最終章 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

「すべての始まりは、生体リズムの乱れから」
  最終章


 前回は、専門家は人間本来に備わった”生体リズム”を念頭に置くことなく、全く無視して、片頭痛の予防について論じていると述べました。このため、一般の素人が考える”片頭痛予防”とは、かけ離れた、謂わば相容れぬ考え方をされています。
 このため、片頭痛で悩まれる方々は、専門家がまさかウソを付かれるとは毛頭考えもしないため、どちらを信じるべきか迷われたことと思います。
 そこで、最後に、この相違点がどこにあるのかを明確にしておく必要があります。
 結論から申し上げれば、専門家は「片頭痛とミトコンドリアの関与」を全く考えないことに、このような相違点を生み出しており、お互い相容れないことになっています。
 前々回の「片頭痛は、”病気”なのか??」のシリーズでは、”未病”といった謂わば代替療法”的な論点から論じていることから蔑まれる最大の理由になっていました。
 今回の「すべての始まりは、生体リズムの乱れから」のシリーズでは”生体リズム”という人間本来の体に備わった働きの観点から述べてきました。
 

 このシリーズを終わるに当たって、「片頭痛とミトコンドリアの関与」を示す史実について簡単に触れておくことにします。

 

 


病気の90%は活性酸素が関与


 活性酸素に関しては今から50年以上前に米国の生化学者フリードビッヒ博士によって解明され、その後世界各国で研究が行われてきました。
 その結果、人が罹るあらゆる病気に活性酸素が関与していることが明らかになりました。 今や病気の90%は活性酸素が原因だということが判明したのです。それでは残りの10%は何かといいますと、風邪やエイズ、また最近世界中に蔓延しているコロナウイルスによる新型肺炎、すなわち感染症です。
 このように、現在では人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、活性酸素が原因と考えられています。
 活性酸素とは、ミトコンドリアがエネルギー産生を行う際に、必然的に生み出されてくるものです。


 従来から、片頭痛は”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると報告されています。


 Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol Sciences 134 (1995) 9-14


MBT療法


 1990年代に鳥取大学医学部・神経内科の下村登規夫先生は以下のような DASCH diet を提唱されておられました。そして、これが片頭痛の食事療法の基本とされていました。
 片頭痛患者においてミトコンドリア機能の低下,脳内マグネシウムの低下とマグネシウムの発作抑制作用,脳内セロトニン減少の可能性,血小板内ラジカルスカベンジャー(SOD)の低下などの臨床的根拠(エビデンス)があることから、頭痛に関してはdietary approach to stop chronic headache (DASCH )と呼ぶ,食生活を中心とする生活習慣を見直すことで片頭痛治療を提唱されました.(MBT療法とも言われていました)


 DASCH diet では上述のエビデンスに基づいてミトコンドリア機能を高める目的でビタミンB2を摂取し,マグネシウムを摂取します.さらにラジカルスカベンジャーとしてβカロチン,ビタミンEおよびCなどを摂取します.脳内セロトニンを増加させるため,セロトニンの前駆体となるアミノ酸のトリプトファンを摂取するように指導します.具体的な食物としては,ビタミンB2,E,Cなどおよびβカロチンを多く含む緑黄色野菜,果物,海苔,うなぎなど,マグネシウムを多く含む大豆製品,ほうれんそう,柿,魚介類,トリプトファンを多く含む大豆製品,卵(卵黄),脱脂粉乳,牛乳などの乳製品やバナナなどをできるだけ多く摂取するよう指導する.緑黄色野菜などの量は体重が約60kgの成人で300g/日以上を目標とします.


 これらを行うことで、およそ9割の片頭痛が改善するとされています。
 ただし、最低でも3ヶ月、なるべく半年以上続けることが大切とされていました。
 これにより、次第に頭痛発作の回数が少なくなるなどの改善が見られると述べていました。


片頭痛は15億年前の因縁?


 1996年に間中信也先生が開設されたネット上に「頭痛」の老舗ともいうべきHP「頭痛大学」があり、この当時から、以下のような記載があったことを忘れてはなりません。


 ミトコンドリアは、細胞のエネルギーを産生する「発電所」のはたらきをしています。
 それは約15億年前のことでした。当時酸素が嫌いなノンビリやの単細胞生物”A”がおりました。
 当時増えつつあった酸素を利用してエネルギッシュな好気性生物”B”もいました。”A”が”B”に提案しました。
 「Bさん僕と結婚しよう。僕のウチに住んでいいよ。そのかわり君のエネルギーを僕にわけて頂戴」。
 プロポーズが成功して、”A”と”B”の同棲生活が始まったのでした。


 片頭痛には、このミトコンドリアが関係しています。
 片頭痛では、ミトコンドリアの”酸化燐酸化の障害”があり、これによる代謝の異常が、神経機能障害を引き起こし、それが”脳過敏”を強めて片頭痛発作を発現させます。


 ミトコンドリアの代謝機能を是正すれば、片頭痛にならないということになります。


 ミトコンドリアの働きを助ける物質にビタミンB2があります。実際ビタミンB2をとると片頭痛になりにくいのです。
 とすれば、15億年前に細胞AとBが同棲しなければ、片頭痛という病気は生まれなかったかもしれません。

 こういったことから、片頭痛は全身的な”ミトコンドリアの機能の低下することによって起きる頭痛”と考えられていました。


ミトコンドリアとビタミンB2


 ミトコンドリアは、細胞の中で呼吸し、エネルギーを生産している工場の役割を担っています。ミトコンドリアの働きが低下したり、異常をきたす病気を「ミトコンドリア病」といい、この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。
 このミトコンドリア病を持つ人々にミトコンドリアの機能をよくするビタミンB2を摂取させると、片頭痛が改善されることが分かりました。
 逆に、片頭痛もちの人たちもビタミンB2を摂取することで、7割近くの人の頭痛が改善することが分かっています。

 

  1998年にShoenenらによって発表された論文によりますと、ミトコンドリア病の患者さんに1日1回400mgのB2を服用させた所、ミトコンドリアが元気になりミトコンドリア病が改善しました。このミトコンドリア病の主症状が片頭痛です。この事にヒントを得て、ミトコンドリア病に限らず片頭痛の患者さん55人に1日1回400mgのリボフラビン(ビタミンB2)を3ヶ月服用させた所、片頭痛の起す割合が半分に減った患者さんが37名だったと言う事でした。
 その理由は、ビタミンB2がミトコンドリアの電子のやりとり(電子伝達によりエネルギーを産生する)を円滑にしたことにより、ミトコンドリア代謝機能を向上させたからだと考えられています。
 また、ビタミンB2には体内で生成される過酸化脂質を分解する作用もあり、この作用によって片頭痛が軽減された可能性もあります。いずれにしても、ビタミンB2が片頭痛患者の半数以上に改善効果を与えたことは事実ですから、ビタミンB2を積極的に摂りたいものです。


 ビタミンB2を多く含む食品としては、牛、豚、鶏のレバーやハツ(心臓)、うなぎ、うに、すじこ、サバ、ズワイガニ、納豆、いくら、タラコ、卵黄、まいたけ、モロヘイヤ、のり、煎茶の茶葉、唐辛子などがあります。

 

問題はどこにあるのか??


 このように、「片頭痛とミトコンドリアの関与」を論じ、これを基にした治療法が行われていましたが、難点は方法が煩雑で、効果がでるまでに最低でも3カ月を必要とされていました。これは、日本にトリプタン製剤が導入される以前の2000年前後に日本全国で行われていた治療法でした。

 先述のように、学会ナンバー・2とされる先生が、明らかに片頭痛がミトコンドリアの機能の低下による頭痛とされ、自分のHPに記載されながら、トリプタン製剤が販売されるや否や、手の平を返すが如く、トリプタン製剤一辺倒の考えに方向転換されたことを私達は知っておかなくてはなりません。


 そして、下記の記事に示されるように、2,000年に我が国にトリプタン製剤が導入され、その後「慢性頭痛診療のガイドライン」が作成されると同時に、片頭痛治療は薬物療法一辺倒になり、MBT療法は、このガイドラインには記載されることはなく、いつの間にか、極く限られたひとしか行われることはありませんでした。
 このため、片頭痛治療は、発作急性期には各種のトリプタン製剤を使い分け、発作間歇期には各種の予防薬を”適切に”選択すべきとされ、これで片頭痛の治療体系は確立されたとされています。このように「薬物療法」がすべてであり、片頭痛という辛い痛みだけを軽減・緩和させることに主眼が置かれ、予防などは論外とされていました。


  片頭痛中心の頭痛医療・・混迷を深める頭痛医療
   ・・・  現在の頭痛診療の歴史・・・
     
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12263430814.html


    専門家の拠りどころ・・「国際頭痛分類」
     
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12581120523.html


 そして、わずか「ミトコンドリア説」なる語句まで生まれる始末でした。


  ミトコンドリアの機能低下”説” ???
    
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12193517211.html


 このように、専門家は片頭痛を予防するといった観点から片頭痛治療を考えてはおりません。その証拠に、前回提示しましたように、発作を誘発する要因を避けることによって、発作を起きなくすることが、片頭痛予防とされます。


 その結果として、平成24年に、大和田潔先生が関西頭痛懇話会で講演された際に、「私が若い頃は、慢性頭痛患者さんは緊張型頭痛ばかりであったが、最近では、逆に、緊張型頭痛が少なく、片頭痛が圧倒的に増えた」 と述懐されておられたのが、未だに忘れることができません。
  さらに、驚くことには、「片頭痛からの卒業」では、片頭痛患者の3人に1名は慢性片頭痛とされていることです。

 この事実は、緊張型頭痛→片頭痛→慢性片頭痛 という経過を辿ることを意味しています。
 にもかかわらず、なぜ、このような状況に至ったのかの検討がなされることはなく、対策が講じられることはなく、まったく野放しの状況にあります。


 また、片頭痛だけではなく、現在、緊張型頭痛患者さんが置き去りにされている事実も忘れてはならない点です。
 なぜ、緊張型頭痛の患者さんが無視されているのかは、以下をご覧下さい。


  無視される緊張型頭痛患者さん・・その結末は
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12296268443.html


 結局、緊張型頭痛も片頭痛と同様に”薬物療法”一辺倒で対処されるが故に、緊張型頭痛を慢性化させ、最終的にはどのような鎮痛薬を服用しても全く効果がみられず、挙げ句の果ては「酸素吸入」しか奏功しない状態に至ることも多々あります。
 読者のなかには思い当たる方も恐らく、いらっしゃると思いますが・・
 現在では、東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、緊張型頭痛は完治するとされていることを忘れてはなりません。
 このため、現在の「頭痛外来」には、緊張型頭痛の方々は殆ど受診されることはなくなり、その結果として、「取るに足らない頭痛」とか「あなたは、これまで診たこともない”珍しい頭痛だ」といって1例報告されるのがオチのようです。


  姿勢が悪いと、空気が薄くなる??
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12361245376.html


  潜在的に増加する”スマホ病”
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12268228390.html


 最後に、今回「生体リズム」を取り上げた最大の理由は、体内時計の問題です。
 現在では、体内時計については、少しずつ解明が進んでいます。このなかで時計遺伝子の存在が解明され、どうやら生体リズムの乱れが大きく関係しているらしいことがわかってきたのです。
  従来より、群発頭痛は体内時計の乱れによると指摘されていますが、時計遺伝子が詳細に解明されることによって、明らかにされることが期待されます。


 さらに、活性酸素、有害化学物質の観点から、私達の健康を考えていく必要があります。

 電磁波や環境汚染の問題が健康とどのように関わっているか注目しなくてはなりません。

 それは、私達の体の仕組みそのものに関与しているからに他なりません。
 現在、原発事故のあとの汚染水の海洋放出が検討され、まもなく実施されようとしています。

 こうしたことは、食物連鎖とも関わったことであり、他人事ではないはずです。
  私達の生活環境を取り巻く活性酸素、有害化学物質が、ミトコンドリアとどのように関わっているのかを私達は知っておく必要があります。
 そうでなければ、いつまでも片頭痛から解放されることはありません。


  誰が片頭痛を治らなくしたのか
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12577168816.html

 

  迷走し続ける片頭痛医療
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12576453528.html

 
  片頭痛を治さないほうが儲かる医薬業界っておかしくない?
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12576545983.html

 

 国際頭痛学会の作成した「国際頭痛分類 第3版β版」という世界で最も権威あるものを基準としているといった謂わば、”虎の威を借りる狐の存在に頼る”ことなく、私達の健康そのものを基準とした考え方から臨床頭痛学は構築しなおす必要があります。

 問題は、現在の専門家に期待することは到底無理のようで、慢性頭痛で苦しむ患者自身で、このような”体の仕組み”、健康を守る立場から考えていくしかないようで、まさに悲しむべき時代です。