プロフェッショナル 仕事の流儀スペシャル「庵野秀明 1214日の記録」NHK 3/22放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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プロフェッショナル 仕事の流儀スペシャル

「庵野秀明 1214日の記録」超大作アニメ完結へ NHK3/22放送

 

感想
「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」が2021年3月8日に公開されたのに呼応して放送された「庵野スペシャル」
これを観て感じたのは映画の「庵野個人とのシンクロ」
父が仕事中の事故で左足を失くしたことが、彼の少年時代に大きな影響を与えた。父親は世間を憎んだという。
庵野の解説本でもある「スキゾ/パラノ・エヴァンゲリオン」では、欠損のあるものに興味があったという表現をしていたが、今回によれば父親を肯定したいという意味があったという。
しかしこんな(失礼)監督によくスタッフが付いて行くナーという驚き。
奥さんの安野モヨ子の話が面白かった。

彼が今まで生きていられるのは奥さんのおかげ・・・
 

このインタビューについて庵野自身が語っている→コチラ
(肝心なところで取材に来てない・・・)

 

もと仕事仲間だった岡田斗司夫がこの番組を「映像を見て考える人用の番組を作っていない」と批判している→コチラ
・第3村のミニチュアはレーザーカットで部品作っている
・ホンネはオープンセット→それと比べれば安くついた
・プリヴィズは元々山賀がオネアミスでやった

  (当時は庵野も山賀批判)
・ミサトに言わせた「息子がしてやれるのは・・・」は師匠(宮﨑)殺し
・NHKはちゃんと仕事をしていない(撮影はしてる)
・ドキュメンタリーは、証言があって、その向こうを探るもの。

  証言を本気にしてアンノさん天才ダっていうのは「プロパガンダ」
・あれだけ素材があったらもっといいものが作れた
・庵野の横で辛そうにしてた鶴巻がバツグンに面白い・・・

これでようやく「シン・エヴァ」のレビューに行ける・・・

内容
この男に安易に手を出すべきではなかった・・・・
生み出す映画は唯一無二。大ヒットした「シン・ゴジラ
そして今春エヴァ新劇場版の完結。TV放映から26年。熱は冷めない。
エヴァ完結を受けての取材申し込み。それが苦行の始まり。

番組最長の密着4年。今宵、解禁。

2017年9月28日

西荻窪。事務所にカメラが入るのは史上初。
庵野秀明60歳。現場は一流クリエーター揃い。だが庵野はいない。
「たまに見かける」 不在です、の表示。
2時間後、音もなく席にいた。

会議が始まっても話を聞いているのか、いないのか。
翌日、翌々日も姿を見せない・・
確認させてください。エヴァは終わるんですか?
終ります。思い入れはない。謎に満ちた男。歩みは伝説。

26年前にTV公開された「新世紀エヴァンゲリオン
14歳の主人公がエヴァに乗り込み使徒と戦う、謎の物語。
新劇場版の累計動員数800万。本当にこれで終わるのか?
庵野は新作でアニメの作り方を大きく変えるという。

絵コンテなしで作り上げる。
2017年10月20日
メインスタッフ集めての熱海合宿。

庵野が8年かかって作り上げた脚本を元に、各自がアイデア出し。
カメラ向けると「ボクを撮ってもしようがない・・・」
初日は何も決まらず。
二日目。姿すら見せない。
オッケーともダメとも言われない。

これじゃないってのは分かった(スタッフ)
三日目。何事もなかったように顔を出す。
基本ワンショットで行きたい。

あっこうなるんだ、という発見がこっちにないと。


自分が考える以上のものを
 

求めるのは人智を越えた何か。

そこに行きつくためにはスタッフを極限に追い込むのも厭わない。
自分のイメージ通りに作っても面白くない。
声優たちのことば
謎の人。庵野さんを分かっている人って、いるんですか?

庵野さんが描いて庵野さんが作ったものじゃないと、エヴァじゃない。

使徒みたいな人。使徒ちゃん。大きくて手が長くて、でもつぶらな瞳。


女性っぽいところもある。

 

 

2017年12月11日
更に新たなアイデア、モーションキャプチャー。アングルだけで勝負。
アングルと編集が良ければ画は動かさなくてもいい。

(アニメでも実写でも)

手練れのスタッフが決め、連日撮影が進む。任せた方がいい。

自分がやるとそれ以上にならない・・・
何を聞いても「ナイショ」肝心なところは明かさない。
だが遂に本性を垣間見る。庵野自らアングルを探り始めた。

任せると言いながら、最終的に塗りつぶして行く。

瞬間でクリエーターになる。
その刃はこちらにも向けられた。
2018年2月28日
取材で気になる点がある。僕を撮ってもしようがない時にカメラが向いている。スタッフが困っているのを見せたい。

リアクションで見せる、今までと同じでは面白くない。

作品が面白そうに見えなきゃ困る。
編集室では鶴巻が戸惑いの渦に溺れていた。

作っていたのはプリヴィズ(モーションキャプチャーの編集)

これが映画作りの指針になる。
膨大なアングルに遅々として進まず。
何十年とアニメ作ってるからみんなルーティン。同じやり方で作ったら、今までの3本の延長にしかならない。それがイヤ。
序盤30分のプリヴィズをメインスタッフに託したが、満足していない。

最初から構成し直すんじゃないかな・・・
2018年3月19日
庵野、一からプリヴィズをやり直すつもりで編集室に入る。

ここから先は自身の戦い。・・・つまんない。普通すぎる・・・
初めて夜、食事に誘われた。
何で取材を受けようと思いました? 商売しようと思って。
謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなっている。
アニメで名を成したという自負は? ない。

胸を張れるような商売じゃない。
いろんな人の人生に影響与えてるんじゃ? 

良かれとも思っても、逆のこともある。
それから編集室に引きこもった。連日深夜まで。

体力、気力、持てる全てを注ぎ込み、追い詰められて行く庵野を初めて見た。
2018年3月31日
悩ましいシーンがあった。シンジが一人放浪する。
ありきたりな発想しか出て来ない。
とっぴな事を言い出した。トンネルの中だけで構成する(心情)
いきなりトンネルの中。思ったよりは遠くに来た感じがある。
開き直りがないと面白くならない・・
2018年6月14日
だが二か月後、メインスタッフを集めてAパートごと作り直しを宣言。
9ケ月かけて作って来た冒頭1/4を脚本からやり直すという。
僕の台本がゼンゼン出来てないのが良く分かった。
いきなりBでいいんじゃないか、とも。
プリヴィズ視聴で一部スタッフから不評を受けた。
「シンジが家出して廃墟へと歩くシーンが長いのでは?」
庵野を貫く、一つの流儀。
 

自分の命より、作品
 

作品至上主義。死んでもいいから、作品は上げたい。
庵野はスタジオから消えた。

秘密の作業部屋に籠りAパートの脚本練り直し。
この期に及んでの脚本やり直しは異例。
だが覚悟のない者はここに居られない。
ドキュメンタリーとしては面白くなって来た(鶴巻)

シャレにならない・・・・ いつものことですよ。
最後だし、後悔したくないし。

 

(山下いくとに)何で一緒に仕事するんですか?
何でかなぁ・・・
好き勝手なことをやらせてくれる現場だから。
他のところはプランがしっかりしている。それ以上を要求されない。
普通の監督ならこの辺り、これつまんない。


こうして庵野の映画作りは進む。自らを否定し、傷つける。
庵野が師と仰ぐ宮﨑駿の評。「血を流しながら映画を作る」

妻 安野モヨコ(漫画家)が語る 庵野秀明 (2002年に結婚)

仕事ばっかり続けてたら死んじゃう。
誰も世話しないなら、私が・・・といういきさつ。
食事が大変。肉、魚を一切食べない。
例えばズッキーニ。キュウリとカボチャは食べられるから、その中間だと教えた。知らないものに対する警戒心が強い。
お菓子ばっかり食べてた。今も内緒で食べてる。

自分の事を許されキャラだと思ってる。


山口県宇部市出身。その苛烈な生き方はいかにして作られたか。
いつも何かが、欠けていた。
1960年生れ。家族で遠出した写真が一枚だけ。


父は事故で左足がなかった。世の中を憎んでいた。
その事故は自身の責任ではなかった。

のこぎりを二人一組で扱う仕事で起きた。
ハンデを一生背負った。

何で自分がこういう目に遭う・・・僕にも怒りがぶつけられた。
TVに見入った。最初は鉄人28号。見るだけでは飽き足らなかった。
描くロボットは腕や足がない。取れているのがスキ。


親父の足が欠けている。全部が揃っていない方がいい。

親を肯定したい気持ちがあったかも。
取り憑かれた様に描いた。
大阪芸大時代、プロ顔負けの事をやった。
DAICONⅢ。爆発を描かせたら天才。
23歳の時、宮﨑駿と出会った。

「宇宙人が来たと思った。見た瞬間面白い」
「風の谷のナウシカ」で巨神兵による爆破シーンを担当。

スタジオに棲み付いた。
「ふしぎの海のナディア」を28歳で監督。次々にヒット。
33歳の時「新世紀エヴァンゲリオン」の企画を立ち上げた。
人間を描きたいと思った。自分の全てを作品に注ぎ込む。
存在を認めて欲しいと渇望する。主要キャラには何かが欠けていた。
どこかが壊れているのが面白い。

欠けているから、愛おしい
 

現場は常軌を逸していた。ここで人生終わってもいい。覚悟と勢い。
制作が追い付かなくなった。予定と異なる形で終わった。
「父に、ありがとう」・・・
憶測を与えたエンディング。伝説のアニメとなった。
一部のファンからの批判。作品の投げ出し。
頑張ったつもりだが、ネットに「庵野をどうやって殺すか」のスレッド。
それ見てどうでも良くなった。
アニメはもういい。電車に飛び込むか、屋上から落ちるか。
止めたのは単に「痛そうだったから」
手を差し伸べたのは鈴木敏夫(ジブリ映画プロデューサー)
心を病んでたから、作るのが薬になる。
「式日(2000)」(実写映画)それを経て再びアニメへ。
だが拭えぬ思いがある。みなエヴァのセルフパロディになってしまう(彼氏彼女の事情)
エヴァから逃れられない。決着をつける映画を改めて作った。
3本終わって新作に取り掛かった時、恐れていた事が起こった。

庵野が壊れた。スタジオに来られない。
全部吐き出した。なるべく面白いものにしたい。
そばで支えた人がいた。誰かが一緒にいるだけで救われる。
私はいなくならない(モヨコ)。
でも、何もなかったような顔をしてまた作り出す。
そういう風にしか生きられない。
仕事だというけど、お前がやりたいだけ。
好きなんだと思う、作るのが。
4年の歳月を経て、エヴァに取り掛かった。
「作れない」はあったが「作りたくない」はなかった。

終わらせる、義務
 

庵野は、正直過ぎるほど正直な人。むき出しの魂ゆえの痛み。
今回はちゃんと終わると思うし、終わらせる。
自分が少し大きくなった。ポジティブ。自分にそれがないといけない。
2018年12月12日
映画は完成に向かいつつあった・・・と言えないのがエヴァ。
終盤1/4を占めるBパートが固まらず。
理解されていないのが困った・・・
公開予定まであと一年半。脚本からやり直すと宣言。
過去最大級にヤバい(鶴巻)
二ケ月過ぎても脚本上がらず。思いつかない。神さまが降りて来ない。
2019年3月1日
前半のアフレコが始まった。
レイ役への言葉。自信なさげがいい・・・
日を追うごとに険しさが増す。
人を傷つけても自分が貫けるか。
寄りと引きが逆。まだやれますか?
やります。命削っても(スタッフの言葉)
映画監督に必要なのは「覚悟」 満足しない。
決まったからここまで、とはしたくない。
どこで線を引く? 締め切りです。
2019年3月29日
Bパートの脚本が締め切りギリギリで間に合った。
今回、本当にギリギリ(庵野)
デッドラインに来てるので、作り上げる事が最優先。
庵野も重荷(期待されるのも) 

早くふんぎりを付けたいと思っている(鶴巻)

追い込み、追い込まれた四半世紀が、終わる。
庵野はシンジにセリフを書き足していた。25年分のさよならを込めて。
「さようなら 全てのエヴァンゲリオン」 シンジ役の緒方恵美
「いいんじゃないですか、ご苦労さま」

2020年暮れに映画は完成した。
問うた。作品に命かけられるのは何で?
他にやれることがないから。人の役に立てるのはそこぐらいしかない。

12月21日に内輪の試写会。
本当に有難うございました。じゃあごゆっくり。
本人は観ずに退室。毎回観ていない。


完成したら次の仕事。
やって良かったと思うしかない。それしか返すものがない。

プロフェッショナルとは?

 

考えたことない。 あまり関係ないんじゃないですか・・・・
この番組、その言葉がついているのが嫌い。
他のタイトルにして欲しかった、と言って去る。


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