2025年 冬・春 の俳句集です。


口語体・現代仮名遣い・現代的切れ字を基本にして詠んだ作品を集めました。


よろしければご覧になってみてください。


下記の古典語や歴史的仮名づかい・古典的切れ字を使っていないこともご確認ください。


や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・等々


また、現代の言葉で俳句を詠むと俗・稚拙になるのかについても検証など行ってみてください。


*作品はすべて既発表句です

*文語・口語の図を記事末に記しています




『春あかつき』

〜口語体俳句集〜


◇ 春の部 ◇


雪しずくひづめからもよ騎馬の像


咲く坂よそらへそらへと梅まつり


ちがう香よあおぐじぶんと梅の花


チューリップDNAが咲きならぶ


はなであることをわすれず薺咲く


初蝶よ黄の野しろの野むらさき野


あみ引けば千々のひかりよ白魚漁


はるのうみ島国千々にゆうばえて


ぼんぼりよいんえいの美を雛人形


見わたせば空見つめれば初ざくら


空揺れてとうめい感よはつざくら


スカイツリー東京タワー花のくも


イヤホンよ桜ソングがふぶくそら


ゆく舟よあおげば次のはなふぶき


のこる鴨水輪のなかをしんと出ず


はっと気を取りもどす傘春のあめ


竹の香のしみ入るゆびよ団扇作る


このいえよ椿さえ葉にかくれがち


カーテンも遅日サンセベリアの窓


コーヒーにミルクがしずむ春愁よ


ありがとうだけがのこるよ春炬燵


すでにして多言語の国おぼろづき


ひとつほぐれ梅のつぼみよ旧正月


陽の窓に拭きあとあらたはるの塵


立春よゆきふる明日はありながら


早春よすずめあつまるみずたまり


棘よりも赤く薔薇の芽吹きやまず


白魚よそらうつすみず揺らしつつ


鳥雲に入るあけがたをゆうばえを


あおぎみる子の気重さよ雛かざり


あおあおと日ざしの松よ雪しずく


遠い日につづくのは畦げんげ揺れ


よせてくる波も琵琶湖よ春がすみ


雉走るててててててと尾を立てて


散る枝のあばれどころよ雪やなぎ


くもにあく日ざしのあなよ龍天に


瀬戸の暮船はたがいにかげろうか


島ごとにすいへいせんよ春の暮れ


またたきよなにかかたって春北斗


むすびたておむすびの湯気春の雪


そらに枝くきくきくきようめの花


赤はげんじつ白はしんじつ梅の花


日が千々に飛びかうそらよ養蜂家


現代にシャッターを切る大阪場所


アスファルト歩道漆黒黄たんぽぽ


春ゆうやけ地球大きくかたむいて


コンビニの閉店永遠にはるのくれ


千々の灯よ市駅のいろのぼたん雪


ワイヤレスイヤホンの静はるの雪


たんぽぽよ雲押しはこぶ阿蘇の風


東風吹いてくるま椅子から雲の旅


大統領ら四葉のクローバーえらべ


ちいささよ草葉がくれの雲雀の巣


灯一つとうちゅうのなかよ春炬燵


春満月夜やみうるんでいるばかり


タンカーは雲より遅々と沖うらら


沈黙よときがふくらむさくらの芽


そのさきは日の光だけ木の芽吹く


口五つ身をのりだすよつばめの巣


せかい史のなかのにほん史桜東風


さえずりよ門また門のまつやま城


開花宣言花びらはいまそよかぜよ


満ちた日に焦点あわすはつざくら


あさざくら稽古笛吹きつづみ打ち


大しだれざくらまことの花ざかり


春の夢わすれるたびにうつくしく


舞い舞ってのこる花あるたきぎ能


もんあけて二之丸も城さくらどき


篝火よ夜をうけいれてゆうざくら


一灯よそれるひとひらずつが飛花


桜今朝いろはにほへとちりぬるを


刀鍛冶火を打ち散らすあさざくら


ほのとある香よいちりんの桜湯に


目のおくのかなしみ揺れる桜湯に


ひとひらが呼ぶひとひらよちる桜


駅塔よあさをゆうべをはなふぶき


ふぶいてもふぶいても空花ざかり


花ふぶきこそ京のはなぶぶきこそ


はなびらのかずの光陰ちるさくら


つぎつぎよ視野のそとへとちる桜


発つバスのゆくえゆくえへ散る桜


見あげては見はるかしては花見舟


うえのそらしたのそら花ふぶく山


掃くひとよ千代に八千代に八重桜


かがり火の夜桜かぜに散りどおし


しんと夜を映して川よ花ぼんぼり


こめづくりいちねんがけよ蛙の夜


つきおぼろおくにおくある修験山


いちどほどまんげつの夜よ八重桜


蓬摘むあさきゆめみしゑひもせす


まわりだす水車暮れまで風ひかる


雲雀野よ空とひとつにひろがって


揚げ雲雀月日あおげばとうとくて


うれしげよどの靴あともはるの泥


波のおと和をとりもどすはるの浜


悠久のときよ跳ねだすむつごろう


やどかりよ何本あしがあるのやら


かもめらがゆきたがるのは蜃気楼


消失点ゆくふねにもよはるのあめ


すいへいせんきらめきどおし春岬


貝がらよすなにかえってはるの浜


つきおぼろ夜めく古墳そのものが


蝶々と化してことばよふとだまる


春セーター裾ゆったりと暮らす町


ゴールデンウィーク世の旅心の旅


新幹線風ゴールデンウィーク明け


行春よその後かくかくしかじかと






◇ 冬の部 ◇


雪嶺がよこいっせんよ北アルプス


スキーヤー以外うごかず飛騨の山


ふゆのうめ伝統はただ幹にすぎず


はるばるといち羽なげうつ鷹匠よ


やわらかにひっくりかえす落葉焚


落ち葉焚き死んだ神から神生まれ


数式で詩でかがやかすふゆぎんが


無思想よ噛んでもかんでも寒林檎


にわとりは逆さんかくよ冬ひなた


ゆめのなかあるいて行くぞ眠る山


日がさせばそこらじゅうによ寒雀


吹くかぜよ地べたにすわる冬の鹿


関東平野ひとひらの雪てのひらに


それだけでいい甘鯛の吸いものは


しら息よ舞い上がるかに鶴のこえ


撫でる手に猫あまえがち日向ぼこ


ショーウィンドウなかば鏡よ雪催


いっさいが雪スクランブル交差点


いちぎょうの俳句ひかれよ軒氷柱


光ねんのあおさしろさよふゆの星


微分積分教室じゅうがふゆぎんが


体─心─意識─たましい─冬銀河


冬北斗なにを見ているとも告げず


木枯らしよだれも心臓抱くように


いちりんはしみじみ自然かえり花


意識下にほのあかりさす日向ぼこ


仕事結婚子そだて俳句はつしぐれ


雨やがて舞いだす街よゆきだるま


三羽二羽一羽陽となるふゆかもめ


これ以上ちかづけず野のふゆの虹


みずへって瀬のいくつもよ冬の川


撃ち撃って兵士とびちる夕枯れ野


せんそうがこの店にまでおでん酒


おでん酒こころの角がとれるまで


寒星よ路じょうのスマホ明りほど


オリオンよ消えのこる夜の町灯り


温厚でいることみかんあまいこと


かぜやんでちんもくが手に粉雪よ


毛糸編むミニマリストの淋しさに


セーターにほつれおもいでに錯誤


クリスマスツリーよ笑えない世界


亡命のバイオリン弾きクリスマス


縛り解くストーブの薪鳴りくずれ


熱燗よ湯気もあかりもゆらゆらと


坂よふとふりかえるとき年のくれ


年の市暮れもだんだん押し詰まる


落ちかかる伽藍のかげよ煤はらい


工場よ掛けのこされてふるごよみ


たたみ替え青いかおりが廊下まで


しあわせに背まるめてこそ置炬燵


注連飾る縁起かさねたおもたさよ


輪かざりよ三日ばかりをのこす年


国しんとしずまりかえり年越しか


撞きついて今もむかしか除夜の鐘


年越しそば伝統はみなほそぼそと


とおぞらよ一羽二羽とぶ初日の出


輪かざりよ玄関の良いつらがまえ


その起源めでたくわすれかがみ餅


天に地に鈴ふるおとよはつもうで


そらよりもおもく大注連飾り垂れ


はととして羽ばたいてゆく元日が


床を這う湯気ともどもに初湯出て


かこみらいげんざいが揺れ冬菊よ


着ぶくれて行く手いっさい風の音


だいぶつに花と舞いちることよ雪


凍滝よしんからあおみがかるほど


陽に燃えているかに燃えず大枯野


千鳥とぶ沖がもっともかがやくと


船を飛ぶにほん映画のふゆかもめ


漂泊ようみついばんでふゆかもめ


行くふねのかげいくつもよ寒落暉


マスクして自分じしんという宇宙


冬耕よ土地と生きつづけるように


そのほかはひとにまかせて冬耕よ


瀬々もつれ日暮れをいそぐ冬の川


はなったりもどりきたりよ腕の鷹


そのしたを水脈のはしるか龍の玉


ラグビーよ仰いで終るものがたり


寒夕焼あすへあすへとくりかえす


熱燗よきみがさっぱりわからない


しらいきよほしにひかりの遠近法


鳴きかわす鯨にこころほしのうみ


真夜なかよホットワインの赤と白


マフラーよ目を曇らせて街をみて


片おもいしがち冬薔薇えらびがち


凍て鶴よ日はゆき雲はゆきながら


つぼみ日にふくらむ碧梧桐の忌よ


河豚汁よのこるじんせいすする音


いっさいを落としてかぜの枯木山


水鳥といちばんぼしのゆうぞらと


ほのおからほのおが生まれ落葉焚


火を焚けばある嶺々とオリオンが


シリウスよ自分よ引かれあう天地


寒灯よあおげばかげとなるこころ


霜ばしら俳句じゆうということか


そのかげにくらんで鯉よ寒つばき


いきおいがひたと凍るかふゆの滝


探梅よあしもとに日はさしながら


ふゆの梅山のにおいがかわりだす


目とじても香のあかるさよ冬の梅


もうつぎのきせつのおとよ冬の川





2025年 夏・秋につづく




▽俳句の読みくらべはこちらから▽


文語体俳句・口語体俳句・会話体俳句






◇文語・口語の大まかな図

下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です。

◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体

◇口語=口語体=現代語=書き言葉
                                    ∟==話し言葉

◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い


この作品集では現代的な切れ字の候補を使用しています。

「現代切れ字 十八字(推奨)」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ


生成AIの活用については、自作作品に対する鑑賞、比較、意見を参考にしています(2024.02〜)。

俳句の向上や学習目的のため、また利用過多にならないことを心がけて行っています


いま心にとめているもの取り組んでいるものを挙げておきます。

「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」

「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」

「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」

「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」


── 文と文のつながりをのこしたまま、

            間(ま)を大きくとりたい場合


外国文字 使用したほうが効果的な場合


カタカナ 外来語など使用したい場合

                    使用したほうが効果的な場合


*個人的に行った意味づけです

*この記事内の作品を楽しむためのものです






いつも

ご覧いただき

ありがとうございます




*作品はnote等で発表したものです


*解説について、至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください


*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります



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