『スサノオと伝説の女神を巡る旅』。
歴史の闇に葬られた女神、
『瀬織津姫』を巡る旅は、
新たな存在を交えながら、
益々謎が謎を呼ぶ展開となっていた。
一体、
瀬織津姫、ニギハヤヒとはどういった神なのか?
そこで僕らは一度、
原点に立ち返ってみることにした。
あ「瀬織津姫…は、現在に伝わっている伝承としては、
『祓いの神』、
もしくは『水の神』、『滝の神』、『龍神の元祖』…、
とかが多いわけですよね」
ス「せやな。
それが前までの話では、
『祓いの神』というのは、
後世の人間たちが、
瀬織津姫のでかすぎる神威を封印するために、
新しく張ったレッテルや、っていう話まではした」
あ「なるほど…。
今現在の状態としては正直、
瀬織津姫のこともロクに知らない状態で、
また余計に分からないニギハヤヒさんという、
神さまが登場して、
もう訳がわからなくなってるんですよね」
ス「なら原点回帰すればいい。
ええか?
物事に悩んだ時、迷った時は、
原点に立ち返る。
これは基本やぞ」
あ「原点…。
そう考えると、
『祓いの神』の瀬織津姫としてではなく、
『水の神』、『滝の神』、『龍神の元祖』…としての、
瀬織津姫を辿ることになるんですかね?」
ス「そういうことやな」
あ「それにしてもあれですね、
相変わらずヒントはくれても、
一気に核心に迫るようなことは、
いつも教えてくれませんね」
ス「まぁいつも言ってるけど、
俺たち八百万の神々は、
『神教』ではなく、『神道』。
『答えを教える』ものではなく、
『道を求めるもの』。
だから、俺に答えを求めるのは筋違いってこと。
『道を求める』というのは、
お前自身の『魂の成長』とともにある。
そのためのヒントなら、
いくらでも与えたるけどな」
あ「『自分の成長ありき』とは、
わかってはいるんですけどねぇ~。
まぁでも、わかりました。
今から行ける、滝がある場所を探してみましょう。
そこから何か見つかるかも…」
…そうして、
僕らは、東京は府中市にある、
『瀧神社』へと向かった。
(※諸般の事情で、息子くんも連れて)
巨大なご神木とともに、
明らかに異彩を放つその神社。
ここでは今はチョロチョロっと、
流れる程度の水しか流れていないが、
かつてのこの滝は、
この地域一帯がどれだけ渇水をしようとも、
枯れることなく水が流れ続け、
人々を救い続けたという。
ス「?」
あ「ここの瀧神社のご祭神ですが…、
全国の『鴨神社』で祀られている、
カモノワキイカズチノミコト、
その母親のタマヨリ姫…の親子神と、
その祖父のカモノタケツヌミノミコト…。
神格も、
『雷を別けるほどの力を持つ神』とか、
『神霊の依り代、巫女の化身』
『八咫烏の化身』とか。
(※上から順に)
正直滝には関係がないような…」
こういう場合は祭神が変更されている場合があるわな。
残念ながらそういう場合は、
ここのようにかつての豊潤な滝が枯れていったりと、
そういう風な事態に陥ることが多い。
とはいえ、
入れ替わった祭神に罪があるわけではない」
あ「なるほど…。
しかもここのご祭神も僕は正直よく知らないから、
話そうにも話せませんしね…」
…と思っていた矢先、
小春がフラフラと金網のフェンスに囲まれた、
かつての滝のところに飛んでいき…。
小春は箱根の龍神によって力を与えられた、
スーパー小春へと姿を変えた。
あ「ど、どうしたんだろう?急に…」
ス「少し枯れてしまったとはいえ、
やっぱり滝のパワーのある場所に来ると、
龍神は力を増すんやろうな。
それにここのかつての祭神が、
小春を通して、
何かを伝えたいのかもせーへん」
あ「小春、どうした?
この場所に何かある?」
小春「…ここの場所に元々いた女神さまは、
僕にとってお母さんのような神さま…。
まだ少しだけこの小さな社にも力が残っているけど、
そこから感じるのは、
すべての水の力を司る神であり、
滝、川、井戸、湧水、蛇神、龍神…。
すべての生命の根源となる『水』の女神さまの存在…」
あ「…ということは、
やっぱりここにも、
かつては瀬織津姫が…」
小春「何だかすごくあったかい…。
優しくて、大らかで、包み込まれるような…。
僕はアマテラスさまにも、
祐くんたちと一緒に会ったから分かるけど、
まったく同じに感じるほどの、
純粋な大いなる愛の存在…」
あ「………」
小春のその言葉からだけで、
この場所にかつて鎮まっていたという、
大いなる女神の愛と優しさが伝わってくるようで…、
僕は少し涙を流しそうになってしまった…。
すると、
小春から突然柔らかい光が溢れ出し、
その波長の変化に合わせるように、
ゆっくりと小春は言葉を発した。
小春「少しだけ…何かの声が聴こえるから…、
そのまま…伝えるね…」
?「…探してくださって…ありがとう…。
その気持ちだけで…すごく嬉しい…」
小春を通してとはいえ、
初めて聞く、
『瀬織津姫』…なのだろうか…?
『何か』の言葉…。
僕は一言も聞き漏らすまいと、
しっかりと心を集中させた。
そうすると、
突然その瀬織津姫…?と思われる、
『何か』の言葉の意識が明確に、
僕らの方に向いたことを感じた。
?「フフ…かわいい赤ん坊を連れているのですね…。
そのような形で、
来られる男性の方は何とも珍しい…」
日本の神さまは、
ふとした時に、
僕らのこんな何気ないところに意識を向けてくれる。
(※アメリカTシャツとか)
そんな一つ一つが親しみやすくもあり、
同時に少し恥ずかしくもなる。
あ「な、何だかすいません…(笑)
子連れで来てしまって…」
?「フフッ…。
それが、きっとあなたの自然なのでしょう…。
この国の神々は、
元は自然の存在…。
自然が導く、
大いなる使命の下に生きるならば…、
いずれ出会うべき場所で、
出会うことになるでしょう…」
そう言うと、
言葉を伝えていた、
小春の雰囲気も落ち着いていき、
元のいつもの小春の姿に戻った。
その『何か』の存在も、
姿を消していったことがわかった。
あ「さ、先程の言葉は、
瀬織津姫さんだったんでしょうか…?」
ス「さぁな、そう簡単に現れてくれるとも思わんから、
瀬織津姫の使いの神やったのかもしれんし、
瀬織津姫を守護する神なのかもしれんし。
お前がもう少し知識と経験を積み重ねて、
違う世界を見てきたら、
もっと色んなことが、
見えてくるんやろうけどな」
…そして僕らの今日の旅は終わり、
その帰り道…。
あ「でも、どうやら『水』、『滝』という、
キーワードに間違いはないみたいですね」
ス「そういうことやわな」
あ「そこを次の手掛かりに進めていくことが、
瀬織津姫に繋がっていくの…でしょうか?」
ス「まぁそれは言われた通り、
自然の流れに任せるしかないわな。
自分一人で頑張ろうとせんと、
俺や小春、影狼、八百万の神々を始め、
色んな方々の力を借りながらな。
このタイミングで小春を成長させてもらえたことも、
必然の流れやろうし。
だから決して『おかげさま』の心を忘れず、
自分の手柄にしようとするのではなく、
今まで通りお前は、
真摯に知りたいことを突き止め、
その中で知ったこと、学んだことを伝えていく。
あくまで謙虚に、
驕り高ぶらず。
それがきっと俺たちの『自然』やろうからな」
あ「はい…。
『自然』…。
何だか大きなキーワードですね」
…そう言って、ふと車の後部座席を見ると、
息子くんが気持ちよさそうに、
スヤスヤと眠っていた。
旅とは目的地への到着を目指すとともに、
自分自身の内面の成長を得て、
結果的に、
新しい自分と出会っていくもの。
その先に、
本当の意味での、
『旅の目的地』がある。
僕らの『自然』というスタンスは、
あくまで、
『大切な人を大切に』。
『目の前の一つひとつを大切に』
このぶれないスタンスを大切にしながら、
ゆっくりでも、
決して焦ることなく、
自然の流れの中で、
導かれる道を歩んでいく。
その先に、
いや恐らく今回の場合は、
その『自然の流れ』の先にしかないのであろう、
また違った形で、
新しく成長した自分と、
その先にある、
伝説の神々との出会いを信じて。
『スサノオと伝説の女神を巡る旅』は、
『水』、『滝』、『自然』という、
新たなキーワードと、
今までにない不思議な空気感を持って、
続いていく。