頭痛 あれこれ -3ページ目

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

ミトコンドリア・ダイエットとは?

 
 「ミトコンドリアダイエット」という言葉を聞いたことはありますか?
  まず、「軽い空腹状態で生活すること」。おなかがすくと、身体はもっともっとエネルギーを作り出そうとミトコンドリアを増やします。昼食を我慢するなんてことまでする必要はなく、小腹がすいたときの間食をやめ、夕飯まで我慢するなどして軽い空腹状態をつくります。一度に食べる量を少なくするというのもいい方法です。間食のカロリー摂取を抑えられ、しかもミトコンドリアが増えて糖や脂肪が燃えやすくなるのですから一石二鳥です。
  そして、「姿勢を保つよう心がけること」。ミトコンドリアが住んでいるのは、持久力のある筋肉です。片足に体重をかけて「休め」の姿勢をとったり、座ったときに姿勢を丸めるのをぐっとこらえて、正しい姿勢を維持するように心がけてください。見た目にも美しいですし、姿勢が正しいとおなか周りも普段よりしゅっとして見えます。かっこいい姿勢をとり続けることが、本当のかっこいい体型へと繋がっていくのを意識してみてください。
  さらに、運動でも増やせるのですが、これも無理がなくて簡単です。
 「30秒間の無酸素運動と、30秒間の有酸素運動を繰り返す」ということをすればいいのです。
  例えば、腹筋の姿勢を30秒間保ったあとに、足踏みを30秒間する......というような感じです。運動が得意・苦手にも関係なく誰にでもできる方法です。
  簡単で無理のないダイエットなので、今まで挫折してきた方にも続けられるはず。ミトコンドリアに協力をお願いして、若くて美しい体型を目指しましょう。


ミトコンドリアダイエットの方法


  やり方のポイントは、「有酸素運動30秒」と「無酸素運動30秒」をセットにした1分間のエクササイズを、1日三回行うことです。
  しかも、有酸素運動といっても、軽くジャンプするとか、足を上げるなどの、簡単なエクササイズです。
  また、無酸素運動といっても、腕立て伏せの格好を30秒間保つ程度です。
  これらの有酸素運動と、無酸素運動を、わずか30秒ずつを組み合わせた1分間のストレッチ体操を、1日3回行うのが基本です。

 これによってミトコンドリアが活性化されて、代謝機能の高い身体に改善されていきます。

 より詳しくは、以下をご覧下さい。


    ミトコンドリアダイエットとは?
     
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12173496653.html

 


 それでは、なぜミトコンドリア・ダイエットは認知症予防になるのでしょうか。
  その根拠をお示しすることにします。以前にも記事にしました。一部を抜粋することにします。
    
     
睡眠不足は大きな認知症リスク


 「睡眠時間が短いと肥満になりやすい」ということが報告されています。
  確かに起きている時間が長くなると、ついつい食事や夜食の回数が増えてしまいがちです。
  ただ、その「つい食べてしまう」行動自体が睡眠不足によるものってご存知でしたか?

 

 睡眠不足が食欲増進につながるということを示したこんなデータがあります。健康成人男性1,024名を対象に、睡眠時間と食欲に関するホルモンの関連を調べた報告によれば、睡眠時間が短くなると、レプチン(食欲抑制ホルモン)の分泌が低下して、グレリン(食欲増進ホルモン)の分泌が増えることが示されています。
  つまり、睡眠時間が短いと食欲に関するホルモンのバランスが乱れて食欲が増進してしまい、肥満につながりやすいと考えられます。

 

 また、別の研究では、健康な20代男性12名を対象に、4時間睡眠で2晩過ごした後と10時間睡眠で2晩過ごした後で、食欲に関するホルモンの変化と食べ物の嗜好について調べています。
  その結果、4時間睡眠で2晩過ごした後は、10時間睡眠の後に比べ、レプチン(食欲抑制ホルモン)が低下して、グレリン(食欲増進ホルモン)が増えており、実際に空腹感や食欲も増えていました。

 

 さらに興味深いことに、4時間しか睡眠がとれなかった後は、10時間睡眠の後に比べ、ケーキやクッキー、アイスクリームなどのスイーツや、ポテトチップスやナッツなどの塩気の強いもの、パンやパスタなどの炭水化物が食べたくなるという傾向がみられました。
 
 
 睡眠不足で食欲増進、さらにスイーツや炭水化物が食べたくなる…睡眠不足は肥満の大敵といえそうです。

 

グレリンとは
 

 グレリンとは胃から分泌されるペプチドホルモンで、その働きは二つあります。
 

   1 食欲を増進させる
    2 成長ホルモンの分泌を促進する
 
 
 グレリンが分泌されるのは、お腹が空いたときです。
 
   お腹が減ると胃からグレリンが大量に分泌され、脳に「お腹が空いたから何か食べなさい」と指令を出します。
  同時に成長ホルモンの分泌も促すので、グレリンが分泌されている時は成長ホルモンの分泌も活発になっているのです。
 「たくさん食べると大きくなるよ」と言われているのは、グレリンが作用し食欲が増進することで、成長ホルモンの分泌が活発になることが関係しているためで、実に理にかなったことなのです。
 
 グレリンが老化防止のカギを握るというのは、食欲増進作用の方ではなく、成長ホルモンの分泌促進作用の方にあるのです。
 
 では、なぜ成長ホルモンが若返りや老化防止のカギとなるのでしょうか。
 
 
  若返り・老化防止と成長ホルモン
 
   若返りや老化防止に成長ホルモンがなぜ重要でしょうか。
 
 成長ホルモンは文字通り、成長に関するホルモンで骨や筋肉の発達に関わっているホルモンです。
  しかし成長ホルモンにはもう一つ、とても重要な働きがあるのです。それは「代謝」と呼ばれる、人間の体にある物質をエネルギーに変える働きです。
  代謝は、食べ物をエネルギーに変えて体を動かしたリ、古くなった細胞を排出して新しい細胞を作り出したリ、人間が生きていくうえで必要なすべての活動のことです。
  成長期の子供に成長ホルモンが必要なのはもちろんですが、このように代謝をつかさどるホルモンなので成人した大人にも必要不可欠なものなのです。
 
 ・成長ホルモンが出なくなるとどうなる?
 

 成長ホルモンが出なくなると、人はどうなってしまうのでしょうか。
  成長ホルモンは代謝にかかわるホルモンであり、代謝は人間のあらゆる健康にかかわっています。
  成長ホルモンが十分に分泌されていないと、次のような症状になって現れてきます。

 

    コレステロール値の上昇
    心疾患(心筋梗塞や狭心症)
    動脈硬化
    糖尿病
 
 成長ホルモンは、脂肪の分解をしたり、血中コレステロールを下げたりする働きがあります。
  このような健康被害は、成長ホルモンが十分に分泌されていないことでリスクが高まる可能性があるとされているものです。
  病気もそうですが、成長ホルモン不足は見た目の老化にも影響します。

 

    肥満
    筋骨量の低下
    肌荒れ
 
 体脂肪、とくに内臓脂肪が増えるためお腹周りが大きくなります。
  俗にいう、メタボリックシンドロームです。
 
 また、骨は一度できたら一生モノではなく、日々代謝で生まれ変わっています。
  成長ホルモンが足りないと、骨が弱くなり、骨粗鬆症や骨折しやすくなったり、また背が縮んでしまったりします。
  筋肉が衰えてくると、運動能力が低下して動きが鈍くなったり、姿勢が悪くなったりしていきます。
  さらに、肌荒れや肌老化にも成長ホルモンが大きくかかわっているのです。
  皮膚の汗腺というところに成長ホルモンの受け皿があるのですが、成長ホルモンが少ないと汗腺までたどり着けず、発汗量が減ることによって皮膚がカサカサに乾燥してしまいます。
  それに、皮膚はターンオーバーといって約28日サイクルで生まれ変わっていますが、ターンオーバーも成長ホルモンなくしてはできません。
  成長ホルモンが少ないとターンオーバーの周期が長くなり、古くなった角質がいつまでも残ってしまうので見た目にはシワやくすみとなって現れ、「老けている」印象を与えてしまうのです。
 
 成長ホルモンが不足すると、病気になりやすく、見た目的にも老化してしまうことがわかりました。
  ですから成長ホルモンの分泌を促すグレリンを増やすことが、老化防止のカギになるのです。
 
 
・グレリンが細胞の老化をストップ! 記憶力UPにも

 

 また、グレリンは記憶力の向上にも効果があります。
 
 今から約10年ほど前、アメリカ・イエール大学ホーバス博士の研究で、グレリンが記憶力の向上に効果的と発表されました。
  マウスを使った実験で、グレリンが脳の記憶をつかさどる「海馬」に作用して記憶力を高めることがわかったのです。
  実験では、グレリンの投与で海馬のシナプス(神経細胞)が30%増大し、活動が活発になったということです。
 
 このように、グレリンには食欲増進や成長ホルモン分泌促進だけでなく、いろいろな健康作用があることかわかります。
 
グレリンをたくさん分泌させる方法
 
 ここまで、グレリンの老化防止効果について説明してきましたが、最後にグレリンをたくさん分泌させる方法を述べます。
 
・お腹を空かせる
 

   グレリンは、空腹時に分泌されるホルモンです。
  お腹がグゥ~っと鳴ったらグレリンが分泌されているサインです。お腹が鳴ったからといってすぐに何か食べるのではなく、しばらくガマンしてグレリンをたくさん分泌させましょう。
  また、肥満の人はグレリンの分泌が少ないと言われていますので、老化防止のためにも適正体重を心掛けるようにしましょう。

 

 もう一つ、空腹になることによって細胞が若返るしくみを説明します。
 

 私たちの体は約60兆個もの細胞が集まってできていますが、その細胞一つ一つにミトコンドリアというものが存在しています。
  ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作り出し、若さや元気の源になるもの。
  ミトコンドリアは、エネルギーが不足している時や、もっとエネルギーが必要な時に活性化して増殖します。
  ですから空腹時というのは、ミトコンドリアが増殖するうえ、グレリン分泌も活発になるため、細胞から若返るのには最適な環境といえるわけです。

 

老化防止ホルモン「グレリン」
 

 グレリンの主な働きは食欲促進作用であるため、一見すると老化防止とは真逆のようですが、実はたくさんの老化防止・健康促進作用があることがわかりましたね!
  グレリンをたくさん分泌させる方法も、「お腹が空いた状態を維持する」だけなので簡単です。
  今日からグレリン分泌を意識して、認知症防止、アンチエイジングを心がけましょう!

 

  このような 「お腹が空いた状態を維持する」ことによって、有酸素運動を組み合わせることによって、認知症を予防できることになります。


運動すると、なぜ認知症予防になるのでしょうか?
 

 今まで、認知症の原因として一番有力視されていたのが「老人斑」。
  これは、アミロイドβというタンパク質の一種で、脳の中にできるシミのようなものです。

 

 ところが、原因はそれだけではないことがアメリカ・ミネソタ大学の研究で分かってきました。
 

 認知症の人と、そうでない人の脳を死後解剖して観察したところ、脳に老人斑がかなりできていても、生前、認知症を発症していなかった人が3人に1人いたそうです。
  脳の働きをよくするのに重要なホルモンは、いくつか知られていますが、その中でも一番重要といわれるのが、BDNF(脳由来神経栄養因子)です。
  このタンパク質の一種「BDNF」が脳内に多いと、海馬が大きくなり、老人斑があっても、認知症を発症しなかったというのです。
  通常は、加齢とともに、BDNFレベルは下がっていきます。
  アルツハイマー病の脳の海馬は、このBDNFレベルが非常に下がってるのが特徴です。
  BDNFレベルが下がると海馬は萎縮していきます。これが、アルツハイマー病の引き金となります。
  反対に、脳内にBDNFが増えると、神経細胞の破壊が止まり、海馬が大きくなっていき、記憶の減退やアルツハイマー病の発症を防ぎます。
  これほど素晴らしい作用をもつBDNFですが、ナント!運動によってBDNFが増えることが分かったのです。
 
 米国カリフォルニア大学のカール・コットマン教授は、ネズミのカゴに車輪を入れて、1週間ネズミを毎晩走らせました。走ったネズミは、走らなかったネズミに比べて記憶力テストで頭が良いことが分かりました。
  しかもネズミの海馬を比較すると、運動したネズミはBDNFレベルが上がっていたのです。ネズミは、走る時間が長くなるほど、BDNFレベルも上昇していました。
 
 このネズミの実験で、運動によってBDNFが増えることが分かり、その後、人での研究も進み、次のことが分かってきました。
 
 
  ★人間の脳内のBDNFを増やす方法
 
   1.適度の運動(有酸素運動)
    2.頭を使うこと

 

 上記の2つを組み合わせて行なう運動が、たとえば暗算(100から3を引き算)しながらの早歩きや、音楽に合わせての軽い運動になります。


  この有酸素運動に関しては、以下をもう一度ご覧下さい。


      認知症予防のための生活習慣
       
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12275787146.html

 

身の回りは活性酸素を生み出す要因だらけ


 活性酸素は、私たちが生きていく上で、どうしても発生してしまうものなのです。
  私たちが体に酸素を取り込み、消費する過程で活性酸素は自動的につくり出されます。激しい運動をしているときはもちろんのこと、仕事や家事などをして普通に生活しているときも、くつろいでいるときや眠っているときも発生するのです。
  私たちは生きている限り活性酸素から逃れることはできません。
  太古、地球の生物が酸素を体に取り込んで生きるようになったときからの、宿命といえるかもしれません。
  もちろん活性酸素が体の中で増える一方だと、人間はたちまち死んでしまいます。
  そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
  ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、病気や老化が起きるのです。大量発生のきっかけにはさまざまなものがあります。
  体が傷を受けたり、ウイルスが侵入したときもそうですし、太陽光線も原因になります。
  これらは昔から、私たちの体に活性酸素を発生させる原因になってきました。
  その上、現在では、更に活性酸素を発生させる原因が増えています。
  それが食品添加物や洗剤、化粧品などに含まれる化学物質であり、大気中の有害物質や放射線などです。これらの原因は、昔にはなかったものです。
  豊富な栄養をとっているにもかかわらず、現代人に病気が多いのは、このことが原因ではないかと言われています。
  ウイルスや細菌は、病気を引き起こす元凶ですが、これも活性酸素発生の原因になります。これらの外敵が入ってくると、白血球が出動してきて外敵を殺そうとします。
  このときの武器が活性酸素なのです。白血球が敵の数に合わせて、びったり適量の活性酸素しか出さなければいいのですが、白血球は外敵を確実にやっつけるために必要量を上回る活性酸素を作ってしまいます。その余分な活性酸素が、まわりの細胞まで傷つけてしまうのです。体にとっての異物は、ウイルスや細菌ばかりではありません。
  実は、病気を治すために飲む薬や、空気中に存在する有害物質、そして食品添加物や洗剤、化粧品などに含まれる化学物質も、体にとっては異物なのです。
  これらのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異物と理解してしまうのです。
  そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程でも、活性酸素が発生してしまうのです。
  このように特に、現代の科学や文化の発達が生んだ数々の人工的な要因が、私たちを更に蝕んでいることが伺えます。
  薬や食品添加物の氾濫、農薬の普及、排ガスによる大気の汚染、水の汚染、原子力の利用による放射線被爆、電気製品による電磁波・・・・・生活環境の変化、破壊はすなわち体内での活性酸素の大量発生に繋がっているのです。
  昔から受けてきた紫外線にしても、オゾン層の破壊により、増加し続けています。
  こうした要因は、ほんの数十年の間に急速に増えてきたものです。
  私たちの体の働きは、太古から少しずつ作られてきたものですから、この数十年の変化には着いていくことができません。


  体の中には活性酸素を取り除く働きもありますが、人間のミトコンドリアは、活性酸素の発生源が今よりずっと少ない時代につくられていますから、新しい要因が生み出す過剰な活性酸素まで取り除くことはできない状態にあります。
  活性酸素を作り出す原因がこれだけ増え、体の中には対抗する手段が充分にはないとすると、私たちの体の中には、過剰な活性酸素が存在しているということになります。
  これが現代人の体をむしばみ、病気をつくり出しているのです。
  食物の豊富な国に住み、快適な暮らしをしているにもかかわらず、現代社会に暮らす日本人は病気から逃れることができません。
  ガンや糖尿病、心臓病などの成人病の発生が増えているのも、昔はあまりみられなかった喘息や花粉症、アトピーなどのアレルギーが増えているのも、環境の悪化による活性酸素の増加が原因と考えられます。


  日本は長寿大国となりましたが、長寿を謳歌している人の多くは、活性酸素を発生させる要因が少ない時代に育っていることを忘れてはいけません。
  また、昔の日本人の食事は活性酸素を取り除くために理想的な食事ともいわれています。活性酸素の発生要因に囲まれ、欧米風に変化した食事をとって育っている若い人や子供が、長生きできる保証はどこにもないのです。


  このように、現代社会は、”活性酸素”に満ちあふれた生活環境にあります。
  これらがすべてミトコンドリアの働きを悪くさせてきます。このような外部の生活環境の要因があります。


  こうした背景をもとにミトコンドリアの働きが悪くなれば、必然的に、同時にセロトニン神経系の機能が低下してきます。
  ここに、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。
  この両者によって姿勢の悪さが引き起こされやすい状況を作ってくることになります。すなわち、以下のような機序によって姿勢の悪さをつくってきます。
  

 ミトコンドリアは、全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ「抗重力筋群」に多く存在し、ミトコンドリアの働きが悪くなれば当然のこととして「姿勢の悪さ」引き起こしてきます。


  セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることによって、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉に働きかけていることから、セロトニンが不足してきますと、セロトニン本来の働きである「正しい姿勢の保持」が困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「姿勢の悪さ」を引き起こします。


  先述のように、私達の生活環境は活性酸素に満ち溢れており、ここ50年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、生活習慣の問題により引き起こされた「脳内セロトニン低下」と相まって、姿勢の悪さを引き起こしやすい状況にあります。すなわち、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関与、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
  こういったことから、現代では、「姿勢の悪さ」が日常茶飯事にみられるようになってきました。


前屈みの姿勢を強制される生活環境


  私達は、日常生活を送る上で、私達は前屈みの姿勢をとる生活環境に置かれています。特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
  さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。現代社会はスマホ全盛の時代で、歩きスマホをされるご時世です。


  こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。


  ここにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時はたいていどちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たいモノを持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎( 背骨)の歪みが生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びひいては頸椎にまで及んで、”脊柱の捻れ”を最終的に引き起こしてきます。
 
 
 このようにして、「姿勢の悪さ」が引き起こされてきます。


  姿勢と健康には、とても大きな関係があります。ゲームや携帯電話、パソコンの普及や、椅子に浅く座るなどの影響から、いわゆる猫背(背中が丸く曲がり、肩が前に出た姿勢のこと)が多くなっています。猫背になると、首が前に垂れ、肩も前に落ちて頭部全体が前へ移動し、腰が丸くなるなどの不自然な姿勢となり、骨格や筋肉が歪みます。
  人の骨格は、仙骨(腰椎の下部にある骨)を中心とした骨盤の上に背骨があり、さらにその上に、重い頭を乗せています。これに両肩と腕がついた「やじろべえ構造」をしており、両腕とあごにより絶妙にバランスを保っています。 さらに、股関節、膝、足首などを含め、すべての骨は連動しており、1か所がバランスをくずすと、すべての骨に影響が出ることになります。
  猫背により呼吸が浅くなると、血管を圧迫し、血流も悪化します。体の捻れから内臓や筋肉、神経への負担もかかります。
  このように、姿勢の悪さはあらゆる心身の不調、たとえば肩こり、腰痛、膝痛、頭痛、うつ病、冷え、便秘、下痢、生理不順、アトピー性皮膚炎、花粉症、認知症などの原因になります。


認知症と姿勢の悪さ


 50代~60代のまだ若いうちに認知症を発症している人は、健康な人と比べて、肌や髪、姿勢などあらゆる点で老け込むのが早い印象があります。
   認知症になると、なぜ老化のスピードが早まってしまうのでしょうか?
  その答えは細胞の中の「ミトコンドリア」にあります。
  ミトコンドリアは、人間にとってエネルギーの製造工場のようなものです。
  ミトコンドリアが多ければ、それだけたくさんのエネルギーを作り出して、代謝も活発になり、若々しい細胞を維持できるのです。
  認知症の人の脳細胞を調べてみると、ミトコンドリアの量が少なく、エネルギーを生み出す機能も低下していることがわかっています。
  ミトコンドリアのエネルギー生産能力が低下すると、脳の働きも悪くなります。
  冒頭で述べましたように、私達の身の回りは活性酸素で満ち溢れており、このため、現在では人間界においてミトコンドリアの機能が以前よりは低下しています。
  そして、加齢とともにそれは、さらに加速してしまいます。
  こういったことから、姿勢が悪くなってきます。

 

歩幅との関係が深い認知症

 
 東京都健康長寿医療センター研究所によりますと、認知機能の低下とその他の要素との関連を追跡調査したところ、年齢が高いことや、一人暮らしといった社会的・人口的な要因に加え、血液中の栄養状態を表す数値が低いこと、歩幅が狭いことが関連していることがわかっています。歩幅が広い人に比べ、歩幅が狭い人は認知機能低下のリスクは3倍もあります。


重心が低くなると自然と歩幅は狭くなる
 

 それでは、高齢者にとって歩幅を狭くしてしまっている原因はなんでしょう。それは、重心が低くなってしまっていることです。歩幅は地面と身体重心位置との回転半径によって決まります。立った時の骨盤の位置が低くなると自然と足の回転半径が短くなり、歩幅が短くなってしまいます。


重心を低くしてしまっている猫背の姿勢

 
 重心が低くなってしまう高齢者の典型的な姿勢は猫背のような姿勢です。
  骨盤が後傾してしまい、重心が後ろに位置しています。そして、後ろに倒れないようにと頭を前に突き出すことで全身のバランスを取っている状態です。定常的にこのような姿勢をとっていると、ひざが曲がってしまい股関節の位置が低くなり、そこから足が大きく伸びず歩幅が短くなってしまうのです。


猫背の姿勢の原因になっている裏もものコリ
 

 日常の姿勢を考える上で、特に注目しなければならないのがハムストリング(裏ももの筋肉群)です。裏ももの筋肉は骨盤に接続しています。そして、この裏ももの筋肉が凝って収縮すると、骨盤が真下に引っ張られます。骨盤が下向きに引っ張られると、骨盤は後傾して、体全体の重心が後ろに移るので、身体はバランスをとるために自動的に頭部を前に出します。その結果、腰椎(背骨の腰の部分)と、胸椎(背骨の胸の部分)は屈曲した(曲がった)状態で常にいることになります。裏ももは長時間座っていると圧迫されてどうしてもこりやすい筋肉なので、裏もものコリについては気をつけたいところです。


骨格上も背が低くなっている
 

 また、日常的に猫背の姿勢をとることにより、骨格自体も背が低いものになってしまいます。それは、腰椎(背骨の腰の部分)の圧迫骨折です。腰椎屈曲(腰が曲がっている状態)により腰椎の椎体という本体部分の前方が継続的に圧迫されて骨折します。腰椎の椎体のお腹側の前方部分は構造的にもろく上下に圧迫されて潰れるように骨折をしてしまうのです。この椎体骨折は、高齢になるほど高い割合で多くの人に起こっています。年を取って背中や腰が曲がったり、背が縮むのは仕方のないことと思われがちですが、これらは椎体の圧迫骨折によって起こっていることなのです。
 

アルツハイマー型認知症を予防するために・・


 MCI(軽度認知障害)の特徴として、正常の人の「歩行」と比較して、歩くスピードが遅い、歩幅が狭い、足の運び方が乱れていてふらつきやすい、が挙げられています。
 「アルツハイマー型認知症」の後期では、前傾姿勢で緩慢な歩行になりやすい特徴があります。

 
  このような姿勢の悪さは、認知症を発症する以前から存在していることを忘れてはなりません。先述のように、姿勢の悪さは、猫背として一般的には現れてきます。
  猫背により呼吸が浅くなると、血管を圧迫し、血流も悪化します。
  酸素不足で脳がダメージを受けると、最初に海馬あたりから死んでいくといわれています。このような酸素不足の要因は、姿勢の悪さ・猫背が挙げられます。これらは冒頭で述べたような機序で起きることから、極めて緩慢な経過をもとに、私達が無意識に日常生活を送る上で、永年かかって形成されたものであり、さらに常時呼吸をする際に、猫背でない人に比べ、呼吸が浅いために、酸素濃度は低くなっていることを意味しています。将来的には、これが蓄積した結果として、認知症へと繋がっていくことになります。


  海馬の一部の神経細胞は、大脳の神経細胞の中でも酸素不足にもっとも弱く、低酸素や脳虚血が加わると真っ先に死んでしまいます。
  酸素不足は、認知症を招く率を高めます。カラダの中で、一番酸素を必要としているのが脳です。
  便利な生活送っているとその分、カラダを動かさない生活になりますがそうなると、呼吸して、取り入れる酸素の量も少なくなってきます。
  体内の酸素濃度が不足している人は、知らず知らずのうちにさまざまな悪影響を受けているのです。空気中の酸素濃度は地球上のすべての生物に平等に与えられているのに、どうして人によって酸素が不足してしまうのでしょう?
  それは「鉄分・葉酸不足」と「浅い呼吸」が問題なのです。


  また、年をとってくると重力の関係からか姿勢も悪くなりがちです。先述のように、ミトコンドリアの機能が悪くなれば、姿勢が悪くなります。
  背なかが丸まってくると人が多いですが、そうなると構造的に酸素を取り入れる量も少なくなってきます。
  悪い姿勢にカラダを動かさない状態がプラスすると酸素の供給量も減ってきて、記憶力の低下から認知症の悪化を進めることにもなります。


  今まで、認知症の原因として一番有力視されていたのが「老人斑」。
  これは、アミロイドβというタンパク質の一種で、脳の中にできるシミのようなものです。
  ところが、原因はそれだけではないことがアメリカ・ミネソタ大学の研究で分かってきました。
  認知症の人と、そうでない人の脳を死後解剖して観察したところ、脳に老人斑がかなりできていても、生前、認知症を発症していなかった人が3人に1人いたそうです。
  脳の働きをよくするのに重要なホルモンは、いくつか知られていますが、その中でも一番重要といわれるのが、BDNF(脳由来神経栄養因子)です。
  このタンパク質の一種「BDNF」が脳内に多いと、海馬が大きくなり、老人斑があっても、認知症を発症しなかったというのです。
  通常は、加齢とともに、BDNFレベルは下がっていきます。
  アルツハイマー病の脳の海馬は、このBDNFレベルが非常に下がってるのが特徴です。
  BDNFレベルが下がると海馬は萎縮していきます。これが、アルツハイマー病の引き金となります。
  反対に、脳内にBDNFが増えると、神経細胞の破壊が止まり、海馬が大きくなっていき、記憶の減退やアルツハイマー病の発症を防ぎます。
  これほど素晴らしい作用をもつBDNFですが、ナント!運動によってBDNFが増えることが分かったのです。

 

 米国カリフォルニア大学のカール・コットマン教授は、ネズミのカゴに車輪を入れて、1週間ネズミを毎晩走らせました。走ったネズミは、走らなかったネズミに比べて記憶力テストで頭が良いことが分かりました。
  しかもネズミの海馬を比較すると、運動したネズミはBDNFレベルが上がっていたのです。ネズミは、走る時間が長くなるほど、BDNFレベルも上昇していました。

 

 このネズミの実験で、運動によってBDNFが増えることが分かり、その後、人での研究も進み、次のことが分かってきました。
 

★人間の脳内のBDNFを増やす方法
 

1.適度の運動(有酸素運動)
 2.頭を使うこと


 上記の2つを組み合わせて行なう運動が、たとえば暗算(100から3を引き算)しながらの早歩きや、音楽に合わせての軽い運動になります。
 

日常生活で身体を動かすことが認知症予防


 ウォーキング(早歩き)、ジョギング、サイクリングなどの定期的な運動は、認知症予防に効果的ですが、日常生活でのこまごまとした動作も、それぞれの小さな動きが積み重ねられることで、認知機能が高まります。

 
 米国の80歳代の健常な高齢者500人に、腕に特別な装置を10日間つけてもらい、1日の活動量と認知機能テストとの関連性を調べました。
  すると、1日の総活動量が高いほど、認知機能テストのスコアが高かったのです。これは年齢、性別、体重などに関係なく同じ結果でした。
  この結果から日常生活での小さな動きであっても、それが積み重なれば、運動と同じ効果を脳にもたらすということが分かります。

 


 認知症の方の歩き方は共通しており、猫背で小さな歩幅ですり足、足元が不安定のため、バランスを取ろうとして頭が前に出てしまい、姿勢が悪くなっています。これは体を支える足の筋肉、特に足ゆびの力が衰えてしまうからです。
  普段どおりに歩くだけで足の筋力を自然に強化し、バランスの良い歩き方に変えていきます。歩くことは日々の習慣であり、強制的なトレーニングやことさらの努力を必要としないので、精神的にも負担がかからず、ラクに継続できることから、認知症の予防に効果的です。


  このように、認知症を予防するためには有酸素運動である、ジョギングが一番ということです。
  それ以上に大切なことは、若い頃から姿勢に注意し、猫背・「体の歪み(ストレートネック)」を作らないことが重要になってきます。猫背・「体の歪み(ストレートネック)」を作ってしまえば、いく末はアルツハイマー型認知症へと進展していく素地を作ることになります。

 

認知症は食事や生活習慣で予防や治療できる


 認知症は予防することが大切です。たとえば、魚の油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、野菜や果物などビタミン・ミネラルやポリフェノールの多い食品の摂取は認知症の発症率を低下させることが知られています。
 逆に白米など糖質の多い食事は認知症のリスクを高めます。
 地中海食はアルツハイマー型認知症の発症率を減らすことが知られています。野菜や魚の多い食事がアルツハイマー型認知症の発症を減らす可能性が指摘されています。
 肥満や糖尿病やメタボリック症候群は動脈硬化を促進して脳血管障害の発症リスクを高めます。糖尿病やメタボリック症候群がアルツハイマー型認知症の発症率を高めることも報告されています。肥満や糖尿病やメタボリック症候群はカロリー制限や糖質制限など適切な食事で改善できます。
 ケトン食はこれらの疾患を短期間に改善することが多くの臨床試験で確認されています。
 福岡県久山町の住民を対象に行われている疫学調査の「久山町研究」でも、糖尿病が脳血管性とアルツハイマー型の両方の認知症の危険因子であることが示され、最近の認知症の急増は糖尿病患者が増えていることが要因になっていると指摘されています。
 久山町の追跡調査では、牛乳・乳製品や大豆製品・豆腐、野菜などを多く食べ、ご飯や酒類が少ない食事パターンが脳血管性とアルツハイマー型の両方の認知症の発症リスクを半分程度に低下させることが明らかになっています。また、運動も認知症の発症リスクを低下させます。
 さらに、ケトン体を増やすケトン食が、アルツハイマー病や脳血管障害やパーキンソン病やハンチントン病など神経変性疾患の改善に有効であることが明らかになっています。 ケトン食は、糖質を極端に制限した状態で脂肪酸の燃焼を促進させることによってケトン体を産生する食事で、糖尿病やメタボリック症候群を顕著に改善する効果がありますが、ケトン体自体に神経細胞の働きを高めることが報告されています。

 
糖質制限食・ケトン食は認知症にも効く?


 アルツハイマー病では、アミロイドベータタンパク、が溜まっています。
  アルツハイマー病に罹患している脳は、糖尿病患者同様インスリン濃度が低く、ブドウ糖の利用がうまく進まず、エネルギー不足の状態にあります。
 そこでアルツハイマーは「脳の糖尿病」だとか、「第3の糖尿病」だという研究者もでてきました。


アルツハイマーは第3(脳)の糖尿病


 もともと脳はグルコースしかエネルギーとして使わないと言われてきました。そのため、よく勉強や試験の前には『甘いものを食べると脳が働く』と言われ糖質量の多いものを摂取するようにいわれたものですが、今ではケトン体(β-Hydroxybutyric acid)がアセチルCoAとなり、脳のエネルギー源として使用されることがわかっています。


 では何故エネルギー供給が阻害されているのでしょうか? そこには、ミトコンドリアのエネルギー生産とアミロイドβタンパクというたんぱく質の神経毒性が深くかかわっています。


①解糖系では、グルコースがピルビン酸に分解されミトコンドリア内に入り、アセチルCoAとなってエネルギーとして使用されます。
②遊離脂肪酸が肝臓で分解されることによってβ-Hydroxybutyric acid(BHB)となり、ミトコンドリア内でアセチルCoAとなりエネルギーとして使用されます。


 脳はこの①のグルコースのエネルギーと、②のケトン体β-Hydroxybutyric acid(BHB)のエネルギーの二つを使用することができます。
 しかしアルツハイマー患者ではアミロイドβタンパクの増加がみられ、上記のようにアミロイドβタンパクの神経毒性によりミトコンドリアの機能に異常をきたし、グルコースがエネルギーであるピルビン酸がアセチルCoAになるのを阻害されています。
 さらにミトコンドリア電子伝達系には5つの膜結合複合体があり、そのうちのComplexⅢとComplexⅣもアミロイドβタンパクによって阻害されるため、脳でグルコースエネルギーが使用できなくなっています。


 このことからも、アルツハイマーが第3(脳)の糖尿病と言われています。余談ではあるが、健常者は血糖値が低ければ低いほど認知症になりにくく、糖尿病の患者は血糖値が165㎎/dlあたりが最も認知症になりにくいとされています。


 そこでにわかに脚光を浴び始めたのが、中鎖脂肪酸やココナッツオイル等の、「ケトン体」になりやすい油です。
  脳のエネルギー源となるのは、炭水化物を分解して作られるブドウ糖と脂肪を分解して作られるケトン体です。
 インスリン不足でブドウ糖が取り込めないなら、替わりにケトン体を送り込めば良いのでは?というアイデアです。
 ところが脳にケトン体を送り込むのが難しいのです。
 脳は、ケトン体よりブドウ糖を優先して使いますので、炭水化物がたくさんある状態ですと、肝臓はブドウ糖を優先して作ってしまいます。
 これでは作られるケトン体の量が少なく、脳のエネルギー不足を補えません。
 そこで糖尿病でも近年注目されている糖質制限でケトン体の産生を増やす「ケトン食」に注目が集まりました。
 さらに、食べるとすぐに分解されて、ケトン体になる中鎖脂肪酸(MCTオイル)や、中鎖脂肪酸を多く含むココナッツオイルに、注目が集まったというわけです。
 そしてMCTオイルやココナッツオイルで、認知症が改善したという報告も出始めて、家庭でできる認知症対策として、流行し始めたわけです。


ケトン食はアルツハイマー病の治療に有効


 ケトン体は脳神経のエネルギー代謝を改善し、活性酸素や炎症から神経細胞を保護する作用があるので、ケトン食にアルツハイマー病やパーキンソン病や脳卒中等を原因とする脳神経細胞障害の進行抑制にも利用されています。ケトン食が認知障害の改善に有効であることが臨床試験で示されています。
 例えば、軽度の認知障害のある23人(男性10人、女性13人:平均年齢70.1±6.2)を対象に、高糖質食と低糖質食の2群に分けて6週間の食事療法を行った研究があります。(Neurobiol Aging 33(2):425.e19 ? 425.e27, 2012年)
 実験の結果、低糖質食のグループでは、言語記憶能力の統計的有意な改善を認め、さらに、体重、腹囲、空腹時血糖、空腹時インスリン値の統計的有意な減少が認められました。
 記憶力の変化は、摂取カロリーやインスリン値や体重とは相関を認めませんでしたが、血中ケトン値は記憶力の改善と正の相関が認められました。つまり、ケトン体の濃度が高いほど記憶力が良くなったということで、食事性のケトーシスが認知障害を改善するという結果です。
 この研究の結果は、アルツハイマー病の発症リスクの高い軽度認知障害をもつ高齢者に対して、6週間という短期間の食事(低糖質食)の介入だけで記憶力の改善ができることを示しています。
 認知障害の改善の作用機序として、ケトン体による抗炎症作用や神経細胞のエネルギー代謝の改善作用などが示唆されています。神経細胞の主なエネルギー源はブドウ糖ですが、アルツハイマー病などの認知症では神経細胞のブドウ糖の取込みや代謝に異常が起こっているためにエネルギー産生の低下が認められます。ケトン体はブドウ糖に代わってエネルギー源となるため、神経細胞の働きを良くすると考えられています。
 高齢ラットを使った実験でもケトン体が認知機能を高めることが報告されています。(Adv Exp Med Biol 662: 71-75, 2010年)
  この報告では、高齢ラットを2群に分けて、標準的な餌とケトン食の餌で3週間飼育し、ラットの認知機能をT-迷路法や物体認識テストなどで認知機能を測定しています。ケトン食で飼育した群の方が認知機能が良かったという結果が得られています。食事によるケトン症が神経変性疾患の改善に効果があることを示しています。
 米国では中鎖脂肪酸トリグリセリド(中鎖脂肪酸中性脂肪)のカプリル酸トリグリセリドがアルツハイマー病の治療に有効な医療食として認可されています。
 カプリル酸(caprylic acid)は炭素数8個の中鎖脂肪酸(分子式はC8H16O2)です。
 アルツハイマー病あるいは軽度の認知障害をもった20人の成人を対象にして、日を改めて中鎖脂肪酸を摂取した場合とプラセボを摂取した場合で、認知力を比較した研究が報告されています。中鎖脂肪酸を投与すると90分後には血中のβヒドロキシ酪酸のレベルが著明に上昇し、この時点で認知機能を測定しています。
 その結果、ケトン体の量が多いほど、認知機能の改善が認められました。
 つまり、「アルツハイマー病の患者に中鎖脂肪酸を投与すると記憶力の改善が認められ、その改善の程度はβヒドロキシ酪酸のレベルと相関する」という結論です。(Neurobiol Aging. 25(3):311-4. 2004年)
 神経細胞はグルコース(ブドウ糖)とケトン体しかエネルギー源として利用できないのですが、アルツハイマー病ではグルコースの取り込みや利用に障害があり、そのため中鎖脂肪酸を摂取してケトン体の産生を増やすと神経組織のエネルギー産生が改善して症状が良くなると考えられています。
 その他にも、遺伝子発現調節作用の関与や、抗炎症・抗酸化・抗アポトーシスの機序による神経細胞保護作用も関与していると思われます(後述)。
 以上のように、ケトン体自体に神経をダメージから守る作用があり、さらに抗炎症作用などによって神経変性性疾患の治療に効果を発揮するということです。脳卒中(脳出血や脳梗塞)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などにも効果があることが報告されています。


ケトン食は様々な神経変性性疾患に効果が期待できる


 西洋医学は「病気は薬で治すもの」と考えています。食事で治すという発想はほとんどありません。糖尿病はアルツハイマー病のリスクファクターであり、糖質制限やケトン食がアルツハイマー病の治療や予防に効果があります。
 しかし、まだ臨床的な研究が少ないためか、ほとんど注目されていません。ケトン食が認知力を高めるという実験結果や軽度認知障害にケトン食が有効という小規模な臨床試験の結果がある程度です。しかし、若年性のアルツハイマー病など悲惨な病気に罹っている人は試してみる価値はあると思います。他の有効な方法が無いからです。
 ケトン食はアルツハイマー型認知症だけでなく、様々な神経変性疾患に対する有効性が示唆されています。ケトン体自体に神経をダメージから守る作用があり、さらに抗炎症作用などによって神経変性性疾患の治療に効果を発揮する可能性があるからです。脳卒中(脳出血や脳梗塞)、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病などにも効果があることが報告されています。
 神経変性疾患とは、様々な原因により脳内の様々な部位で神経細胞が病的に死滅してしまうために生じる疾患の総称です。 疾患ごとに障害を受けやすい神経細胞の種類がある程度決まっており、障害される神経細胞の働きにより疾患の症状が決まります。
 アルツハイマー型認知症は記憶を担当する神経細胞(海馬など)の障害であり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動を担当する神経細胞(運動ニューロン)の障害です。パーキンソン病は運動を調節する神経細胞のうちドパミン神経の障害で、脊髄小脳変性症は運動を調節する神経細胞のうち小脳などの障害です。
 ハンチントン病(ハンチントン舞踏病)は、大脳中心部にある線条体尾状核の神経細胞が変性・脱落することにより進行性の不随意運動(舞踏様運動)、認識力低下、情動障害等の症状が現れる常染色体優性の遺伝病です。
 ケトン食は元来は難治性てんかんに対する食事療法として開発され、その有効性は確立されています。アルツハイマー病に関しては、臨床試験でその有効性が強く示唆されています。まだ動物実験のレベルですが、筋萎縮性側索硬化症やハンチントン病やパーキンソン病などの神経変性疾患の治療効果も示唆されています。筋萎縮性側索硬化症やハンチントン病はまだ有効な治療法が無い難病ですが、中鎖脂肪ケトン食を試してみる価値はありそうです。また、認知障害を予防したり、記憶力を高めるために中鎖脂肪ケトン食を実践する有用性はあるように思います。


ケトン体の神経変性疾患改善作用


 前述のように、ケトン体を増やすケトン食がアルツハイマー病や脳血管障害やパーキンソン病やハンチントン病など神経変性疾患の改善に有効であることが明らかになっています。
 ケトン食は、糖質を極端に制限した状態で脂肪酸の燃焼を促進させることによってケトン体を産生する食事で、糖尿病やメタボリック症候群を顕著に改善する効果がありますが、ケトン体自体に神経細胞の働きを高めることが報告されています。
 ケトン体はグルコースが枯渇したときに肝臓で脂肪酸が燃焼して産生されます。ケトン体は血液脳関門を通過し、拡散あるいはモノカルボン酸トランスポーターによって神経細胞内に入り、神経細胞のエネルギー源となります。グルコースの代替エネルギー源となる以外に、次のような様々なメカニズムで神経細胞を傷害から守る作用があります。


①ケトン体は神経細胞のミトコンドリアを増やし、ケトン体自体がエネルギー源となって神経細胞におけるエネルギー産生を増やす。
②ケトン体は抗炎症作用があり、さらにミトコンドリアにおける活性酸素の産生を減らし酸化障害を軽減する。
③ケトン体はアポトーシスの過程を阻害することによって神経細胞死を抑制する。
④ケトン体はヒストンアセチル化を亢進して認知機能を高める。

 
  このように様々な機序が報告されており、恐らく、これら全ての機序が総合的に作用して効果を発揮していると考えられます。ケトン体のミトコンドリアに対する作用とヒストンアセチル化亢進の作用についてさらに解説します。


ケトン体はミトコンドリアを保護する


 神経細胞傷害からの細胞保護や認知機能の増強にミトコンドリアでの呼吸(酸化的リン酸化)の改善が重要であることが知られています。つまり、神経細胞のエネルギー代謝において、ミトコンドリアの機能を良くすることはアルツハイマー病などの認知症やその他の神経変性疾患の治療に有効であることが指摘されています。そしてケトン体にはそのような作用があることが報告されています。以下のような報告があります。
 経口摂取で体内でケトン体のβヒドロキシ酪酸になるβヒドロキシ酪酸メチルエステルが、ミトコンドリアを保護するメカニズムによってアルツハイマー病を改善する効果があることが報告されています。(Biomaterials. 34(30): 7552-7562, 2013年)
 アルツハイマー病の発症機序としては、神経細胞のグルコース利用の低下やミトコンドリアの機能障害など様々なメカニズムが想定されています。ケトン体のβヒドロキシ酪酸やアセト酢酸はグルコースの代わりに神経細胞のエネルギー源となるので、アルツハイマー病の治療効果があることが報告されています。βヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に変換され、アセト酢酸からアセチルCoAができてエネルギー産生に使われます。
 この研究では、βヒドロキシ酪酸の誘導体であるβヒドロキシ酪酸メチルエステルを使って、アルツハイマー病に対する効果を検討しています。βヒドロキシ酪酸メチルエステルは体内でβヒドロキシ酪酸に変化するので、βヒドロキシ酪酸を投与したのと同じことになります。
 グルコースを枯渇して誘導される神経細胞のアポトーシスをβヒドロキシ酪酸メチルエステルは阻害し、アルツハイマー病の神経細胞で起こっているミトコンドリアの異常を改善して活性酸素の発生量を減らすことが実験で示されています。
 アルツハイマー病のマウスを使った実験では、βヒドロキシ酪酸メチルエステルを投与したマウスはコントロール群(βヒドロキシ酪酸メチルエステルを投与しなかったアルツハイマー病マウス)よりも顕著に学習能力が良くなる結果が得られています。また、アルツハイマー病マウスの脳に沈着したアミロイド-βの量が減少していることが確認されています。
 これらの結果から、βヒドロキシ酪酸は神経細胞のミトコンドリアのダメージを保護し、異常を改善することによってアルツハイマー病の改善に有効であることを報告しています。


ケトン体はヒストンアセチル化を亢進する


 ケトン体のβヒドロキシ酪酸がヒストン脱アセチル化酵素を阻害することによってヒストンアセチル化を亢進します。
 飢餓や直接βヒドロキシ酪酸を投与する方法でマウスの血中のβヒドロキシ酪酸の濃度(0.6~1.5mM)を上昇させると、腎臓など複数の臓器においてヒストンのアセチル化が増えていることが確認されています。(Science 339(6116): 211-4, 2013年)
 長期間の絶食では血中のケトン体のレベルが6~8mM程度まで上昇することが報告されています。
 中鎖脂肪酸を多く使ったケトン食ではβヒドロキシ酪酸を1~2mM程度に維持することは比較的簡単です。つまり、ケトン食で達成できるレベルのケトン体が内因性のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤として作用することが証明されています。
 ヒストンアセチル基転移酵素とヒストン脱アセチル化酵素によるヒストンのアセチル化について解説しておきます。
 高等生物のDNAは、ヒストンと呼ぶ球状のタンパク質複合体に1.65回転巻きつき、この複合体を基本単位として存在しています。ヒストンにはアセチル(CH3CO)基が結合し、ヒストンアセチル化と呼ぶ化学修飾が起こります。ヒストンのアセチル化と脱アセチル化の反応は「ヒストンアセチル基転移酵素」と「ヒストン脱アセチル化酵素」によってダイナミックに制御されており、遺伝子発現のON/OFFのメインスイッチになっていると考えられています。
 一般的に、ヒストンの高アセチル化領域は遺伝子の転写が活性化しており、低アセチル化領域は転写が不活性化していることが知られています。例えば、P21cip1は細胞周期の進行を担うサイクリン依存性キナーゼの活性を抑制するインヒビターの一つで、細胞増殖の停止、分化や老化に関わっており、がん抑制因子として捉えられています。
 ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、p21cip1のような細胞周期の進展を阻害する遺伝子の発現を高めることによってがん細胞の増殖を抑える作用が報告されており、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤はがんの治療薬として注目されています。
 タンパク質のアセチル化は、ヒストンだけでなく、非ヒストンタンパク質にも起こります。アセチル化を受けるタンパク質には多数の種類が知られていますが、これらの非ヒストンタンパク質のアセチル化は、タンパク質の安定性や局在や他のタンパク質やDNAとの相互作用などに影響して、がん細胞の発生や増殖や転移などに関与しています。
 通常、ヒストンや非ヒストンタンパク質のアセチル化はがん細胞の増殖を抑制する方向で働くため、このような作用をもった物質はがんの治療に役立つと考えられています。
 さらに、ヒストンや非ヒストンタンパク質のアセチル化は認知機能や学習機能を高める遺伝子の発現やタンパク質の機能を高める作用が報告されています。すなわち、ヒストンアセチル化によって発現が誘導される遺伝子には、神経細胞の死を抑制したり、認知機能や学習機能を高める遺伝子が多く含まれています。さらに、アセチル化される非ヒストンタンパク質の中にも、同様に神経保護作用や神経細胞の働きを良くするものが含まれています。
 以上のようにヒストン脱アセチル化酵素を阻害すると、ヒストンのアセチル化が亢進します。このヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が認知障害やがんの治療薬として注目されています。


ヒストンのアセチル化亢進は認知機能を高める


 記憶のメカニズムには神経細胞におけるヒストンのアセチル化が関与していることが最近の研究で明らかになっています。(Annu Rev Pharmacol Toxicol. 53:311-30. 2013年)
 ヒストンのアセチル化は、中枢神経系における遺伝子発現を調節しているエピジェネティックな修飾です。遺伝子の転写は長期持続性記憶(long-lasting forms of memory)において重要な役割を果たしており、一般的に、ヒストンのアセチル化は長期持続性記憶に有利に働き、一方ヒストン脱アセチル化は長期持続性記憶を妨げる働きをすることがしめされています。
 このヒストンのアセチル化はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の使用によって薬理学的に調整が可能であるため、ヒストンのアセチル化は認知力を高めるために治療のターゲットとして特に注目されています。つまり、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、神経発達障害や神経変性疾患における認知障害の治療だけでなく、健常人に対する認知力増強の方法としても効果が期待されています。
 アルツハイマー病のマウスの実験モデルを用いた研究で、神経細胞が大量に死滅した状態においても、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を投与すると、シナプス形成や神経細胞の樹状突起の成長が促進され、学習機能が維持され、長期維持記憶が回復することが報告されています。
 この実験結果は、神経細胞の死滅や変性が高度に起こった状況でも(つまり、認知症がかなり進行した状態になっても)、ヒストンのアセチル化とクロマチンの再形成というエピジェネティックなメカニズムによって、学習や記憶の増強に効果が期待できることを示唆しています。そして、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がアルツハイマー病の治療に有効であることを強く示唆しています。
 前述のように、ヒストン脱アセチル化酵素はクロマチン構造において主要な構成因子であるヒストンの脱アセチル化を行う酵素で、遺伝子の転写制御において重要な役割を果たしています。
 ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)ファミリーの分子は現在HDAC1~11まで同定されていますが、記憶や学習に関連しているのはHDAC2であることが報告されています。マウスのアルツハイマー病のモデルや人間のアルツマイハー病患者の脳組織にはHDAC2の発現量が増加していることが報告されています。そして、マウスのアルツハイマー病の実験モデルでHDAC2のレベルを正常化すると、高度の神経細胞変性の状態であっても認知機能が回復することが報告されています。
 βヒドロキシ酪酸はクラスIヒストン脱アセチル化酵素のHDAC1とHDAC2を阻害する事が報告されており、ヒストンのアセチル化を高めることによって認知機能や学習機能を高める効果が報告されています。
 アルツハイマー病でなくても、高齢になってくると記憶力が低下します。老化に伴う短期記憶力の低下に対しても、ヒストンアセチル化酵素の阻害剤によって改善することがマウスを使った実験で示されています。
 16ヶ月齢(実験用マウスの平均寿命は800~900日程度のため人間では40~50歳程度)の中年マウスは、若い(3ヶ月齢や8ヶ月齢)と比べて海馬依存的な短期記憶力が著しく低下しています。この中年マウスと若年マウスを用いて記憶実験の前後における脳内のヒストンの状態を比較しています。若年マウスでは学習訓練後1時間でヒストンH4のリジン12(H4K12)のアセチル化が顕著に促進されたのに対し,中年マウスではそのような変化は認められませんでした。さらに、若年マウスでは訓練前後で2,229個の遺伝子発現に差があったのに対し,中年マウスではわずか6遺伝子しか差がなく、若年マウスで発現量の変化した遺伝子のうち,1,539個が記憶学習に関連することが知られている遺伝子であったということです。
 つまり、年を取ると学習しても記憶遺伝子の発現が起こりにくくなっているので、学習能力が低下するということです。そして、記憶遺伝子の発現亢進に関わっているのがヒストンのアセチル化によるエピジェネティックな調節によるもので、高齢になるとこのようなエピジェネティックな遺伝子発現の調節がうまくいかないので、記憶力を低下するということです。そして、中年マウスの海馬にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を注入すると、学習訓練後のヒストンH4K12のアセチル化が促進され、記憶関連遺伝子の発現も誘導され,さらに学習記憶試験の成績も有意に向上したという結果を報告しています。海馬における神経細胞のヒストンH4K12のアセチル化を促進するようなヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を使えば、老化に伴う記憶力低下を防止することも可能という結果です。
  ケトン体にはヒストンアセチル化というエピジェネティックな作用機序の他に、抗炎症、抗酸化、抗アポトーシスなどの機序による神経細胞保護作用が報告されており、アルツハイマー病の治療に対する有効性(認知機能の回復と増強)を強く期待させます。


  以上のような多くの研究から、ケトン体のβヒドロキシ酪酸の血中濃度を1~2mM程度に高めるケトン食(中鎖脂肪酸を多く使うとβヒドロキシ酪酸の産生を高めることができる)はヒストン脱アセチル化酵素阻害作用や、ミトコンドリアの機能改善、グルコースの代替エネルギー源としての作用、抗炎症作用など複数の機序でアルツハイマー病やハンチントン病などの神経変性性疾患の治療に効果が期待できると言えます。またケトン体の血中濃度を高めることは、認知機能や学習機能を高めるので、頭が良くなるかもしれません。

 

 アメリカのメアリー・T・ニューポート医師は著書で若年性アルツハイマーになった自身の夫に対し、ココナッツオイルを1日60㏄飲ませるという治療を試みています。すると、若年性アルツハイマー末期の夫は劇的な改善をするのですが、これはアミロイドβタンパクによって阻害されているグルコースによるエネルギー供給を、ココナッツオイルを使用することでケトン体によるエネルギー供給にチェンジしたら認知力が改善したということです。
 

 今までは、アルツハイマー病では、アミロイドβタンパクによって脳へのエネルギー供給が阻害されていたために脳の活動低下、萎縮、血流低下が引き起こされることによって、認知力が低下しているわけです。しかしメアリー医師はココナッツオイルによって脳のもう一つのエネルギー源であるケトン体を生産させ改善をさせたのです。
 彼女の本は全米でベストセラーとなり、その読者がアルツハイマーの家族にココナッツオイルを摂取させたところ改善したというデータが多く集まりました。データによると大体要介護3~4だとしても、10人に9人は何らかの認知機能の改善がみられると言われています。

 

 国立精神・神経医療研究センター神経研究所の研究グループが、中鎖脂肪酸油(MCT)を含むケトン食の摂取により、認知症でない高齢者の認知機能が向上することを科学誌「Psychopharmacology」(オンライン版)に発表しました。


 同研究グループは、19人(女性13人、男性6人)の認知症でない60歳以上の高齢者にケトン体の生成が高まるように中鎖脂肪酸油を配合した特別な粉ミルク(ケトン食)を摂取することで高齢者の認知機能を高められるかを検討しました。中鎖脂肪酸油は母乳や牛乳、チーズなどの乳製品に含まれているほか、ヤシ科の植物に多く含まれる天然成分で、代表的なものとしてはココナツオイル(約60%が中鎖脂肪酸)やパームオイルがあります。
 

 それぞれの被験者にケトン食とケトン食にふくまれるMCTを同カロリーの長鎖脂肪酸油に置き換えたものを別々の日に摂取してもらい、血中のケトン体濃度の変化と複数の認知機能テストの成績を比較しました。

 
 ケトン食を摂取した時には血中ケトン体濃度が高く推移し、さらに作業記憶や遂行機能に関する成績や一連の認知機能テストの総合成績が高いという結果が得られました。

 
 また、ケトン食ではないものを摂取した時の認知機能テストの総合成績が低かったグループと高かったグループに分けたところ、成績の低かったグループでケトン食による総合成績の向上がより顕著にみられたといいます。

 
 なお今回の研究においてケトン食として使用されたのは、中鎖脂肪酸油を配合した特別な粉ミルク(明治ケトンフォーミュラ)。生まれつき糖質をエネルギーとして利用できない先天代謝異常や、薬で治療が困難な難治性てんかんなど、子どものケトン食療法のために使用される粉ミルクで、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会先天性代謝異常症治療用ミルク 関係事業(特殊ミルク事務局)を通じて医療機関に提供されています。投薬で発作が抑えられない「難治性てんかん」の患者に対するケトン食療法はこれまで病院負担で行われてきたが、2016年4月から保険適用になっています。

 
[お勧めの摂取方法]


  ココナッツの風味を活かした蜂蜜トーストやアイスへかけるなど、デザート系がお勧めです。


[風味の特徴]


  ココナッツの香りと風味がします。熱を加えるとココナッツ風味は少し落ちます。


[1日の摂取量の目安]


  約小さじ3.5杯
 ※一気に多く摂ってしまうとお腹をこわすことがあるので、最初は小さじ1杯くらいから、少しずつ量を増やしてください。


  それでは、参考までに片頭痛とケトン食の効果について考えてみましょう。


片頭痛とケトン食


 慢性的な片頭痛にはケトン食を考慮する理論的な理由があり、特に医学的に難治性の集団に対して考慮に入れる価値があります(Maggioni et al., 2011)。


  片頭痛にもケトン食が有効であるとする論文は、これまでにも症例報告がありましたが(Kossoff E.H.,Huffman J.,Turner Z., and Gladstein J.(2010).Use of the modified Atkins diet for adolescents with chronic daily headache. Cephalalgia 30, 1014?1016.)、
  大集団でその効果を実証するという試みは、Di Lorenzo C, et al. Migraine improvement during short lasting ketogenesis: a proof-of-concept study. Eur J Neurol. 2015 Jan;22(1):170-7. doi: 10.1111/ene.12550. Epub 2014 Aug 25. に以下のように示されます。


 背景と目的:


 ケトン体産生は飢餓やケトン食という脂質代謝を誘導しケトン体合成を促す炭水化物を劇的に制限した食事レジメによって引き起こされる生理学的な現象です。


 最近、体重を減らすために超低カロリー、ケトン食を行っている周期の範囲内でのみ片頭痛が消失した患者が2名観察されました。
 我々のこの観察を確かめるために、栄養士が臨床的に設定した2つの並行した片頭痛患者集団において、一方には1ヶ月間の超低カロリー、ケトン食に続いて5ヶ月間の標準低カロリー食を与え、他方には6ヶ月間標準低カロリー食を与える、フォローアップする事としました。


 方法:


  96名の過体重の片頭痛女性がダイエットクリニックに登録され、盲目的にケトン食(n=45)か標準低カロリー食(n=51)のどちらかの処方を受けました。
  1ヶ月の平均発作頻度、頭痛の起こった日数、内服回数が食事療法開始前と開始後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の時点で評価されました。


 結果:


 ケトン食群では、ベースラインの発作頻度(2.9回/月)、頭痛の日数(5.11日/月)、そして内服回数(4.91回/月)が、最初の1ヶ月が経った時点で有意に減少しました(それぞれ0.71回、0.91日、0.51回、全体でケトン食対ベースライン, P<0.0001)。
  移行期間(1ヶ月目対2ヶ月目)では、ケトン食群はベースラインと比べて改善されているにも関わらず、それぞれの臨床的頭痛変数の一時的な悪化を示した(それぞれ2.60回、3.61日、3.07回)が、6ヶ月目までは継続的な改善を示しました(それぞれ2.16回、2.78日、3.71回)。
  標準低カロリー食群では、頭痛日数と内服回数の著明な減少が3ヶ月目からのみ観察され(P<0.0001)、そして頭痛頻度の減少は6ヶ月目に観察されました(P<0.0001)。


 結論:


  ケトン食効果の基礎のとなるメカニズムはミトコンドリアエネルギー代謝を高め、神経炎症を打ち消す能力と関連している可能性があると考えられました。


  この研究で用いられたケトン食は超低カロリーケトン食といって、低炭水化物(1日30g)、低脂質(1日15g)、正常蛋白質(理想体重kgあたり1.0-1.4g)でカロリーを800kcal以下にコントロールするという、ちょっと厳しい食事療法であったようです。
  ただ参加された片頭痛患者さんは過体重の人ばかりであったので、多少低脂質であったところで、糖質を制限しているので、もともと蓄積されている脂質を燃焼させることによって、それほど空腹感を感じる事もなく1ヶ月の超低カロリーケトン食を完遂する事ができたのではないかと推測します。
  もう一つ、この研究の特徴的なところは、片頭痛が良くなったのがケトン食の効果なのか、やせた事による効果なのかをはっきりさせているところです。
  一般的にケトン食の効果は、やめた後もしばらく残存するという事がわかっています。
  この研究では1ヶ月間の超低カロリーケトン食を行った後、標準的な低カロリー食へと切り替えて、その後6ヶ月目までフォローアップしています。
  そして最初から6ヶ月間ずっと標準的な低カロリー食を続けた群と比べてどうなるかという事を見ているわけです。
 最初の1ヶ月でケトン食群でぐっと頭痛が改善しており、2ヶ月目以降は開始前に比べたら多少マシではあるものの、頭痛が再増悪している事がわかります。
 しかしながら減量効果は多少緩やかになりながらも6ヶ月目まで維持されています。
 もし減量のおかげで片頭痛が改善したのであれば、途中で再増悪するのはおかしいので、片頭痛が改善したのは減量のおかげではなく、ケトン食によってもたらされた効果だと言えると著者らは考察されていました。
 そしてそのメカニズムとして脳において抑制性および興奮性神経伝達物質を調節したり、ミトコンドリアの中でのNADH酸化を増やしたり、フリーラジカルを減らしたりする事で酸化ストレスに対抗すること、さらにはミトコンドリア遺伝子の発現を調節し、特に3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA(HMG-CoA)合成酵素に働きかける事でミトコンドリア代謝を改善させる事が示唆されていました。
  実に多面的なメカニズムで片頭痛を押さえ込み、その結果、劇的な臨床効果を得ているのではないかと考えられます。


  以上、片頭痛がミトコンドリアの機能障害、酸化ストレスが関与しているということが基本的な考え方になるということです。