頭痛 あれこれ -5ページ目

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

薬の多くは化学薬品。蓄積すると全身の機能が低下する


 現代は、病気を薬でなおすことが当たり前になっています。医師のなかでも、薬を出すことだけが治療になっている人も少なくありません。そのため日本は世界でもっとも薬の消費が多い国になっています。多くの人が飲んでいる薬とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。
かつて西洋医学の薬が普及する前は、病気をなおすのに薬草などの天然の生薬が使われていました。生薬には、たくさんの成分が自然の状態で含まれています。
 一方、西洋医学の薬のほとんどは、石油を原料とした「脂溶性の化学薬品」です。 プラスチック、ナイロン、農薬などと同じ、「石油化学工業製品」だということ。多くは単一の成分が精製された合成物であり、自然からかけ離れた人工物ということになります。
 脂溶性のものは水に溶けにくいため、尿から出すことができません。人は、脂溶性の化学薬品を、効率的にからだの外に排出する機能をもっていないため、蓄積されることになります。ちなみに、ビタミンにも水溶性のものと脂溶性のものがあります。脂溶性のビタミンには、ビタミンA・D・E・Kがありますが、からだに有益なビタミンでさえも、脂溶性の場合は過剰に摂取すると処理できないため体内に蓄積され、中毒を引きおこします。 消化管で吸収された化学薬品は、まずは肝臓に運ばれます。化学合成物はとくに分解しづらいため、肝臓に多くの負担がかかります。負担をかけ続けると、肝機能が悪くなります。肝機能が悪くなると、ますます化学薬品を処理する能力「解毒能」が低下します。


 また、現在飲まれている化学薬品の多くは、交感神経を一方的に亢進します。交感神経が緊張した状態では、解毒能がますます低下します。肝臓で処理しきれない化学薬品は、全身に運ばれることになります。化学薬品が、全身の毛細血管や血管からしみ出して細胞をとり巻いている細胞外液にとどまると、全身の細胞に長期にわたり、ゆっくりと毒性を発揮します。脂溶性のものは、リンパ管に入りやすいという性質もあります。リンパ管は免疫を担当する細胞の通り道でもありますので、ここに化学薬品がとどまると、免疫系に重大なダメージを引きおこし、感染症やがんなど、あらゆる病気の原因になります。
 西洋医学の薬の多くは対症療法であり、病気を根本的になおしません。また対症療法は、自然治癒力を奪うことにもつながります。ただし、すべての薬を使ってはいけないというわけではなく、いのちにかかわるときや、激しい痛みなどつらい症状が強い場合は、 一時的に使うべきです。
  なるべく避けたいことは、長期にわたって薬を使用すること。食事や生活を見なおすことを最優先させましよう。そうすることで、今飲んでいる薬を減らすことも可能になります。


抗生剤はからだに大切な常在菌にもダメージを与える


 抗生剤は、微生物を殺したり、働きを阻害したりするための薬です。一般的には、細菌に対する薬を指しますが、ウイルスやカビ、寄生虫に対する薬もあります。
 「抗生剤は20世紀最大の発見」とも言われ、重篤な感染症の治療に使われ、多くの命を救い、人類に貢献してきたことは間違いありません。しかし、いっぽうで、微生物を排除する行為でもあり、その行きすぎは現代病を急増させた原因にもなっています。
 どのような場面でも抗生剤を使わないことがいいわけではありません。重篤な感染症のときは積極的に使うべきでしょう。しかし、軽症の感染症にまで安易に抗生剤を使うことには多くの問題があります。それを適切に判断することも、医師としての重要な役割だと思います。抗生剤を使用する最大の問題点は、病原菌のみならず、常在菌も大きなダメージを受けるということです。
 常在菌は、健康な人にはなにも悪さをしないばかりか、私たちにとって有益なものです。たとえば腸内細菌は、私たちの健康にとってもっとも大切と言っていいでしょう。
 とくに子どもの場合、抗生剤によって一度腸内細菌叢が破壊されると、回復に時間を要します。
 口腔内の常在菌もなくてはならないもので、これがダメージを受けると口腔内の感染につながり、リウマチやlgA腎症など、さまざまな病気を引きおこす要因にもなります。 抗生剤を使用することで常在菌がいなくなってしまうと、言わば丸裸の状態になります。 この状態では別の病原菌がつきやすくなり、再び抗生剤を使用しなければならないという悪循環に陥ります。
 抗生剤を使用した場合のもうひとつの大きな問題は、耐性菌の発生です。つまり、抗生剤を使いすぎると、細菌のほうが変異し、抵抗力を獲得し、その抗生剤が効かなくなるのです。抗生剤が開発されてもすぐに耐性菌が出現する様は、よくイタチごっこにたとえられますが、実際の状況はより深刻です。
 人の抗生剤の開発力には限界がありますが、細菌の耐性獲得能力は無限大と言ってもいいくらいです。どんなに強力な抗生剤を開発しても、効かなくなるのは時間の問題であり、そのうち開発が追いつかなくなります。すでに、あらゆる抗生剤が効かない細菌も出現しています。
 ほかにも、抗生剤による副作用の問題があります。多くは、じんましん、発疹、肝機能障害などですが、アナフィラキシーショックや全身の発疹を特徴とする「スティーヴンスージョンソン症候群」などの重篤なものもあります。熱性けいれんをおこしやすくする抗生剤もあることがわかっています。


 ミトコンドリアは細胞内で細菌のように見え、実際、昔、真核細胞生物に入り込んだある種の細菌がその先祖であると考えられています。このように、ミトコンドリアは細菌的な性質を有していることから、他の細菌類と同じように抗生物質により殺傷される可能性が高いのです。細菌に近い生物であったミトコンドリアにも少なからずダメージを与えます。
 こういったことから、意味のない風邪での抗生物質の服用には注意が必要です。
 また、牛肉、豚肉、鶏肉など、大量生産される畜産食品や養殖魚には抗生物質を含むエサを用いて飼育されたものが多く、それらを通して抗生物質が摂取されることになりますので、これらの食品のとり過ぎには注意が必要です。


睡眠剤は依存性が高いことが問題


 不安やノイローゼ、パニック障害などに使用される薬は「マイナートランキライザー」という薬で、一般的に「安定剤」と呼ばれるものです。安定剤のなかで、比較的すぐに効き、作用時間が短いものが「睡眠剤」。これは、とても多くの人が日常的に気軽に使用しています。
 不眠は、あまり気にしないようにしましょう。「まったく睡眠障害の訴えがない人よりも、月に何度か不眠を覚えた人のほうが、死亡率が低い」というデータがあります。ただし、睡眠剤を飲んでいないことが重要です。睡眠剤を飲んでいない人に比べて、飲んでいる人の死亡率は1年に18錠以下でも3倍以上、132錠以上では5倍以上になり、さらにがんのリスクも増加するという報告もあります。
 睡眠剤は、一時的に精神の不安状態を落ち着かせることができますし、どうしても眠れないときに、とりあえず眠ることはできます。しかし、問題はしだいに効果が少なくなり、耐性ができてしまうこと、中止したときに不安や不眠がひどくなるという離脱症状による依存があること。
 つまり、やめられなくなることが多いうえに、増量が必要になることも多いのです。ほかにも睡眠剤の副作用として、肝機能障害、免疫抑制、昼間の眠気の出現、活動低下、高齢者の転倒などがあります。
 不眠には理由があります。睡眠剤を飲むことは、とりあえず眠るという対症療法であり、不眠症を根本的になおしているわけではありません。薬に頼るのではなく、原因にアプローチしない限り解決しません。まずは生活をととのえることからはじめてみてください。

 先日も、大阪の雑居ビルでの放火・殺人事件でも、諄いばかりに問題にしましたが、世間で言う、評判のよい患者受けのよい精神科・心療内科の医師とは、患者さんに逆らわない医師が”よい先生”と言われているように、このような医師は極めて安易に睡眠薬・睡眠導入剤を処方し、後々、どのような結果に至ろうとも責任は一切とってくれません。このため、必ず、離脱症状に苦しめられ、後々、認知症へと進展してきます。この機会のもう一度”よい、お医者さん”とは、どのような医師像なのか、再確認しておく必要があります。そして、患者に迎合する、世間的に言う”よい医師”を、この世から抹殺しなくては、認知症撲滅など夢のまた夢でしかありません。


規則正しい生活が体内の状態を一定に保つ


 健康的な生活の一番の基本は、規則正しい生活にあります。
 からだの内外におこるさまざまな変化に対応して、体内の状態を一定の範囲に保つ機能を「ホメオスターシス」と言います。なぜ規則正しい生活が重要なのかといいますと、このホメオスタシスに直接関係しているからです。
 ホメオスタシスには、自律神経系、内分泌系、免疫系の3つの系があります。
 これらは独立した系でありながら、連動して動いています。たとえば自律神経系では、昼間は活動を支える交感神経が優位になり、夜間は休息をもたらす副交感神経がおもに働くといったように、1日の流れのなかで、リズムをつくって活動しています。ですから、規則正しい生活をおくることにより、自然に沿ったリズムができ、からだにスムーズな働きがもたらされるのです。
 本来は、日の出とともに起き、日没とともに寝るのが理想なのですが、現代社会でこれを行うのはとても困難です。乱れがちな生活をととのえるもっとも重要なポイントは、起床の時間を一定にすること。人の体内時計は、24時間よりも30分ほど長くなっており、そのままでは少しずつ後ろにずれていくのですが、朝の光にはこれをリセットする役割があります。そのため、まずは朝起きるというリズムをつくりましょう。次に、食事の時間と就寝の時間を一定にします。可能なら、仕事や休憩、運動、入浴なども、同じ時間にするのがいいでしょう。
 おとなである私たちも、生活が乱れたときや、体調がすぐれないときはイライラし、人の意見に耳を貸せなくなりますよね。子どもであればなおさら。生活リズムをととのえることで、心身ともに活気のある状態を保つことができるのです。


自然治癒力を支えているのは睡眠と休息


 夜は、休息と睡眠の時間です。その開、交感神経が休んで副交感神経が優位になり、からだのさまざまな部分を修復、浄化しています。自然治癒力を支えているのは、睡眠と休息です。
 睡眠不足は、自律神経のバランスを著しく損ないます。からだの修復ができない状態が続くと、あらゆる病気の原因となります。睡眠時間は人により異なりますが、少なくとも7~8時間は質のいい睡眠をとりましょう。不眠がちな人は、悩みすぎないことが大切。 睡眠薬に頼ってしまうと、さまざまな副作用と依存をもたらし、薬がやめられなくなります。気をつけましょう。
  不眠の原因の多くは、不規則な起床と就眠時間にあります。毎朝、太陽の光を浴びて体内時計をリセットすることからはじめましょう。コーヒーなどのカフェインの摂取は、午前中にします。
 昼間は、運動などをして活動的に過ごすようにしましょう。夕方からは、眠るための工夫に入ります。午後9時以降に飲食しないようにして、寝る前のテレビ、パソコン、スマホなどを見るのは避けましょう。寝室では電気を消し、真っ暗にするほうがいい睡眠が得られます。
 最近では、夜更かしをする子どもたちがとても増えています。昼間は外でよく遊ぶこと、ゲームなどは使用時間を限定し、メリハリのついた生活をおくらせることが大切です。


適度な運動が多くの病気の予防になる


 適度な運動は、健康にとって必要不可欠なもの。積極的な運動が必要なのはおとな、とくに中高年の人です。軽い運動でも、健康の維持、肥満・生活習慣病・骨粗鬆症の予防、ストレス解消など、とても多くの効果が期待できます。
 昨今、高齢化社会にともない、骨、関節、靭帯、脊椎、脊髄などの運動器障害により介護が必要になるリスクが高い状態「ロコモティブシンドローム」の人が増加しています。 高齢者の筋力、持久力、バランス能力の維持のためにも、適度な運動が重要です。何歳になっても、無理のない範囲で運動をしたほうがいいでしょう。
  アスリートを目指すためではなく、一般の人が健康になるためにする運動としては、「有酸素運動」が適しています。有酸素運動は、十分に酸素をとりいれながら、持続して行う全身運動です。具体的には、少しきついと感じるくらいのウォーキング、サイクリング、水泳、軽いジョギングなどです。30分くらい続け、さらに毎日続けることにより効果が出ます。有酸素運動は、心臓や血管に対する負担が比較的軽いのが特徴で、肥満やメタボリックシンドロームの解消にとても有効です。老化を予防し、筋肉や心肺機能などの能力も維持してくれます。
 有酸素運動だけでも最低限の運動にはなりますが、筋力運動(筋トレ)、柔軟体操(ストレッチ)を組み合わせるとさらにいいでしょう。
 筋力運動は、筋力、持久力を維持し、ケガの防止にも役立ちます。年齢に関係なくやりやすいのが、スクワットと腹筋です。
 簡単な例を示しましょう。スクワットは、「息を吐きながら、ゆっくりと可能なところまでしゃがみ、4秒ほどキープする」、これを5回くリ返すだけです。腹筋は、「息を吐いておなかをへこませ、30秒キープする」だけなので、立っていても座っていてもできます。 このような簡単な方法でも効果があります。1日おきくらいの頻度で行いましょう。
 柔軟体操は、筋肉をのばす運動になります。ストレッチの効果には、血行促進、疲労回復、関節可動域の拡大、筋緊張の緩和などがあります。首、腕、肩甲骨、背中、腰、股関節、足首など、それぞれをまんべんなくのばします。さまざまな方法がありますので、自分でやりやすい方法を見つけ、こちらは毎日行いましょう。
 なお、運動する際には、正しい姿勢と呼吸も重要です。
 よりいっそうの効果を出すためにも、意識してみてください。


姿勢を正すことであらゆる不調が改善される


 姿勢と健康には、とても大きな関係があります。ゲームや携帯電話、パソコンの普及や、椅子に浅く座るなどの影響から、いわゆる猫背(背中が丸く曲がり、肩が前に出た姿勢のこと)が多くなっています。猫背になると、首が前に垂れ、肩も前に落ちて頭部全体が前へ移動し、腰が丸くなるなどの不自然な姿勢となり、骨格や筋肉がゆがみます。
 人の骨格は、仙骨(腰椎の下部にある骨)を中心とした骨盤の上に背骨があり、さらにその上に、重い頭をのせています。これに両肩と腕がついた「やじろべえ構造」をしており、両腕とあごにより絶妙にバランスを保っています。さらに、股関節、膝、足首などを含め、すべての骨は連動しており、1か所がバランスをくずすと、すべての骨に影響が出ることになります。
 猫背により呼吸が浅くなると、血管を圧迫し、血流も悪化します。からだのねじれから内臓や筋肉、神経への負担もかかります。
 このように、姿勢の悪さはあらゆる心身の不調、たとえば肩こり、腰痛、膝痛、偏頭痛、うつ病、冷え、便秘、下痢、生理不順、アトピー性皮膚炎、花粉症などの原因になります。
 子どものときから正しい姿勢がとれるように、親が配慮してあげましょう。
 立っているときの正しい姿勢は、あごを引き、背筋をのばして軽く胸をはります。左右の肩、腰は水平にし、腹筋に軽く力を入れておなかを引っ込めます。横から見て耳、肩、股関節、膝、くるぶしが一直線になります。
 座っているときの正しい姿勢は、座面に深く座り、背もたれに背をつけます。軽くあごを引き、膝、足首の関節が90度になるように座ります。座っているときに脚を組むことはタブーです。クセになっている人は、すぐにでもやめましょう。


深い呼吸と腹式呼吸・鼻呼吸が健康のカギに


腹式呼吸のすすめ


 「息」は、「自(分)」の「心」と書きます。多くの人は意識したことがないかもしれませんが、「呼吸の仕方は、その人の生き方そのもの」と言っても過言ではありません。現代人の呼吸は、ストレスが多いためか浅く短くなっており、健康にさまざまな悪影響を与えています。
 呼吸は、自律神経により無意識に調節されていると同時に、意識的にもコントロールすることが可能です。息を吐くことは副交感神経を、吸うことは交感神経を刺激します。からだにいい呼吸とは、ゆっくりとした深い呼吸のことで、からだの活動に必要な酸素を十分にとり込みます。
 さらに、「腹式呼吸」が、健康とリラックスのカギなのです。
 腹式呼吸は、横隔膜を上下に動かす呼吸法です。特別な訓練は必要ありません。とにかく息をできるだけゆっくり、長く吐くことに集中しましょう。吸うのは、吐ききったあとに自動的に空気が入ってくるのにまかせます。
 吸気と呼気の比が1:2以上になるようにしますが、なるべく呼気が長いほうがよく、1:10でも大丈夫です。腹式呼吸により、副交感神経を優位にし、リラックスすることがもっとも重要で、それにより免疫系、ホルモン系も調節されます。
 また、幸せホルモンである「セロトニン」の分泌もよくなります。深い呼吸により、体内にとリ込まれる酸素の量が増加し、内臓の刺激にもなり、ダイエット効果も認められます。
 ちょっと疲れたなあと感じたら、「深呼吸」も効果的です。日々の生活に意識してとりいれましよう。


口呼吸はしないこと


 口は本来、食べものの通り道で、呼吸器ではありません。いっぽう、鼻は天然の浄化・加温・加湿装置の役割を果たしており、排気ガス、放射能、PM2・5、黄砂、その他の環境毒など、空気中にあふれる有害物質を遮断してくれます。だからこそ、鼻呼吸が重要です。
 口腔内(扁桃や歯およびその周囲、鼻の奥である上咽頭)には、空気や食べものとともに入ってきた病原体などの異物を食い止める働きをもつ、扁桃などのリンパ組織が集中しています。そして、リンパ球(白血球のひとつで、免疫に指令を出す役割をもつ)が表面に露出したまま活性化しているなど、人体でもきわめて特殊な場所です。
 最近、口腔の細菌による慢性の感染「病巣感染」が、遠く離れた臓器や全身の病気に関係していることがわかってきています。病巣感染により、口腔内で防ぎきれなかった細菌そのものや、細菌に過剰に反応した白血球・免疫物質が血管をめぐり、遠く離れた臓器や全身の反応を引きおこしていると考えられます。その証拠に、扁桃の摘出や上咽頭の消毒などが、IgA腎症(腎臓病の一種。人工透析となることが多い)やリウマチなどの炎症性疾患にとても効果があるのです。
 そのほか、花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息などのアレルギー性疾患、ベーチェット病(目、皮膚、口腔内の粘膜などに炎症発作をくり返す難病)・潰瘍性大腸炎・頭痛などの自己免疫疾患、過敏性腸症候群、うつ病、めまい、肩こり、不眠、睡眠時無呼吸症候群など、非常に多くの病気にも効果があります。
  つまり、扁桃の摘出や上咽頭の消毒のよしあしは別として、病巣感染の重要な原因のひとつとして、□呼吸による口腔内の乾燥やダメージがあると考えられるのです。
 口呼吸になる理由は、もともとの素因や素質もありますが、やわらかいものばかりを食べることで嚥下(飲み込むこと)の力が育たなかったり、前傾姿勢であったりすることなどが考えられます。                               
 さらに私は、抗生剤やうがい薬などにより、口腔内の常在菌が排除されていることも、病巣感染によるさまざまな病気に影響を与えていると考えています。口腔内の常在菌が元気であれば、病巣感染自体が減ります。また、くリ返しになりますが、免疫系の異常は微生物の排除に根本の原因があるからです。
 今すぐ家庭でできる対策のひとつは、おきている間は□呼吸をやめることに尽きます。
 もうひとつ、福岡県の内科医・今井一彰先生が推奨されている「あいうべ体操」もおすすめです。これは、ゆっくりと思いっきリカを込めて、「あ」「い」「う」「ベー」と発音するのを、数回くり返すだけの簡単な体操です。
 そのほかにも、睡眠時のロテープ、鼻うがいなども効果があると言われています。ただしこれらは、医師の指導のもとで行うようにしてください。


日光にあたると死亡のリスクが低くなる


 最近は、紫外線の害だけが強調され、なるべく日光にあたらないようにしている人が多いようです。たしかに、紫外線には害があり、しみ、しわ、皮膚がんなどの原因のひとつになることも知られています。そのほか、白内障、翼状片(白目の結膜が、黒目部分に入り込んでくる病気)など、目の病気の原因にもなりますので、日光の浴びすぎには注意が必要です。
 しかし、適度に日光にあたることは、じつはとても健康にいいのです。いちばんのメリットは、皮膚によリビタミンDが産生されること。ほかのビタミンがおもに食物から体内にとり込まれるのに対し、ビタミンDは、必要量の80~90%が日光浴により体内で産生されます。これは紫外線の働きによるものですので、日光にあたることが重要なのです。
 ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、子どもでぼ、くる病(骨が石灰化して弱くなってしまう病気)、おとなでは骨粗鬆症や骨折などを予防します。ほかにも、炎症や免疫の調節、血管機能の改善、抗がん作用など、健康にとても役立っていることがわかってきました。
  ビタミンDの多い人は、がんや糖尿病などの生活習慣病、動脈硬化などになりにくく、死亡リスクが低くなります。アレルギー性疾患、自己免疫疾患(とくに多発性硬化症)、感染症、うつ病、パーキンソン病、歯周病、認知症、老化の予防にもなります。


 では、日光にはどのくらいあたるのがいいのでしょうか。
 一度にたくさん浴びる必要はありません。住んでいる場所や季節によって変わってきますが、週に3日ほど、肌の3~4割くらいの面積に15分程度あてましょう。日陰なら30分程度です。日差しが強い季節では、紫外線の強い時間帯を避ける、衣服で肌を覆う、日陰を利用する、サングラスをかけるなどの工夫をしましょう。強い効果のある日焼け止めを塗ってしまうと紫外線がブロックされ、ビタミンDが産生されません。また、経皮毒(皮膚からとリ込んでしまう有害な化学物質)が体内に蓄積されないよう、注意が必要です。
 ちなみにビタミンDは、食品では、さけやうなぎのような脂肪の多い魚、卵、乳製品、きのこ類などに多く含まれています。これらを効率的に吸収するためには、腸内環境がととのっていなくてはなりません。さらに、ビタミンDが適切に働くためには、肝臓や腎臓での活性化が必要で、全身の臓器も健康でしっかりと機能していることが重要です。


ストレスを貯めないことが大切


 現代はストレス社会であり、ほとんどの人がストレスを抱えています。ただし、ストレスがまったくない生活はつまらなく、人を怠惰にさせますから、適度なストレスはあったほうがいいでしょう。問題になるのは、慢性的に強いストレスがかかることです。
 ストレスが要因となっておきる精神的な問題には、うつ病、不安神経症、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、ASD(急性ストレス障害)などがあります。さらに、過食症や拒食症のような摂食障害や、アルコールや薬物などへの依存もおきやすくなります。
 ストレスは、からだの不調ももたらします。ストレスがかかると、副腎からストレスホルモン「コルチゾール」が分泌されます。コルチゾールが出続けると、炎症をおさえる力が弱まったり、免疫力が落ちたりします。また、交感神経の緊張状態が続き、自律神経のアンバランスが招く、さまざまな病気の原因となります。心筋梗塞、脳梗塞、アレルギー性疾患、リウマチ、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、じんましん、円形脱毛症、メニエール病、過換気症候群などが、その例です。
 ストレスをためないためにも、適切な解消法をもちましょう。音楽やスポーツ、ガーデニングなど、いろいろな趣味をもち、自分の好きなことをするのがいちばんです。ストレスに目をつぶるわけではありません。ストレスと上手につき合うことが大切なのです。
 年配の人から、昔は生活が苦しかったけれど、そのなかで日々の楽しみを見つけ、今よりも心豊かに過ごしていたと、よく聞きます。個人の心のもち方しだいです。あらゆる世代の人と交流する機会をもち、知恵を得ることも、お互いにとっていいものです。
 ちなみに、真面目で几帳面、責任感が強く、人に頼れない人、自分に否定的な人は、ストレスをためやすいので要注意です。このような傾向のある人は、完璧を求めない、がんばりすぎないことです。子育て世代や主婦の人は、日々やることが多く、本当に大変だと思います。しかし、「○○しなければいけない」ということは、案外それほど多くないかもしれません。他人と比べて自分を追い込まないこと。ひとりで抱え込まず、家族や友人に相談をしましょう。
 最近では、「笑い」の効用が一般にも知られるようになってきました。笑うことにより、副交感神経が働き、免疫力がアップします。楽しいことを見つけ、明るく過ごしましょう。
 生活をととのえることも重要です。からだにいい食事と生活の習慣は、あらゆるストレスに負けない力を与えてくれます。そして、未来へ向かう人生の目標をもち、うれしい、楽しいと感じることを実行しましょう。たとえつらいことがあっても、必然としておこっているものとしてとらえ、「今」に感謝して生きるようにしましょう。


冷えは万病のもと。からだを温める工夫をして


 昔から、「冷えは万病のもと」と言われます。現代は、自然とかけ離れた生活をおくっている影響で、おとなだけではなく、子どもたちの体温まで低下しています。
 冷えがさまざまな病気につながる理由は、血流の低下を引きおこすからです。これには自律神経が関係しています。からだが冷えると、交感神経の働きにより血管が収縮し、全身の血流を悪くするのです。血流が低下すると、細胞には酸素や栄養分が行き渡らなくなります。不要になった老廃物や二酸化炭素の回収も遅くなります。
 細胞の機能を維持する新陳代謝は、体温が1度下がるたびに2割ほど減るとされています。交感神経の充進は活性酸素を増加させます。さまざまな生命活動を支えている酵素を適切に働かせるためにも、適切な体温(36度台後半)が必要です。体温が低下するとともに、免疫力も低下します。冷えはあらゆる病気をつくるもとになっているのです。
 ではなぜ、現代人の体温が下がっているのでしょうか。
 具体的な理由として、不規則な生活、ストレス、睡眠時間の減少、冷房、からだを冷やす服装運動不足などがあげられます。さらに、食事も冷えに深く関係しています。
 冷たい食べものや飲みものがからだを冷やすことは容易に想像できますよね。ほかにも、からだを冷やす食べものである砂糖や精製食品の摂取が増えるいっぽうで、からだを温める食べものである塩は摂取を控えられ、根菜類もあまり食べなくなってきています。
 ファストフード、レトルトや冷凍食品、缶詰なども、からだを冷やす食品です。食品添加物をはじめとした化学物質の解毒や排出に、たくさんのエネルギーを消費してしまうのです。食べすぎもよくありません。消化・吸収にエネルギーが使われ、消化管に血流が集中することにより、全身の冷えを招くからです。
 まずは、冷える原因になっている生活や食事を見なおし、自然に沿ったものに戻しましょう。
 冷房の使いすぎに注意し、夏でもからだを冷やさない服装を心がけます。足首や首など、冷えやすい部分を保護するだけでも効果があります。入浴は、シャワーではなく湯船につかりましょう。
 ストレスの少ない生活を心がけ、リラックスして、十分な休養をとりましょう。とくに日々の「笑い」は、からだを温めることにも効果があります。
 こんにやく湿布やしょうが湿布など、からだの外から温める工夫も効果的です。びわの葉温灸、湯たんぽ、爪もみ、腸もみ、5本指靴下などもおすすめです。また、漢方薬、ツボ押し、鍼灸、ヨガ、アロマテラピー、フラワーエッセンス、アーユルヴェーダ、ホメオパシー、整体、気功など、冷えに効果のある代替療法も有効です。


制限すべきなのは精製塩であり、塩分ではない


 海水には、100~200種類ものミネラルが含まれています。ミネラルは単独で考えるよりも、ほかとのバランスが重要です。たとえば血圧を正常値に保つには、ナトリウムとカリウム、カルシウムとマグネシウムのバランスなど、いくつものミネラルの比率を保つ必要があります。
 海水からつくられた天然塩は、さまざまなミネラルがバランスよく含まれています。海水からあらゆるミネラルをとり除き、塩化ナトリウムという1種類の物質(純度99%以上)にしたものが精製塩です。これは、砂糖と同じように高純度の化学合成物質であり、食品というよりは薬品と言ってもいいものです。「一物全体食」の原則から見ても、不自然で健康によくないものになります。
 厚生労働省や医師は、塩分を厳しく制限するように指導しています(1日10g未満)。その基準にあてはめ、味けのない食事を我慢しながら食べているという人も少なくありません。制限すべきなのは精製塩であり、塩分ではありません。現代人はむしろ塩の摂取が足りない状況にあります。砂糖は嗜好品であり、とらなくてもなんの問題もありませんが、塩分は生命活動にとってなくてはならないもの。精製塩ではなく、天然塩を使うようにしましょう。


できるだけ控えたい肉食


 これまで、肉・牛乳(乳製品)・卵は、栄養価の高い食品と考えられてきました。これらの食品はスタミナをつけ、欧米人のような頑強な体をつくると言われ、積極的に摂るように勧められてきました。肉・牛乳・卵は、まさに「欧米型食事」を形成する中心的な食品です。

 必須アミノ酸を含む食品は、私たちの健康維持のためには不可欠です。そして肉や牛乳・卵などの動物性食品には、この必須アミノ酸が豊富に含まれ、理想的なタンパク源となっています。従来の栄養学では「完全タンパク質食品」と呼ばれ、重要視されてきました。
  しかし科学の最前線にある生化学栄養学・現代栄養学は、これまでの常識を覆し、動物性食品の摂り過ぎによる、さまざまな弊害を明らかにしています。「タンパク質の過剰摂取の害」を、科学的に明確にしています。


動物性タンパク質の過剰摂取


 穀類・豆など植物性のタンパク質を含む食品には、食物繊維や炭水化物なども多く含まれています。そのためたくさん摂っても、タンパク質の過剰になるほど食べ過ぎるようなことはありません。一方、肉類などの動物性食品を多食すれば、簡単にタンパク質の過剰摂取を招いてしまいます。


 現代栄養学では、タンパク質の必要量の目安を、大人では体重1kgにつき、1日に0.8~1gとしています。つまり体重60kgの人では、48~60gが適量ということになります。現在アメリカ人のタンパク質の平均摂取量は約90gですから、およそ体重90~110kgの人の必要量に相当する量を摂っていることになります。これでは、いくら体の大きいアメリカ人であっても過剰摂取と言えます。

 ところが1988年度の厚生省(当時)の調査では、日本人の大人のタンパク質の摂取量は、およそ80gにものぼっています。アメリカ人の体格に比べ圧倒的に小さな日本人が、ほぼアメリカ人並にタンパク質を摂っているのです。必要量の2倍近く摂っていることになります。アメリカ人でさえも摂り過ぎなのに、最近の日本人は、それ以上に過剰摂取に陥っているということです。(※タンパク質の摂取源から見たとき、アメリカ人に比べ日本人は植物性食品からの摂取が多いのですが、現在では半分以上を動物性食品から摂っています。)


空気の影響


 人間が生きるうえで、空気は、食べものや水よりずっと重要です。食べものを食べなくても、水分をとっていれば25日間くらい、水分がなくても5日くらいは生きていられます。 しかし、空気がなければ5分ほどで死んでしまいます。また、1日に摂取する量を比較すると、成人では単純計算で食物が約2Kg、水が約2㎏、空気が約18㎏にもなり、空気が全体の80%を占めることになります。さらに、体重あたりの呼吸量は、子どもはおとなの2倍近くになり、空気の影響は子どものほうが大きくなります。
 それでは、空気の問題を見ていきましょう。まず、屋外の空気について問題なのは「大気汚染」です。具体的には、フロンガス(オゾン層の破壊)、炭化水素(工場、排気ガス)、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)、粒子状物質(煤塵、粉塵、ディーゼル黒煙、PM2・5)、放射能などの問題があります。
  二酸化炭素については、これらと並んで地球温暖化の原因と強調され、問題視されていますが、実際はそうではなく、地球の温暖化によっておこった結果であると考えられます。大気汚染は社会全体の問題であり、ひとつでも改善していく努力をしていくしかありません。
  屋内の空気について、最近では、家の建材などに含まれる有害化学物質による健康障害「シックハウス症候群」が問題になっています。症状として多いのは、めまい、吐き気、目・鼻・のどの痛みなどです。原因物質として、ホルムアルデヒド(発がん、アレルギー性疾患、神経作用)、トルエンーキシレン(嘔吐、倦怠感、神経作用)、コンクリート(精神作用、頭痛、アレルギー性疾患)、ナフタリン(発がん、花粉症)など、さまざまなものがあります。現代建築は、コンクリート、サッシ、断熱材、ビニールクロスなどのおかげて、気密性が高く、高濃度の汚染物質が屋内にとどまる傾向が高くなっています。
 対策としては、こまめに換気し、揮発性の化学物質を除去しましょう。日に何度か、窓の2か所を5『5分くらい開けておきます。新築では、匹一時間換気が義務づけられています。空気清浄機や加湿器が有効なこともあります。
 日本の気候は、夏は高温多湿で、冬は低温低湿になります。ですから、東北や北海道などの冬の寒さがきびしい地方を除き、本来は、土、木、紙、畳などを使った木造建築の住宅が合っています。通気性にすぐれ、自然にすきま風が入るからです。できるだけ建材は天然素材を選び、さらに防虫剤、防カビ剤、防湿剤など、あらゆる化学物質の使用を避けるようにしましょう。


水はミネラルたっぷりの天然のものを


 人間にとって、空気の次に大事なものは水です。水が重要な理由は、体内の水分量にあります。
 人の体重に占める水分の割合は、新生児は77%、幼児は70%、成人は60%、高齢者は53%ほどになりますが、いずれにしても、水は体内でもっとも多い物質になります。
 本来なら、健康にとっていちばんいいのは、井戸水や山からのわき水のような、生命力にあふれた天然の水です。天然の水には、適度なミネラルが含まれ、アルカリ性や酸性に偏っておらず、酸素や二酸化炭素も豊富に含まれます。
 最近では、天然の水であっても、酸性雨や残留肥料や農薬、さらには放射能までも気にしなければならなくなりました。家庭で天然の水を使っている場合でも、心配な人は、一度はこれらの検査を受けておくことをおすすめします。今の私たちの健康のためだけではなく、未来の子孫たちや地球の生態系のためにも、環境の破壊は一刻も早くなくしていく必要があります。
 ただし、都会では天然の水を手に入れるのが困難ですので、市販のミネラルウォーターか水道水を利用することになります。しかし、ミネラルウォーターの多くは煮沸消毒されており、生水としての効用はありません。また、ペットボトルの水には防腐剤が使われており、お金もかかるので、あまりおすすめできません。水道水を利用するのが現実的ですが、高濃度の塩素や古い水道管由来の有害物質が含まれますので、浄水器を併用したほうがいいでしょう。数千円のものから数十万円するものまでいろいろな種類がありますが、最低限、塩素を除くことができる浄水器を、台所だけでなく、浴室のシャワーヘッドにもとりつけましょう。放射能の除去には、逆浸透膜型の浄水器がいいのですが、高額なうえ、同時にあらゆるミネラルまでも除かれてしまう可能性があります。ミネラルをまったく含まない純水も、からだにいいとは言えません。
 ちなみに、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量が少ない水を「軟水」、多い水を「硬水」と言います。日本の天然水の多くは軟水であり、日本人のからだに負担をかけないのは軟水になります。水にかわる飲料として、緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒーなどがありますが、それらはカフェイン入りのため、とくに子どもに与えるのは好ましくありません。おとなでも、午前中にとるなどの工夫をしましょう。カフェインの入っていない番茶やほうじ茶、玄米茶、麦茶ならいいでしょう。ジュースなどの清涼飲料水は、砂糖が大量に含まれていますし、人工甘味料はさらにからだによくありませんから、これらは控えるようにしましょう。
 摂取する水分量に決まりはありませんが、50Kgの成人で1日1・5~2リットルくらいの量が理想です。とくに高齢者は水分が不足しがちですので、朝1杯の水分からはじめて、こまめに何回も水分をとるようにしてください。

 

 これまで、認知症シリーズとして、以下のような記事を掲載してきました。


  ”物忘れ”が気になる人に・・
  認知症対策は、どのようにすべきでしょうか?
  認知症予防のための生活習慣
  海馬は繊細な記憶の司令塔・・壊れやすいのが特徴です
  海馬は繊細な記憶の司令塔 その2
  認知症予防のための食事 総説
  認知症予防のための食事 そのポイント
  認知症予防のための食事 血糖スパイク、デトックス

  マグネシウムの重要性・・認知症予防上
  ビタミン Dと認知症

 
  以上から、認知症が生活習慣病そのものである、ということが理解されたはずです。
  これを裏付けるために、これまでの過去の研究業績を多々掲載することになったため、多少とも専門的になってしまった”きらいがあった”ことは反省させられますが、これらの過去の研究業績は、現在、ネット上にあくまでも掲載されたものばかりであり、ということは一般の方々に対して記載されているものであり、この点はご容赦下さい。


  現在、厚生労働省の認知症対策は、認知症患者さんの介護が中心となっていることは、これまでも述べてきたことです。少なくとも認知症予防といった観点から施策が行われることは皆無であるというのが現状です。
 この理由は、アルツハイマー型認知症の発生機序が不明であり、このため、アルツハイマー型認知症を根本的に治す治療薬が存在しないことにあります。
 ただ、今回のシリーズを掲載中にも、いつものごとく、軽度認知障害(MCI)に対する乳酸菌飲料「カルピス」の素となる「カルピス酸乳」、その長年の研究の中で発見された「CS19ペプチド」のコマーシャルが常にくっついてきました。
 これとは、別にこれまでの認知症の治療薬のアリセプト以外の多くの認知症治療薬が販売されるようになり、正常人の物忘れと認知症の物忘れを厳然と区別すべきとされ、専門家の間でも、認知症を予防すべきであるとの観点が前面に出てくることがないのが実情です。
 このように、認知症の世界も、製薬メーカーの利益が優先され、アルツハイマー型認知症に移行した段階においても、認知症の治療薬の服用が重要視されることになり、少しでも、認知症の進行を遅らせるような生活指導が薬物療法と平行して行われることは皆無にも等しいといっても過言ではありません。
 これまで、こういった現状を踏まえて、「物忘れが気になる人に 改訂版」として、生活指導のあり方を提示してきました。  http://taku1902.jp/sub547.pdf


 認知症予防の基本的な考え方は、以下のようなものです。


 最近では、認知症の前段階として「軽度認知障害(MCI)」という状態があることが知られるようになりました。
 「軽度認知障害(MCI)」は、「認知症」との診断はつかないものの正常ともいえない、正常と認知症の中間といえる状態です。
  軽度認知障害は、「物忘れ」だけが主な症状です。物忘れの自覚があるものの、記憶力の低下以外に、明らかな認知機能の障害がみられません。
 このため、日常生活への影響はないか、あっても支障をきたすほどのものではない軽度のもの、というような状態です。
 「軽度認知障害(MCI)」は対処の仕方によって回復したり、発症が遅延したりすることがあります。
 「軽度認知障害(MCI)」を放置すると、認知機能の低下が生じてきて、5年間で約50%の人は「認知症」へとステージが進行すると言われています。
 しかし、移行しなかった人も半数存在し、その中の10%の人においては、なんとMCIから正常域に戻っていたのです。
 つまり、MCIと診断された人が、何らかのきっかけでMCIの状態から抜け出したのです。
  従来から、物忘れは「生理的現象」のほとんどの場合、心配することはないと一般的には問題にされることはなく、「物忘れ」と「認知症」とは厳然と区別されるとされてきましたが、「加齢による正常範囲の物忘れ」と「MCI(軽度認知障害)」と「認知症」は一連の連続したものと考えなくてはなりません。
 このような軽度認知障害(MCI)の状態は、東洋医学では、本来、”未病”ともいうべき範疇・段階にあるものです。
  このような”未病”とされる軽度認知障害(MCI)は、本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから病気の認知症へと進展するものと東洋医学では考えられています。
 このように考えれば、”未病”の段階にある、このような「軽度認知障害(MCI)」とは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があるということです。
 このため「認知症」を改善させるためには「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”を改善することが重要になってきます。


 健康的な生活を送るためには、ミトコンドリアが重要な鍵を握っています。


  こうしたことから、「アルツハイマー型認知症」は「後天性ミトコンドリア病」と考えるべきもので、軽度認知障害(MCI)の段階で、健康的な生活を阻害する要因・・「ミトコンドリアの機能を悪くする要因」を取り除くことが大切です。
 このように、「アルツハイマー型認知症」は、糖尿病・高血圧症・脂質異常症を基盤として発症してくる「脳血管性認知症」とともに、その発症の基盤は「酸化ストレス・炎症体質」があり、共通しているということです。

 
  「加齢による正常範囲の物忘れ」→「MCI(軽度認知障害)」→「アルツハイマー型認知症」 へと進展していくと考えなくてはなりません。


 こういったことから、「アルツハイマー型認知症」 の場合は、スタートはミトコンドリアの働きは、まったく問題はなく「正常」の状態にあります。
 ところが、片頭痛の場合は、スタートの段階から、生まれつきミトコンドリアの働きが悪い状態にあります。


 「アルツハイマー型認知症」 の場合は、生まれた後から、以下のようなミトコンドリアの機能を低下させる要因が加わることによって機能が低下してきます。


1.生活環境の問題


  活性酸素・・抗酸化食品の摂取不足
   有害物質の摂取・・デトックスを怠る


2.生活習慣の問題


   不規則な生活・・睡眠不足
   運動不足
   食べ過ぎ・過食
   インスリン過分泌・・早食い・ドカ喰い
   薬剤による影響


3.食生活の問題


   マグネシウム不足・・マグネシウムの重要性
   鉄不足
   必須脂肪酸の摂取のアンバランス 


 こうした様々な要因が加わることによって、「酸化ストレス・炎症体質」を形成してくることになります。
 このような「酸化ストレス・炎症体質」を背景・基盤にして、認知症発症と進行の原因となる異常なタンパク、アミロイドβが、ミトコンドリアの内部で他のタンパク(アルコール脱水素酵素(ABAD)というタンパク)と結合し、細胞を壊す毒性を持つようになったのではないかと考えられています。


  ミトコンドリアは細胞のなかにある小さな器官で、糖と酸素を利用してエネルギーをつくり出す、いわばエンジンのような役割を果たしています。
 ところが、このミトコンドリアは、エネルギーを出すとき、同時に排気ガスのような「活性酸素」を発生させます。
 ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミトコンドリアを増やし、元気にさせると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する機能も高まります。
 しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪循環が始まります。


  活性酸素が体の中で増える一方ですと、人間はたちまち死んでしまいます。

 
 私達の体には活性酸素を取り除く手段として、抗酸化物質が備わっています。
 ところが、このなかで、スーパー・オキサイド・ディスムターゼ SOD産出能力は25歳から下降しはじめ、40歳を過ぎて急速に低下することがわかってきました。
 コエンザイムQも同様に40歳を境に減少してきます。
 このように年齢とともに抗酸化物質は減少し、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、活性酸素の発生が”抗酸化作用(抗酸化力)”より常に優位な状態が、いわゆる「酸化ストレス」になります。
  「酸化ストレス・炎症体質」とは活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしまう状態のことで、これらが原因で細胞が傷つけられ、さまざまな病気・認知症を引き起こしてしまう状態のことをいいます。


  このようにして、30歳以降になって、私達の体には活性酸素を取り除く手段としての抗酸化物質の産生の低下する段階から、認知症発症の素地が形成されることになります。


「ミトコンドリアの機能の低下」を来す要因に対する対処として、
 

 生活習慣では、「規則正しい生活」を心掛け、睡眠を十分にとり、運動不足にならないことです。
 食事摂取については、過食・食べ過ぎに注意し、早食い・ドカ喰いのようなインスリン過分泌を来す食事の摂り方はよくありません。ゆっくりと・よく噛んで食べましょう。
  食事の内容は、以下のような内容が勧められています。

 

   1) 加工食品・インスタント食品をできるだけ減らす
    2) 脂肪・油をできるだけ減らす(オメガ3を摂る)
    3) 肉・乳製品・卵を摂らないか、ごく少量にする
    4) 砂糖をごく少量にする。白砂糖を摂らない
    5) 主食を精製度の低い穀類にする。雑穀を加える
    6) 豆類を摂る。種子・ナッツ類を摂る
    7) 野菜をたっぷり摂る。果物を摂る。海藻を摂る
    8) 魚貝類を少量摂る
    9) 発酵食品を常に摂る
    10) 食材・調味料は自然で新鮮なものを使う

 

 これに加えて、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・野菜不足に配慮することが大切です。
 必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランスは、ミトコンドリアの機能の悪化に繋がるため極めて重要になっています。
 結局、”バランスよく摂取する”ことが重要になっています。
 生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に対しては、活性酸素を除去させるためには、抗酸化食品である野菜や果物を十分に摂取することです。
 そして、有害物質に対しては、避けれるものは極力避けるべきです。避けられないものは当然ありますので、デトックスが必要になります。
 このためには、水分を十分に補給し、食物繊維を摂取し、デトックス効果の高い食品を摂取するように努めることです。

 
 このように、「食事内容」が極めて重要になっています。

 

ミトコンドリアを効果的に増やすには
 

  運動をして筋肉の量を増やせばミトコンドリアの量も増え、 体全体のミトコンドリアの働きも活性化します。
  1分間の軽めの運動と30秒間の強めの運動を繰り返すサーキットトレーニングが、ミトコンドリアを増やすのに効果的とされています。
 毎日の生活習慣や運動時でミトコンドリアを増やすにはコツがあります。例えば、ミトコンドリアは持久力を司る筋肉に多く含まれると分かっていますから、筋肉痛にならない程度の運動を行うことです。ここが一番大切な点です。決して無理をしないことです。

 

   <背筋を1分間伸ばす>
   <毎日1分片足立ちをする>
   <短時間で効果的な有酸素運動>
   <古来伝わる不自然な動き>
   <寒中稽古、サウナ後の水風呂>

 

 背筋を伸ばす、片足立ちを行う。この二つを習慣化するだけで1週間で体の調子が変わってくることを実感できるでしょう。先ずは、ほんの少しの努力でミトコンドリアを増やす習慣をつけることから始めてみてください。
 

 以上が、認知症予防の基本原則です。


  ここに、記憶の司令塔とも言える重要な器官される海馬が、酸素不足やストレスによって傷害されることによって、「アルツハイマー型認知症」を発症してくることになります。


  ストレスが加われば、マグネシウムが低下し、活性酸素が異常に産生されることになり、この両者はともにミトコンドリアの機能を低下させることになります。
 マグネシウムは糖尿病などの生活習慣病を予防することが知られています。
 日本人は慢性的なマグネシウム不足です。マグネシウムが不足すると糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こしやすくなり、ひいては認知症になりやすくなります。
 アルツハイマー型認知症は、海馬の萎縮が原因となり、この萎縮の最大の原因はストレスです。ストレスによってマグネシウムは消費されます。マグネシウムは、私達が日常生活を送る上で、容易に不足する生活環境に置かれていることを忘れてはなりません。
  このため、常にマグネシウムの補給を念頭におく必要があります。


  さらに、「酸素不足」の問題があります。これを引き起こす最大の要因は脳虚血の原因となる動脈硬化があります。
  このため、動脈硬化を防ぐためには、血管内皮細胞が正常で健康な状態であれば、血管はイキイキして血管年齢を若く保つことができます。
  血液循環を促進するためには、血管を若返らせて血液循環を高め高血圧や動脈硬化を予防することです。


  そして、姿勢を正しくする必要があります。
  姿勢が悪ければ、「浅い呼吸」となり、海馬など、認知症と関係する脳の組織にも十分量の酸素がまわっていかず、認知症になるリスクになってきます。
  さらに、貧血の問題が加わります。
  電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須です。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、鉄分の不足は、ミトコンドリアのエネルギー代謝がスムーズに行かなくなります。その結果、ミトコンドリアの機能低下を招くことになります。
  葉酸は、赤血球をつくるのに必要なビタミンで「造血ビタミン」とも呼ばれます。鉄分と同様です。


  このように、私達が何気なく無意識に行っている、生活習慣とくに睡眠・運動、さらに食生活の問題、姿勢などの問題が、アルツハイマー型認知症の原因となる、海馬の萎縮を引き起こすことになります。


 これまで述べてきましたように、アルツハイマー型認知症と片頭痛とでは、その発症要因は共通しています。両者ともに、後天性ミトコンドリア病と考えるべきもので、「酸化ストレス・炎症体質」を基盤として発症してきます。


  先程も述べましたように、アルツハイマー型認知症と片頭痛との相違は、ミトコンドリアの働きの悪さが、「生まれつき」存在するかどうかだけの差でしかありません。


  片頭痛では、ミトコンドリアの働きの悪さが、「生まれつき」存在するために、その発症時期が当然早くなり、極端にミトコンドリアの働きの悪ければ、早ければ小児期に発症し、平均して女性では、初潮の始まる時期に、男性では20歳前後に発症してきます。
  ところが、アルツハイマー型認知症では、ミトコンドリアの働きの悪さが、「生まれつき」存在しないために、生後、先述のような様々な「ミトコンドリアの機能を低下させる要因が」加わることによって、長年月に渡ってミトコンドリアが傷つけられることによって、30歳以降になって、私達の体には活性酸素を取り除く手段としての抗酸化物質の産生の低下する段階から、認知症発症の素地・「酸化ストレス・炎症体質」が形成されることになります。
 このようにして、早ければ30歳前後に、平均して40歳前後に認知症発症の素地・「酸化ストレス・炎症体質」が形成されることになります。


  しかし、これだけではなお、アルツハイマー型認知症を発症することには至りません。
  アルツハイマー型認知症になると、最初にダメージを受ける場所、それが海馬です。
  海馬が損傷されることによって記憶障害を起こすことになります。
  それも、先述のように酸素不足やストレスが加わることによって、海馬が傷害されることによって、徐々に、海馬の容積が縮小することによって、「記憶の引き出し」の容量が小さくなり、出しにくくなってくるために、「物忘れ」が起きることになります。
 これが、徐々に進展することによって、「加齢による正常範囲の物忘れ」→「MCI(軽度認知障害)」→「アルツハイマー型認知症」 へと進展していくことになります。
 そして、「アルツハイマー型認知症」 の段階では、「引き出しが無くなってしまった状態」を意味しています。
  このように、長年月にわたって極めて緩慢な経過をたどって、「アルツハイマー型認知症」へと進展していくことになり、平均して70歳前後から発症することになります。


  こういった定型的な経過をたどることになっています。
  この経過の途中で関与してくるものは、ミトコンドリアの機能を低下させる要因としての、生活環境であり、生活習慣の問題点(睡眠不足・運動不足・姿勢の悪さ)であり、食生活の問題です。
 このように、「アルツハイマー型認知症」は、生活習慣病そのものということになります。
 こういったことから、40歳以降になって、私達の体には活性酸素を取り除く手段としての抗酸化物質の産生の低下することによって、認知症発症の素地・「酸化ストレス・炎症体質」が形成される段階から、「アルツハイマー型認知症」の予防の対策を行っていくことが重要になってきます。
  このため、平成20年以降から行われている、生活習慣病予防のために行われている「特定健診」で、同様に「アルツハイマー型認知症」の予防を目的として、併せて行っていくことが重要になってきます。


  余談ではありますが、片頭痛の場合は、生まれつきミトコンドリアの働きの悪さは存在するものの、私達の体には「ホメオスターシス」という自然治癒力の機能が備わっています。
 この自然治癒力のおかげで、片頭痛患者さんの3割の方々は自然に治癒し、4割の方々は、片頭痛発作の終結する年齢の70歳までは、発作を繰り返すことになります。
 しかし、こうした「ホメオスターシス」を構成する3つの要因すべてが傷害されれば、3割前後の方々は、不幸にして、片頭痛そのものが慢性化することに至り一生難渋を強いられることになります。
 こうしたことから、片頭痛を治療していく場面では、「ホメオスターシス」を構成する3つの要因を健全化させることによって、自然治癒力を高めていくことが重要になっています。
 ということは、片頭痛を後天的なミトコンドリア病という観点から日頃から治療を進めていくことが重要です。
 従来のように、片頭痛治療が薬物療法がすべてであるといった考え方では、いずれ、こうした薬剤による後天的なミトコンドリア病をさらに形成させることになり、3割前後の方々は、不幸にして、片頭痛そのものが慢性化することに至り一生難渋を強いられることになります。
 このように至れば、ミトコンドリアの機能は益々低下することになります。
 そして、片頭痛をミトコンドリアの機能の低下することによって起きる頭痛と考えることなく、単純に、専門家の勧めるように、トリプタン製剤だけを服用しておれば、片頭痛は治ってしまうといった論点から治療を進めていく限りは、そのいく末は、アルツハイマー型認知症しかないことになるということです。


  頭痛大学という頭痛の老舗とされるHPでは、「頭痛もちはアルツハイマー病と関係ない」と以下のように記載されています。


  ノールウェーの5万人を対象とした疫学調査によると、頭痛もちはアルツハイマー病と無関係ということでした!  

 しかし血管性痴呆は2.3倍増加したということです。
 やはり頭痛は治療しておいたほうがよさそうです。

 

 出典 Hagen K, Stordal E, Linde M, et al.: Headache as a risk factor for dementia: A prospective population-based study. Cephalalgia 34: 327-335, 2014.

  
 ということは、このHPでは、片頭痛をミトコンドリアの機能の低下することによって起きる頭痛と考えることなく記載されているために極めて曖昧でしかありません。
 いずれにしても、片頭痛という頭痛そのものも理論的に考えるべきものです。


 しかし、片頭痛治療の世界のトリプタン製剤が導入されてから、いまだ30年足らずでしかありません。ということは、このような疫学的なデータそのものは存在しません。
 今後、現在のように、頭痛の専門家の申されるような論法の正否は、将来、疫学的調査で明確にされることになります。
  ただ、私達一般の素人は、あくまでも理論的に考えることによって、指をくわえて、疫学的な調査を待っていてはならないということです。
 こうしたことは、過去のキノホルムや水俣病が明らかにしていることです。このような過ちを二度と繰り返してはなりません。


  一般的には、西洋医学では、薬物療法で治療可能なものが、所謂「病気」として扱われており、そのほとんどは対症療法にすぎないものです。


  このように、西洋医学の薬の多くは対症療法であり、病気を根本的に治しません。また対症療法は、自然治癒力を奪うことにもつながります。
 ただし、すべての薬を使ってはいけないというわけではなく、命にかかわるときや、激しい痛みなど辛い症状が強い場合は、一時的に使うべきです。
 なるべく避けたいことは、長期にわたって薬を使用することです。食事や生活を見直すことを最優先させなくてはなりません。
 そうすることで、今飲んでいる薬を減らすことも可能になります。
 このことは、認知症・片頭痛治療を行う際に、極めて重要な点であり、食事や生活を見直すことなく、漫然と服用してはならないということです。
 トリプタン製剤は、”辛い頭痛を緩和させている”だけのことです。
 病気を治すために飲む薬(市販の鎮痛薬や病院で処方される薬剤などすべてです)これらのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異物と理解してしまいます。
 そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程で、活性酸素が発生してしまうのです。このため、過剰に服用した鎮痛薬は異物そのものであり、これを解毒するために過剰に活性酸素が発生することによって”ミトコンドリアを弱らせる”ことになります。
 このようにして、薬剤による後天的なミトコンドリア病を作ってくることになります。
 以上のように、長期間にわたる薬剤の服用は、その種類は問わず要注意ということです。


 現代医学は、その大半は薬物療法です。これは医学界が製薬メーカーに依存する体質にあり、このため薬がすべてになっています。
 こういった根源的な問題が存在するために、最終的に、アルツハイマー型認知症が生み出されてくる宿命にあるものと考えなくてはなりません。
 このようなことから、厚生労働省の認知症対策に如実に示されているということです。
 私達は、このような現実を直視する必要があります。

 

 そして、片頭痛治療の世界では、単に目先の鎮痛効果だけしか考えず、トリプタン製剤を、発作頻度が多ければ、次々と予防薬を手を変え品を換え追加して処方する現状では、将来、アルツハイマー型認知症の危険性があることは全く念頭に置かれることはありません。

 このような極めてお粗末な論理で行われていることを私達は、決して、忘れてはならないことです。

 片頭痛という頭痛を、理論的に考える段階に既に突入していると考えるべきであり、いつまで時代遅れのことをされるのでしょうか???

 

 2017年5月16日放送の【たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学「最新!老化ストップSP」】は、名医が教える最新老化ストップ法を特集していました。
  なかでも、認知症予防と筋肉の衰えをストップする栄養素として注目のビタミンDにスポットを当てて、その驚くべき効果と最強食材をご紹介していました。

 この番組は、つい先日放映されたばかりであり、皆さんもご覧になられた方々も多いのではないでしょうか。その要旨をここで、ご紹介致します。

 


老化ストップ栄養素はズバリ!ビタミンD


 認知機能と足腰の衰えを一挙に防ぐ老化ストップ栄養素とは、ずばりビタミンDです。

 
 ビタミンDの主な働きは、


   カルシウムのバランスを整える
   骨の健康を維持する
   免疫力を高める
   がんや糖尿病予防
   自閉症の改善

 

    などがあります。
 

 ビタミンDにはD2~D7の種類があり、人間にとって重要なのはD2とD3です。
  この二つの働きはほぼ一緒ですが、最近ではD2よりD3の方が2倍働くという報告もあるようです。


  ビタミンDが不足すると、小児ではクル病、成人では骨軟化症・骨粗鬆症の症状が現れます。
  くる病は、骨の発育期にカルシウムが骨に沈着しないことが原因で骨の組織がしっかり形成されず、骨の成長障害、骨格や軟骨の変形症状がみられる病気です。
  アルプスの少女ハイジに出てくる車いすの少女クララも、くる病だったという設定で、毎日肝油を舐めていました。
  同じビタミンD不足で成人に発症するのが骨軟化症です。
  腸管からのカルシウムやリンの吸収がビタミンD不足のため促進されず、血中のカルシウム濃度、リン濃度が減少し、骨塩量も減少します。
  その結果、骨の痛みなどの症状となって現れます。
  骨粗鬆症は、さらにコラーゲンなども減少していく病気で、骨軟化症とは異なります。
 
 
 肝油は、サメやエイなどの大型の軟骨魚類の肝臓に含まれる脂肪分のことです。
  豊富なビタミンDと、ビタミンA、スクワレン、アルキルグリセロール、オメガ3脂肪酸などから構成されており、肝油ドロップなどの名称でサプリメントとして販売されています。
  昭和の初めころの栄養不足の時代には、学校でみんなに配られていました。


ビタミンD摂取が認知機能向上と足腰強化に効果的な理由


  ビタミンD摂取が認知機能向上と足腰強化に効果的な理由を説明します。
 

 ビタミンDは、肝臓や腎臓で活性型ビタミンDとなって、カルシウムとリンの吸収を手伝って骨を丈夫にしたり、遺伝子の働きを調節したりして働きます。
  血中のビタミンD濃度は、筋力低下や転倒と関係があるといわれています。
  また、脳の中で神経細胞の保護や増殖、分化の調節を行う働きもあります。

 
ビタミンDが認知機能を改善するワケ


 まず、ビタミンDが認知機能を改善するワケです。

 
 脳ではビタミンD3を、脳の中で神経細胞の保護や増殖・分化の調節を行う活性型ビタミンD3に変えることができます。
  米国神経学会の研究で、ビタミンD不足の高齢者は認知症やアルツハイマー病を発症するリスクが増える可能性があることが2014年発表されました。
  また、2016年には、 ビタミンDが不足すると認知症の前段階である認知機能障害になるリスクが3倍以上高まるとシンガポール国立大学医学大学院のチョイライ・チェイ氏により報告がありました。
  こうした研究から、脳の認知機能の改善にはビタミンDの摂取が重要なことがわかります。

 
ビタミンDが足腰を強くするワケ


 続いて、ビタミンDの摂取が足腰の衰えをストップする効果についてです。
  日本人の大腿骨頸部骨折はこの15年間で2倍以上に増えているという報告があります。
  加齢に伴い骨の強度は弱くなっていくため、50歳以上の女性の3人に1人が骨粗鬆症にかかっているともいわれています。
  骨を強くするためにはカルシウムが必要不可欠ですが、きちんと骨に吸着させるためにはビタミンDを合わせて摂ることが重要です。

 


 ビタミンDの摂取目安量は、欧米の推奨値は10μgですが日本の摂取目安量は1日5μgです。
  新潟市豊栄長浦地区という農村地帯に住む中高年女性を対象にした調査では、ビタミンDの摂取量は1日9.9μgだったということです。
  調査対象となった地域では、ビタミンDを豊富に含む鮭や青魚を良く食べているということが関係しているようです。
  豊栄長浦地区の女性たちの大腿骨頸部の骨密度は、調査比較対象として選ばれた20~24歳の若い女性たちよりも高かったのだそうです。
  このような実験からも、骨を健康に維持するためにビタミンDは需要な役割を果たしているということがわかります。


ビタミンDを豊富に含む食材【鮭】

 
 ビタミンDを豊富に含む食材をご紹介します。

 

 ビタミンDを豊富に含むのは、鮭です。
  鮭の切り身1切れ(約100g)で、約39.4μgのビタミンDを摂ることができます。
  また、きのこ類にも多く含まれており、特にきくらげがおすすめです。
  乾燥したきくらげにはビタミンDが魚介類の10倍以上も含まれているので、キクラゲの戻し汁ごと使うのが効果的です。

 
ビタミンDは自分でも作れる!


  ビタミンDは紫外線を浴びることで自分で生成することができます。
  実は人にとって一番の補給源は、食べ物からの摂取より、日光の紫外線に当たることによって生成されるビタミンDです。
  皮膚に紫外線が当たることで、7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3)が作られ、体温によってビタミンD3に変わります。
  ビタミンD3は、ビタミンD結合タンパク質によって肝臓に運ばれ、活性型ビタミンD3となって働きます。


ビタミンDを作る紫外線


  ビタミンDを作ってくれる紫外線は、紫外線の中のUV-B(280~315nm)とよばれるもので、295nmで一番多く作られます。
  東京都内で夏に直射日光を30分浴びた時、700~800IUのビタミンDが体内に作られるといわれています。
  ただ、UV-Bは日焼けの原因となるので、UVカットの服などを年中着ている人などは、たとえ日光を浴びていても、紫外線からのビタミンD生成はできていないかもしれません。

 
老化ストップ栄養素ビタミンD まとめ

 
 ビタミンDには、骨を強くする効果、認知機能を改善する効果があることがわかりました。
  ビタミンDを豊富に含む鮭や青魚、きのこなどは和食の定番であり、高タンパクで体にもいいためぜひ食生活にとり入れていきたい食材です。
  また、悪者扱いばかりされる紫外線にも、こんな役立つ効果もあるんだよということを知って、日焼け対策をしつつもビタミンD生成に役立てていけたらいいと思います。

 

 


 それでは、ビタミンDと認知症についての報告はどのようなものがあるかを列記してみることにしましょう。

 

ビタミン D不足で認知症リスク増か


 米国神経学会は8月6日、ビタミンD不足の高齢者は、認知症やアルツハイマー病を発症するリスクが増える可能性を示唆した大規模研究を紹介しています。
 

 本研究では、サーモン、マグロ、サバなどの脂肪性魚類、牛乳、卵、チーズなどの食物、サプリメント、および日光浴によって摂取したビタミンDの血中レベルに着目して実施。認知症のない65歳以上の高齢者1658人について血中ビタミンD値を測定しました。
 平均6年後、参加者のうち171人が認知症を、102人がアルツハイマー病を発症。

 
 本研究の結果、ビタミンD値が正常である参加者と比較すると、ビタミンDの値が低いひとは認知症リスクが53%増大し、重度に不足している人では125%増大していました。
  アルツハイマー病を発症するリスクは、ビタミンD低値である人では約70%増大し、重度に不足している人では120%以上増大しました。
 学歴、喫煙歴、アルコール摂取といった認知症リスクに影響し得る他の因子で調整した後も、上記の結果は変化しませんでした。

 

 本研究著者のDavid J. Llewellyn氏は、「ビタミンD低値であることと、認知症やアルツハイマー病のリスクとの関連性を見出せると期待していたとはいえ、相関性は想像していた以上であった。臨床試験を実施して、脂肪性魚類やビタミンDサプリメントなどを取ることで、アルツハイマー病や認知症の発症を遅らせたり、予防したりできるのかを確認する必要がある。」と述べ、また「本研究の結果は、ビタミンD低値であることが認知症リスクであることを実証するものではないことを認識している。」としています。

 

ビタミンD不足で認知症に? 認知機能の低下を促進


  骨の健康から免疫強化まで、さまざまな効果が期待されているビタミンDですが、不足することで認知症になる可能性が示されました。米ラトガース大学環境・生物科学大学院のジョシュア・W・ミラー教授(栄養学)らは、さまざまな民族を含む高齢者を対象とした研究で、ビタミンDの不足と認知機能低下の促進との間に関連が認められたと、9月14日発行の米国医師会神経学専門誌「JAMA Neurology」(電子版)に報告しました。


高齢者の6割がビタミンD不足


  カルシウムの吸収と骨の健康を促すことで知られているビタミンDは、日光や食事などから体の中に取り入れられると、肝臓で「カルシジオール」に変化した後、最終的に「活性型ビタミンD(カルシトリオール)」となって体の中で活躍します。活性型ビタミンDに変化させる酵素は、脳を含む全ての臓器で発生しているといいます。

  
  ミラー教授らは、高齢者382人(平均年齢75.5歳、女性61.8%、白人41.4%、黒人25.1%、ヒスパニック25.1%、認知症17.5%、軽度認知障害=MCI=32.7%)の活性型ビタミンDを測定し、その濃度によって(1)欠乏(12ng/mL未満)、(2)不十分(12~20ng/mL)、(3)適正(20~50ng/mL)、(4)高値(50ng/mL以上)―に分類。認知機能との関連を検討しました。全体の26.2%が「欠乏」で、「不十分」は35.1%で、6割以上がビタミンD不足でした。活性型ビタミンDの平均値は、白人に比べて黒人とヒスパニックで低かったという(順に21.7ng/mL、17.9ng/mL、17.2ng/mL)。

  
ビタミンD不足で昨日の夕食を忘れる?

  
  検討の結果、認知症のグループでは、活性型ビタミンDの平均値がそれ以外のグループに比べて低かった(認知症16.2ng/mL、軽度認知障害19.7ng/mL、正常20.0ng/mL)。また、活性型ビタミンDが「欠乏」と「不十分」の不足グループでは、「適正」のグループに比べ、エピソード記憶力(昨日の夕食や震災など、自分や社会の出来事に対する経験の記憶)や遂行機能(ものごとを計画して順序立てて行う能力)が大きく低下していました。


  ただし、意味記憶(言葉や人の名前、数学の公式など、学習で得られる知識の記憶)や視空間能力(空間を見て状態を把握する能力)との関連は認められませんでした。つまり、極端に言うと、昨日図書館でビタミンの本を1時間読んで「活性型ビタミンD=カルシトリオール」ということを学んだが、ビタミンDが不足していると、「活性型ビタミンD=カルシトリオール」は覚えているものの、「昨日図書館でビタミンの本を1時間読んだ」ことは忘れやすくなるということです。


  ミラー教授らは「高齢者が全体的にビタミンD不足の傾向にあること、ビタミンD不足はエピソード記憶と遂行機能の低下を加速させる可能性があった」とコメント。さらに「こうした関連は、アルツハイマー病や認知症の発症リスクの増大と一致している可能性がある」とし、ビタミンDを補うことで認知症が予防できるかどうかの臨床試験が有用と述べた。

 

ビタミンDが不足した高齢者は認知症になり易い?


 ビタミンDがひどく欠乏している高齢者は、アルツハイマー病などの認知症になるリスクが非欠乏者の2倍以上ある、という英国エクセター大学の研究結果が『神経学』誌に発表されました。


  研究チームは、心臓血管健康研究という疫学研究の一環として調査を行いました。歩行に困難がなく認知症の兆候もない65歳以上の高齢米国人1,658名を対象に、ビタミンDの血中濃度を測定したのち、アルツハイマー病などの認知症の発症状況を平均6年にわたって追跡調査しました。

 
 データ解析の結果、軽度のビタミンD欠乏でも53%、重度の欠乏の場合は125%も認知症のリスクが高まることが明らかになりました。アルツハイマー病に限っても、軽度のビタミンD欠乏で69%、重度のビタミンD欠乏では122%のリスクの上昇が観察されました。

 
 「私たちはビタミンD欠乏症と認知症の関係を見つけたいと考えて調査を行ったわけですが、リスクが2倍になるほど強い関係が見つかったことに大変驚いています」と主任研究者のレウェリン博士は語っています。「注意しなければいけないのは、今回の研究結果でビタミンD不足が認知症の原因であることが実証されたわけではない、ということです。 とはいえ、非常に有望な結果であって、これからの高齢化社会で認知症にかかる莫大な医療費のことを考えれば、公衆衛生的な意義は重大であると考えます。」


  認知症は高齢化社会における最大の医療問題のひとつであって、世界中で4,400万人の患者がおり、2050年にはその3倍に増加するといわれています。
  一方で、ビタミンDが足りず、その結果健康状態が良くない高齢者も極めて多く存在すると考えられています。

 
 本研究は、ビタミンD欠乏と認知症リスクについて、画像診断などの広範囲の診断技術を用いて多分野の専門家が共同で検討した初めての大規模研究です。これまでの研究でも、ビタミンDが足りないと認知障害が起きやすいことは知られていましたが、本研究では、ビタミンD欠乏で認知症のリスクが明確に高まることを確認したといいます。

 
 ビタミンDは、日光を浴びると体内でも合成されます。また脂ののった魚などの食事やサプリメントとして摂取することも可能です。高齢者の皮膚は日光によるビタミンDの合成効率が落ちているため、冬場はビタミンD欠乏になり易い。日照時間の短い高緯度地方では特に注意が必要です。

 

 本研究に関連してアルツハイマー病協会・研究開発部門長のダグ・ブラウン博士は次のように語っています。

 
 「暑い夏の日に、海岸で15分間の日光浴をすればビタミンDは十分に合成されますが、日光浴やサプリメントで認知症のリスクが低下すると断定するのは時期尚早です。大規模臨床試験によって、ビタミンDが欠乏している患者の血中濃度を上昇させ、その結果認知症が予防されることを確認する必要があります。」

 


認知症予防へのビタミンDや日光曝露、さらなる研究が求められる


 日光曝露や高ビタミンD状態は、認知症発症を予防するといわれています。オーストリア・クレムス継続教育大学のIsolde Sommer氏らは、経時的な日光曝露の欠如やビタミンD欠乏症が認知症と関連しているかを検討しました。BMC geriatrics誌オンライン版2017年1月13日号の報告しました。

 
 MEDLINE(PubMed経由)、Cochrane Library、EMBASE、SCOPUS、Web of Science、ICONDAおよび1990~2015年10月までの適切なレビュー記事のリファレンスリストをシステマティックに検索しました。認知症リスクのサロゲートマーカーとしての日光曝露またはビタミンDの影響を評価するために、パブリッシュおよびノンパブリッシュデータのランダム効果メタ解析を行いました。

 
 主な結果は以下のとおり。

 
  ・日光曝露と認知症リスクとの関連性を調査した単一研究は特定できなかった。
 ・認知症リスクに対する血清ビタミンD濃度の影響に関するデータには、6件のコホート研究があった。
 ・5件の研究のメタ解析では、重篤なビタミンD欠乏症患者(25nmol/L未満または7~28nmol/L)は、十分なビタミンDの供給を有する者(50nmol/L以上または54~159nmol/L)と比較し認知症リスクが高いことが示された(ポイント推定:1.54、95%CI:1.19~1.99、I2=20%)。
 ・重篤なビタミンD欠乏症は、認知症発症リスクが高いと考えられるが、研究に含まれた観察研究の性質と残存または重要な交絡因子調整の欠如(例えば、ApoEε4遺伝子型)、ならびに日光曝露の代わりとなるビタミンD濃度と認知症リスクとの間接的な関係が含まれる。

 
 著者らは「本レビューから、低ビタミンD濃度が認知症発症に影響すると考えられます。
  日光曝露と認知症リスクとの直接的および間接的関係を調査するための、さらなる研究が必要です。このような研究には、ビタミンD濃度または日光曝露と認知症アウトカムの均質で反復的な評価を伴う大規模コホート研究が必要である」としています。

 


ビタミンD不足がアルツハイマー病の発症と関連する


今回紹介する文献


Vitamin D and the risk of dementia and Alzheimer disease
  (Littlejohns TJ et al., Neurology. 2014 Sep 2;83(10):920-8. )


 ビタミンD不足がアルツハイマー病の発症と関連することを示したコホート研究を紹介します。以前に著者らのグループが行なったメタ分析によって,血中ビタミンD濃度とアルツハイマー病を含む認知症とが関連していることが分かりました。しかし,この結果からは実際に高齢者のビタミン不足がアルツハイマー病を含む認知症を引き起こすのか分かりません。そこで,今回ご紹介する研究は,低ビタミンD濃度がアルツハイマー病を含む全ての認知症と関連しているのか明らかにするために行われました。
 

米国の65歳以上の高齢者が対象
 

 米国の心血管健康調査に参加した65歳以上の高齢者1650名を対象とされました。対象者らは歩行可能で,認知症,心血管疾患および脳卒中ではありませんでした。血中ビタミンD濃度は,採取した血液サンプルから調べられました。また,アルツハイマー病を含む認知症の発症は,”National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke/Alzheimer’s Disease and Related Disorders Association” の基準を用いて評価されました。統計解析には発症Cox比例ハザードモデルを用いられました。
 

低ビタミンD濃度だと認知症になりやすい
 

 約6年(5.6年)間で171名が認知症を発症しました(そのうちアルツハイマー病102名)。充分なビタミンD濃度の参加者と比べて,深刻な低ビタミンD濃度 (25 nmol/L以下)の参加者はハザード比が2.25 (95% CI: 1.23-4.13) で,低ビタミン濃度 (25?50 nmol/L) の参加者は1.53 (95% CI: 1.06-2.21) でした。同じようにビタミンD濃度の参加者と比べて,多変量調整ハザード比(学歴,喫煙歴,およびアルコール摂取などの他のリスク要因で調整)においても深刻な低ビタミンD濃度の参加者は2.22 (95% CI: 1.02-4.83) で,低ビタミン濃度の参加者は1.69 (95% CI: 1.06-2.69) でした。アルツハイマー病を含む認知症の発症リスクはビタミンD濃度が50nmol/Lを下回ると著しく増加しました。


ビタミンDには様々な効果がある
 

 この研究は,ビタミンD欠乏症がすアルツハイマー病を含む認知症の発症リスクの増加と関連していることを示しました。また,著者らは従来ビタミンDにはカルシウムの吸収を高めて骨を強くしますが,それ以外の役割もある可能性を議論しなければならないと述べています。
 

コメント
 

 Kaplan-Meier curveをみても2?3年の内に認知症リスクが増加していることが分かります。学歴などで調整もしても同様のハザード比ですから,明らかにビタミン不足の方は認知症発症リスクが1.5?2倍は高いと言えるのかもしれません。ビタミンDはマグロやサバなどの脂肪性魚類,牛乳,チーズなどの乳製品に多く含まれます。また日光浴でも体内で生成されることが分かっています。ビタミンD摂取すれば発症リスクが減らせるかはまだ分かりませんが,歳をとったら日向ぼっこを日課にしようと思いました。


 
アルツハイマー病のアミロイドβ蛋白質とビタミンDについて


 アルツハイマー病の原因と言われている、毒素物質であるアミロイドβ蛋白質の凝集を防ぐ栄養素は有るのでしょうか、そして、どのように栄養素を組み合わせれば、その凝集を防げるのでしようか。今回は、それについて考えていきたいと思います。


  米国の老人の大多数は、ビタミンD(VD)が欠乏状態にあり、このことは認識機能上の問題と認知症のリスクを増大さす可能性があります。ビタミンDは、脳への血液供給を保護することにより、脳の健康にとって重要です。VDは脳から毒素(アミロイドβ蛋白質)を取り除くのに役立つ可能性が、L Iewellyn博士らの研究により、出てきました。アミロイドβ蛋白質を分解するのに、ビタミンDが役立つ、と博士は述べています。更なる研究により、この仮説が証明されることを期待しています。


  脳に障害をもたらす因子を確認する試みにおいて、その他のデータを分析してみると、血中VD値が低い老人(男女)は、血中VD値が高い老人に比べて、推理力、学習能力、記憶力などのテストで劣っていました。被験者は、研究開始時と3年後、6年後に健康歴に関するインタビュー、医学上の検査、血液検査、それに思考力のテストを受けました。血中VD値が十分な被験者と比較すると、VD値が著しく欠乏した被験者では、思考力、考えをまとめる能力、決定する能力、それに計画する能力、それに行動力などの著しい低下が認められました。VDの欠乏と認知能力の低下との関連は、食事、健康状態、それに、その他の因子を調整した後でさえ続きました。

 ハーバード大学のEdward Giovannucci博士によると、アルツハイマー病の予防、治療では、十分な血中VD値を維持することは有益である可能性があり、低い血中VD値は、体全体の健康に有害なので、認知症だけでなく、その欠乏を改善することは重要です。更なる研究が、脳の機能におけるビタミンDの役割を明らかにするため必要と考えられます。 なお、ビタミンAと同様、副作用が出やすいので、ビタミンCのように大量摂取は向きません。自分に合った適正量を探して下さい。ガン患者は、最大、5,000国際単位/日ぐらい摂取しているようですが、アルツハイマー病では、安全性を考えて、1,000国際単位/日ぐらいがいいのではないか、と考えます。ビタミンに詳しい医師、薬剤師と相談して下さい。また、その他のビタミン、必須ミネラルの摂取量、食生活も認知症に関連しているので、それらがベストである場合は、VDの効果も高まると考えています。

 

結論として・・?日光を浴びてビタミンD濃度の調整を。

 
以上から、アルツハイマー病の患者は、体内ビタミンD量が低く、認知力の検査成績が悪いことがわかりました。研究者グループは、ビタミンDの体内濃度を調整することで、脳内の他の化学物質の量が増加して、傷ついたニューロンを回復させるグリア細胞の働きが強化されることで脳を保護すると考えています。


  また、ビタミンDの持つ抗炎症、免疫活性作用もアルツハイマー病に良い効果をもたらすとされています。免疫系がアルツハイマー病などの炎症に対抗できるためには、ビタミンD量が十分にあること(50 -70 ng/ml)が欠かせないのです。