吉田貫三郎。挿絵と装釘から | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

吉田貫三郎 挿絵原画

 

書物展望(1931年創刊)』に連載された酒井潔『現代一流雑誌挿絵論(第5回:1933.12)』の中で、雑誌『新青年』で活躍する新進の挿絵画家として吉田貫三郎が紹介されている。この吉田の挿絵人生は昭和20年に37歳で中国広東省で戦病死するまで、ほぼ10年ほどになる。

 

吉田貫三郎 挿絵原画

 

上掲2枚の挿絵原画はおそらく雑誌『新青年』のために描かれたものだと思うのだが確認できていない。2枚目の読書する婦人の挿絵にはサインがないが、一枚めの挿絵と同時に入手したものでタッチも酷似することから吉田のものではないだろうか。

 

橘外男:酒場ルーレット紛擾記(1936)春秋社

 

吉田貫三郎による装釘の橘外男『酒場ルーレット紛擾記』は10年以上も前にヤフオクに流れていたもの。裸本だったため購入をためらい見送ったが、今となっては後悔しきり。完本は(私には)高額すぎる。沖積舎による翻刻版、小栗虫太郎の『紅殻駱駝の秘密(1936/翻刻2000)』も吉田の装釘で、これは古書店に流してしまった。

 

珍しいところでは木村毅『花嫁隠密(1938:1942再版)八紘社杉山書店』まげ物の装釘をしている。

 

靖国の絵巻(1942)から

 

吉田貫三郎:随筆集 蟹の爪(1943)地平社

 

戦時中に出版された吉田貫三郎の随筆集『蟹の爪』は、戦後有志によって再販された。これによって細々ながら生前の挿絵仲間との交流などを知ることができる。吉田については wiki 、ブログサイト『襟裳屋Ameba館』では貴重な顔写真が掲載されている。