日本では中国料理や中華料理という名で親しまれている“中国”がルーツの料理ですが、本家中国では「中国菜 zhōngguócài」(菜=料理の意)と言い表します。

 

ただ、日常会話ではもっと一般的な呼び方として「中餐 zhōngcān」という言葉が使われる事の方が多い気がします。

 

これは、日本語の会話の中でも、日本料理、西洋料理、中国料理とは言わず、和食、洋食、中華という呼び方をするのと同じ感覚で、和食は「日餐 rìcān」または「日料 rìliào」、洋食は「西餐 xīcān」と言うのが一般的です。

 
中国は国土の大きさにおいては世界3位とも4位とも、人口の多さにおいては長らく世界1位を保持している超大国です。日本の約26倍の国土に56の民族、計14億人(内91%が漢族)を超える人々が生活をしている多民族国家でもあります。

 

一口に「中国」といっても、四川省や黒龍江省一省だけでも日本より大きな面積を持つスケールなので、何につけても一つの物差しでは推し量れない難しさがあります。

 



中国には東西南北の味の特徴を表現する「东酸西辣南甜北咸」(東の料理は酸っぱく、西の料理は辛く、南の料理は甘く(淡く)、北の料理は塩からい)という言葉もありますが、これではさすがに大雑把すぎるので、少し専門的に料理体系を分類する場合、自国の料理を四つ「四大菜系 sìdàcàixì」、もしくは八つ「八大菜系 bādàcàixì」の地方料理に分けて説明するのが一般的です。

 
即ち


★鲁菜 lǔcài…山東料理(北)
★川菜 chuāncài…四川料理(西)
★粤菜 yuècài…広東料理(南)
★苏菜 sūcài…江蘇料理(東)※四大菜系の場合、蘇菜は「淮扬菜 huáiyángcài」とか、浙江料理とあわせて「江浙菜 jiāngzhècài」、または揚子江の下流域一帯の呼称である江南地方にかけて「江南菜 jiāngnáncài」と呼ぶ場合も。


の四大菜系に、


★湘菜 xiāngcài…湖南料理
★皖菜(徽菜) wǎncài(huīcài)…安徽料理
★浙菜 zhècài…浙江料理
★闽菜 mǐncài…福建料理


を加えたものが八大菜系です。

 

八大菜系の詳細についてはそれぞれ一つのテーマになれるのでまたの機会に。

 

「八大菜系」に含まれる地域。内陸は四川、湖南、安徽の三省のみで、ほかの五大菜系は沿岸地域。


ちなみに、日本では中国料理を北京、四川、広東、上海という四つの地域に分類した「四大料理」として説明する事が通例です。

 

長いあいだ中国の首都を担っている北京の料理は、多分に山東料理の影響を受けていると言いますし、上海はもともと江蘇省の一部でしたから、この方が日本人には便宜上解りやすかったのだと思います。
 
そして、この八大菜系が全てを網羅しているかというと当然そうでは無く、他の省や自治区のすべての土地にも、それぞれ独立した料理の特徴がある事は言うまでもありません。


上の地図を見て頂ければわかる通り、「四大菜系」とか「八大菜系」というのは、あくまでも東西南北の産物や味の嗜好、特徴を大きな括りで捉えた分類方法であって、とてもじゃないですがこれを以て、中国料理の全容を把握するのには無理がある気がします。

 

続く…