●Feel & Think on War!
鬼才・笹口騒音さん率いるバンド「うみのて」の鬼気迫る4曲入りEP。
笹口さんの最近のトピックといえば、NHKラジオ「又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間」という番組で、ピース又吉直樹さんが笹口さんの曲を紹介してくださったこと。
曲目は笹口騒音ハーモニカ6thアルバム『H』のスペシャルおまけで収録された日本松ひとみさんと歌った宅録「僕の家」。ファンの中で出しゃばっている僕よりも通(つう)な選曲だ。なんと、又吉さんは10年前から笹口さんの曲を聴いてくださっていたという…。
また、今回取り上げるEPにも収録されている「今日のニュース」のMVが一万回再生を突破したり、同じく笹口さん率いる笹口騒音オーケストラが新譜の発売予定を昨日発表したり。笹口さん界隈では明るい話題(今日のニュース)は事欠かない。
では、本作を見ていこう。
★#1「ONCE UPON A TIME(IN SONGS)」
(👆ライブ映像)
一点を銃弾で貫くような歪んだボーカルのシャープさよ。抜けの良く乾いたスネアドラムが戦場の無慈悲な銃砲のように響く。ホーンセクションをゲストに迎えた楽器隊の演奏が奥行きの広さをもたらしている。
うみのてらしいダークでSFな世界観の曲でいいね。
★ #2「クローバーフィールド 」
SFロックバンドらしく、SF映画の名作をタイトルに冠した一曲。(僕はこの映画は未見。)
混沌的で荒々しいが、実は緻密で生命力にあふれた音。鮮度のない予定調和的な曲へのアンチテーゼなのか。
人を殺しすぎて命の価値が分からなくなってしまった兵士への哀歌。
★#3「テトリ(キッ)ス feat.内田万里」
元ふくろうずの内田さんが歌唱で参加した、よーよーオススメの名曲。毒も薬もある本作EPにおいて薬側にある曲だろうか。不眠でPTSDの兵士がテトリスをプレイして笑顔になるような、切実さの後のひとときの癒しがこの曲にはある。
内田さんの声質と笹口さんのファルセットの相性が良い。内田さんのほんのり切ない歌声が刹那のキスのように脳内で響きます。
テトリス、桃鉄、マリオなど、ゲームをパロったMVもユーモラスで必見です。マリオがコインを取る音もSEで使われていて凝っています。
★ #4「今日のニュース」
「プーッチン」との掛け言葉だけど、日本のバンドで「プーチン」という言葉が歌詞になったのは初めてか、かなり早い方だと思う。
そう、笹口さんの作品はいつもそうだけど、この歌も現在のリアルを最速で歌った、将来に残っていく普遍的でアクチャルなリアルタイムソングなのだ。
「4 Song Warning」という語句にはon warという語句がまぎれている。このon warをグーグルで翻訳すると、「戦争について」という意味だった。ウクライナとロシアの戦争を発端に戦争について突き詰めて考えた(Think!)笹口さんのアイデアが本作の至るところで光っている。そして、それに応える楽器隊の演奏(Feel!)もアイデア満載で聴きごたえがある。
時代を捉える鋭い嗅覚と、音楽で光景を生々しく描く直感と手腕。どれも素晴らしい4曲だ。今作でうみのてが放った四者四様の警告は、世界があるべき平和と幸せに向かって世界中をさまよい、さすらい続ける。
マスカムピース!✌️
Score 9.3/10.0
※このCDは笹口さんの通信サイトで買えます🤑
https://yanagawa.thebase.in/
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