熱愛報道があってもKing Gnuでは断然井口派です【インタビューで見られる詩性】 | とかげ日記

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King Gnu が出演した『情熱大陸』において、雑談の際に彼らが半ば冗談で歌った"All You Need Is Love"。ビートルズが同曲でフランス国歌をイントロに用いたのは、武器を取って敵を倒せと歌う仏国歌をディスる意味合いもあった。King Gnuの愛にも、それと同様の鋭さを感じる。

King Gnuのリスナーには、常田大希派と井口理派がいるようですが、僕は井口派かなー。 高音のボーカルも好きだけど、あの人間臭さが良いじゃないですか。 『AERA』のインタビューで「影響を受けた人は?」と聞かれ、「ザギトワ選手。アスリートの弱い部分に惹かれるんです。多分この人も泣いているだろうな、と」と答えるあたり。

常田さんだけでなく、井口さんにも歌詞を書いてほしい。最初は拙くていいんです。徐々に語彙を増やし、言葉の組み合わせの仕方を考えていけば、きっと良い歌詞が書けます。僕、常田さんよりも井口さんの方が詩的な人間だと思うんです。

常田さんは、"自分は文学的な人間ではない"とインタビューで答えている。歌詞のメッセージ性は強いが、文学的な要素はそのメッセージ性に劣るだろう。(しかし、それでも充分に文学的。例えば、「ユーモア」の「暗くなったら火を灯そう/孤独を分け合えるよ」という歌詞はセンスの塊だと思った。)

ザギトワ選手の強さの中に弱さを見つけるあたり、井口さんは詩的な人間だと思う。

ナタリーのインタビューで、ユニークな比喩表現を連発しているところも、詩的だと感じた理由だ。

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・「Sympa」もけっこうこってりしてるアルバムだと思うんですけど、今回のは博多とんこつラーメンの細麺が極太麺に変わった、みたいな感じですね(笑)。さらに食べ応えがある。

・メディアの出方ひとつにしても、音楽、ライブやアルバム制作に対してのことにしても、King Gnuは1000の球が来たら全部場外まで飛ばしてやろうぜという気概でやってきているバンドだから。

・(歌謡曲やJ-POPについて)僕も同じかな。台所で母ちゃんが口ずさんでいたり、仕事中に思わず歌っちゃったりするような曲。King Gnuの曲たちはそうなり得る曲たちだから、誰しもに届きうるものなのかなという気がします。
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次のアルバムでは、常田さんも井口さんも、"強い"ものだけではなく、"弱い"とされているものの中にも価値を見つけてほしい。傑作アルバム『CEREMONY』の常田さんの歌詞は、"弱い"とされているものは切り捨てられるだけという、非情にも感じられる鋭さで成り立っている。

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「明日を信じてみませんか/なんて綺麗事を並べたって/無情に回り続ける社会/無駄なもんは切り捨てられるんだ」

「人生にガードレールは無いよな/手元が狂ったらコースアウト/真っ逆さま落ちていったら/すぐにバケモノ扱いだ」
(以上、「どろん」)

「自分の替えなど/いくらでもいるんだ/自惚れんなよ/世界はそんなもんだって/生きてりゃわかるさ」(「Overflow」)

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しかし、世の中に必要なことは、シビアな現実を直視した上で理想を描いてみせることだと思う。ここで僕が言う理想とは、全ての人が生きているだけで価値が認められる社会にすることだ。そして、太宰治も言っているように、弱い者の友であることこそ、芸術の出発点であり理想なのだ。

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「芸術家は、もともと弱い者の味方だった筈なんだ」
(中略)
「弱者の友なんだ。芸術家にとって、これが出発で、また最高の目的なんだ。こんな単純なこと、僕は忘れていた。僕だけじゃない。みんなが、忘れているんだ。」
(太宰治「畜犬談」)

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ところで、井口さんとアイドルユニット「ゆるめるモ!」の元メンバー「あの」の熱愛がスクープされ、井口さんが一部から非難されている。しかし、男女の場合で違うのかもしれないけど、僕の大好きな内田万里(ふくろうず)や佐藤千亜妃(きのこ帝国)に熱愛が発覚したとしても、何がいけないのか僕には分からない。

有名人に熱愛報道が出ると冷めるから、そういう報道が出ないようにするのがプロだというのも意見として尊重するけど、僕自身は有名人だろうが一般人だろうが、恋愛する自由があると思っています。

バレないようにやれと言う人もいるけど、コソコソやっている方が僕は嫌だな。こう思うのは少数派?

常田さんも次のようにツイートしている。

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「例の報道が予想以上の騒ぎになってるらしく驚いた,いつからそんな応援のされ方になっちまったのか.
清廉潔白,誰からも好感な奴なんて嘘臭えし,とにかく法にさえ触れなきゃなんも問題ないと思ってる.
この一件で離れたと言ってるファンなんざ引き止める義理もねえ.

鳴らしてる音が全てだろ?なあ兄弟」

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そう! 鳴らしている音が全てだ。

話がそれたけど、僕は断然井口派なのです。尖ったサウンドの中で歌われる美しい高音のボーカルに、鋭さの中にある愛を幻視するのです。





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