NOKKO for REBECCA 木下杢太郎の日々 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 sketchbook.080 NOKKO

 

昨年今年と1990年前後にブームを巻き起こしたロックバンド「レベッカ」解散後はソロ活動する「NOKKO」の音楽にはずいぶんお世話になった。仕事に埋もれて足掻いたおりには彼女の音楽はぴったりで、朝から晩まで流しっぱなし。一日の予定仕事を終えほっと一息、すでに窓外は真っ暗なんてことがよくあった。

 

その「レベッカ」が今年再結成して話題をまいた。個人的にはソロ以降の〝まったく売れなかったころ〟のアルバムが大好きで、現在も聴きながらブログを書いている。そういえば本田美奈子も女性だけのロックバンドを組んで〝まったく売れなかった時代〟があったが「レベッカ」の影響が大きかったのだね。

 

 ‪NOKKO, SHORT HAIRS:Transistor Glamour‬

 

 屋上庭園 第1,2号(1875,76)1959年復刻版

 

木下杢太郎、長田幹彦、北原白秋らが(20歳前後のころに)編集した雑誌「屋上庭園」の復刻版(限定300部)で昭和34年冬至書房から発刊された。オリジナル版はほとんど見かけない稀覯本である。作品は若書き未熟ながら(不遜にも)私自身の20歳と比べるならば、なんとも恐るべき早熟である。

 

表紙絵デッサンは黒田清輝から借り受けたようで、雑誌に無名氏による「黒田邸訪問記」が載っている。書いたのは杢太郎(あるいは長田幹彦?)じゃないだろうか。

 

 木下杢太郎:藝林間歩(1936)岩波書店

 

杢太郎の評論随筆を集めた「藝林間歩」収録の回想記「パンの会と屋上庭園」によると「我々(パンの会)は新詩社との関係から石井柏亭を知り「方寸」の同人(山本鼎、森田恒友、倉田白羊、織田一麿,他)とつき合うようになり、フリッツ・ルンプ、彫師の伊上凡骨、当時一流の製版家といわれた田中松太郎が加わった。(適当にダイジェスト)」そうだ。

 

こうした若い人たちの活動を頬をゆるめながら森鴎外や黒田清輝らが後援してくれていたのだろう。今にしみれば「屋上庭園」周縁の登場人物らを眺めるだけでも豪華である。

 

 岡井隆:木下杢太郎を読む日(2013)幻戯書房,他

 

若いころの杢太郎は画家になりたくて、次いで詩人になりたかったが、養家の恩を無視するわけにもいかず医師となり、勧められるまま養家の姪をめとっている。作家としては傍流・周縁の人物といわざる得ないのだが、それゆえバランスのとれた視野によってわが国の文化界を誘導してきた。ともいえる。

 

気にいった映画を繰り返し観ているうちに〝名脇役〟の存在に気づくといった、そんな人物が杢太郎である。書題が面白いと「売りに出た首」なども最初に手にしたおりには、さっぱり面白くなかったのに、周回後に読み直してみたら随分印象が違っていた。大正昭和戦前の地下水脈に広く細網をはり巡らせている。

 

 木下杢太郎:売りに出た首(1949)角川書店

 木下杢太郎:印象派以後(1915)日本美術学院/自装カバー

 

深更ますます寒くなってきて、仕方がなく蒲団にもぐりこみ、足下に湯たんぽを仕込んで「杢太郎の日々」を過ごしている。岡井本を一章読んでは、その関連本を引っぱりだして読むといった具合なので杢太郎本だけが枕元に積みあがっていく。では、それほどまでに面白いかと問われなば、ちょっと困るかも。