先日、ご紹介致しました、「片頭痛からの卒業」をご覧になられたでしょうか?
現在の頭痛医療を理解するための必読書と思われます。といいますのは、皆さんが頭痛を訴えて受診される「頭痛外来」の基本的な考え方になっているからです。
私達の片頭痛が、どうして治らないのかを考える際のヒントになるからです。すなわち、なぜ、片頭痛が治らなかったのかが如実に示されており、これを反面教師として、学ぶ必要があるからです。
ご覧頂いた方は、これまで私が当ブログにおいて述べてきたことの相違点がお解りになられたでしょうか?
つい最近では、以下のような考え方の相違点が存在することを指摘してきました。
専門家が考えていること、欠落していること
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12365182029.html
強者の論理、弱者の論理
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12365964724.html
結局のところ、頭痛の専門家は西洋医学に基づいて、病気を考えていることにあります。
西洋医学では、私達の体の状態は「健康」か「病気」かの2つしかありません。
東洋医学でいう、「健康」と「病気」の中間に位置する「未病」という概念がありません。
そして、専門家が教典とされる「国際頭痛分類 第3版β版」では頭痛367種類を分類し、さらに脳のなかに異常のない、一次性頭痛を92種類、脳のなかに異常のある、二次性頭痛を180種類、神経痛・顔面痛を30種類、その他が65種類となっています。
これらが厳密に、症状の上から定義されています。
慢性頭痛とは、一体、何なのか?
そして、一次性頭痛とは、慢性頭痛あるいは「頭痛持ちの頭痛」とも呼ばれ、「頭痛そのものが病気」の頭痛とされ、このなかに片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛があるとされ、これらは、厳密に症状の上で「国際頭痛分類 第3版β版」で定義され、まったく別個の頭痛とされています。
ですから、脳のなかに異常のない慢性頭痛とは何か、という概念そのものがありません。
こうした、頭痛研究が謂わば海図・羅針盤にも匹敵する概念もなく行われてきたことから、その方向性すら掴めず、広大な荒海を右往左往し彷徨うしかありませんでした。
このことが「片頭痛からの卒業」では、明確に示されています。
まさに多くの記載があるものの、まったく関連性がなく統一性に欠けるものでしかありません。
ただ、患者さんの言われるがまま、これに興味を持って疑問に答えるだけです。
ところが、私は、このような脳のなかに異常のない、慢性頭痛とは、先述のように、東洋医学でいう「未病」の段階にある状態・「症状」であり、いまだ「病気」にまでは至っていない、と述べてきました。
ところが、この書籍では、片頭痛を「症状」ではなく、一つの病名であり、脳や神経、血管に起こる病気であるとされており、ここに根本的な相違点があります。
「未病」の段階にある慢性頭痛とは、絶対的な「健康」ではなく、私たちの身体のバランスがどこか歪んでいるのです。これは「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」を意味しています。このため、慢性頭痛を治すためには、自然治癒力を高める必要があります。
本書で述べているように、片頭痛の特効薬とされるトリプタン製剤を服用していても、痛みそのものは緩和されても、片頭痛を根本的に治すことはできず、片頭痛を引き起こす病態は潜在的に進展していくことによって、片頭痛は益々、悪化し、最終的には慢性片頭痛という頭痛地獄に陥ることになり、悲惨な結末を迎えることになりかねません。
こうした状況に至った方々が増加の一方になっていることを忘れてはなりません。トリプタン製剤を服用しても、根本的な解決になっていない、ということを認識しておく必要があります。
このように”未病”とされる病態は、本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから「病気」へと進展するものと東洋医学では考えられています。
ですから慢性頭痛とは”未病”の段階にあり、「健康的な生活」を送ることを阻害する生活習慣に根本的な原因があります。
そして、「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」によって慢性頭痛という「症状」が出現し、さらに様々な生活習慣の問題点が加わることによって、難治性の頭痛という「病気」にまで進展していくことになります。
健康的な生活を送るためには
「健康的な生活を送る」ためには、ミトコンドリア・腸内環境・生理活性物質が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
このなかでもミトコンドリアはその”要(かなめ)”となり、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きるために必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”とも言えるものなのです。
私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、ミトコンドリアでエネルギー産生が十分に行われないために、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
このようにセロトニン神経系はミトコンドリアと連動して働いています。
セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランスを保つ”などの重要な働きをし、「健康的な生活」を送るためには欠かせない働きをしています。
「健康的な生活」とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。
この「生体のリズム」は「ホメオスターシス(自然治癒力)」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御されています。
「ホメオスターシス・恒常性(自然治癒力)」には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角」と呼ばれます。
ホメオスターシスはストレスなどに大きく影響されます。例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。
この3つのバランスが崩れてホメオスターシス機能が保てない状態(自然治癒力が低下した状態)になると、”頭痛”を肇とするいろいろな”体の不調”が現れることになります。
先述のように、私達の身体の細胞にはミトコンドリアという小器官があり、ミトコンドリアは糖と脂肪酸の代謝とアミノ酸の代謝などエネルギーを産生するのに必要不可欠な働きを担っていることから、「自然治癒力」を正常に保つにはミトコンドリアの働きを良好に維持することが必要です。
姿勢の悪さ・・「体の歪み(ストレートネック)」の原因は?
私達の生活環境は活性酸素・有害物質に満ち溢れており、ここ 50 年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、同時に起きている「セロトニン神経系の機能低下」と相まって、以下のような理由から「姿勢の悪さ」を引き起こしやすい状況にあります。
すなわち、ミトコンドリアは、全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ脊椎起立筋群に多く存在し、ミトコンドリアの働きが悪くなれば、当然のこととして「姿勢の悪さ」を引き起こしてきます。
さらに、セロトニン神経系は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることによって、「脊椎起立筋群」に働きかけていることから、セロトニン神経系が低下してきますと、セロトニン神経系本来の働きである「正しい姿勢の保持」が困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「姿勢の悪さ」を引き起こします。
このように、「脊椎起立筋群」に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関与、さらにセロトニン神経系は、”神経系の要因”として、関与し、姿勢を保持しています。
こういったことから、ミトコンドリアの機能が悪化している現代社会では、「姿勢の悪さ」が起きやすい生活環境に置かれています。
このような「姿勢の悪さ」は、「健康的な生活を送る」上に、さまざまな悪影響を及ぼします。当然、頭痛を起こす原因にもなります。
姿勢が悪いと、空気が薄くなる??
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12361245376.html
ここに、さらに「運動不足」、「栄養のアンバランス」は「健康的な生活」を送ることを阻害する要因になってきます。
ミトコンドリアの機能を悪化させる要因・・酸化ストレス・炎症体質の形成
そして、ミトコンドリアの機能を悪化させる要因としては、以下があります。
生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、具体的には、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食、生活習慣の問題点、具体的には、睡眠不足や運動不足や不規則な生活・インシュリン過剰分泌を来すような早食い・ドカ喰い等の食事摂取方法の問題等々が加わって、ミトコンドリアの機能は低下してきます。
このため、「健康的な生活を送る」ためには、このような「ミトコンドリアの機能を悪化させる要因」を取り除いておく必要があります。
このような「ミトコンドリアの機能を低下させる要因」を取り除かなければ、最終的に、「酸化ストレス・炎症体質」を形成させてきます。
人が罹るあらゆる病気の 90 %は活性酸素が関与
現在では人が罹るあらゆる病気の 90 %は活性酸素が関与していると言われ、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症、を含めて)は、活性酸素が原因と考えられています。
活性酸素とは、ミトコンドリアがエネルギー産生を行う際に、必然的に生み出されてくるものです。
ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
そして、先述のようなミトコンドリアの機能を悪化させる要因によって、ミトコンドリアDNAは傷つけられてくることになります。
このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。
慢性頭痛、とくに片頭痛は、「後天性ミトコンドリア病」が形成されるまでの途中の過程で、出現してくる「症状」と考えられます。
このように、慢性頭痛発症には、ミトコンドリアが関与しています。
そして、このミトコンドリアDNA(ミトコンドリアの働きの悪さ)が、先祖代々、受け継がれていくことになります。とくに母系家族から引き継がれていくことになります。
そして、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な差異は、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”の有無でしかありません。このミトコンドリアの活性低下(働きの悪さ)がミトコンドリアDNAを介して、主として母系家族から先祖代々継承されることになります。
片頭痛の患者さんでは、緊張型頭痛の場合と異なって、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しますので、ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因の影響を、とくに受けやすいことになります。
このため、片頭痛では、緊張型頭痛に比べて、比較にならない程、頭痛の程度が極端に酷くなってきます。
ところが緊張型頭痛の場合でも、片頭痛のように遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しなくても、生活習慣の問題によってミトコンドリアの働きが極端に悪くなり、さらに「脳内セロトニンが枯渇」してくれば、片頭痛と同様の難治性の頭痛(慢性緊張型頭痛)を引き起こしてくることになります。
女性の場合は、生理があります。
生理周期によって、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、その分泌量は大きく変わります。
特にエストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、それに伴って神経伝達物質であるセロトニンも急激に減ります。
つまり排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するためにセロトニンも減少→頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすくなります。
このように、生理周期に関連して、脳内セロトニンが低下してきます。
さらに、女性は健常男性より 約 52%「脳内セロトニン」を産生する能力が低く、またセロトニンの前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では「脳内セロトニン」合成が男性の 4 倍減少すると言われています。
このため、女性では、潜在的に「脳内セロトニンの低下」した状況に置かれています。
こういったことから、女性の場合、日頃から「脳内セロトニンを増やす」工夫を行う必要があり、このように備えることによって、生理時の脳内セロトニンの低下分を増加させておくことが絶対的に必要になってきます。
生理時に、トリプタン製剤を服用したからといって、この低下した脳内セロトニンを完璧に補填できないことは素人でも理解されるはずであり、このため生理時の片頭痛がいつもより激しくなっている理由にもなっています。
本書では、こうした「脳内セロトニンを増やす」方法についての記載がありません。これでは片頭痛は治ることは、一切、ありえないことです。特に、食事によって増やす必要があります。
このように、女性では、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量・・脳内セロトニンが重要な鍵を握っています。
女性の慢性頭痛は女性ホルモンに大きく支配・左右されています。
女性ホルモン自身が活性酸素を減らすわけではありませんが、女性ホルモンは、活性酸素を減らす酵素を増やす働きがあります。
しかも、その増やし方は巧みで、活性酸素が少なくなると活性酸素を減らす酵素を増やす働きも失われるのです。つまり、完全に活性酸素をなくしてしまうことはないのです。 活性酸素には、いろいろな役割があって活性酸素を完全になくしてしまえばよいというものではないのです。うまく制御しながら活性酸素を減らすエストロジェンの働きは巧みで、そのために女性は長生きできるのです。
さらに、エストロジェンにはもうひとつの働き・役割として、ミトコンドリアを増やす機構があります。
エストロジェンはミトコンドリアに直接働きかけてミトコンドリアを増やしてくれます。
このようなことから、排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するために、活性酸素が増加することによって、この過剰に増加した活性酸素が引き金になって、片頭痛発作を引き起こすとも考えられます。
また、更年期になって、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下することによって、このことが問題の中心になってくることになります。
慢性頭痛発症の要因
このように、慢性頭痛発症の要因として、以下の3つの大きな柱があります。
1.ミトコンドリアの関与
2.セロトニン神経系・・脳内セロトニンの低下
3.「姿勢の悪さ」→「体の歪み(ストレートネック)」
これら3つの要因は、ミトコンドリアが中心的な役割を果たしています。
以上のように、慢性頭痛とは、ミトコンドリアの機能低下による”生活習慣病”と考えるべき頭痛であることが理解されるはずです。
なぜ、これまで片頭痛が治らなかったのか?
このため、慢性頭痛を理解するためには、ミトコンドリアに関する知識は必須のものとなっています。この知識がなくては、片頭痛そのものが理解できないことになります。
この「片頭痛からの卒業」では、ミトコンドリアについての記載は全く存在しないことから、諸々のことが不明とされ、ベールに包まれることになっています。
このため、脳の”不思議さ”と至るところで表現されています。
ということは、片頭痛がミトコンドリアの機能の低下による頭痛とは、一切、考えていないことを意味しており、極めて偏った考え方をされているということです。
こうした考え方は日本にトリプタン製剤が導入される以前から、既に報告され、皆さんがよくご覧になられる頭痛のネット上の老舗とされる「頭痛大学」(間中 信也先生 開設)にも明確に記載されていることです。決して、突飛な考え方ではなく、一時はMBT療法が一世を風靡したこともある考え方であったはずのものです。
このように極めて、ポピュラーな考え方であったはずのものでした。ところが、日本にトリプタン製剤が導入されて以来、こうした考え方がいつの間にか抹殺され、ガイドラインにも記載されなくなってしまいました。このように意図的に抹殺された経緯が存在します。
片頭痛は、ミトコンドリアの機能が低下することによって起きる病態であることを片時たりとも忘れてはならない点であり、ミトコンドリアの機能が悪くなればセロトニン神経系の機能も低下し、これに生活習慣の問題点が加わって、脳内セロトニンは低下してきます。
たった、これだけのことです。本書では、片頭痛をミトコンドリアの機能の低下による病態と考えないために、脳内セロトニンが枯渇する原因が不明とされているだけのことです。
そして、頭痛の専門家には、「自然治癒力」といった概念そのものが欠如しています。
さらに、ミトコンドリアが慢性頭痛発症に如何に重要な役割を果たしているのかが理解されていません。
片頭痛」の鍵を握るのがセロトニンという脳内物質であると述べるものの、セロトニンが枯渇するきっかけが何か不明とされます。
このことは、ミトコンドリアの働きの悪さが、セロトニンの低下と関与しています。このことがまったく認識されていません。不思議な思いにさせられます。このように極めて単純なことです。
専門家は、片頭痛の”特効薬”にトリプタン製剤という薬があり、単なる痛み止めではなく、片頭痛のメカニズムに作用して痛みを抑えるものであるとされながら、最近では、片頭痛の特効薬のトリプタンを服用するにも関わらず、片頭痛の3人に1人は慢性片頭痛になっており・・慢性片頭痛が猛威を振るい始めていると嘆かれます。
このような慢性片頭痛は、トリプタン製剤が導入される以前には極めて稀な病態でしたが、最近になって、このような頭痛地獄とも称される慢性片頭痛が急増してきています。
この最大の要因は、トリプタン製剤の乱発にあることは、これまでも当ブログで指摘しました。
トリプタン製剤による「薬剤乱用頭痛」がなぜ増加したのでしょうか
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12264045857.html
ところが本書では、この原因として、市販の鎮痛薬の乱用に原因があり、トリプタン製剤が特効薬であることから関係なしとでも言わんばかりであり、慢性片頭痛を予防するためには、「頭痛体操」を提唱され、これがすべてとされています。
先述のように、本書で述べていますように、片頭痛の特効薬とされるトリプタン製剤を服用し、痛みだけを緩和していますと、その根底にある「酸化ストレス・炎症体質」が次第に増悪するために、片頭痛は増強するだけで、最終的に慢性片頭痛へと進展していくことになります。
そして、頭痛体操のなかで片頭痛の圧痛点の存在を指摘されますが、この圧痛点は、「体の歪み(ストレートネック)」との関連から論ずるべきでありなから(「体の歪み(ストレートネック)」の診断基準の1つにもなっていることを忘れてはなりません)、このような「体の歪み(ストレートネック)」の存在すら念頭に置かれることはありません。ですから頸椎レントゲン検査が必須の検査にはなっていません。
頭痛体操で、片頭痛の圧痛点を軽くさせても、その根底にある「体の歪み(ストレートネック)」そのものが改善・是正されることなく、依然として存在することによって、再度、片頭痛の圧痛点が出現することになります。
片頭痛は遺伝的な体質を持つ人に、さまざまな誘因が「引き金」となって起こるとされています。このため、片頭痛を引き起こす引き金となるさまざまな誘因を避けるように指導されます。このような消極的・姑息的なことしか指導されません。
片頭痛が遺伝的な病気の1つで、多因子遺伝、すなわち体質の遺伝であり、受け継いだ遺伝子だけでは発症しない、生活習慣、環境の変化などが引き金となって片頭痛が起きているとされます。
にも関わらず、このような生活指導をどのように理論づけていくかが全く検討すらされず、具体的に指導していくのかが示されていません。ガイドラインにも一切、記載されることはありません。個々の医師の裁量に任されているのが実情です。
このように多因子遺伝そのものに関する認識が一般人とは異なっているようです。
先述のように、片頭痛がミトコンドリアの機能低下による病態と考えれば、さまざまなミトコンドリアの機能を悪化させる要因によって発症してくることは容易に理解できるはずです。このように多因子遺伝であり、それを引き起こす要因そのものも明確になっており、どのように是正させるのかは、これまでブログでも明らかにしてきました。
このようなことを一般の患者さんが眼に出来るガイドラインに明確に記載しておく必要があるはずです。にも関わらず、一切、このようなことがなされることはありません。
慢性頭痛診療のガイドラインでは、こうした最も大切な生活指導の具体的な内容は一言も記載されることはありません。あたかも、片頭痛が治っては困るとでも思っているのでしょうか。
同じ多因子遺伝とされる糖尿病では、糖尿病学会が主導して「糖尿病治療のてびき」「食品交換表」を作成され、具体策が示されることを考えれば、雲泥の差があると言わざるを得ません。
このため、片頭痛治療上、食事療法の重要性を考えることは全くありません。
片頭痛はミトコンドリアの機能低下によるものであり、ミトコンドリアがエネルギーを産生するためには食事は最も重要な位置を占めており、食事療法ぬきの片頭痛治療はあり得ないことになっています。
今回の「片頭痛」からの卒業では、食事に関しては、ただ赤ワインだけであり、その他のことは一切、注意を喚起されることはなく、これでは片頭痛は治るはずはありません。
筆者が作った日本の最先端の片頭痛医療のセンターには、このような栄養指導の部門は存在しないことからも、このようなことは示されています。
このような具体的な生活指導を行うことなく、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬であり、さらに今後、片頭痛の予防薬として抗CGRP抗体療法といった予防薬に期待されます。
このような「薬物療法がすべて」と考えておられるようです。まさに薬物療法の信奉者であることを如実に表現されています。薬物療法だけで病気(片頭痛)が治るとでも思っておられるようです。このような対症療法だけでは、片頭痛が治らないことは、誰でも理解されることです。
行っていることは、極めて姑息的なことばかりであり、何一つ的を得たものはありません。
こうしたことが、片頭痛の3人に1人は慢性片頭痛になっている根本的な理由になっていると考えなくてはなりません。
ですから、果たして「片頭痛」から卒業したのか、甚だ疑問とされるところです。
ただ単に、トリプタン製剤によって、片頭痛発作期間中の辛い頭痛が緩和されたに過ぎません。これが、西洋医学でいう、片頭痛の治療を意味しており、西洋医学では、薬物療法によって治療可能なものが「病気」とされているだけで、あくまでも「対症療法」に過ぎず、病気そのものを根本的に治すものではありません。
このように、片頭痛という痛みが緩和されたことを、片頭痛が治ったと、この書では表現されているだけのことでしかありません。
予防薬にしても然りです。予防薬を服用したからと言って、片頭痛が予防される訳ではなく、痛みの頻度を僅か減少させ、頓挫薬の効き目をよくするだけの効果しか得られないものです。これを、片頭痛の治療と称しているだけのことであり、片頭痛を根本的に治すことを目的とした治療ではありません。
これが、西洋医学の本質であり、すべて対症療法でしかありません。
病気が治せないのは、西洋医学の本質にある
このような状況に至った原因として、西洋医学の本質を考えなくてはなりません。
この詳細は、冒頭で引用した以下をご覧下さい。
強者の論理、弱者の論理
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12365964724.html
片頭痛の研究業績は現在では、殆ど出し尽くされていると考えるべきものであり、現在最も求められていることは、これらの研究業績を理論的に繋ぎ合わせることだけの作業です。
このような研究者の出現が切に望まれています。
これまでの片頭痛に関する研究業績を理論的に構築しさえすれば、とっくの昔に、片頭痛の本態は解明し尽くされ、「片頭痛を卒業する」ことが可能なはずでありながら、何故だか「薬物療法」だけを信奉されるが故に、一般の方々には全く理解されないために慢性片頭痛を増加させるだけのことでしかないことになっています。
これは西洋医学の”宿命”とも言えるものでしかありません。
このため、西洋医学が形成される過程・経緯を丹念に紐解けば、自ずと理解されることであり、これまでも、この点は当ブログで明確にしてきたことであり、ここでは繰り返さないことにします。
西洋医学の”限界”なのか、それとも???
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12295493908.html
このように現代社会では、強者の論理が罷り通り、弱者の論理は抹殺されることになっています。まさに悲しむべき時代としか言えないようです。このことは冒頭の引用文をご覧下さい。
結局のところ、東洋医学的に、未病という概念を頭痛研究において取り入れ、脳のなかに異常のない慢性頭痛とは、一体、何なのかという禅問答を繰り返すことによって、慢性頭痛という概念を作り上げることが、頭の使いどころであり、科学的エビデンス云々の問題ではありません。自分の頭を使って考えるだけのことです。
そうなれば、片頭痛そのもののを見つめ直す必要があります。片頭痛では、如何に辛い頭痛が起きようとも、治まれば健康状態に復帰します。このことを考えてみる必要があります。こうした単純なことが説明できなければ、頭痛研究を行う上の資質が問われることになります。
このことは自然治癒力のなせるワザであり、西洋医学では、このような自然治癒力の存在を認めることがないのが特徴であり、ここが盲点になっているということです。
たった、これだけのことに過ぎません。
このようなことが片頭痛という謎を解く鍵になっていることを忘れてはなりません。
これに基づいて、これまでの先達の研究業績を構築しさえすればよいということです。
現代の臨床頭痛学とは、まさに総論なき頭痛学そのものであることを示しています。
一個人の狭い研究業績にただひたすら拘るだけでは、無理があり、広く先達の研究業績に思いを馳せ、自分の研究業績がどのような位置を占めているのかを反省すべきです。
これまで述べて来ましたような、片頭痛はミトコンドリアの機能低下による頭痛であることは、日本にトリプタン製剤が導入される以前から報告されてきたことです。
こうした研究業績を深く熟考した上で、自分の理論を構築すべきです。
さらに、ミトコンドリアに関する知見も大幅に塗り替えられてきています。
こうした、頭痛を取り巻く基礎医学の進展にも配慮していく必要があります。
このような基礎的知識を基にして、臨床頭痛学の総論を構築し、頭痛研究を推進していくことが重要であり、これまで、このような総論を述べる専門家がいなかったことが日本の頭痛学の遅れの根源となっていることを反省しなくてはなりません。
木を見て森を見ないといった研究は少なくとも慎むべきであり、研究費の無駄遣いでしかありません。このような学会発表がザラにあるのが、日本頭痛学会の特徴のようです。
こうした作業抜きに、「片頭痛からの卒業」までの道のりはほど遠いものと思われます。
総論なき臨床頭痛学
https://ameblo.jp/yoyamono/theme-10086045076.html
このように大局的に考える必要があり、これまでのように木を見て森を見ないといった考え方では、何の進展もなく、ただひたすら薬物療法を信奉するしかないことになります。
「木を見て森を見ない」現在の頭痛医療・研究
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12339811190.html
このことを理解するためには、今回の「片頭痛からの卒業」はまさに打って付けの書籍と思われ、現代の頭痛医療を理解するための絶好の書籍と思われ、是非とも、ご覧になられることをお勧めする次第です。極めてグッドタイミングで出版されたようです。
現在、慢性片頭痛の患者さんが増加の一途を辿っており、どうしてこのように増加してきたのか、その原因を私達は追求する必要があります。この原因を探るために、頭痛の専門家がどのように考えているのかを知るためには、今回の「片頭痛からの卒業」は、まさにグッドタイミングな絶好の書籍と思われます。これを知って置かなくては、私達は自分の身を守ることは到底不可能と心得なくてはなりません。
その上で、こうした慢性片頭痛という頭痛地獄に陥らないようにするためには、私達自身でどのようにすべきなのかを考えていく必要があります。
専門家は頼りにならないという、悲惨な状況にあることを再認識しておく必要があります。
結局、行き着くところは、片頭痛患者で金儲けを企む利権トリオ集団が存在するが故に、このような状況に至っているということでしかなく、如何に綺麗事を言っても始まらないということです。
少なくとも、学問を論ずるような場ではないことを意味しているということです。
次の片頭痛予防薬として期待されている抗CGRP抗体療法も同様のことが言えることです。
もっと医師として、真っ先に行うべきことがあるはずでありながら、このようなことを無視されるのが専門家の特徴のように思えて仕方ありません。
このように考えれば、頭痛専門医とは一体、何なのでしょうか。”客寄せパンダ”でしかないのでしょうか? それも、ただ単に金儲けのためだけの・・
この世の中は、どうなっているのでしょうか????