TESTSET『1STST』感想&レビュー【世界で最上の音】 | とかげ日記

とかげ日記

【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。



●誇張抜きに世界で最上の音

METAFIVEからの派生ユニット「TESTSET」。
前から読んでも後ろから読んでも同じバンド名。バンド名にシンメトリーな美学を感じるが、そういった美学は彼らのサウンドにおける構築美にも見て取れる。

TESTSETは、砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一による豪華バンド。
砂原良徳…1991年から1999年まで電気グルーヴで活動。「日本プロ音楽録音賞」ベストパフォーマー賞受賞。愛称は「まりん」。
LEO今井…シンガーソングライター。向井秀徳とのユニット「Kimonos」や故・高橋幸宏が率いていたMETAFIVEのメンバーとしても知られる。
白根賢一…3ピースロックバンド「GREAT3」のメンバー。フジファブリックのデビュー作やSOPHIAの「黒いブーツ 〜oh my friend〜」など多数の作品のプロデューサーとして活動。
永井聖一…相対性理論のギタリスト。作曲した山下智久「愛、テキサス」(やくしまるえつこ作詞)がオリコン週間シングルチャート1位を獲得。

それでは、彼らの1stアルバム『1STST』について見ていこう。

情緒を感じさせる前に鉄壁のラディカルなリズムが耳をかっさらう。強靭でクールな打ち込みサウンドは無敵。無機質な音のはずなのに有機的にグルーヴィー。日本で最先端なのはもちろん、世界でも最先端で最高峰なサウンドだと思う。ある方が"良い歌"に音質は関係ないと言っていたけど、"良い音楽"には音質は関係あるよね。この最高にハイファイな音質だからこそ、聴く快楽は半端ないのだ。

こうした強烈で高貴な打ち込みの音には、YMOやデヴィッド・ボウイなどの80年代の音楽をモダンにアップデートした印象を受ける。そういった点ではサカナクションと通じるものがあるのかもしれない。もちろん、80年代だけではなく、オールタイムでかっこよいロックの要素を受け継いでいて、たとえばポストパンク(P.I.L.など)のソリッドさや、インダストリアル的な強いビートの要素をそのサウンドに聴き取れるだろう。

この真にラディカルでクリエイティブなサウンドは、電子音楽と録音の手だれである元・電グルの砂原さんや電子音楽に理解が深いメンバー達の試行錯誤のたまものだろう。過去に僕もレビューを書いたTM NETWORKがJ-POPとテクノの融合に振り切れた打ち込みサウンドなのに対して、TESTSETはロックとテクノの融合(まさにサカナクションの目指す音楽と重なり合う。しかし、サカナクションはフォーク寄りか)に振り切れたサウンドだといえるかもしれない。

さて、過去にceroを論じる際に僕が引き合いに出した、某音楽評論家兼ミュージシャンの方が言っている「白人は足、黒人は体幹、黄色人種は手でリズムを取る」という言説。TESTSETによる音楽は、リズムの根幹に足も体幹も手もあるのが感じられる。そんな音楽は他のミュージシャンでは滅多に聴けない。

LEO今井によるボーカルについても触れておこう。切れ味の鋭さと無骨さのコクが彼のボーカルにはある。完全に出来上がっている隙のないボーカルだ。また、歌詞は英語が多いが、#1「El Hop」などの曲では日本語の歌詞を用いている。この歌詞の日本語の響きには奇妙な新味や生々しさがある。日本語の響きも英語の響きも考え抜いて使い分けしているボーカルだと思う。

少しも浮つかずに音と歌を実直に重ねていく、彼らの姿勢に共鳴する。時代・国籍に束縛されない未来的で普遍性のある音楽を演奏する、日本が産んだスーパーバンドだと思う。

Score 8.9/10.0
(音だけでいったら10点満点です。ただ、テクノに対して僕みたいなリテラシーが低い人にもどの曲か判別しやすい歌メロとアレンジを望んでいます。また、グサっと刺さるドラマティックな展開や、一発で覚えてしまう名言的でキャッチーな歌詞も欲しかったです。)


⬆︎ダサさの隙もない動画も👍

🐼こちらの記事も読まれたい❣️🐼
👇METAFIVEのメンバーでもあるコーネリアスのライブレポです。
Cornelius(コーネリアス)ライブ@六本木ヒルズアリーナ【TOKYO M.A.P.S】

👇筆者(よーよー)推しのバンドの入門記事です。
うみのての歴史と音楽を名曲8曲で振り返る【初めて/入門者の方もぜひ!】🌊
神聖かまってちゃん入門【オススメ曲/名曲MV10選】😇
オルタナバンドの新星「Khaki(カーキ)」の魅力を探る【初めて/入門者の方もぜひ!】👔
新世代ギターロックバンド3選【ダニーバグ、The Whotens、ウマシカて】🎸