タイトル 塔の上のラプンツェル

公開年

2010年

監督

バイロン・ハワード ネイサン・グレノ

脚本

ダン・フォーゲルマン

声優

マンディ・ムーア

制作国

アメリカ

 

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品第50作目であり、初の3Dで描かれるプリンセスストーリーとなる。原作はグリム童話の「ラプンツェル(髪長姫)」だが、原作はラプンツェルは王女ではなく普通の農夫の娘で、魔法使いの庭に生えているラプンツェル(チシャ)と引き換えに妊娠していた娘を引き渡す。娘は森の中の塔に幽閉されていたが、そこに通りかかった王子と逢瀬をかわし、妊娠したことから魔法使いに追放される。王子も目をつぶされ両者ともさまよっているうちに再会し、王子は彼女の涙で目が見えるようになり、二人は生まれた子供とともに幸せにすごくという、絶対にディズニーが映像化できないような話なので、かなり改変が加えられている。というか、よくこれをあのディズニーが映像化しようとしたなと感心する。

映画はフリン・ライダーの語りから始まる。昔々、空から地上に落ちてきた太陽の滴から、生まれた「金色の花」には怪我や病気から守り、若さを維持できる不思議な力を宿している。その花を偶然見つけた老婆のゴーテルは、花の力を独り占めし、何百年もの間若さを保っていた。

それから何世紀も経ったある日、娘を宿した王妃が重い病にかかり、国民はゴーテルが隠していた金色の花を見つけて王妃に献上した。花を浮かべた水を飲んで回復した王妃は金髪の女の子を無事に出産。その子にラプンツェルと名付けた。王と王妃は王女の誕生を祝って『灯り』を灯したランタンを空に飛ばす。

それで収まらないのがゴーテル。花を取り戻そうと王宮に忍び込むが、花の力がラプンツェルの金色の髪に宿り、髪を切ると力が失われることを知る。仕方なくラプンツェルを誘拐し、森の奥深くにそびえる高い塔に閉じ込めめると、自分の子として育てる、髪の霊力により若さを維持してきた。一方、王と王妃はラプンツェルの誕生日が来るたびにランタンを空に飛ばし、彼女がそれを目印に帰って来るよう祈るのだった。

本作のヴィランのゴーテルだが別に彼女は魔女というわけでなく、花の霊力で若さを保っている普通の老婆に過ぎない。ただ、スタッフは白雪姫の魔女を参考にしたようだ。

それから18年の月日が経ち、泥棒のフリン・ライダーはスタビントン兄弟と王宮に忍び込み、王女のティアラを盗むことに成功。更に姉弟も出し抜くが、警備兵が追ってきたことから森の奥に逃げ込み、ラプンツェルが閉じ込められている塔にやってくる。こっそり忍び込んだライダーをラプンツェルはフライパンで昏倒させ、クローゼットに押し込んで隠した。彼女はそれまで外に出た事がなく、母親と思っているゴーデルから「外は恐ろしい世界だからお前は一人で暮らせない」と言い含められていた。外にあこがれる彼女は、自分が外の脅威に対処できることを示すべく、ライダーを捕らえた事を誇示しようとするが、いつもの通り切り出す前に言い含められてしまう。

そこで、目を覚ましたフリンにティアラを返す条件に「自分をランタンが現れる場所まで案内して欲しい」と約束させる。

初めての外の世界に胸躍らせる一方で、ゴーデルへの後ろめたさも感じるラプンツェルを脅かそうと、荒くれ者が集まる酒場「かわいいアヒルの子」に連れていく。しかし、純粋なラプンツェルに感化された荒くれ者たちは、自分の夢を語りだしてしまい、半ば強引にライダーも夢を語る羽目になる。そこに城の衛兵たちが現れるが、荒くれ者は二人を逃がしてしまう。一方スタビントン兄弟も二人を追い途中で二人は追いつめられるが、ダムの決壊とラプンツェルの髪の魔力で助かる事が出来た。この時ライダーは自分の本名がユージーン・フィッツハーバートだと語った。

この名前から、彼が高貴な生まれである可能性が示唆されている。

マキシマスを仲間にしたラプンツェルとライダーは王国に到着。その夜ボートに乗って城から無数のランタンが放たれる姿を目撃する。長年の夢を叶えたラプンツェルは、ティアラを返しそれを持ってスタビントン兄弟の元に行くが、彼らに気絶させられて衛兵たちに引き渡されてしまう。一方ラプンツェルは、スタビントン兄弟に捕まりそうになるが、、ゴーテルに助けられて塔に連れ戻されてしまう。しかし、壁に描いた太陽の絵が王国の紋章に似ていることから、自分が王女で攫われたことを悟りラプンツェルはゴーテルを責めるが、逆にゴーテルに鎖で繋がれてしまう。そのころライダーは死刑判決を受け、執行の時は刻一刻と迫っていた。というのが大まかな粗筋。

前述のとおり本作はほぼ、髪の長い少女が塔に幽閉されているという以外、原形をとどめないほど改変されていて「それなら別の原作を探したら」と思うほどだが、ヒロインが長い髪を操るビジュアルが欲しかったのかもしれない。

主役の二人とゴーデル。そして白馬のマキシマスが魅力的。話のテンポも良く、ファミリー向けの秀作と言ったところだ。それといわゆる「毒親物」という面もあるので、ある意味時代を先取りしていた作品ともいえる。

そしてこれは日本語吹き替え版だけのことになるが、ラプンツェルの声を担当したしょこたんこと中川翔子本人がアニメ好きを公言しているだけに、声優としての技量は相当高い。最初劇場で見た時は知っていたが、最後まで全く気にならないほどだし、今回久し振りに見たが、やはり全然違和感が無かったので「プロの声優に変えたのか?」と思うレベル。いや、玄人はだしというよりも、もう彼女は玄人だよ。顔出しの俳優をやっても演技力あるし、なかなか多芸多才。その一方で、器用貧乏という問題もついて回っている気もするが。