運営が適正に執行されるよう、態度表明に先立ち「創」の要望・指摘事項を確認させていただきます。
・春日後楽園市街地再開発の完成に合わせ、東京ドーム・シビックセンター周辺エリアの新しいまちづくりビジョンの再構築を
・ふるさと納税等の地域通貨ポイント還元の研究を
・喫煙マナーの徹底周知、喫煙者と禁煙者の共存できる環境作り
・観光促進、施設整備など入湯税の有効な活用を
・目白台、関口地域の観光促進と活性化を
・区民がより使いやすい区民施設サービスと丁寧な周知を
・より多くの区民に歴史に触れていただくために、シビックセンターへふるさと歴史館移設の検討を
・平和祈念事業は、体験・体感したことを周囲に伝え平和に対する理解を深められるような事業を
・職員が働きやすい環境作りに繋がる職員健康診断を
・男性職員の育児休業の義務化と男性の家庭進出支援
・ペット動同行避難等、各避難所の特性に合わせた避難所運営マニュアル作成
・一般避難所での避難が明らかに困難な要支援者の福祉避難所への直接非難の
しくみづくり
・避難行動要支援者の実態把握と地域支援の実践的な訓練
・ドローンを活用した情報収集の確立
・災害用備蓄物資整備はいつでもすぐに使える状態の保持
・インフラ整備について、各事業者との連携、区民への周知の徹底
・神田川流域における更なる垂直避難先の誘致の推進
・シビック土曜に集中している期日前投票所を交通至便な場所に増設を
・町会・自治会の負担軽減のための相談に丁寧によりそうこと
・町会・自治会の支援として電子回覧板などのデジタル化のサポートを
・おくやみコーナーは区民が落ち着いた気持ちで利用できるようにすること
・全国藩校サミット文京大会事業は他の歴史的施設との連携を
・区民の芸術体験機会を増やすため、動画配信やアウトリーチ等の継続
・芸術鑑賞等、子どもたちの体験機会の拡充を
・障がい者スポーツの更なる啓発を
・スポーツ振興課とアカデミー推進課が連携した区民1人1スポーツの実現を
・B-ぐる大塚・千石・白山方面第4ルートの早期検討と運行開始
・女性や氷河期世代のリスキング、リカレント教育の機会拡充
・区民の消費者へのSDGs、エシカル消費、食品ロスへの更なる理解啓発
・「Z世代×サステナ文京プロジェクト」の活動拠点としての大塚地活跡への「小石川」青少年プラザb-lab」の新設を
・高齢者クラブは区との連携による更なる活性化を
・高齢者の孤立・孤独対策の強化を
・ヤングケアラー発見・支援体制の更なる強化を
・シルバー人材センターの更なる会員拡大
・手話言語条例の早期制定、意思疎通の促進に関する条例や障がい者
差別解消条例の制定を
・都型学童や民間学童の積極的誘致による待機児童解消と更なる利便性を
・ひきこもり支援センターの支援員の研修充実と不登校や8050問題、親亡き後生活の支援などに寄り添った支援を
・食育の観点と食習慣の形成のための小中学校の「給食無償化」
・高齢者のコミュニティの創出、社会的フレイルを防ぐために、健康マージャン教室の拡大、支援の拡充を
その他、委員会審議において「創」が指摘した点について、今後検討を望みます。
以上の意見を付しまして、令和5年度一般会計予算及び3特別会計に賛成します。
“The Subjection of Women“について(国際女性デーの読書案内)

国際女性デーにお勧めの本のご紹介です。
イギリスの政治哲学者J.S.ミルが1869年に発表した“The Subjection of Women“が、日本では岩波文庫から”女性の解放”というタイトルで出ていることは、このブログでも前に書いたかもしれません。
また、この本が150年以上前に書かれたとは思えないほど現代的なフェミニズムの本なのも、もうお話ししてしまったかも…
お恥ずかしいのですが、昨年、「流行ってるし、どんなもんかな」と思って、短期間、ネットフリックスに加入していたときに、うっかり「エノーラ・ホームズの事件簿」という映画?を観てしまったのですが(とにかく、ヴィクトリア朝モノが好きなので…タイトルで…)、このエノーラちゃんの愛読書が“The Subjection of Women“なのです。
対象年齢が大人向けコンテンツなのかどうなのかということはおいておいて(夕方やってるEテレのドラマっぽい)、画面に”MILL”“The Subjection of Women“と出たときには「おおっ!」と思いましたし、フェミニズム運動も関係するストーリーは個人的に興味のある設定でした。
こういうやわらかいコンテンツをきっかけに、若い世代がフェミニズムに興味をもったり、J.Sミルを再読するといいなと思いました。
ところで、昨年の話になりますが、北日本新聞紙上で富山国際大の彼谷先生と対談させていただきました。
その際に、アファーマティブアクション/ポジティブアクションの話になり、「逆差別」というバックラッシュにどう立ち向かうかというテーマになった際に、「なぜ逆差別ではないのか」「逆差別という主張こそ差別である」というお話をさせていただき、”女性の解放”についても少し触れました。
本は回りくどく書いてあるので、そのまま引用しにくいですが、要約すると、
女性は偏見ある社会や教育によって、不当に、才能を偏らせ、低められてきたのだから、今、適任者が少なく見えるのは当然で、その不当な状況を追認して女性を排除することをなくし、女性をその任に就かせれば、能力があることがわかる。
実際に有能な女性の例があるじゃないか。
というようなことを書いているよとお伝えしました。
つまりこれは、ポジティブアクションに対する、いわゆる「逆差別」論への明快な答えになります。
ちなみに、同書には「女性と男性は脳のつくりが違う」という俗説に対して、「それはない」という反証をかなり論理的な文章で語っています。
実際に、現代では、いわゆる「男性脳」「女性脳」というのは本当になく、個人差のほうが大きいということが科学的にわかっています。
21世紀になっても、この「女性脳」的な迷信はたびたび目にします。
女性へのジェンダーステレオタイプを再強化する言説なので、内閣府か消費者庁が広告等を注意してくれればいいのに…
と思いつつ、表現の自由もあるしなあ、通報するほどでも…と苦々しく目を逸らします。
(区のものであれば、もちろん言いますが…)
19世紀に似非科学と見破ったミルはやっぱり賢いと感心します。
