木村毅「花嫁隠密」吉田貫三郎の表紙絵 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 木村毅:花嫁隠密(昭13初/17再版)八紘社杉山書店

伝記もの、近代文学関連評論で知られる木村毅のほんとうに珍しい(だけの?)大衆小説「花嫁隠密」時代は幕末、勤王の情報を探るために京都見廻組蒔田の娘綾は泣く泣く財産家ながら柔弱能天気な商家次男に嫁いだ。巷では勤王に味方する鞍馬天狗ならぬ黒覆面にナポレオン服を着た怪人が神出鬼没の活躍をしていた。しかもそのナポレオン服によって綾のかつての許婚が殺害されるに至って、復讐の念に駆られる綾は積極的に隠密仕事を始めるのだったが…そも、ナポレオン服とは何者?

ナポレオン服の怪人の正体ははなから想像がついて面白味がないのだが、そこは考証派の木村毅のこと細部に蘊蓄を傾けながら、まずまず(ひいき筋なので甘めに)中出来。やはり木村毅の大衆小説というだけの興味本でしょうかね。昭和17年に新興キネマ京都、仁科熊彦監督、大友柳太朗主演、高山広子の綾で映画化されている。装幀が吉田貫三郎で、モダンな吉田がナポレオン服の怪人を大衆小説的オーソドックスに描いていて、珍しい。繰り返しになるが、市場ではあまり見かけることのない珍本ですね。

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 情報紙月刊myskip8月号:金峰神社祭礼記事