SUPER BEAVER『音楽』感想&レビュー【(音楽ができる)幸せのために】 | とかげ日記

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●(音楽ができる)幸せのために

飛ぶ鳥を落とす勢いの4人組ロックバンド「SUPER BEAVER(スーパービーバー)」、メジャー再契約後の第3弾フルアルバム『音楽』のレビュー。

【収録曲】
01. 切望
02. グラデーション (映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』主題歌)
03. ひたむき (TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期オープニングテーマ)
04. リビング
05. 値千金 (「第103回全国高校ラグビー大会」テーマソング)
06. めくばせ
07. 奪還
08. 決心 (森永製菓「inゼリーエネルギーブドウ糖」CMソング)
09. 幸せのために生きているだけさ
10. 裸
11. 儚くない (映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』主題歌)
12. 小さな革命


👆全曲トレーラー

2005年の結成以来、渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原広明(Dr)という不変の4ピースで活躍するロックバンド 「SUPER BEAVER 」 。 ほとんどの作曲と作詞はギターの柳沢亮太が手掛けている。メジャー→インディー→メジャーと活躍フィールドが変遷してきた、酸いも甘いも嚙み分けたバンドだ。もうこれだけで彼らを題材とした映画を撮れるし、小説が書けるぞってくらい、ドラマチックな過程を経ているバンドである。

説教にならず、生き方を熱く説く誠実性に胸がすく思いをするのは、ブルーハーツ〜バンプオブチキン〜RADWIMPSからの系譜を感じるし、音楽性は違うが中村一義と通ずる血の通ったヒューマンなライフソングを歌っていると思う。メロコアでいうならハイスタ、スカパンクでいうならKEMURIにも通じる、鋭く包容力のあるメッセージ性。もし僕の感受性が若かったら、五指に入る好きなバンドになっていただろう。彼らのような、腹の底から鳴らされるような歌と音は僕の大好物である。

演奏も生気溌溂としていて素晴らしい。 バイタリティとパワーあふれる熱いドラミング。 ベースのうねりに生命力を感じる。ギターも表現力が豊かだ。そして、渋谷龍太の歌声に全てを持っていかれる。歌声も音も意思と力を持っている。エモーショナルという言葉は彼らと共にある。そして、エモくてもルサンチマン(≒恨み、ねたみ)の呪いを噛み切った、至極サッパリした音楽なのだ。

しかし、いくらサウンドが良くても、歌詞の内容が幼かったり、拙かったりすると興ざめしてしまう。その点、ギターの柳沢亮太の手掛ける歌詞は熱量があってこなれていて良いと思う。

そう、彼らの音楽は、How(音楽性)も素晴らしいが、 What(メッセージ)も素晴らしいのである。

伝えたいこと(What)をどのように(How)伝えるか。

音楽雑誌でいうと、Howに詳しい『サウンド&レコーディング・マガジン』『ギター(●●←楽器名)マガジン』、Whatに偏重しがちな『ロッキング・オン・ジャパン』。僕はWhatもHowも充実しているアーティストや読み物が好きだ。その点でいうと、"うみのて"、"ミスチル"、"ダニーバグ"は三強である。彼らは切実に伝えたいことを豊かな音楽的語彙を用いて表現している。あと、アジカンが奏でる『マジックディスク』('10)~『ワールド ワールド ワールド』('12)期の「What」における理想主義的なロマンティシズムにも僕は目(耳)がない。 

Why(なぜその音楽を鳴らすのか)、When(いつその音楽を鳴らすのか)、Where(どこでその音楽を鳴らすのか)、こちらの三要素も SUPER BEAVERは抜かりがない。彼らにとって、音楽を鳴らすことは生きることなんだというのが、彼らの音楽を聴くとひしひしと伝わってくる。今ここじゃなきゃ、この音楽は鳴らせない!という痛切な願いがある。ブルシットソング(クソどうでもいい歌)とは正反対の真摯な真心を感じさせる歌なのだ。

それでは、本作『音楽』をみていこう。一曲目「切望」からフルスロットル! その後も熱を絶やさぬまま、曲を繋いでいく。#4「リビング」で少々のクールダウン。チルだし癒されるし、しかし演奏の熱もあってこういう曲調の曲は好物だ。その後も様々な熱意のグラデーションから曲は紡がれていく。

リード曲のひとつである 「幸せのために生きているだけさ」もみていこう。

往年のミスチルのような包容力と存在感のあるメロディと歌唱で魅せてくれる。時代が時代なら、ミリオンヒットするだけの訴求力のある歌だ。一言一言に発見があり、アフォリズム(≒格言)の魅力が光る一曲。


SUPER BEAVER「幸せのために生きているだけさ」MV

しかし、他の曲の多勢もだいたい似たことを言える。キャッチーでカラフルだが、音楽性に関する特徴的なギミックや引き出しの幅は狭いのかもしれない。だが、繰り返し述べているように、アルバムの通奏低音としてある率直な熱意は若者に刺さるだろうし、心の壁を砕く衝撃があるだろう。そして、その熱に感化された若者が次の時代への扉を開くのだ。

「それは
ごめんねに込めた ありがとうのよう

 ありがとうに込めた ごめんねのよう

 連なった本当で グラデーションになった
曖昧の中から 愛を見つけ出せたなら」
「グラデーション」



ジャケットの絵は、音の波形にも心電図の波形にも張り巡らされた血管にも見える。そう、音楽とは血を通わせながら生きることなのだ。音楽とリスナーへの愛を彼らの演奏から感じてほしい。

グラデーションの複雑さに社会が耐えきれず、多様を目指すのではなくシンプルで潔癖な白黒に戻せという号砲が響いて時代がきしむ。しかし、その世界の中でこの真心こそはひとつの確かな答えだ。彼らの音楽が世界を勇気づけてくれますように。僕は祈る。

Score 8.4/10.0

🐼オマケ🐼
4分だけ時間をください。今日、嫌なことがあった人や毎日辛い思いをしているあなたにきっと響く曲。


ダニーバグ「退屈ハイウェイ」

これほどの名曲はそうそうあるものではない。あなたの心を悲しい青に染める曲。


うみのて「SAYONARA BABY BLUE」

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