“The Subjection of Women“について(国際女性デーの読書案内) | 上田ゆきこのブログ

“The Subjection of Women“について(国際女性デーの読書案内)

国際女性デーにお勧めの本のご紹介です。

 

イギリスの政治哲学者J.S.ミルが1869年に発表した“The Subjection of Women“が、日本では岩波文庫から”女性の解放”というタイトルで出ていることは、このブログでも前に書いたかもしれません。

 

また、この本が150年以上前に書かれたとは思えないほど現代的なフェミニズムの本なのも、もうお話ししてしまったかも…

お恥ずかしいのですが、昨年、「流行ってるし、どんなもんかな」と思って、短期間、ネットフリックスに加入していたときに、うっかり「エノーラ・ホームズの事件簿」という映画?を観てしまったのですが(とにかく、ヴィクトリア朝モノが好きなので…タイトルで…)、このエノーラちゃんの愛読書が“The Subjection of Women“なのです。

 

対象年齢が大人向けコンテンツなのかどうなのかということはおいておいて(夕方やってるEテレのドラマっぽい)、画面に”MILL”“The Subjection of Women“と出たときには「おおっ!」と思いましたし、フェミニズム運動も関係するストーリーは個人的に興味のある設定でした。


こういうやわらかいコンテンツをきっかけに、若い世代がフェミニズムに興味をもったり、J.Sミルを再読するといいなと思いました。

ところで、昨年の話になりますが、北日本新聞紙上で富山国際大の彼谷先生と対談させていただきました。 

 

その際に、アファーマティブアクション/ポジティブアクションの話になり、「逆差別」というバックラッシュにどう立ち向かうかというテーマになった際に、「なぜ逆差別ではないのか」「逆差別という主張こそ差別である」というお話をさせていただき、”女性の解放”についても少し触れました。

 

本は回りくどく書いてあるので、そのまま引用しにくいですが、要約すると、


女性は偏見ある社会や教育によって、不当に、才能を偏らせ、低められてきたのだから、今、適任者が少なく見えるのは当然で、その不当な状況を追認して女性を排除することをなくし、女性をその任に就かせれば、能力があることがわかる。

実際に有能な女性の例があるじゃないか。

というようなことを書いているよとお伝えしました。
 

つまりこれは、ポジティブアクションに対する、いわゆる「逆差別」論への明快な答えになります。


ちなみに、同書には「女性と男性は脳のつくりが違う」という俗説に対して、「それはない」という反証をかなり論理的な文章で語っています。

実際に、現代では、いわゆる「男性脳」「女性脳」というのは本当になく、個人差のほうが大きいということが科学的にわかっています。


21世紀になっても、この「女性脳」的な迷信はたびたび目にします。
女性へのジェンダーステレオタイプを再強化する言説なので、内閣府か消費者庁が広告等を注意してくれればいいのに…
と思いつつ、表現の自由もあるしなあ、通報するほどでも…と苦々しく目を逸らします。
(区のものであれば、もちろん言いますが…)

 

19世紀に似非科学と見破ったミルはやっぱり賢いと感心します。